ダンガンロンパ─imitation game─   作:こぴーきゃっと

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Prologue─3

「希望ヶ峰学園に入学したオマエラには──この学園で一生の共同生活を送ってもらいます!」

 

 モノクマのふざけた発言と同時に舞台の照明が一気に点灯し、驚きや怒り、困惑や恐怖を浮かべた俺達の顔がよく見えるようになった。多分、俺も皆と同じような顔をしているんだろう。

 一生の共同生活。それはつまり「死ぬまでここで暮らせ」という意味に他ならない。

 

「……おい、どういうことだよ。そもそもお前は何なんだよ?」

 

 一際イラついた声を出したのは冬馬だった。日本人離れした端正な顔付きを怒りに歪めながら、いまにもモノクマに殴り掛かりそうな雰囲気で凄む。

 

「だから言ったじゃん。ボクはモノクマ! この希望ヶ峰学園の学園長で、プリティで大人気なクマなのだクマ!」

「そんな意味わかんないことを信じろって言うの? あたしはこんな不気味なとこが希望ヶ峰学園だとも、あんたが学園長だっていうのも信じられないよ」

「信じるか信じないかはどうだっていいんだよ。オマエラがなんと言おうと、何を信じようと、ここが希望ヶ峰学園で、ボクが学園長であることが真実で、揺るがないんだからね!」

 

 うぷぷ……と気味の悪い笑い声をあげながら、モノクマはあくまでも自分の言い分を崩さない。

 

「……どうやらここが希望ヶ峰学園で、アンタが学園長だってことは一旦認めないと話を進められそうに無いな」

「ちょっ……おい、山中! マジでこんなキグルミの言うこと信じるってのかよ!?」

「俺だって信じたくないが──俺達は情報が少なすぎる。一旦それを真実として考えられるかの情報を集める方が大事じゃないのか?」

 

 そう言った山中の目は真剣そのものだった。真っ直ぐに白黒のクマを見据え……まるで、ゲームの相手としてモノクマを打ち負かそうとしているような、そんな目をしていた。

 

「山中クンは話が速そうで助かるね! 理解力が高い人間から、世の中はのし上がっていくように出来てるんだよ」

「学園長様に褒められちゃ光栄だね。御託はいいから「一生の共同生活」とやらについて詳しく話してくれないか?」

 

 他の超高校級のメンバー達も、いつの間にか静かに山中とモノクマの会話の行方を見守っていた。

 

「うぷぷ.……そのままの意味だよ。オマエラは「超高校級」と呼ばれるもの凄い才能の持ち主で、正に人類の「希望」と呼べるよね。そんなオマエラを汚れた外の世界から守る為に、この希望ヶ峰学園で保護し、その生涯をこの学園内で暮らしてもらうことにしたんだよ! これは学園長命令なのだ!」

「はぁ〜? ふざけてんじゃないわよ、勝手に私の人生設計を狂わせないでくれる!? ここで一生暮らすなんてお断りよ!」

「あァそうだ! 死ぬまでこんな場所に居続けるなんて有り得ねェ! ナメたこと言ってんじゃねェぞ!?」

「貴方達は仲が悪いのか良いのかどちらなのです……?」

 

 満島と村上の息のあった怒号は、青葉がツッコミたくなる気持ちも解るが……それはそれとして二人の言う通りだった。もし仮にここが本当に希望ヶ峰学園だったとしても、その学園で死ぬまでずっと暮らさなきゃいけないなんて馬鹿げている。家にだって帰りたいし、行ってみたいラーメン屋だってまだあるし、テレビで特集されていたテーマパークも気になっているんだ。何より──友達や家族に会えなくなるなんて考えられない。

 

「てか、フツーに考えて一生とか無理じゃない!? ウチらの家族とか、友達とかが明らかにおかしいって思ってケーサツに相談するじゃん! だってさ、こんなのって……誘拐じゃないの!?」

