シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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お久しぶりです。

今回は対人関係でのナグサってめちゃくちゃ不器用そうだよね、をテーマに書き上げたものです。
人によっては不快に思うかもしれない描写があるので注意をお願いします。

話は変わりますが、二次創作的に美味しいネタが投下されましたね。
ほぼ間違いなく書くでしょうからその時はよろしくお願いします。

この作品はPixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」ナグサ「その11。楽しんでいってね」

「私のミスでした…」

 

少女は極めて面倒くさそうに溜息をつき、周囲を一瞥する。現在、薄暗い路地で複数の不良生徒たちが彼女を包囲しており、多勢に無勢という言葉をまさに体現していた。しかし、それであるにもかかわらず少女は余裕を崩しはしない。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「…この結果にたどり着いて改めて、私のあの選択がこんな面倒な状況を作り出してしまったことを痛感するとは…」

 

「…図々しいお願いですが、お願いします」

 

そこで一旦言葉を切ると、彼女──連邦生徒会長は周囲に居る人影全員に等しく注意を向け、その空のように青い瞳を細めて周囲を取り囲んで勝利を確信する『彼女たち』に告げた。

 

「…無益な戦闘はやめませんか?」

 

瞬間、彼女たち全員に奔る緊張感。それと同時に、不良生徒たちの背中にはまるで蛇が這っていったかのように寒気が走る。

それを振り払おうとリーダー格の不良生徒がやってしまえと声をあげようとしたその刹那、銃声が重く冷たい空気を切り裂いた。連邦生徒会長ではない。なぜなら彼女はそもそも銃を抜いてすらいないからだ。

では誰が、という問いはこの百鬼夜行自治区においては野暮なものだ。百鬼夜行においてもめ事が発生しようとしているときに、それを止めるのは彼女たちしかいない。

 

「…もしそれ以上やるんだったら、まずは百花繚乱が相手になる」

 

百花繚乱紛争調停委員会。その名を聞いた瞬間、不良たちは蜘蛛の子を散らしたようにそそくさと逃げ出していった。

ここ百鬼夜行においてはそれは彼女の役目ではないために連邦生徒会長はそれを静かに見送った。

そしてその後、助けに来てくれた彼女に連邦生徒会長は声をかけた。

 

「ありがとうございます、ナグサさん」

 

「…誰かと思ったら、連邦生徒会長だったんだ。百鬼夜行と連邦生徒会で大事になる前に介入できてよかった」

 

「ふふ、私が好きで首を突っ込んだことですから。大事にはしませんよ」

 

連邦生徒会長が先ほどまでの剣呑な雰囲気を全く感じさせない朗らかな笑みを浮かべると、ナグサもまた微妙に頬を緩める。

それを確認したあと、連邦生徒会長は先程逃げた彼女達への対応について聞くことにした。

 

「…ところで、よかったんですか? 彼女たち、逃げていきましたけど」

 

「大丈夫じゃないかな。今頃キキョウが追い込んで、レンゲとユカリが交戦してるだろうから」

 

ナグサが半ば他人事の様にそう言うと、先程彼女たちが逃げていった方向から爆発音と銃声が聞こえてきたが、さしてそれも長くは続きはしない。恐らくは既に決着はついたのだろう。

そんなキヴォトスではよくあることをバックミュージックに、彼女らは世間話に花を咲かせる。

 

「貴女はなんで百鬼夜行に…ってお祭り好きのあなたに聞くのは野暮か…。じゃあ楽しんでるか…も、別に聞く必要はないね。見ればわかるし」

 

そう言うナグサの眼前には、どこで購入したのかわからない薄い青色の法被を着た上でお面を斜めにかけ、その上手にはパックに詰められた焼きそばとたこ焼きが入ったビニール袋を握っている連邦生徒会長の姿があった。

どこからどう見ても百鬼夜行で開催されているお祭りをエンジョイしているのが丸わかりである。

 

「…でも、その格好でなんであんなことになっていたのかは気にはなる。個人的にも百花繚乱としても」

 

「あぁ、先程のあれですか? お祭りを楽しんでたらどこからどう見てもボッタクリの屋台を見かけたので順序立てて丁寧に違法性を指摘したらここに連れて来られちゃいまして」

 

「…そうなんだ。それは災難だったね」

 

「えぇ。危うく購入したものが冷めるところでした」

 

そう言いながら、パックを開けて爪楊枝をたこ焼きに突き刺したあと口の中に放り込む連邦生徒会長。

ちょっと熱かったのか、はふっはふっと口の中で転がし若干涙目になっている。

 

「…心配するところそこなんだ。まぁ無事ならよかった」

 

ナグサはそう言って連邦生徒会長に背を向けて、再び巡回に戻ろうとする。しかし、口内にやけどを作りながらたこ焼きを飲み込んだ連邦生徒会長はその背中を引き留めた。

 

「あ、待ってくださいナグサさん。よろしければお祭りを一緒に回りませんか?」

 

「…誘ってくれるのは嬉しいけど、そういう訳にもいかないよ。さっきみたいに、また暴れる人が出てくるかもしれないから」

 

「…なるほど、そうですか」

 

やたらと素直に引き下がる連邦生徒会長に首を少しかしげ、今度こそ巡回に戻ろうとするナグサ。だが、連邦生徒会長は至極当然の如くその背中についていく。そのロジックは簡単なもので、巡回についていけばそれ即ち一緒に祭りを楽しめる、というものである。ここまでして連邦生徒会長がナグサとともに祭りを巡回したい理由はと言えば、シンプルに中々話す機会がないからだ。

