シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。ブルアカ4周年ということなので投稿します。

この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。


「私のミスでした…」先生「その26だよ。これからもよろしくね」

「私のミスでした…」

 

がたんごとんと揺れる、自分と眼前の人間しか乗っていない列車の中で少女は光を背に悔いを滲ませながらうつむく。その顔色は悪く、また唇を噛んで力不足を嘆いているように見える。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るなんて…」

 

少女──連邦生徒会長は向かいに座る、彼女が信頼できる『大人』の返答を待たずにひたすら話し続ける。悔しげだった彼女の表情も『大人』と話すときはどこか安心しているようで、先ほどまでとは違いどこか安心した表情で微笑みさえ浮かんでいる。

 

「今更図々しいお願いですが、お願いします。…きっと私の話は──」

 

「ちょっ…ちょーっと待ってね、話の途中でごめんね?」

 

連邦生徒会長の言葉を遮って、心底申し訳なさそうに『大人』──先生は話を切り出す。安らかな微笑みを浮かべる連邦生徒会長とは対照的に、先生の表情は若干の焦りを滲ませて口元をものすごく引きつらせている。

こほん、と一つ咳ばらいをしてから先生は。

 

「…今生の別れみたいな空気出してるけど、これ電車の中で二人揃って爆睡してたら目的の駅を思いっきり寝過ごして終点一つ前で起きただけだからね!? 断じてシリアスな話じゃないよ!?」

 

と現状をわかりやすく突きつけてきたのだった。

そう、二人は別に終わりを迎えた世界で黄昏ていたわけでもなく、また自己犠牲的に世界を救おうとかいう理由もなく、ただただ徹夜明けで電車の中でうっかり眠ってしまって目的の駅を寝過ごしてしまった、というだけの話である。

先生のそんな訂正を受けて連邦生徒会長は目を丸くしたあと、ゆっくりと口を開いて──。

 

「責任を負う者について、話したことがありましたよね」

 

「無視!? 現実逃避はよくないよ!?」

 

あくまでも『世界は終わりました』とでも言わんばかりに重々しく語る連邦生徒会長に、先生は現実に戻るよう根気強く説得を続け、そして。

 

「現実を突きつけるのはやめてください! いいじゃないですか、たまには現実逃避をしたって! どうすんですかこれ!? 真っ直ぐ路線の終着駅へと向かっているじゃないですか!」

 

シリアスムードを維持できなかった連邦生徒会長はとうとう焦りを隠さずにキレた。それもそのはず、連邦生徒会長と先生は二人揃ってとあるパーティに思いっきり遅刻しているのだから。

そのとあるパーティとは、連邦生徒会主催のシャーレへの感謝を込めたパーティのことである。

連邦生徒会をはじめ、各学園でシャーレにお世話になった生徒たちやこういったお祭りごとに明るい生徒たちが主体になって入念に準備し、学園間の因縁などをすべて脇においてキヴォトスの皆で楽しもう、という企画のパーティが本日行われる。…のだが、それに絶賛大遅刻中。

しかも先生は主役で出席、連邦生徒会長はパーティの挨拶をすることになっていたのにも関わらず、である。

 

「どうしましょう本当!? 企画立ち上げておいて遅刻ってどういう神経してるんだって絶対思われてますよね!?」

 

「だからあまり根を詰めすぎないで、って言ったでしょ!?」

 

「お説教はこのめちゃくちゃ忙しい時に仕事を作ってくれた問題児の皆さんにしてくれませんか!? あと私とこうやって言い合ってる時点で先生も遅刻してますからね!? 人のことあんまり強く言えませんよ!?」

 

そもそも何故この二人が電車に乗った挙句爆睡する羽目になったのかと言えば、どこぞの学園の生徒がやらかしたテロ行為の後始末の為である。人的被害は奇跡的になかったものの、周辺に停電が起きたり水道管がものの見事に吹き飛んだりと書面で見ても甚大な被害が起きたため前日から激務をこなして徹夜をしていたにもかかわらず一応現場を見ておこうという連邦生徒会長に、同じくほぼ完徹なのに連邦生徒会長を心配した先生が半ば無理やりついていったのがたった数時間前のこと。

そこから数時間後、テロ現場で被害状況や規模などを見聞した後に二人は再び電車に乗り込み、そこで運よく席に座れたのだが…それがまずかった。座ったあと薄っすら眠気がやってきて、そして二人はそれに無事敗北。

その結果が今の状況なのであった。

 