「家族? 友達? 警察? うぷぷぷぷ……そんなものを信用していたらいつまでも小さな子どものママだよね。オマエラも見たでしょ? この学園に打ち付けられている鉄板を!」

 

 思い出すのは、俺が寝ていた教室の窓に打ち付けられていた分厚い鉄板。そうか、あれはなんの意味があるんだと思っていたけど……俺達をここから逃がさない為に打ち付けていたのか。

 

「中から助けを呼んだって無駄なんだよ! 絶対にオマエラの声は外には届かないし、外と連絡する為の手段もここにはないんだよ!」

「チッ……だるいじゃん、まじでだるいじゃん。スマホが見つかんねえなって思ってたのはそういうことかよ」

 

 森の舌打ちで、俺は初めて自分のポケットにスマートフォンが入っていないことを自覚した。途端にどんどん身体から熱を奪われていくように感じる。外の誰かに助けを求めることも許されないのか? 

 

「いよいよもって私達を外に出す気は無いらしいね。シロクロのクマのマスコットという部分は都市伝説として面白いとは思うが……全く、笑えない冗談だ」

「わ、笑えないなんてレベルじゃないよ……! ど、どうしたらいいの……?」

 

「──どうしたらいいかなんて、こうするしか無いだろ」

 

 ダンッ! という舞台を蹴る音が響き渡る。何かが爆発したんじゃないかと錯覚する轟音に俺は思わずその音がした方向を振り向いた──その一瞬後、金髪を振り乱しながら長い足を勢い良く振り抜き、モノクマを上空に蹴り上げる冬馬の姿が視界に入った。

 

「なっ……!?」

 

 超高校級の喧嘩屋という才能は伊達ではないらしい。その威力は凄まじかったようで、蹴り上げられたモノクマは数メートルほど打ち上げられ、華麗に回転しながら真下に落下していく。やがて舞台の床に向かっていき……ゴシャッという音と共に衝突した。

 

「黙らせたらいいんだよ」

「すげえ蹴り……じゃなくて、もう少しこいつから話を聞くのは状況判断の為にマストだっただろ」

「何? このキグルミの言うことなんて信用出来ないしいいじゃん。まさか本当にコレが学園長だと思ってた?」

「はい、喧嘩しないの! 冬馬君、気持ちは解るけどいきなり暴力はダメだって! とにかく、私達は──」

 

 ──木津が混乱しそうになる場を収めようと、手を叩いた瞬間だった。

 

 

 ドォォォン、という音を立てながら……床に打ち付けられたモノクマが爆発した。

 

 それは、フィクションの世界でしか見た事がないような、黒と赤と光が混じったような、雷の音と発砲音が混じったような、怒りと混乱が混じったような、煙と熱気が混じったような、とにかくぐちゃぐちゃにかき混ぜられた「混沌」の具現化。爆風が俺達を襲い、一瞬遅れて床が焦げたような臭いとまとわりつくような熱さが遅いかかる。

 

「は!?」

「耳が……潰れます……っ!」

「なになになにっ!? なにが起きたの!?」

「ゲホッ、ゲホッ!」

「ウソだろ……!? あのキグルミ、爆発しやがったっ!!」

 

 未だに耳がキンキンする。鼻から入ってくる煙の臭いは不快感極まりないし、辺り一帯を覆う熱が、この爆発をモロに受けたら人の身体がただじゃ済まないことを俺達に理解させていた。

 ……だとしたら、この爆発を一番近くで受けたヤツは無事なのか? 

