(メイン更新をリアタイで追い始めたのがこれだったので他の章もそうなのかはわかりませんが)アビドス3章といい、メインストーリーは本当にいいところで切ってくるのでそのたびに「…ンゥッ! 続きが気になるッ!」となっているので投稿します。
この作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女は虚ろな目で天井を見つめている。その表情はどこか呆けているように見え、口も力なく少し開いている。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
そこで一旦言葉を切るが、しかし彼女は顔の向きを変えることもなくひたすら天井を見つめていた。その空のように青い瞳には輝きはなく、誰に語り掛けるでもなく彼女はただ一言ぽつりとつぶやいた。
「ここ最近体が重いなぁとは思っていましたが、まさか病院送りにされるとは…」
少女──連邦生徒会長が現在居るのはキヴォトス某所の病院、そのベッドの上である。
そんな彼女に、たまたまこの病院に救護騎士団として訪れていたセリナが呆れた声を投げかけてくる。
「…目視でもわかるくらいに食事や睡眠をおろそかにしていたんですから当然の結果ですっ。…むしろそれでよく昨日まで元気に走っていましたね」
「まぁ…問題は山積みでしたからね。呑気に倒れている場合ではありませんでしたし」
そういいながら連邦生徒会長は病院送りにされるまでのことを回顧する。
『はぁ…。書類に終わりはありませんねぇ…』
D.U.ではゲヘナのテロリストによる爆破テロが既に5回も起きており、さらに先月上旬にはカイテンジャーなる組織の名称不明のロボの襲撃があり、下旬でもペロロジラ到来があったため被害の調査にインフラの再整備、そして防衛のためのマニュアル再整備に武装購入ととにかくやることが多く、これについてはサボる訳にもいかずずっと缶詰状態で書類と格闘していたのである。それに加えて通常の業務もあるし、時間効率を優先して睡眠時間は4時間未満、食べ物もカロリーバーのみというひどいものになっているが、とどめを刺したのはやはり。
『会長! ミレニアムのエンジニア部が作成した電動掃除機『お掃除君』が大暴走して手が付けられないから手を貸してほしいと連絡が!』
『ハイランダーで電車ジャックです!』
『ブラックマーケットで大規模な抗争が起きました!』
『爆破テロです! 犯人はゲヘナの──』
『ゴズが爆音で何かやっていて近隣の迷惑になっているとのことで…』
『レッドウィンターからデモ隊がこちらに向かってきてます!』
『クロノスでの偏向報道がとんでもないことになってまして…』
『シロとクロが暴れまわってます!』
『モモフレンズのイベントで負傷者多数です!』
『シャーレからとんでもない量の盗聴電波が受信されました!』
これらの問題が一度に舞い込み、シャーレにも協力してもらってなおすべての案件の解決には丸三日かかり、そしてどれも体力を使うものであったためにすべてが終わった後会長室に戻った瞬間連邦生徒会長はぷつりと意識を失い、そして冒頭に至る。
「大変なのはわかりますけど、もっと体は大事にしてください。じゃないと、本当に取り返しのつかないことになっちゃうんですからね」
「…はい。肝に銘じます…」
変わらず虚ろな目をした連邦生徒会長は呻きながら、流石に無理をしすぎたと反省に思考を費やす。
とはいえ自分が動けなくなっても二週間程は連邦生徒会の通常業務は動かせるようにはしていたし、先の襲撃絡みの書類もやることはあらかた終わっているため大人しく療養するかと連邦生徒会長は思考を放棄し実際にそうなるまではかなり時間はかかったものの、ゆっくりと眠りについた。
そして、目が覚めた連邦生徒会長が軽く体を延ばすと体中からゴキゴキボキボキという音が鳴り、同時に軽い痛みが襲いかかる。
「……これは少し体を動かさなければなりませんね」
そう言いながらもゴキゴキボキボキと体を鳴らす連邦生徒会長だったが、しかしその現場をセリナに見られてしまう。
じとりとした視線を向けながら、無言の圧を放つ彼女に若干の恐怖を覚えた連邦生徒会長は話しかける。
「…あの、セリナさん? どうしたのでしょうか?」
「……うつ伏せになってください」
「えっ、あの…?」
「いいから。はやくお願いします」
圧に敗北し、渋々うつ伏せになる連邦生徒会長。そんな彼女にセリナはずかずかと怒りを感じさせながら近づき、不意に連邦生徒会長の足をとると。
「やあっ!」
そんな可愛らしいながらも力強い掛け声とともに、連邦生徒会長の足の裏、そのツボに向けて思い切り指を突き刺した。
「いっ───!?」
セリナの指がツボに対して的確に足裏に刺さった瞬間、足裏から奔る激痛に連邦生徒会長は声を失い暴れながらもばんばんとベッドをタップする。それは紛れも無いギブアップの合図であったが、しかしそんなことは聞こえていないかのようにセリナは数秒の間続けた。
そしてセリナの指がツボから離れた瞬間、連邦生徒会長はぐったりと枕に倒れ込む。
「いくらなんでも不健康がすぎます! 食事はおろそかにするし睡眠時間はあまりにも短いし体中凝り固まっていて手入れしてないし!
もう怒りました! 今日は私の全霊をかけて貴方を『救護』します! いいですね!」
「ま、待ってくださ──」
「問答無用です!」
連邦生徒会長は抵抗しようとしたが、しかしセリナはそれよりも素早く先程とは違う方の足の、全く同じ位置にあるツボに向けてその指を刺した。
瞬間、連邦生徒会長の体に再び奔る激痛。それと同時に再び連邦生徒会長はベッドをタップし始めた。
「痛っ、痛たたたたっ、い゛っだあぁぁぁぁっ!」
廊下にまで響き渡る連邦生徒会長の悲鳴。しかしそんな彼女に対して、セリナは容赦のない一言と共に更にぐっとツボに向けて押し込む力を強めた。同時に、連邦生徒会長の全身に駆け巡る痛みも生半可なものではなくなり声を失う。
「病院ではお静かに!」
「───!」
そしてその数秒後、セリナの指が外され再びぐったりと枕に顔面を押しつけピクリとも動かなくなった連邦生徒会長だったが、しかしそんなことは知らんとばかりにセリナは施術を続けていく。
痛みで覚醒してはその痛みで呆けてを繰り返す連邦生徒会長だったが、そして施術が終わり意識が覚醒した連邦生徒会長はぐったりとしていながらもどこかその体は軽そうであった。同時に連邦生徒会長は一つ学びを得た。
大人しい人ほど怒らせてはいけない。
連邦生徒会でいうならアユム、シャーレでいうなら…先生全員。これからは下手なことをして怒らせないようにしよう。
そう誓って連邦生徒会長は療養生活を過ごし、そして退院の日を迎えるのだった。
そしてその数ヶ月後。今度はデカグラマトンの預言者との連戦とキヴォトスで起きた問題解決に奔走し再び連邦生徒会長が倒れた際、今度はミネによって全く同じ事をされてしまったことは別の話。