閑話休題。一通り騒ぎまくった連邦生徒会長はふぅ、と冷静になるため一度深呼吸。そしてこの後どうするか、先生とともに話し合いをする姿勢に入った。その瞳には焦りの色は…無いわけではないが、先ほど騒ぎまくっていた時よりは大分薄くなっている。

 

「いえ、リカバリーから始めましょう。まずは状況をみんなに説明して、反省している旨を…」

 

そう言いながらスマホを取り出してモモトークを開く連邦生徒会長。まず目についたのはかなりの数の未読通知。それに軽く眩暈を覚えながらも中身を見るとそのほとんどはリンを始めとする連邦生徒会のメンバーからで、最初は『さぼってないでさっさと来い』(意訳)というメッセージだったのだが、画面をスクロールしていくと『何かあった!? もしかしてテロに巻き込まれた!?』『お願いだから返事して!』(意訳)とだんだん文面の深刻度が増していった為、連邦生徒会長は無言で天を仰いだ。ここで『うっかり寝過ごしちゃいました、えへっ♡』なんてメッセージを送った結果どうなるかは目に見えている。

だがしかし送らなければそれはそれで更に大事にもなるし、信用問題に発展するといったまた別の問題になるだろう。連邦生徒会長が無言のまますこぶる憂鬱な面持ちで天を仰いでいると、

 

「…伝えた方がいいと思うよ。とりあえず電車内だから今はメッセージで、それから電車を降りた後に電話してさ」

 

と先生が落ち着き払った様子で連邦生徒会長に勧める。その瞳はどこか諦観に満ちている。

 

「…助言、感謝します。ところで先生は…」

 

「もうメッセージを送ったよ。梔子先生とプレナ先生に文章上で死ぬほど怒られた上、電車から降りたら必ず電話しろって強めに言われてるんだ。もし忘れてたらアロナが教えてくれるって」

 

死んだ目で「ははっ」と乾いた笑い声をあげる先生。その姿は数分後の自分自身の姿なんだなと思いながら、連邦生徒会長は大人しく連邦生徒会のグループに『自分は無事だが、電車内で寝過ごしたため遅刻します。あとでめちゃくちゃ謝るから会場の皆に謝っといてください』という旨のメッセージを送信。その直後、既読が数件ついた後にリンから『ご無事でなによりです』とメッセージが送られた後、『それはそれとして後でお話があります』とある意味怖いメッセージが送られてきた。

ちら、と先生を見ると彼は優しい微笑みを浮かべてこくり、と頷いた。それと同時に、電車が止まり扉が開く。どうやら終着駅にたどり着いたらしい。

 

「…着きましたね、先生」

 

「うん…そうだね…」

 

連邦生徒会長と先生は駅のホームへと降り立った。二人はそこでまずスマホを取り出し、それぞれ電話をかけた。

連邦生徒会長のほうは電話をかけてわずか数秒で『その件は後でしっかり話し合いましょうね』と通話終了したのだが、先生のほうは十数分ずっと電話をしており、しっかり怒られたのか通話が終わった後はしょんぼりとしていた。

通話を終えて二人は若干しゅんと落ち込んだ視線を交錯し、やがて。

 

「…帰りましょう。私たちの、いつもの日常がある場所へ」

 

とぼとぼと反対のホームへと続く通路を歩いていくのだった。

 

その後、二人がパーティについた時にはパーティは終盤も終盤。連邦生徒会長と先生はプレナパテスをはじめシャーレや連邦生徒会、それから来てくれた生徒達にもめちゃくちゃ怒られながらも温かく迎えられた。お詫びの見世物として先生と連邦生徒会長は二人で誰の目も引く見事な社交ダンスを踊り、そしてその功績をもってなんとなく許される雰囲気でパーティは終わりを迎えた。

が、なんとなく許される雰囲気で終わったが別に許されたというわけではなく、パーティ終了後に改めて二人はその場で三時間をかけてしっかり怒られ、そして更にその後二日の間五時間ずつみっちり怒られたのだった。




実を言うと私はブルアカを始めて一年経っていませんが、そんな私でもブルーアーカイブという作品に出会えてよかったと思っています。
NEXON様やYostar様、そしてキム・ヨンハ統括Pをはじめ関わったすべての方々への、私なりの最大の感謝をここハーメルン様とPixiv様に勝手に置いておきます。

改めまして、4周年おめでとうございます。

その形がこれなのはお許しください。
ちゃうねん、このシリーズはあくまでコメディやねん。湿っぽいのはなんか違うと思うねん。
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