 

「っ、おい! 冬馬! 大丈夫か!?」

 

 気が付いたら、俺はそう叫んでいた。この爆発を一番近くで受けたのは、間違いなくモノクマを蹴り上げた冬馬だ。爆風と煙で周りの状況が一切見えないことが、余計に不安を掻き立てる──

 

「ゲホッ……無事だよ。ビックリしたし、熱いけど……これくらいじゃ火傷にもならない」

 

 ──煙の向こうから、少し焦っているようではあるがちゃんと冬馬の声が聞こえた。良かった、冬馬が大丈夫なら全員無事なのは間違いないだろう。

 

 やがて煙は晴れていき、もう一度全員の顔が見えるようになったところで──俺達は信じられないものを目にした。

 

「もう、まったく──学園長であるボクに暴力なんて校則違反じゃないか! 今回はまだ校則の説明前だったから警告で許すけど、次からはただじゃおかないからねっ!」

「お、おいおい……なんでっ……モノクマがいるんだよ!?」

 

 冬馬に蹴り上げられて地面に叩き付けられ、そして爆発までしたはずのモノクマは──まるで傷一つついていないかのように綺麗な姿で、怒りを顕にしたような声色でそこに立っていた。

 

「……ふむ。あの外見は絡繰仕掛で、何体か破壊された時の為のストックがあるということか」

「その通り! だからといって無闇に壊したり、危害を加えないように! もしそんなことしたら──今度は触れた瞬間に爆発して、オマエラの命ごと吹っ飛んじゃうからね?」

 

 恐らく、その発言が冗談では無いことは──モノクマの足元にある、爆発の跡で真っ黒に焦げてしまった床と、ぷすぷすと未だ小さく上がり続けている煙が物語っていた。こいつに逆らえば、命はない。

 

「死にたくないならアナタに従って、一生をここで過ごせ……ってこと!?」

「そんなのって……めちゃくちゃじゃん。どっちを選ぶのもあたし嫌だよ」

「……チッ、さっさと外に出せよ。お前のふざけた顔を見るのも飽き飽きしてるんだよ」

「うぷぷ……そっちから入学する為にやってきておいて、さっさと外に出せなんて勝手だよね……まあ、外に出る方法が無いわけじゃないけど」

 

 モノクマのその言葉に、俺達全員が反応した。外に出る方法──それは、恐らく今一番欲しい情報のうちの一つだ。

 

「なんだよ、あるんじゃねェか! さっさとその方法を教えろってんだよ」

「オマエラが外の世界への未練が捨て切れず、ここから出たい! と言い出すことは予測済みでした! なので、ボクはオマエラの為に──「卒業」という特別ルールを定めることにしたのです!」

「卒業? 三年間過ごせば出してくれるって訳か?」

「長すぎます。それまでに依頼された演奏のお仕事が幾つあるやら……」

 

 ……いや、多分三年間過ごせば卒業、って訳では無いんだろう。もしそうだったとしたなら、さっきモノクマが言ってた「一生の学園内での共同生活」は三年間という期限がつくことになり、矛盾が生じる。だからと言ってどんなルールなのかは俺には皆目見当もつかないが……

 

「うぷぷ、三年間真面目に通えば卒業出来るなんて甘くないんだよ。それじゃ一生の共同生活なんて無理じゃ〜ん! あのね、ボクが用意した特別ルールは、もっとスリリングで、エキサイティングなものなんだよ」

「そりゃ是非とも聞いてみたいもんだな! トランポリン使ったジャンプアクションよりスリリングなんだろうな!?」

「勿論だよ! そんな生半可なスリルじゃ味わえないものだよ! それは──」

 

 

 

 今日何度目かの驚きと混乱が、俺達を襲った。

 

 

 

 

「──それは人を殺すことだよ。オマエラの中の誰かを誰にもバレずに殺すことが出来たら、殺人を犯した生徒だけは「卒業」として、学園内から出ていくことが出来ます!」

 

 

 

 

 

「…………ふっざけんなよ!!!!」

 

 

 

 

 ──気がついたら、俺はそう叫んでいた。自分でも驚く程の声量。全員の視線が俺に集まっているのがなんとなくわかる。だけど、俺はそこから言葉を続けるのを止められなかった。

 