 

「…たまたま向かう先が一緒なら仕方ないか。それじゃあ、一緒に行こう」

 

「ふふ、そうこなくては。さぁ、一緒に楽しみましょう」

 

そして二人は巡回しながら祭りをそれなりに楽しもうとする…のだが。ここから小さな問題が起き始める。

最初は焼き鳥屋の屋台の前。連邦生徒会長がタレ焼き鳥を頼もうとしたその瞬間のことだった。

 

「…えっ、最初にタレに行くんだ?」

 

というナグサの一言に、ぴしりと音を立てて空気が凍った。お代を支払って、屋台主から焼き鳥を受け取ってタレのついた焼き鳥を頬張ろうとしたその刹那、連邦生徒会長の手が止まる。

 

「…えっと、何か…?」

 

「あ、気を悪くしたならごめんね。…でもあっさりしてる塩からいったほうが、後々食べるタレとの風味で大変なことにならないで済むしそのほうがいいんじゃないかなって、そう思っただけ」

 

「…なるほど、言われてみれば確かにそうかもしれませんね。ですが考えてもみてください。ここまでタレのついた焼き鳥はお祭りという空気を感じるにはぴったりだと思いませんか?」

 

「…そう言われればそうかも。口出しするつもりはなかったんだけど珍しかったから、つい」

 

とこの場は穏当に過ぎていく。が、その後もこのようなナグサと連邦生徒会長の小さくとも確実な確執は徐々に積み重なっていった。

例えば、射的の際。連邦生徒会長が射的用の銃をなんとなく構えたその刹那。

 

「その構えだと景品は落ちないかも。どうすればいいかは…そうだね、銃を貸して。私が見本を見せるからよく見てて」

 

と突如として射的を始め連邦生徒会長が密かに狙っていたものを全て獲得しその景品を連邦生徒会長に渡した後得意げに微笑み、「簡単でしょう? やってみて」と弾の入っていない銃を渡してきた。無論、連邦生徒会長はこれには少し絶句した。

続いて金魚掬いの際には、

 

「金魚掬いにはコツがあるの。まずはポイをこう持って…こう」

 

ぱしゃぱしゃと静かな音をたてて職人じみた手つきでナグサがポイで金魚を乱獲しまくった結果、連邦生徒会長が教えの成果を試す前に二人揃って出禁をくらってしまった。内心わくわくしてた連邦生徒会長がショックを受けたのは言うまでもない。

更に型抜きの際には、

 

「…これには何かコツはあるんですか?」

 

と質問した連邦生徒会長の声をその卓越した集中力でシャットアウトし、とりあえず型抜きをやってみた連邦生徒会長がうっかり一枚を犠牲にしてしまった後、慎重にやってなんとか一枚成功させる間にナグサは四枚ほどくりぬくことに成功。景品をいくつかもらって、彼女はどこか満足げである。一方の連邦生徒会長はなんとも言えない表情でそんなナグサを見つめていた。

その後もリンゴ飴の食べ方やチョコバナナのお得なサイズの屋台の選定など、ナグサの小さな指導を挟みながらも屋台を巡り、そしてあっという間に終わりの時を迎える。

空に打ち上がる花火を見上げながら、ナグサは連邦生徒会長に問いかけた。

 

「…百鬼夜行のお祭りはどうだった? 楽しんでもらえたなら、私も嬉しいのだけれど」

 

ナグサのそんな問いかけに、連邦生徒会長はたっぷり数秒考え込む。

楽しかったか楽しくなかったかでいえば、間違いなく楽しかった。楽しかった…のだが、よくよく考えてみれば何かが引っかかる。一体なんだろうかと連邦生徒会長がその優秀な頭脳を回して考えてみれば、答えはすぐにわかった。

 

ナグサのアドバイスが思ったよりも多いし、実演が上手すぎてなんだか微妙に乗り切れなかった。

 

これ自体は悪くない上なんとか楽しませたいという気持ちも感じられてそこは嬉しいし、そもそもナグサの巡回に無理やりついて行っている身なので文句をつけてはいけないとは連邦生徒会長自身も理解はしている。

しているのだが、それにしたってこれはどうだろうか。

 

構えただけで指導が入り、挙句狙っていた獲物を全部取られた上残弾が無い空の銃が渡された射的。

乱獲の末、やる前にまさかの出禁をくらってしまった金魚掬い。

アドバイスを求めたが、普通に無視されて手探りでやる羽目になった型抜き。

 

彼女は不快に思われないよう、楽しんでもらいたいから先にコツなどを教えてくれているのは理解している。しているが、それにしたっていくらなんでも不器用すぎるというか空回りしているというか、そんな印象であった。

と、ここまで感想をまとめたはいいが、しかしこれをありのままナグサに伝えるわけにもいかない。

無理やり押しかけた身でありながら『ぶっちゃけアドバイスが過剰すぎましたので次からは控えてほしい』なんて発言は連邦生徒会が云々以前に人間としてどうかと思うレベルだろう。

ここまでの色々をわずか3秒以内で考え、そして導き出した答えは。

 

「…楽しかったです! また今度一緒に何かしましょう!」

 

というものであった。この発言は嘘ではなく、ナグサと共に何かしたいとは思っている。が、できれば祭り以外の何かをお願いしたいというのが連邦生徒会長の内心であることは言うまでもない。

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