連邦生徒会長のスペックを盛りすぎた気がしますが、『まぁ…超人だしなぁ…』と納得していただければ幸いです。納得できなかったら…はい、すいませんでした。先に謝っておきます。
この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女は自分の所持するスマートフォンを凝視して静かに嘆息する。その口元は引きつっており、もはやその表情からは何を思っているから読み取り辛くなっている
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
そこで一旦言葉を切ると、少女──連邦生徒会長は顔を上げた。その空のように青い瞳を天井に向けて、誰に話しかけるというわけでもなく一人呟いた。
「まさか気がついたら忍者に仕立て上げられていたとは…」
連邦生徒会長の所持するスマートフォンには、ネットニュースの記事が映っていた。その見出しには、『連邦生徒会長は忍者だった!?』と言う文字がでかでかと記されていた。
事の始まりは少し前。百鬼夜行でサボり…否、単独での視察を行っていた連邦生徒会長。百夜堂でお茶をいただいたり、店でどういうものが売られているかを調査していたところ、問題が起こった。
百鬼夜行で唯一といってもいい問題児集団であるところの魑魅一座による襲撃が起こったのである。
連邦生徒会・会長としての立場だけで言えば放っておいても百花繚乱やら修行部やらが鎮圧してくれるだろうからわざわざ首を突っ込む必要はなかったのだが、しかし個人的には話は別。
困っている生徒達をこのまま放っておく訳にもいかないし、なによりも。
『…食べ物の恨みは恐ろしいですよ…!』
魑魅一座の襲撃によって連邦生徒会長は購入したお団子を取り落としてしまったのである。それも奮発して買ったちょっとだけ高めのお団子を、だ。
その瞳に怒りの炎を燃やした連邦生徒会長は銃を構えると。
『魑魅一座、止まりなさい! 止まらないと撃ちますよ!』
と形だけの警告をしながら容赦なく数発発砲した。連邦生徒会長は魑魅一座が止まろうが止まるまいが発砲する気満々であったのである。お団子のことは差し引いても、この手の手合いはただで止まるようなことはしないと踏んでいたのだ。考えなしに見えるかもしれないが、しかしこれも熟考の末のことである。
突然の襲撃には魑魅一座も、
『ちょっ…なんかヤバいのがいる!?』
このように動揺を隠しきれず、当然ながら反撃しようとその手に持った得物を構えようとする。しかし連邦生徒会長は魑魅一座が完全に戦闘態勢に入りきる前に近距離戦に突入。銃と体術を組み合わせて幾人かの武装を解除したところで、
『て…撤退だー!』
今回暴れていた魑魅一座のメインメンバーは撤退を選択し、連邦生徒会長はその後ろ姿を見る。普段ならば連邦生徒会長はここで百花繚乱に任せて彼女たちが去っていくその後ろ姿を見送るのだが、しかし今回ばかりは話は別。
ここ最近の連邦生徒会の業務でのフラストレーションやストレス、市街地への被害、そして何よりも自分が購入したちょっと高めのお団子を台無しにされたことが重なった結果、今回の彼女はいつもと方針を変えて追跡を選択。連邦生徒会長は素早く、限界まで引き絞った弓から番えた矢が打ち出されるように素早く駆けだした。
『うわ、追ってくる!? しかも速い!?』
『弾幕張れ、追いつかれたらおしまいだぞ!』
何人かがかりで逃走しながらも器用に弾幕を張ってくる。被弾を恐れずそのまま突っ込んでもよかったが、しかし下手に受けてケガを負ってしまえば外交的に面倒なことになってしまうのが目に見える。そのため渋々スピードを落とすが、しかし追跡そのものはやめない。
そんな連邦生徒会長の姿を改めて認め、魑魅一座は苛立った声をあげる。
『まだ追ってきてる!?』
『あぁもう面倒くさいな、やっちまえ!』
そう言いながら魑魅一座はロケットランチャーを取り出し、そして連邦生徒会長に向けた。それを見た連邦生徒会長は怯む──こともなく、むしろにやり、と不敵な笑みを浮かべる。
何を思ったか連邦生徒会長は地を強く蹴って宙に舞い、そして射出されたロケットランチャーの弾頭の上に着地しそこから更に跳躍すると同時に爆風の勢いを利用して建物の屋根の上に着地。
そしてそのまま追跡を続けるために駆け出していく。
『な、なぁっ!? 弾幕、弾幕張れ! ヤツをこれ以上近づけるな!』
自分たちよりも上方に居る連邦生徒会長に対して魑魅一座は発砲し続けるが、しかし建物の上を駆ける連邦生徒会長には当たらない。傍からはわからない程度にスピードを調節し、照準や着弾のタイミングを常に狂わせているのだ。
