転生したら呪霊でした....で、これからどうする? 作:ウカンムリ
よぉ。お前ら。俺が今立っているここは薄暗い路地裏。天気は昼といった所だろう。天候は晴れ、丁度良い涼しい風も吹いて、夏をやり過ごすには絶好な場所だ。
...いや、俺は誰に話し掛けてんだ?
まぁ良い。とりあえず俺の話を聞け。誰かに聞かせにゃ頭がおかしくなりそうなんだ。
まず、俺は前世で自転車でコケ、そしてトラックに轢かれ、死んだ。
命ってのは脆いもんだ。いくら日本という犯罪率も低い先進国で、豊かで普通の日常を生きていようが、死は意識しない所から突然降りかかる。
それを意識したのはタイヤがほっぺたに触れた瞬間だ。あまりに一瞬だったからか知らんが、恐怖なんてものは多分感じなかったぞ。不思議なもんだよな。
そんでそこから顔がトラックの馬鹿でかいタイヤに踏まれて、それはもう痛かった。まぁ泣き叫ぶ暇も無いくらい一瞬で意識が消えたがな。これは幸いだったと言える。あの痛みをあのまま続けていたらと思うと....いや、ここから先を考えるのは辞めよう、想像するだけでほっぺたがちぎれそうだ。
....んでそんな感じで死んだ訳だが、それで俺は何故今ここで意識がある?
生まれ変わったって奴か? にしては展開が速すぎるだろう。そもそもそれなら何故俺は今前世の記憶を持っている。生物が記憶を持ったまま生まれ変われるのなら、今あるこの世の9割の謎は解かれているはずだ。
以上の事から、この説は却下――
「.......」
いや、待て違うな。そもそも大前提、俺がなんで今意識があるかという、この事自体が考えなくていい事だし、考えた所で答えは出ないだろう。仮に出せたとしてもそれに価値等無い。
何が起こったであろうと、俺は今ここで生きている。
ならば俺は第二の生を受けたとして、新たな人生を始める。俺が今考えるべきはこれからどう生きていくかだろう。
そこから思考を始めると、不思議にも、俺の心と脳が一体化し、思考が流暢に進む感じがした。
正直前世には色々不満があった。やりたくも無い勉強をやらされ、行きたくも無い高校や大学をただ世間体を誤魔化す為だけに生きた。何も考えずに就職し、クビが恐くて上司にはひたすらぺこぺこしていた。
.....あぁ、冷静に振り返ってみるとイライラするもんだ。何で俺はそんなクソのような人生を受け入れていたんだ? もっとあっただろう? いくらでもあっただろう? 知らない事、やりたい事、やったみたが途中で諦めた事。 世間体と、羞恥心さえ捨てれば。嫌われる勇気一つ持つ事さえ出来れば、全部やれただろう。
どこの馬の骨とも分からん奴共の戯言に恐れ、本当の自分に自信を持てなかった。挑戦する事すら出来なかった。
....よし、決めたぞ、俺は。この機会だ。自身を見つめ直し、自分に正直に生きるとする。それが例え、他人に悦ばれるもので無くとも。
――――そう、考えてたんだがな
「....あの、直哉様。やはり、この姿、とても呪霊とは....」
「阿呆。子供やけど呪力タラタラやんけ。逆に人間な筈無いわ」
向こうから突然来た声に反応し、俺はハッとそちらを向く。
和服を着た男が二人。そして片方は既に殺意をこちらへ向けているようだ。
「見た感じ生まれたばっかってとこやな。呪力が新鮮や。まだ誰も喰うとらん。....んで逆に、生まれたばっかの持ち前の呪力でこれって訳や」
金髪の、関西弁で言葉を話すいかにもお坊ちゃまと言わんばかりの青年。
生意気だろう。世間知らずだろう。他者への思いやりなんて何一つ無い人間なのだろう。
...あぁ、だが分かるもんだ。俺に殺意を向けているそいつは、間違いなくこれまで見て来た誰よりも強い。奴から溢れ出る自信が、それを物語っている。こりゃ、一般人なんて比べ物にならないだろうなぁ。
(.....)
これまで日常を過ごしてきた俺は、命を狙われているのにも関わらず、どうやら深く感慨してしまっている。
.....本当にあるもんなんだな。裏の世界って。
「運悪い奴や、お前は。俺がそこらへんブラついて無かったらもっと強いのに育ってたやろな」
「.....」
.....奴の言葉に、俺は思い出す。そして自分が甘かったと。
俺は忘れていた。自由に生きる為に、嫌われても良いと言う選択肢を取るなら。不可欠な物が一つある。
残酷だよな。この世界って。
「ほな、行くで。一瞬で終わるから安心せいや」
.....強さ、というものだ。