シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

22 / 63
どうも。新年なので投稿します。

このお話には独自設定が組み込まれています。

この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」アユム「その21ですっ!」

「私のミスでした…」

 

少女ははぁ…とかなり深い溜息をついてそう呟く。彼女は着物を着ているが、今のその立ち振舞いには雅さの欠片もない。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

その少女は未だ整わない息をなんとか整えようとしながら、自分の判断の甘さを嘆いた。

そして、彼女は天を仰いで。

 

「…ま、まさか皆が甘酒でここまで酔っ払うとは…」

 

少女──連邦生徒会長は先程起こった出来事を思い返しながら、死ぬかと思った…とばかりに息を吐き出した。

事の始まりは数時間前。連邦生徒会長はリンやアユム、モモカにアオイといったいつものメンバーとともに初詣のために待ち合わせをしていた。

一応ほかのメンバーにも声はかけたのだが、何故か引きつった顔で断られてしまった。何故そんな反応なのかちょっと気になるところではあったが、断られてしまったのなら無理強いをするのも違うと思い結局このメンバーだけで集まることになったのである。

新年なので皆着物を着たりとおめかししているため、いつもよりも華やかである。

 

『あけましておめでとうございます。ふふ、今年も皆さん頑張りましょうね』

 

連邦生徒会長は集まった皆に一礼。それと同じく、集まった皆もまた『よろしくお願いします』と頭を下げた。

そして、その数秒後に皆が頭を上げたのを確認して。

 

『…さて! 業務的な挨拶はここまでにして、そろそろ出発しましょう!』

 

『皆は今年何か目標とかあるのかしら?』『会長のサボりを一回でも多く阻止する事ですね』『名指しされてるじゃん』などとりとめのない会話をしながら、 集まった皆は神社に向けて足を運ぶ。

そして神社に着き、参拝したりお守りを購入したりと新年の始まりらしいことを色々やったのだが、しかしこの時点でもまだ誰も事件が起きるとは思っていない。

予兆があったかと言われれば、事が終わった今ならあったと言えるかもしれない。おそらくは、このおみくじの結果もそうだったのだろう。

 

『会長、おみくじの結果どうだったー?』

 

『あぁモモカちゃん…。幸先が悪い結果でした…』

 

そう言った連邦生徒会長は、駆け寄ってきたモモカ達に先ほど引いたおみくじを見せる。

 

『あら…。『大凶』ね。珍しいものを見たわ』

 

『ふふ、逆にレアじゃんこれ。神社にもよるけど、基本的には末吉よりちょっと多いくらいしか入ってないって聞くからね』

 

『むぅ…。こんな希少性はいらないのですけれど…』

 

『だ、大丈夫ですよ、会長! これからきっと良いことがありますから!』

 

『そういうことを言ってくれるのはアユムちゃんだけですよぉ〜…』

 

そう言いながら連邦生徒会長はアユムに抱きついて頬ずりし始める。『あわわ…』と慌てながら翼と腕で連邦生徒会長をやさしく抱きしめ返すアユムをよそに、リンは連邦生徒会長に静かに追い打ちをかけた。

 

『仕事は…おや、『気苦労が絶えない』だそうですよ。これはサボっている暇はなさそうですね』

 

『む。こう見えて私はいつも気苦労が絶えないんだよ? サボってるように見えて、各自地区のトレンドやら様子やら確認してるんだからね』

 

連邦生徒会長の反論を『そういうことにしておきましょう』と雑に打ち返すリン。だがしかし、そんな彼女もまた今回の騒動を引き起こしてしまうことになるとは、この時はまだ誰も思ってはいなかった。

話を戻すが、最後に甘酒でも飲んで今日は解散しようという雰囲気になったのだが。

問題はこのタイミングで発生したのだった。

 

『さて、皆さん。そろそろお暇しましょうか。…皆さん?』

 

甘酒を飲み干した連邦生徒会長が皆に声をかけたところ、返事が返ってこない。それを訝しんだ連邦生徒会長が振り返ると、そこにはアユムがおろおろしながら連邦生徒会長に助けを求めていた。

 

『か、会長〜…! み、皆さんがぁ…!』

 

何があったと現状を認識してしまった瞬間、連邦生徒会長は新年早々頭と胃を痛めた。

何故なら、そこには。

 

『……アユムぅ、きいていますかぁ…? あにゃたはじぶんが思っているよりもずっとゆうしゅーなのですからぁ、じしんをぉ、持ちなさいぃ…』

 

