シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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お久しぶりです。

アイドルマリーを引こうと思ってガチャを回しまくっていますが、一向に来てくれません。
上司をネタにしたことで恨みを買っているのかもしれませんが、その上司は40連で来てくれました。何なんでしょうね、これ。

この作品はPixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」黒服「クックック…その12ですよ…」

「私のミスでした…」

 

少女は後悔に満ちた面持ちで彼らを見ている。その唇は後悔に震えている。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「…この結果にたどり着いて改めて、私のあの選択が間違っていたことを思い知るなんて…」

 

「図々しいお願いですが、改めて言わせてください」

 

そこで一旦言葉を切ると、彼女は真っ直ぐ相手を見据えた。その空のように青い瞳にかなりの罪悪感を浮かべ、腹を括って目の前に居る『彼ら』に頭を下げた。

 

「……本当に、申し訳ありませんでした…っ!」

 

「いや、うん。反省してるならそれでいいんだけどね…」

 

ものすごく綺麗な土下座をして今までにないくらいの謝り方をしてくる連邦生徒会長に、先生は思わず気圧される。それはその両隣に立つ梔子ユメとプレナパテスも同様であった。

そして彼らの前に置いてあるのはボイスレコーダーと、いくつかのグッズ。それらは先生達の写真を無断使用した非公認グッズである。

連邦生徒会長が何故そんなことをしているかというと、その始まりは数週間ほど前に遡る。

 

『先生大好きクラブ、ですか…』

 

明らかに怪しいその名前を耳にした彼女は、SRTのとある小隊にこっそりこのクラブについて調べるように指示をした。

が、その小隊からの報告には特に問題なしと書かれていたものの明らかに不自然な点があったために2日前に会長自らが捜査に乗り出したのだった。

盗聴音声や盗撮など明らかに犯罪だろうというのがちらほら出てきたり、見知った生徒の顔が次々と出てきたタイミングで『彼』は連邦生徒会長に接触してきた。

 

『クックック…連邦生徒会長、そこまでです。これ以上の捜査は規則違反、退会とせざるをえませんね』

 

『…ゲマトリアの黒服…!』

 

彼は不気味に笑いながら、一枚の契約書を連邦生徒会長に渡してきた。

 

『…ですが、この書面にサインを頂ければ退会とは致しません。どうですか?』

 

その契約書に書かれていたのは、連邦生徒会がこれ以上の捜査をしないことを約束するということのみであった。これにサインをすれば、連邦生徒会長はまだこのクラブに残り捜査の続行が可能となる。

だがゲマトリアを名乗る彼らは生徒を使って人体実験を平然とするような『悪い大人』だ。カーボンを使って罠に嵌めてくるかもしれない。そう思って紙の裏やバインダーなどを確認するが、特にそういった様子は見られない。

 

『…一体何が目的なんですか?』

 

『ククッ、まさか直接聞いてくるとは思いませんでしたよ。…失礼、何が目的かでしたね? それは勿論…』

 

そう言って黒服はばっとワイシャツの前を開け放った。ワイシャツの中に黒服が着込んでいたのは…恐らく無断使用したであろう先生の写真がプリントされているTシャツ。思わず絶句してしまう連邦生徒会長に、黒服改めTシャツは冷静に、しかし熱を感じさせてこう言い放った。

 

『先生達の観察、ですよ。彼らは実に興味深い。生徒の神秘はもちろんですが、彼らのことも同等に研究のしがいがある。

ここはその為の研究クラブですよ。比較的敵対的な関係になりがちな私達だけでは十全にはいかないので、写真や音声の提供には会員の生徒たちも関わっていますがね』

 

クックック、と笑っている黒服に連邦生徒会長はドン引きの姿勢をとった。

そんな彼女の様子を知ってか知らずか、黒服はスーツを何事も無かったかのように着なおして話を本題に戻す。

 

『バインダーを含め、その契約書には貴方が不利になることも危険が及ぶような事は一切仕込んでいません。

下手なことをしては先生に嫌われてしまいますからね、ククッ』

 

それはそれで構いませんが、クックックと笑う黒服は僅かにかたかたと震えていた。どうやら口ではそう言っているが嫌われるのは嫌らしい。

もう既に大分嫌われているでしょうという言葉を飲み込み、連邦生徒会長は改めて手元の契約書を睨みつけた。

何度読んでも文面そのものには怪しいところは無い。だがしかし、この契約書の存在自体が怪しすぎる。

警戒心が未だ抜けきらない連邦生徒会長に、黒服はとある物品を使った誘惑を仕掛けてきた。

彼の手に握られているのは黒いボイスレコーダー。

 

『クックック…サインして頂けるのなら、この『先生達のため口・悪態音声』を差し上げますが…』

 

(先生のため口・悪態音声…!?)