「この中の誰かを殺せば出られる!? そんなこと誰がやるっていうんだ! 勝手なことばっかり言いやがって……冗談も大概にしろよ!!」

「うぷぷ.……じゃあここでずっと暮らしていくのを選ぶんだね」

「ナメてんじゃねえよ……! 俺達がここに連れてこられるまでに入口があるってことは出口もあるってことだろ。ここには超高校級の才能を持ってる奴がこんなにもいるんだ、全員で協力して出口を見つけてやる」

 

 そうだ。ここには超高校級の才能を持ってる奴が十六人もいる。俺はどんな才能を持っていたのか忘れちゃったけど……それだけすごいヤツらが集まっているんだ、皆で協力したら絶対になんとかなるはずだ! 

 

「うぷぷ。うぷぷぷぷ……全員で協力なんて、本当に出来るのかなぁ?」

「……どういうこと?」

 

 

 

「だって、オマエラの中にこの「コロシアイ共同生活」を望んでる奴がいるんだもん!」

 

 

 

「……は?」

 

 言っている意味が解らなかった。

 理解したくなかったのかもしれない。

 

 

「オマエラ十六人の中に一人だけ……このコロシアイ共同生活を仕組んだ側の人間がいるってことだよ! 分かりやすく言うなら「裏切り者」や「内通者」ってトコかな? うぷぷぷ……一体誰なんだろうね〜!」

 

 

「そんな、わけが……」

 

 ある訳が無い。あっていいはずがない。

 俺達同士で殺し合うように仕向けた奴が、俺達の中にいるなんて。

 確かに、俺達はまだ出会って一時間も経っていない。どいつもこいつも一筋縄じゃいかない奴だとは思ったけど、心の中まで通じ合えるような、友達や仲間にはまだなっていない。だから実は何を考えているかなんて、解りはしない。だけど、だけど──俺達に殺し合うように仕向ける奴が、いるなんてそんなこと思えない。思いたくない。

 

「そ、そんなのウソだよ……ウソに決まってる」

「信じたくないならそれも結構! でもオマエラが何を信じようと、真実はいつも一つなのだ! これ、さっきも言ったよね?」

「悪趣味ここに極まれり、か……ふむ」

 

 モノクマが不快になるくらいの大声で笑う。俺は拳を握り締めながら──無意識に首を振って周りのメンバーの顔を見回していた。他の皆も、同じように互いに顔を見合わせている。

 

 それはまるで──誰が殺し合いを仕組もうと企む「裏切り者」なのかを、探り合っているような空気。疑心暗鬼に陥った表情。モノクマの言ったことなんてウソしか無いと思いたいのに、それでも様子を伺わなければいけない切迫感。

 

 ──その空気を破ったのは、四宮だった。

 

「誰か裏切り者がいるのはわかったけどさ、アンタの言う「卒業」ってのは、誰か殺した時点ですぐ適用されるわけ? 例えば俺が今ここで誰かを殺せば……すぐここから出してくれるの?」

「ちょっと灰!? 何言ってんの!? あんなヤツの言うことなんて──」

「うぷぷぷぷ。よくぞ聞いてくれました! 勿論、ただ殺すだけじゃ終わらないよ! それでは皆さん、後ろのスクリーンにご注目ください!」

 

 モノクマがそう宣言すると、天井から舞台の後方にスクリーンが降ろされ、舞台上の照明が暗くなると同時にスクリーンに映像が映された。

 

「まず、殺人を犯す「クロ」には、守って頂かないといけないルールがあります! それは「他の誰にも自分がクロだとバレてはいけない」というものです!」

 

 チェスの駒のようなデフォルメされた人形が、ナイフを持って同じような人形を殺す映像が流れる。

 

「そして、クロはこのルールを遵守出来ているかどうかを精査する為に……殺人が起きてから一定時間が経過した後、「学級裁判」を開きたいと思います!」

「学級……裁判?」

 