『ふ、ふふふ…。リンせんぱい、いつからそんなおもしろいメガネのかけかたをしてたんでしゅか? あ、あら? あゆみゅ、つばしゃが…ふ、ふふ、ふふふふふ…!』

 

『んー…すぴー…』

 

絡み酒の酔っ払い1名、爆笑し続ける酔っ払い1名、境内で眠る酔っ払い1名が爆誕していたのだから。

…他人のふりをしてこのまま帰りたい。連邦生徒会長は正直そう思ったが、しかしリンにひっつかれておろおろしているアユムの為にもこのまま放っておくわけにもいかない。

取り敢えず連邦生徒会長は眠っているモモカを起こそうとペチペチと頬を叩いたりむにっとつまんだりしてみたが、しかし起きる気配はない。

迷惑ではあるが、他の二人に比べればまだマシなので一旦放置することにした。

 

『…あら、かいちょぉー…。しょるいは、じゅんちょーですか…?』

 

『リンちゃーん、ここ神社だし今日は業務は休みだよー。ほら、周りの人に迷惑だしなによりアユムちゃんが困ってるから離れて離れて』

 

『ふ、ふふ、ふふふふ…! か、かいちょぉ、どうしたの、そんな…ふふ、そんな、おもしろいかっこぉしてぇ…! ふふ、うふふふふ…!』

 

『アオイちゃんも、笑うのはいいけど周りに迷惑かけちゃいけませんよ。もうちょっと声を抑えてください。ね?』

 

『ふふ、ふふふ…! えぇ、えぇ。どりょくはする、けれど…。…ふふ、ふふふ…! だ、だめ…! かいちょぉ、なんれ…! なんれエビフライをかぶってるのぉ…!』

 

『アオイちゃんにはどう見えてるんですか…』

 

若干げんなりし始めながら、連邦生徒会長は取り敢えずアユムにひっついて離れようともしないリンを引き剥がそうとしたが、しかし連邦生徒会長は何故かそのリンにがしっと腕を掴まれた。何で? と思った連邦生徒会長が彼女の方を見ると、彼女の瞳は怒りに燃えていた。顔を赤らめて焦点が微妙にあっていないこと以外は、いつも通りに。

 

『かいちょぉ…。つかまえました、よぉ…! きょぉというきょぉはぁ…ゆるしま、せん!』

 

『ちょっ、えっ? リンちゃん? 一旦離して…ち、力強っ!? 全然離れないんですけど!? あ、アユムちゃん! 助けてください!』

 

連邦生徒会長はリンが離れて身体の自由が利くようになったアユムに助けを求めるも、そのアユムは爆笑の末腹を抱えて死にそうになっているアオイの介抱に忙しく、申し訳なさそうな表情を浮かべでいたためそれ以上は頼むのは難しかった。

その間もリンは連邦生徒会長に向けて説教を垂れ流し続けている。

 

『かいちょぉはぁ、ごじぶんのたちばをなんだとおもってるのですかぁ!』

 

『サボったのは謝るから! 一旦落ち着こう!? ね!?』

 

『いいれすか、そもそもれすねぇ…!』

 

から始まり、実に数十分ほど連邦生徒会長は酔っ払いに説教を受けた。最初の方は時々反論していたが、しかし段々面倒くさくなって『はぁい…』とテキトーに返事をし始め、そして。

 

『…ふぁぁぁ…。かいちょおもはんせーしたようですし、わたしはもぅやすみます…。いいれすか、まわりに、めいわくをかけては…』

 

立ったまま寝始めようとするリンを連邦生徒会長はなんとか抱きとめ、そして。

 

『や、やっと寝た…!』

 

リンがようやく眠ったことを確認して連邦生徒会長は周囲に謝り倒した後にリンとモモカを、アユムが笑い疲れて眠ってしまったアオイをそれぞれ回収して神社から速やかに脱出し、その後先生が念の為にと開けてくれていたシャーレに駆け込んだあとに冒頭に繋がるのだった。

 

「おつかれさま。新年早々大変だったね」

 

「はい…。まさかリンちゃん達がここまでお酒に弱いとは思ってませんでしたよ…」

 

「私もです…。それに、酔い方も意外でしたし…」

 

疲れた様子のアユムもそういった感想を漏らしていたあたり三人の酒癖には大分困っていたらしい。翼もこころなしか、しゅんと垂れ下がっている…ように見える。

 

「そうですねぇ…。まさかリンちゃんが絡み酒…というのでしょうか。そんな感じの酔い方をするとは思いませんでしたよね、アユムちゃん」

 

