シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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書き溜めする予定でしたが我慢できないので投稿します。

相も変わらずにキャラの捏造、口調への違和感などはあると思いますが楽しんでいただければ幸いです。

この作品は、Pixiv様にも同様のものを投稿しております。


「私のミスでした…」アオイ「その2よ」

「私のミスでした…」

 

少女は沈痛な面持ちで俯く。その表情は悔しさを堪えるように、唇をきゅっと縛っている。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

「図々しいお願いですが、お願いします」

 

そこで一旦言葉を切ると、彼女は顔を上げた。その空のように青い瞳を潤ませ、他に選択肢は無いとばかりに眼前の『彼女』に懇願した。

 

「手心を加えてはいただけないでしょうか…!」

 

「え、えーっと…」

 

時は休憩中。モモカ、アユム、リン、アオイと共に大富豪に興じている最中。

連邦生徒会長…直属の上司にそう言われ、カードを握っているアユムはおろおろしていた。

そんな二人の光景を見て、モモカは容赦のないツッコミを入れる。

 

「いや大富豪に手心もなにもないでしょ。アユム先輩、やっちゃっていいよ」

 

「うん…! あがりです、会長!」

 

ハートの9が一枚場に出され、アユムはゲームからあがった。貧民である。

そうしてこの瞬間に連邦生徒会長は大貧民と言うことが確定し、彼女は手元にあるスペードの5を忌々しげに睨みつけた後、机に勢いよく突っ伏して中々聞けない悲しみに満ちた声を上げた。

 

「あーっ、また負けちゃいましたぁ!」

 

「これでみっつめだね。ご馳走様、会長」

 

現大富豪こと由良木モモカは極めて楽しそうに皮肉を飛ばす。

ちなみにみっつめ、ご馳走様というのは、今回の大富豪がただの大富豪ではなく賭け大富豪であることに起因している。ただし賭けているのは飲み物あるいはお菓子の奢り。流石に連邦生徒会がお金を賭けるわけにはいかないのだ。

 

「それにしても外交や政治については極めて優秀なのに何故カードゲームではここまで弱いのかしら、会長は」

 

現平民・扇喜アオイは心底不思議そうに呟いた。

それに対しての答えは現富豪・七神リンが割とどうでもよさそうに答えた。ちなみにこう見えてゲーム中ポーカーフェイスながら結構エキサイトしていた。後輩と遊ぶのが意外と楽しかったらしい。

 

「簡単なことですよ、アオイ。間が悪いのです」

 

「間が…?」

 

「えぇ。会長の手札が基本的に弱く、そしてそのまま進行しがちなのです」

 

「…なるほど」

 

「…まぁ、そう仕向けている人がいるのですけれどね」

 

そう言ってリンはちらりと満足そうに笑っているモモカを見た。つられてアオイは彼女の方を見る。

 

「…まさかと思うのだけれど、イカサマしてるのかしら? そんな素振りはなかったけれど…」

 

「いえ、あれはただの運と実力でしょう。モモカは私達のなかで一番こういったものに慣れていますから」

 

そう、モモカは未だに一度も都落ちをした事がないまま3回ものゲームを勝利している。

リンとアオイはよく富豪争いをしているし、その二人の内負けた方はアユムと平民争いをしていた。

立っている位置こそ逆ではあるが、モモカと連邦生徒会長のみが立ち位置が一度も変わっていないし変わる気配もないのだ。

 

「ちなみに、ですが。イカサマしているのは寧ろ…」

 

そう言ったあと、今度はじとりとした視線を未だに突っ伏している連邦生徒会長に向けるリン。

 

「…えっ」

 

「あら、気づいていなかったのですか。正直意外ですね、貴方ならすぐ気づくと思っていましたが」

 

心底意外そうに呟いたリンに少しむっとしながらアオイは気になったところを彼女に指摘した。

 

「…その割にはずっと負けっぱなしのようだけれど」

 

「あぁ、違いますよ。会長は自分が有利になるイカサマをしているのではなく、その逆です」

 

逆…ということは、つまり。

 

「自分が不利になるイカサマ…ということ?」

 

「えぇ。私たちを楽しませ、同時に労う為にわざと負け続けているのでしょう」

 

全力で勝負しないという姿勢については少し頭に来ますが、とリンは続けたのちに電話がかかってきたので席を外していった。

そんな彼女の後ろ姿を見送ったあと、未だに机に突っ伏している連邦生徒会長に視線を戻した。傍からみればかなり情けない姿だが、しかしその過程は人の上に立つものとして見習うべきところが多々ある。そう思いながら、扇喜アオイは小さく微笑んだ。

 

 

 

と、ここまでならばいい話の範疇で収まるのだが。

リンやアオイ、そしてイカサマに気づいていて黙っていたモモカには致命的な勘違いがあった。

いつも多忙なリンたちを楽しませ、同時に労う為にこの大富豪を突如として開催して自分が不利になるようにイカサマを仕掛けた。そこは紛れもない事実である。

 

致命的な勘違いとは、わざと負け続けているという部分。

 

連邦生徒会長は今回、実は常に全力投球であった。イカサマを仕掛けたのは自分が不利な手札をあえて作るため。そしてその理由はというと。

 

そんな不利な状況からあっさりと勝利して、やっぱり連邦生徒会長はすごい! と言われたかっただけである。

 

が、しかしその思惑と実際の結果は全く異なりまさかの全敗。すごいどころか仕方ないなぁこの人はという印象をアユム以外の他の役員に与えるだけの結果に終わった。

とはいえ、である。

忙しい連邦生徒会の息抜きにと開催し、そしてそれが功を奏したのならばそれはそれでよかった。

こちらを見ながら微笑むアオイを机に突っ伏しながらも横目で見ながら、談笑するモモカとアユムの話を聞きながら、そしてリンが戻ってくる足音を聞いて連邦生徒会長は室長たちに見えないようにしながら小さく笑った。

彼女らの様子を確認して小細工をするのが馬鹿らしくなって次は本気でやろうと思い、リンが着席すると同時に顔を上げて。

 

「4度目の正直です! 今度こそ負けませんから、覚悟してくださいね!」

 

笑顔でそう言った。今度はここに居ない室長たちと何かしたいなぁ、と思いながらカードの山を切って配っていく。

少女たちの休憩は、こうして和気藹々と過ぎていった。

 

なお、連邦生徒会長は最後まで一勝もできずに大貧民であった。連邦生徒会長は自覚していないが彼女は政治などが絡まない、シンプルに楽しむためにカードゲームをプレイするとびっくりするほど弱かったのである。

賭けの代償の出費はいろいろかさんで2000クレジットを超えたという。

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