シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。クリスマスなので投稿します。

今回は比較的しっとり目の仕上がりになりました。コメディのはずなんだけどなぁ…。

この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」シロコ*テラー「ん…その20…」

「私のミスでした…」

 

少女は俯き、唇を震わせそう呟く。哀しみと悔しさが入り混じり、その表情は筆舌に尽くしがたい。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

そう言ってこのシーズンにぴったりの赤い格好をして白い袋を傍に置き、正座させられている少女──連邦生徒会長は眼前に座るその人物たちをちら、と見た後、ぼそっと呟いた。

 

「……まさかプレナ先生ともう一人のシロコさんがまだ起きていたとは…」

 

眼前に座るその人物の一人──プレナパテスはそんな彼女にどんな感情を抱いているのかよくわからない視線を送り、その隣に座るシロコ*テラーはとてつもなく呆れた表情を浮かべていた。

何故こんなことになったのかと言えば、すべては連邦生徒会長の奇行が原因である。

その奇行とは。

 

「…まさか連邦生徒会長がサンタさんだったなんて…」

 

『否定。連邦生徒会長は不法侵入してプレゼントを置きに来ただけで、本物のサンタさんではないと判断します』

 

そう、連邦生徒会長は深夜にプレナパテス宅に不法侵入し、眠っているプレナパテスにプレゼントを置いて去るというサンタ作戦(連邦生徒会長命名)を計画・実行。

不法侵入までは上手く行ったが、しかしプレナパテスが未だ起きていたため仕方ないのでプレナパテス宅に潜伏しようと思ったらシロコ*テラーが想定外の滞在をしており、彼女に発見されたことが原因で逃走するもまんまと捕獲されて現在に至るのだった。

 

「むぅ…。ユメ先生の時には上手くいったのに…」

 

「…確かに気付かなさそうだけど、まさか既に実行済みなんて…」

 

反省していない上に前科を自白する連邦生徒会長にシロコ*テラーが驚愕の意を示す。

プレナパテスも『そうなんだ…』みたいな表情をすると共にどこか和やかな空気感が流れる中、プラナが待ったをかけるように『話を戻しましょう』とその和やかな空気を元の微妙に張り詰めた空気に戻した。シロコ*テラーやプレナパテスが「あ、忘れてた」と言わんばかりの表情を見せると同時に連邦生徒会長は「しまった、話を戻されてしまった…」と苦い顔を見せたあたり、どうやら和やかな雰囲気のまま誤魔化す算段だったらしいが、その目論見はあっさりと崩れ去るのだった。

 

「…先生は鍵をかけてたのにどうやって玄関から開けたの? もしかして、合鍵をもらって…?」

 

私だって合鍵貰ってないのに、連邦生徒会長には鍵を渡したんだね…とプレナパテスに黒いオーラを出しているように見えるほど恨めし気な表情を見せるシロコ*テラー。そんな彼女の顔を見てプレナパテスはぶんぶんと否定するように顔と腕を振り続ける。

 

「…じゃあ、連邦生徒会長はどうやって先生の部屋に?」

 

「えーっと、ですね…」

 

どうなの? というプレナパテスの視線を受け、そして連邦生徒会長は無言で視線を逸らす。そんな彼女をシロコ*テラーが無言で身体検査し始めると、通常のピッキングツール2本と自動ピッキングツール、それと針金が5本ほど押収された。

『思ったよりもガチなのが来たな…』とプレナパテスが呆れを通り越して感心していると、シロコ*テラーは連邦生徒会長をしばし無言で見つめ。

 

「…これって金庫とか開けられる?」

 

と不意に問いかけてきた。プレナパテスが『何に使う気…!?』と驚愕の視線を送るが、しかし彼女は意に介さない。

どう答えるか悩んだ様子の連邦生徒会長だったが、「まぁ…他の道具と併せれば理論上は…」と渋々ながら肯定すると。

 

「…ん、私のクリスマスプレゼントはこれでいいかな。あとで買いに行こう」

 

と自動ピッキングツールを指差してあっけからんと言い放った。

 

「この後の先生宅には針金と普通のピッキングツールだけで十分ですから欲しいのならこの場で譲りますよ。ただ、ですね…」

 

『確認。シロコさんは何に使うつもりですか』

 

「…内緒。だけど、基本的に強盗には使わないとは言っておくね。…やったらホシノ先輩にたくさん怒られるし…」

 

最後の方になるにつれて耳をぺたん、と倒していき戦々恐々の様子になっていくシロコ*テラー。口ではあぁ言ってるけど、基本的にとか言ってる辺り多分あれは強盗も視野には入れてるな…とその場の誰もが思ったが、当のシロコ*テラー本人が連邦生徒会長から譲ってもらった自動ピッキングツールを満足気に撫でているのを見て『まぁ本人が良いならいいか…』と口に出すのはやめた。

そんな微妙な空気感が流れる中、プラナはふと連邦生徒会長に問いかけた。

 

『疑問。そもそも連邦生徒会長は何故こんなことを?』

 

「私達はいつも先生達にもらってばかりですから、たまには何かお返ししたくなるのはおかしくはないでしょう?

