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「私のミスでした…」
少女は引き攣った笑みを浮かべ、目の前に座っている人物達に向けて申し訳なさそうに言葉を絞り出した。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
「図々しいお願いですが、お願いします」
少女──連邦生徒会長はそこで一旦言葉を切ると、目の前に座る人物達に向けてとりあえず呼びかけるだけ呼びかけた。
「……もうちょっとこう、いい手段を考えませんか? それに突撃するにしてもちょっと頭を冷やしていただきたいのですが…」
「私からもお願いだから…。皆もうちょっと落ち着いてよ…」
連邦生徒会長と共に長いツインテールと猫耳が特徴の少女、黒見セリカが目の前に居る皆に落ち着くように促した。
目の前に居る皆──セリカ以外のアビドス廃校対策委員会とシロコ*テラーは全身から殺気を醸し出し、しかし笑みさえ浮かべながら朗らかに二人の要請に応答する。
「……いやー、無理じゃない? おじさんにもちょっとこれはいただけないかなぁ、みたいなラインはあるからさ」
「ん、セリカを詐欺のカモにした業者を潰す」
「うふふ、腕が鳴りますね☆」
「これは私でも断じて許せません。シロコ先輩ではありませんが、絶対に潰します」
「……ん、
対策委員会のそんな返答を聞いて、連邦生徒会長は肩を竦めながらセリカに視線を向けつつ『あははっ、ダメそうですね☆』とばかりにウィンクを飛ばし、いい笑顔を浮かべながらお手上げを全身で表現。味方が早々にいなくなったセリカは「ちょっと!? 諦めが早くない!?」とおろおろと狼狽し始めるのだった。
何故アビドス廃校対策委員会がここまで激昂しているのか、それはセリカが悪質な詐欺に引っかかったことが原因であった。
しかもそれは今までセリカが引っかかった詐欺よりも大分悪質なものであり、それによってセリカが凄まじく気落ちしていたため『かわいい後輩(あるいは一緒に頑張っている同級生)にそんなことしやがって、絶対にブチのめしてやる』と対策委員会に火が着いたところにたまたまアビドスに用があった連邦生徒会長が来訪。
説得を皆に無視されたセリカが事情を話して彼女にも説得を頼み、まぁなんだかんだで温厚な彼女達のことだからすぐに終わるだろうとたかを括っていた連邦生徒会長もまた説得に失敗したのが冒頭でのことである。
彼女達の怒りの程を読み間違え、そして直ぐに終わるとたかを括っていた連邦生徒会長は安請け合いをしたのを軽く後悔していた。
「いえ、これ何度やっても無理そうでは…? ホシノさんと、なによりアヤネさんがこの話に乗っている時点で止められないと思うのですけど…」
「わかってるわよそんなの! でもなんていうか、これは私の問題だから…!」
「では逆にお聞きしますが、仮にアヤネさんがセリカさんと同じ詐欺に遭ったらセリカさんは落ち着いていられますか?」
「それは、その…。多分、無理だと思うけど…」
「同じですよ。皆セリカさんのことが大事なんです。だから皆怒っているんです」
連邦生徒会長のその言葉にセリカは「うっ…」と照れ、しかしすぐにまたいつもの可愛らしい怒り顔に戻って「で、でも! いくらなんでもちょっと大袈裟すぎっていうか…!」とまたも反論してきた。
「でも確かに、あのままだと詐欺業者を殺しかねないですね…」
「で、でしょ!? だから…!」
とセリカがやっと突破口を見つけた、これで止めてくれるとばかりに連邦生徒会長を輝いた瞳で見つめ、そしてその視線とそこに込められた意思をくみ取った連邦生徒会長は未だ突撃準備をし続ける対策委員会に顔を向けて口を手で囲み大声を出す姿勢を取ると。
「皆さーん? 突撃してもいいですけど半殺しくらいに留めておいてくださいねー? 後々詐欺業者からは調書を取らないといけませんからー! あと身元が割れないように覆面と手袋を忘れないでくださいね、壊滅に皆さんが関わってるとバレると後々面倒ですよー? それと、終わったらヴァルキューレとかに通報するんですよー!? いいですねー!?」
とセリカの意思とは全く異なる台詞を対策委員会に向けて大声で言い放った。これに対して対策委員会は「はーい」「りょうかーい」と了承し、一方のセリカはというと、
「ちっがぁぁぁぁぁぁぁうっ!」
とこちらも大声を出しながら連邦生徒会長の肩をがっと掴み、「だぁれが焚き付けろって言ったのよ、もー!」ともはや涙目で連邦生徒会長の身体をぐわんぐわんと思いっきり揺さぶり始めた。
しばらく身体を揺さぶられた後、連邦生徒会長は服や髪型を整えた後にこほんと咳払いした後に、
「…なんというか、何を言っても何をやっても止められないんだろうなぁって思ったらなんかちょっと面倒くさくなっちゃって…。それにいずれヴァルキューレかSRTが踏み込むんですし、だったらもう誰がやっても同じかなぁって…」
悪びれることもなくセリカに告げた。連邦生徒会長のあまりにも珍しい投げやりの態度に彼女は更に攻勢を強め、またもぐわんぐわんと連邦生徒会長を揺さぶり始める。
「そんなわけ無いでしょ!? ってかあんた、一応私の味方って
「私自身は最初から突撃するなだなんて言っていませんし…。それに人を呪わば穴二つといいますし、このキヴォトスで詐欺なんかやって復讐されないと思ってる方が悪いかと…。それに治安のことを考えれば、この手の業者は死なない程度に痛い目を見るべきでは?」
「あんた公権者よね!? 本当にこういうやり方でいいわけ!?」
「構いません…というかとにかく痛い目を見てほしいです。そしてこれを機にもっと犯罪率が下がってほしいです。ほんっと今までどれだけの犯罪を私やヴァルキューレ、それにSRTが処理してきたと…。しかも凶悪なのは大体ブラックマーケット絡みですし…。それにカイザーの態度もですね…!」
「……ご、ごめん…。苦労してるのね…」
その空のように青い双眸に闇を薄く宿した連邦生徒会長のあまりにも公権者とは思えない発言にセリカが目を剥きながら、それでもめげずにその後もこの件について言い合いをしていると彼女はとある事に気付いた。
……自分達以外の皆が静かすぎる、ということに。そして彼女は周囲を見渡して、ぽつりと呟いた。
「……もしかして、もう皆行っちゃった…?」
「えぇ、先程出ていきましたよ?」
「もおおぉぉぉっ! はやく止めに行くわよ! …不服そうな顔をしない!」
「仕方ありませんねぇ…」
こうしてセリカと対策委員会を焚き付けながらも全く悪びれた様子のない連邦生徒会長は対策委員会の後を追ってアビドスを後にしたが、しかし二人が現場にたどり着いた時にはもう遅かった。既にヴァルキューレが現場を抑え、そして詐欺業者は次々と警察病院送りとなっていたのである。
その後セリカや他の被害者のお金はなんだかんだの手続きの末に返金され、そして『覆面水着団』の噂は更に広がり、またも名を挙げることとなった。なお、この件はしっかり先生達の耳にも入りセリカ以外の対策委員会のメンバーとそれを焚きつけた連邦生徒会長はしっかりとお説教されてしまったのだった。
ちなみに、この件に一切関わっていないのにも関わらず「ファウスト」の名前もまた広がったため後にシャーレに姿を見せたヒフミは半泣きであったという。