 映像に映されているのは、簡易的な裁判所のような背景と、幾つもの証言台に立たされた人形達。真ん中の裁判長の椅子には、デフォルメされたモノクマが鎮座している。

 

「学級裁判では、殺人を犯したクロと、それ以外のシロとの対決が行われます! 学級裁判では、「身内に潜んだクロは誰か?」を、オマエラに議論してもらいます。その結果は、議論の最後に行われる投票により決定します!」

「まるで人狼ゲームだな.……」

 

「そこで、オマエラが導き出した答えが正解だった場合は……殺人という行為で秩序を乱したクロだけが「おしおき」され、残った他のメンバーは共同生活を続けてもらいます!」

「……答えが間違っていた場合は?」

「うぷぷ……間違った人物をクロとしてしまった場合は……罪を逃れたクロだけが生き残り、残ったシロ全員がおしおきされることになります!」

「一回でも外せばゲームオーバーか……グレランやローラーみたいなことは不可能ってわけだ」

 

 舞台上が再度明るくなり、スクリーンは天井に再度仕舞われる。これくらいの映像なら別に見せる必要も無かっただろ……。

 

「……ところで、さっきからアンタが言ってる、「おしおき」って何なのよ?」

 

「え? 処刑だよ。ショ・ケ・イ! 言葉の意味はわかるでしょ? 火炙りにされたり、磔にされたり、プレス機で潰されたり、食べられたり!?」

 

 間抜けな声だからこそだろうか。モノクマの言った「処刑」という言葉は、やけに現実味があって──だからこそ、本気で恐ろしく感じた。

 

「まあ、誰も人を殺さなかったら学級裁判も、ドキドキワクワクなおしおきも起きることは無いからね! オマエラが一生ここで暮らすことを受け入れたら、何一つ不自由はさせないと約束するよ! だけど──」

 

 ──モノクマの瞳が、ギラギラと赤く輝いた。

 

 

 

「──希望の象徴とも言える才能を持ったオマエラが、絶望に満ちた顔をしながらコロシアイを始める展開も、ボクは楽しみにしているからね」

 

 その言葉と同時に、舞台の照明がブツン! と落とされる。一瞬の暗闇の後、すぐに再度明るくなった時には──もう、モノクマは目の前から消えてしまっていた。

 

「消えた!?」

「おいおいやべえじゃん……意味わかんねえって……」

「一生ここから出られないとか、殺し合いとか……嘘だよね……?」

「それよりもこの中に俺達をハメた「裏切り者」がいるッて方が問題だろ! ホントにいるならぶっ飛ばすぞ、誰だよ!?」

 

「──はい、落ち着いて! 一旦私の話を聞いてくれる!?」

 

 混乱が空間を支配しようとしていた瞬間、木津のよく通る声が場を制した。一瞬で場は静まり返り、木津の方を見る。流石超高校級の学級委員だな……。

 

「……私も、正直何が何だかわからない。あのモノクマっていうのが言ってたことも本当なのかウソなのか……でも、まずは皆で協力してこの学校のことを調べることから始めましょう。さっき榊君が言っていた通り、私達はここに連れてこられる時に必ず「入口」を通って来ているはず。なら必ず「出口」だって存在するはずよ。もし本当にアイツがこの中で一生を過ごさせるつもりなら、皆でその出口を探して脱出すればいいんだから」

「……俺達の殺し合いを推奨されている環境だが、それでも協力できると?」

「協力できるかどうかじゃなくて……協力「する」の。まずは四つのグループに分けて、この学園の調査を始め──」

 

「──ちょっと待ってよ。協力は私だってするけど……四つのグループってのは賛成できないわ」

 

 木津に異を唱えたのは満島だった。

 

「モノクマの言ってることを信じるわけじゃないけど、それでも私達の中に「裏切り者」がいるかもしれないんでしょ? しかも少なからず私達の頭の中には──「誰かもう殺しのプランを考えてるんじゃないか」って思考がある筈よ。そんな中で信用出来ないメンツと一緒に不気味な学園の調査なんてやってらんないわ」