 

生徒という立場では決して聞けないであろう、とてつもなくレアな音声。いや待てまだ中身がそれとは限らないと警戒する連邦生徒会長の様子を察してか、黒服は無言でその音声を再生した。

 

〘連日飲みの催促してくるのはやめてってば。貴方と違って私は忙しいの〙

 

『──ッ!』

 

初めて聞く先生の悪態に、連邦生徒会長には稲妻が奔る。それを確認した黒服は、再び音声を再生。

 

〘ほんっと毎度毎度…。いい加減にしてくれる?〙

 

『あぁ、あぁぁ…っ!』

 

クックックッと笑う黒服は、ずいとバインダーを改めて差し出してきた。

連邦生徒会長は震える手でそのバインダーを受け取り、そして…。そこからの記憶は無い。が、その手の中に黒いボイスレコーダーが握られていたあたりそういうことなのだろう。

こうしてボイスレコーダーとクラブでいくつかのグッズを手に入れてしまった連邦生徒会長だったが、しかしこれは良くないと覚悟を決めて先生に報告を決意。模範となるべき連邦生徒会長がそういったものを所持しているわけにはいかないという自負もあった。

その後シャーレに訪れ、今に至るというわけだ。

 

「私は…っ! 私は自分の欲に負けました…っ!」

 

「…うーん、素直に言ってくれたし反省もしてるみたいだから今回はもういいか。梔子先生とプレナ先生は?」

 

「私も別にいいかなぁ。ちょっと恥ずかしいけど、そのくらいですしね」

 

『同意とプレナ先生もそう言っています。ですが…』

 

プラナがそう言った瞬間、先生とプレナパテスの瞳に昏い光が奔る。彼らが相当頭に来ているということは、誰の目にも明らかであった。

 

「…生徒を自分の欲望のために犯罪行為に利用するって、ちょっとやり過ぎだよねこれは」

 

『タスクにゲマトリアの殲滅を設定。先生方、指示をどうぞ』

 

それじゃあ行こうか、ふふふと不気味に笑って先生とプレナパテスはシャーレを出ていく。あれは間違いなく黒服を潰しにいくつもりだろう。

そしてその間残ったユメと話しながら数時間後。「先生大好きクラブ」を潰してきたと思しき先生とプレナパテスは、どこか困った表情を浮かべながら戻ってきた。

 

「先生…どうでしたか?」

 

「黒服は締め上げてきたんだけど、『先生大好きクラブ』とかいうのは一定の需要はあったみたいでね…。そこに居たたくさんの生徒から潰すのをやめてほしいっていう声があがったんだ…。でも盗聴・盗撮とそれを使ったグッズ販売はよくないし…」

 

黒服や他のゲマトリアに言われたのなら容赦なく潰すのだろうが、しかし生徒の頼みとあらば基本的に先生は断れない。

そんな彼に、連邦生徒会長はやらかしてしまった身ながらも一つの提案をしてみた。それは単純に見てみたいなぁ、という彼女の願望も多分に含まれている。

 

「でしたら、配信や動画投稿をしてみるのはいかがでしょう。シャーレ公式ということでしたら、連邦生徒会からもある程度なら予算を回せるかも…というか、回させます。盗撮グッズ・盗聴音源についてはそこから注意喚起をしつつ、先生が公式にそれらを作ってしまえばいいんです」

 

「…配信かぁ。いやでも梔子先生ならともかく、私達みたいなおじさんの配信はあまり需要がないんじゃないかな…?」

 

「そんなことはありませんっ! 欲に負けた私だからこそ説得力があるとは思いませんか!?」

 

そういって自分のやらかしを対象に見せつけることにより、説得力を凄まじく上げる連邦生徒会長。それらのグッズの妙に高い出来を見て、渋っていた先生はようやく決心をしたらしい。

 

「…じゃあ、一回やってみようか。あんまり伸びなかったらそこまでってことで」

 

その後連邦生徒会のサポートもあって立ち上げられたシャーレ公式チャンネルはたった1日でチャンネル登録数がキヴォトスの住民の約6割を記録。

結果は大成功を収めた。が、配信初日で多数のユーザーが多額のスーパーチャットを叩きつけまくった結果その後の配信ではスパチャ欄を常に閉鎖。

連邦生徒会長はそのスパチャ爆撃に関与していた事がばれて、今度こそしっかりお説教をされてしまったそうだ。

 

ちなみに現在のシャーレ公式チャンネルの三大人気コンテンツは『先生ASMR』『梔子先生と当番生徒によるホラーゲーム配信』『プレナ先生による不定期更新の一発芸ショート動画』であるらしい。

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