そんなことには気づかないまま当たらないことに困惑し、また段々と苛立ってきた魑魅一座は徐々に隊列を乱して足を止める者たちも出てきた。連邦生徒会長はそこを見逃さず建物から降りて再び接近戦に持ち込み、魑魅一座の構成員の武装解除を行うとともに意識を次々と刈り取っていく。
『ひっ…。だ、だめだ、逃げろぉ!』
『逃がしません…!』
連邦生徒会長の鮮やかな手際に恐怖した魑魅一座は再び逃げ出し、そしてそれを逃すまいと連邦生徒会長もまた追跡を続ける。
しつこく追ってくる追跡者に怯えた魑魅一座は手榴弾やライフルを使った妨害を仕掛けてくるが、しかし連邦生徒会長はそれらの妨害を様々な方法で振り払う。時に壁を駆け、時にパルクールの要領で距離を詰め、時にアクション映画顔負けのスタントを決め、そして最終的に今回暴れた魑魅一座の一味の捕獲に成功。
連邦生徒会長は捕獲後特に何をするわけでもなく、あとの処理を陰陽部や百花繚乱に丸投げして連邦生徒会長がD.U.に戻ろうとしたその時、三つの影が彼女の前に現れた。
『ふっふっふ…。先ほどの追跡、見事だった…!』
『え、えーっと…。さ、さぞや名のある忍者とお見受け、します…!』
『少しイズナたち…こほん、我らに付き合っていただきますっ!』
『…はい? えっと、あの…?』
三つの影──それは百鬼夜行にて最も有名な非公認部活、忍術研究部であった。
連邦生徒会長も彼女達とは勿論面識はあるが、しかしいつもと違う雰囲気や喋り方に困惑する彼女がどういうリアクションを取ろうか迷ったその瞬間、ずいとミチルは顔を寄せて小声で連邦生徒会長に問いかける。
『…あぁいう言い方したけど、今大丈夫? 急いでたりしない?』
『急いでは…いませんけど。どうしたんですか、いきなり…?』
『よしっ。それじゃあ…ここは人目につく。皆の衆、移動だー!』
『はいっ、部長!』
『えっ、本当になんですか!? ツクヨさん、イズナさん、自分で歩きますから! 運ばないでくださいっ!』
少し抵抗していた連邦生徒会長だったが、抵抗が無意味と悟って流れに身を任せて運ばれていった先はまさかの森。
こんなところで何をするつもりだろうと連邦生徒会長が問おうとした瞬間、ミチルは『あ、そうだ。一応、念の為に…』と呟いてから連邦生徒会長のほうに振り返った。
『あの、さ。今まではあえて聞いてこなかったんだけど…忍者って、どう思ってる?』
『…はぁ、忍者…ですか。そうですね…』
忍者についてはドラマ程度でしか見たことはないし、わざわざ深く触れたこともないために今まではよくよく考えたことはなかったのだが、しかしその数少ない経験から連邦生徒会長は忍者についてはこう思っていた。
『今まではあまり考えてみたことはなかったのですが、しかし今考えてみるとかっこいいですよね。闇に紛れて秘密裏に主命を果たし、そしてよほどのことが無ければ主を裏切らない忠義の者達。…うーん、考えてみれば見るほどかっこいいですね。ちょっと憧れるかも…』
そう言いながらも案外SRTも似たようなものかもしれないなぁ、と連邦生徒会長がぼんやりと思いながらそう言った瞬間、場の空気が変わった。緊張感は悪い方向に花開くことはなく、どちらかと言えば和やかな方に。
『…! ツクヨ、イズナ! これは…!』
『は、はい!』
『つまり、そういうことですよね!』
『…どういうことでしょう…?』
連邦生徒会長が話の流れについていけずに首を傾げていると、ミチルたちは何処か輝いた目で彼女を見つめながら彼女たちのその視線の意味をやや興奮した様子で告げた。
『つまり同好の士…主は違えど目指す場所は同じ、ってこと! これからよろしくねー!』
『は、はぁ…。よくわからないですが、これからもよろしくお願いしますね』
という連邦生徒会長にとってはいまいちよくわからないことがあった後、その場は解散ということになった。その帰路の最中、連邦生徒会長はふと彼女たちの『目指す場所』についてを思い出す。
忍者という存在そのものを広める、あるいは忍者になる。
そこまで思い立ったところで、連邦生徒会長は先ほどまでの会話を思い出してふと足を止めた。
ちょっと憧れるという自身の発言。その瞬間にぱっと花開いた場の雰囲気。同行の士という言葉。彼女たちが目指す場所。
これらのことを総合した結果、彼女たちが突如としてテンションを上げた理由についての可能性に思い至った。
然るに、彼女らにとって連邦生徒会長は。
(もしかして私は忍者になりたいと思われているのでは…!?)
