シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。

アイドルイベントが終わるということでライブ感で書き上げました。
サブタイトルのキャラクターは基本被らない様にしていますが、今回の話はリン以外だと誰も居なかったので渋々こうなりました。

この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」リン「その13です。…どうしてこんなことに…」

「私のミスでした…」

 

少女は口元を引きつらせて送られてきた書類を見つめている。その表情から窺える感情は、どう見ても今回の件が想定外であることを示していた。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

「図々しいお願いですが、お願いします」

 

そう言って少女──連邦生徒会長は眼前にて座っている連邦生徒会の役員たちに向けて震える声で問いかけた。

 

「…誰かトリニティの謝肉祭で一緒にステージに立ってくれませんか?」

 

問いかけられた連邦生徒会の生徒たちは視線を合わせていたが、やがて見解の一致を得たのか彼女たちはその無言のアイコンタクトを辞めて連邦生徒会長に向き合った後に無言で首を横に振った。

 

「…わかりました。百歩譲って私がソロでステージに立つのはいいとしましょう」

 

ですが、と連邦生徒会長がそこで言葉を切ったあとにその場に集まった連邦生徒会の役員たちに向けてちょっとだけ恨みが籠っている視線を向けた。というのも。

 

「…私のあずかり知らぬ場所で私をアイドルにしようと勝手に書類を出しましたね!? ことここに至るまで私自身が謝肉祭のステージに立つなんて知らなかったんですが!?」

 

そう、連邦生徒会長は今回自分がステージに立つなどということは当事者であるにも関わらず一切聞いていなかった。連邦生徒会からトリニティの謝肉祭に応募するという話は聞いていたし、企画書が上がった時も「頑張ってくださいねー」と呑気な声を出しつつそれを承認したが、その時には連邦生徒会長の名前は書かれていなかったと記憶している。

にも関わらず、トリニティから送られてきた謝肉祭の案内には何故か代表者には連邦生徒会長の名前がしっかりと刻まれていたため、こんなことになるなら承認しなければよかったという後悔の末冒頭に至るのだった。

 

「どうするんですかこれ!? あんまり時間がありませんよね!? 衣装も作ってないし曲も無いしボイトレもダンストレーニングもまったくしてませんよ!?」

 

連邦生徒会長の焦りを滲ませたその疑問の声に、冷静な声が落ち着いて回答をしてくる。連邦生徒会長が聞き慣れたそのクールな声の主は、首席行政官・七神リンであった。

 

「大丈夫ですよ会長。衣装も曲もトレーニングも既に手配済みです。今までは忙しく手が回せませんでしたがこれからは私、七神リンが会長のマネジメントを行います」

 

が、しかし。勇ましく名乗り出たリンに対し、連邦生徒会の生徒はおずおずと挙手。そして連邦生徒会長もリンも予想だにしていなかったことを口にした。

 

「あのぅ…。先ほどは言い損ねたのですけど、リン行政官にはアイドル活動への強い参加要望が匿名で送られてきていましてですね…。できれば、その…首席行政官にもステージに立っていただきたいと…」

 

「…えっ?」

 

先ほども言及したがリンにとってもかなり想定外だったらしく、目を丸くし彼女にしてはかなり珍しく素っ頓狂な声を上げていた。思わぬ方向から矢を射かけられたので当然と言えば当然である。

が、しかし。そんな困惑をよそに、とてつもなく悪い表情をしている人物がいた。

お察しの通り、連邦生徒会長である。

 

「…リンちゃん、一緒にステージに立とっか。楽しみだなぁ、リンちゃんとのデュエット」

 

「待ってください、私はまだステージに立つことを承諾してはいません。まだ拒否権は存在するはずです」

 

「リンちゃんが拒否権を行使するなら手段を選ばず私も拒否するよ? 私もいつの間にかステージに立つことになってただけで完全に承諾したわけじゃないからね。…でもいいのかなぁ? リンちゃんは理由はどうあれ私をステージに立たせたいんだもんね?」

 

ここでリンちゃんが拒否するなら私もステージに立たないけど、それでもいいのかなぁ? とわざとらしく言いながらかつて見たこともないほど悪い表情で口元を邪悪に歪めて嗤う連邦生徒会長。ぱっと見では涼し気な笑みであるが、しかしながら絶対に逃がしてたまるかという強い意志を感じさせる凄絶な表情である。

そして彼女から発せられる凄まじい圧力に屈したのか、はたまたシンプルにリンのアイドル衣装が見たいのかはわからないが、ぽつぽつと場に同調の雰囲気が出始める。

 

「くっ…。いえ、しかし…私のような面白味のない女のステージなど…」

 

「少なくとも私は見たいよ? それにそこのアオイ室長もアユム室長も口にこそ出してはいないけど見てみたいなぁって表情に出てるし、カヤ室長なんかすっごい笑顔だよ?」

 

「!?」

 

ばっとリンが名前の出た三人の方を見てみればカヤはにっこりと微笑んでおり、アユムはどこか申し訳なさそうにしているしアオイはいつものポーカーフェイスを浮かべている…のだが、アユム・アオイ両名の表情はどこか期待も孕んでいた。連邦生徒会長の言葉通り、三人は賛成派なのであることは明らかであった。

他に味方はいないのかとばかりにリンは他の室長や役員達の表情を伺うが、賛成あるいは中立の表情ばかりである。その中でもとりわけモモカの表情は死ぬ程楽しそうだった。

 

「いえ、ですが…」

 

と逃げ道を探そうとするリンだったが、しかし連邦生徒会長は更にプレッシャーを与えるために追撃を繰り出した。

 

「リンちゃんが拒否したら私も拒否するっていうのはもう言ったよね。もしそうなったらよその伝統的なお祭りに応募しておいてドタキャンってことになる訳だけど…トリニティとの関係が悪くなると思うけどなぁ?」

 

この追撃の内容についてだが、思いっきり嘘である。そもそも現ティーパーティーたるナギサもミカもセイアもそこまで狭量な為政者ではないし、仮に問題になったとしても割となんとかなると連邦生徒会長は踏んでいる。最悪の場合はプライドや威厳など全てをかなぐり捨てて最終兵器・DOGEZAを使うことさえ厭わないからだ。

 

「…あぁ、もう…。外交の話まで出されては承諾せざるを得ないではありませんか。ですが、どうなっても知りませんよ?」

 

「私達なら大丈夫だよ。ふふ、頑張ろうね」

 

そう言って連邦生徒会長は優しく微笑む。リンを安心させる為にというのもあるが、リンを道連れにするという本懐を遂げた達成感からでもあることは言うまでもない。

その後数週間にわたって二人は互いにとてつもなく忙しいスケジュールの合間を縫ってレッスンを行い、衣装で一悶着あったりダンスレッスン中に足を攣るなどのアクシデントを乗り越え、そしてトリニティの謝肉祭の日がやってきた。

努力の甲斐あってなんとか二人は決勝まで進出した…のだが、そもそも二人は突貫工事で準備しているため一曲しか用意できず、どうしようかという緊急会議が開かれその末に連邦生徒会長がピアノを弾きリンが讃美歌を歌うことでなんとか窮地を脱出。

連邦生徒会長のピアノ演奏もリンのボーカルもべらぼうにうまかったしSNSでも大バズリしたのだが、しかし『これってアイドルじゃないよね…?』という場の雰囲気によって残念ながら優勝は逃した。

が、今回の件がきっかけで連邦生徒会からCDをリリースすることとなり、それが中々にいい売れ行きになったため二人が定期的に歌わされることになったのは別の話である。

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