「はい…。アオイさんの爆笑っぷりも凄かったですし…」

 

「相対的にモモカちゃんが一番マシでしたね…。ただ寝てるだけでしたし」

 

「道のど真ん中で寝ようとするのもどうかとは思うけどね、私は」

 

先生の正論に連邦生徒会長とアユムは思わず苦笑しながら酔っ払い達に目をやると、彼女達は変わらず「すぅ…すぅ…」と規則正しい呼吸をしながら眠りについており、起きる気配はまるで無かった。

 

「それにしても、皆が顔を引き攣らせながら断ってきた理由がようやくわかりましたよ…。わかってたら私も甘酒を飲ませなかったですし…」

 

「皆なんらかの件で酒癖の悪さを知ってたんじゃないでしょうか…。だから皆会長を避けていた、とか…」

 

「…そういえば昨年の会食で色々あったってハイネ室長がぼやいてましたね…」

 

「あれ、君は参加してなかったんだ?」

 

連邦生徒会長がどこか遠い目をしながら呟くと、先生は心底意外そうにに目を丸くした。

連邦生徒会長といえば楽しいことが大好きであり、祭りと聞けば業務を放り投げてでも参加することが多々あるし、それでも参加できなかったときはいじけたりへこんだりすることもあるのだから、先生の疑問も尤もである。

そんな先生の疑問には、アユムが答えた。

 

「会長も私も昨年の会食の時は流行の風邪で熱を出して寝込んでましたので…」

 

「あぁ、それは仕方ないね…」

 

「一部の役員が暴れて大変だった、なんて言ってましたけど…。その一部の役員がまさかリンちゃんとアオイちゃんだなんて思わないじゃないですか…。復帰して早々方々に頭を下げて回る羽目にもなりましたし…やらかしたのはカヤ室長あたりだと思うじゃないですか…。というかなんなんですかあの流行り病、私が半年近く粘ってようやく予約できて楽しみにしてたお店なのにあのタイミングで流行って…。デカグラマトンもゲマトリアもプレナ先生が来てくれてからこの季節に暴れまわるのをようやくやめて大人しくなったし、三日前くらいに美食研究会も確保されて昨年こそはゆっくりできると思ったのに…。…あれのせいで昨年の限定メニューは結局食べ損ねたじゃないですか…」

 

ぼやきが止まらない連邦生徒会長だったが、しかしそのまま放置していたら止まらないと判断された先生達にストップをかけられてようやくぼやくのをやめた。

彼女はストップをかけられたあと、不本意そうな顔で静かにため息を吐き出して。

 

「…なにはともあれ、先生。今年もリンちゃん達共々、よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします…!」

 

「あぁ、うん…。よろしくね…」

 

連邦生徒会長の新年最初の『気苦労』は、こうして幕を閉じる──ことはなかった。

新年の挨拶が終わりリン達を仮眠室に放り込んで、街に繰り出し開催されていた福引を気晴らしに回してみたところ。

 

「取っ手が壊れた…!?」

 

「か、会長! 壊したらダメですよ…!」

 

「これは事故ですからね!? 流石に故意じゃないですって!」

 

「あっ、玉が出てきたよ!? 玉の色は…」

 

「「「漆黒…!?」」」

 

「クックック…おめでとうございます…。漆黒を出した貴方には…おや、これは先生。奇遇ですね、明けましておめでとうございます」

 

「「「………!!!???」」」

 

裏で控えていたマエストロによってその場で作られた無駄に精巧な先生の木像(塗装済み)をサービス精神旺盛な黒服によって一人ひとつずつ押し付けられたり。

あるいは、福袋を購入してみたところ。

 

「………先生、これなんですかね?」

 

「……君もシャーレ職員になれるセット…? えっナニコレ…? コスプレ用品…? 私これ知らないんだけど…?」

 

「……あの、お二人とも…。こ、これ…見て下さい…」

 

「「…1/1戦闘機能付きアバンギャルド君作製キット…!?」」

 

なんかよくわからない物品の数々が各々の手に渡ったり。

3人でお正月にありがちなことを一通りやってみた結果その尽くが妙な結果になった。

その合間に三人が今回の散策の成果を手に公園のベンチで休憩している中、連邦生徒会長は散策の感想をぼそりと呟いた。

 

「やっぱり…キヴォトスって何か変ですよね…」

 

連邦生徒会長のその言葉に、先生もアユムも力なく頷くのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。