そう思った時にはもう遅い。既に百鬼夜行からは大分離れ、既に百鬼夜行の最寄りの駅についてしまった。今更百鬼夜行に戻るのは凄まじく時間がかかる。珍しく感情のままに魑魅一座を締めあげてしまったが、そもそも連邦生徒会長はサボ…無断視察している身。もう既に目立つ行動をしているので無意味かもしれないが、これ以上時間をかけた結果サボりがバレてリンに大目玉をくらうのは避けたい。なのでここで戻ることはせずに。
(…まぁ、特に大事にはならないでしょう。いち学園のいちサークルの話ですしね)
そんな現実逃避も兼ねた楽観的な考えと共にD.U.に戻って業務を再開し、そしてその翌日。
件のニュースを目にして冒頭に至るのだった。ちなみに目撃した生徒へのインタビューには『あれは間違いなく忍者です。キヴォトス中でもっとも忍者に詳しい私達が言っているのでそうです』という、明らかに忍術研究部の誰かが受けたであろうインタビューも載っていた。薄々察していたが、彼女らにとっては完全にそういうことになっているようだ。
「そもそも忍者ってそんな大々的に言うものかなぁ…もう少し影に潜むものなのでは…。…いやそんなことよりも、なんとか誤解を払拭する方法を考えないと…」
そう呟いた連邦生徒会長だったが、しかし外から聞こえる猛烈な足音に対して、このタイミングでかぁ…と言わんばかりの若干嫌そうな表情を見せた。しかしそんな表情を周りに見せるわけにもいかないので連邦生徒会長が表情を引き締めたと同時に、ばんと強引にドアを開けて会長室に踏み込んできたのは、まさかの先生であった。
「な、なにかありましたか?」
と連邦生徒会長が肩で息をする先生に問いかけてみれば、先生は瞳を輝かせてこう言い放つのだった。
「ニュース、見たよ! 実は忍者だったんだよね、分身とかできるの!? こう…気を手に留めてすごい技を繰り出すとか、そういうのできたり!?」
「できませんよ!?」
「でも忍者なんだよね!?」
「違いますよ!? っていうかその顔、シャーレからわざわざからかいに来ましたね!?」
「お願い! 分身だけでも見せて!」
「できませんってば!」
連邦生徒会長と先生はしばらくこういった言い合いをしていたが、連邦生徒会長側が折れることでようやく終結。色々な協議の末隠れ身の術にトライすることになり、その結果として。
「……声をかけてくれなかったらどこに行ったのかわからなくなったから、私からすれば成功したように見えたよ」
「…そうですか」
連邦生徒会長が行った「なにかしらの方法で隙を作り、その間に素早く隠れる」という即興の忍術のようなナニカがちゃんと機能してしまったらしく、しばらくの間連邦生徒会長は『自分ですら気づかなかったが、実は自分は忍者の末裔だったのかもしれない』という錯覚に悩まされた。
が、ミチルの動画撮影に引っ張り出されたりしたことを皮切りに色んな事に手を出した結果、最終的に錯覚は確信へと変わり、最終的にはミレニアムの手も借りて科学忍者という新たなポジションを確立して世間を大いに賑わせることになったのは、これよりもずっと未来の話である。