 

 そう言うと、満島は目線でぐるりと俺達を見回し……更に言葉を続ける。

 

「特に山中、四宮。アンタら二人は信用出来ないわね。やけにモノクマの言ってることに対して従順で素直だったんじゃない?」

 

 名指しされた二人は特に悪びれる様子もなく、ただ満島の言葉を聞いている。二人ともなんというか……「疑われるのはしょうがない」と開き直っているような顔に見えた。

 

「……なので、悪いけど私は一人で調査させてもらうわ。勿論何か見つけたら皆にも報告するし、文句無いでしょ? グループで調査したい人がいるなら別にそれも好きにしたらいいと思うわ」

 

 そう言い残すと、満島はゆっくりと歩き出し……舞台から飛び降りて講堂の外へ向かって歩を進めていった。木津が一瞬引き止めようとしたが、ゆっくりと言葉を呑み込む。

 

「……まァ、アイツの事は気に食わねェが、今回は俺も同意見だな。悪ィが俺もすぐにお前らを信用は出来ねェ。一人で調査させてもらうぜ」

 

 そう言うと、村上も舞台から降りて一人で調査に向かう。なんか……「協力して」って言ったのに、もうバラバラになってしまっている気がする。

 

「……木津、いいのかよ?」

「しょうがないわ。彼女達の言い分も理解出来るもの」

「あ〜あ……なんというか……悪いな、ナツキちゃん。俺のせいで纏まりを悪くしちまって」

「謝ることないわ。貴方も、四宮君も、何も解らない状況から少しでも情報を得ようとしての言動だって理解しているつもりよ」

 

 木津は表情を一つ変えることなく、そのまま柏手を打つように大きく手を叩いた。

 

「というわけで、調査の為のグループ分けはしないことにします! 一人で調査してもいいし、誰かと一緒に調査しても構いません! 一旦そうね、一時間を目安にして行動しましょ。何か見つけたら報告してちょうだい! じゃあ……解散!」

 

 木津のその声と同時に、他のメンバーも一斉に舞台を降りて行動を始めた。俺も……一先ず調査の為に動くとするか。とは言っても何を調べたらいいんだろうか……? 

 

「……ねぇ、真司」

 

 そう考えていると、御庄から声をかけられた。その表情は少し不安そうであり、初めて顔を合わせた時よりも顔色が悪いように見える。そりゃそうか、あんな意味のわからないことを意味のわからないキグルミに言われたらそんな顔色にだってなる。

 

「一緒に行動しない? 一人だと怖いし、他のメンバーはちょっと……気後れしちゃって」

「……ああ、勿論だ。俺も一人だと正直不安なんだ、一緒に動こうぜ」

 

 正直、嬉しかった。他の超高校級のメンバーはクセが強いし、御庄となら話しやすい。一人というのも不安だし、二人で回れるなら安心だ。

 二人で舞台から降り、廊下へ続く扉に向かって歩き始める。

 

「……あのね、真司。死ぬまでここで暮らすとか、殺し合いとか、裏切り者とか。ウチはそんなの信じてないけど……信じたくないけど。あそこですぐに怒って、言い返せるの、カッコよかったよ。流石超高校級! って思った」

「なんだよ急に。俺だって信じてねえし……気が付いたら言い返してただけだよ。しかも俺の才能、忘れちまってるんだぞ」

「ううん、でもカッコよかったよ。やっぱり、きっと真司の才能はスゴいやつに違いないよ! 思い出した時が楽しみだね」

「……ああ、そうだといいな」

 

 御庄の言葉に、なんとなく勇気付けられる。

 

 

「……絶対、皆で出ようね」

「当たり前だ」

 

 

 

 ──俺達の、コロシアイ共同生活が始まる。

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