…その出力がおかしいと言われれば、まぁ否定はできませんけど…」

 

連邦生徒会長は「当たり前です」とでも言いたげに、得意気な顔をするでもなくただ普通に、いつも通りの言い方でそう返答した。

シロコ*テラーもプレナパテスもそんな彼女に驚いたような視線を向け、それを受けてなお連邦生徒会長は更にこう続ける。

 

「それに、ここにいる中で私以外の方たちは私達の想像を絶する苦痛と苦悩の中にいたのですから。この平和な時間を少しでも楽しんでほしいんです」

 

「……ん。ありがとう」

 

『感謝します、連邦生徒会長』

 

「私達を受け入れてくれて、本当にありがとう」

 

三人が連邦生徒会長に感謝の意を伝えると、連邦生徒会長もまた微笑みを返しながらも、

 

「いえいえ、意見を押し通したのは先生たちですから。私はただ、その意思を汲んだだけですよ」

 

と手をひらひらと動かしながら三人の感謝を受け流す。それでもまだプレナパテス達は感謝をしきれないとばかりにお礼を言おうとするが、その前に連邦生徒会長は「さて、と…」と言ってから傍の白い袋をごそごそと漁り始める。

そして、その数秒の後。

 

「メリークリスマスです、皆さん。本当は枕元に置きたかったですけど…どうぞ。…あ、こっちはシロコさんにプレナ先生を通して本来渡す予定だったやつで、こっちはプラナちゃんに」

 

そう言いながら、連邦生徒会長は三人にそれぞれプレゼントを渡す。

シロコ*テラーにはそれなりに大きな赤いラッピングの物品、プレナパテスとプラナには小さな赤いラッピングの箱がそれぞれ手渡された。

 

「ん…こんなにもらっちゃって、いいの?」

 

「ピッキングツールは本来想定していたものじゃないんですけどね…」

 

連邦生徒会長の苦笑混じりの一言を華麗に無視しながら「開けていい?」と視線で訴えてきたシロコ*テラーに連邦生徒会長は首肯すると、彼女は無言で贈り物を開封。中からはライディングスーツが出てきた。

 

「あ…これ…」

 

「ふふ、先生に聞きましたよ。なんでもスーツが入らなかったとか。なので、贈らせていただきました。サイズは目測ですが…近いスタイルの生徒にも協力してもらったのでまぁ大丈夫でしょう」

 

「…うん、ありがとう。大事に着るね」

 

そう言いながら、ライディングスーツをぎゅっと胸元に抱きしめるシロコ*テラー。その手には自動ピッキングツールが握られており明らかにミスマッチであるが、誰もそれには突っ込まなかった。

連邦生徒会長がその様子に苦笑しながら見ていると、横からプラナが話しかけてきた。プレナパテスが開封してくれたプラナ用のプレゼントを見たらしい。

 

『連邦生徒会長、これは一体…?』

 

プレナパテスの手の中にあるのは、何の変哲もないもののとても綺麗な発色の水色と白色の髪留め。

 

「あぁ、それですか。ふふ、今言ってもいいですけど…。詳細は明日まで取っておきましょう」

 

『…? よくわかりませんが、ひとまず了解しました。ありがとうございます、連邦生徒会長』

 

きょとんとしながら首を傾げつつも礼を言うプラナに対し、不敵な笑みを浮かべる連邦生徒会長。実は、これは後々先生のところに置いてくる予定のアロナ用のプレゼントである黒色と赤色の髪留めと色違いかつお揃いなのである。

その意図に気づいたプレナパテスと連邦生徒会長の視線が交わり、二人はにやりと口角をあげた。

 

「…先生は何をもらったのか、気になる」

 

『同意します。勿論無理にとは言いませんが』

 

そんな二人の懇願を受けて、プレナパテスは苦笑しながらプレゼントの包みを開いていく。

中から出てきたのは。

 

「…腕時計?」

 

『驚愕。かなりいい時計です。連邦生徒会長、何故これを?』

 

「恥ずかしながら、贈り物をするのを決めたのはいいのですがプレナ先生にはどういったものを贈れば喜んでもらえるのかわからなくて。プレナ先生のについては私のエゴで決めさせてもらいました」

 

苦笑しながら、連邦生徒会長はその心境を更に話し続ける。連邦生徒会長として、そして一人の人間として。祈るように、穏やかに。

 

「これからもプラナちゃんともう一人のシロコさんと、そしてこのキヴォトスの皆と一緒に、できれば穏やかな時間を歩んで欲しいなと願いながら選ばせていただきました。もしデザインが気に入らなかったらインテリアにでもしてください」

 

そう連邦生徒会長が言うと、プレナパテスは即座に腕に時計を通して『似合う?』とばかりに腕時計を連邦生徒会長に見せつけて。

 

「…うん。君の気持ち、確かに受け取ったよ」

 

とそのまま未だ正座している連邦生徒会長の頭を優しく撫でた。頭を撫でられるとは思っていなかった連邦生徒会長はその一連の流れに思わず唖然としていたが、しかしプレナパテスの手を受け入れて恥ずかしげに微笑む。

 

「…ん、連邦生徒会長ばかりずるい。先生、私もお願い」

 

『それが終わったら私にもお願いします、先生』

 

プレナパテスとともにやってきた生徒達が、元の世界でやっていたであろうやり取りをこの場で行い始めてプレナパテスはちょっと焦り始めた。

そんな三人のやりとりを微笑みながら、

 

「ふふ、先生の生徒達がそう言っていますよ? 私はもう満足しましたから、構ってあげてください」

 

と連邦生徒会長がそう言いながら次の目的地たる先生の自宅へとお暇しようと立ち上がったその刹那。

 

「──うぐっ」

 

彼女は目を見開いて苦悶の声を上げて蹲る。一体何があったとその場の皆が連邦生徒会長の方を見やるが、彼女は。

 

「足が、痺れました…! み、皆さん…助けて…!」

 

と手を伸ばし、皆に助けを求めた。

数分の後、プレナパテス達の介抱の末連邦生徒会長は無事復活。先生の自宅へとその足で向かい、ピッキングで鍵を開けてプレゼントを置いたまではよかったが、そのタイミングで起きた先生に見つかって無事に説教を小一時間受けることになってしまったのだった。





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