シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。嘘をついていい時間のギリギリですが投稿します。
今回のお話は割と作者の性癖が出ています。ご注意ください。

この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。


「私のミスでした…」アオイ「エイプリルフール特別編よ」

『私のミスでした…』

 

少女は困惑に満ちた様子でそう呟くと、視界に映る面々を見渡してから自分の見通しが甘かったと言いたげな様子で更に言葉を続けた。

 

『私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…』

 

『この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…』

 

そこまで言った少女──連邦生徒会長はもう一度辺りを見渡してから再び息を吐いて、その状況を改めて口に出した。

 

『エイプリルフールだし折角だからメイド喫茶でもやってみますかと提案してはみましたが…。…まさかここまでのことになるとは…』

 

そんな事を口にする連邦生徒会長や彼女の眼前に待機する連邦生徒会のいつもの面々の格好はというと、メイド喫茶でよくあるようなコスプレじみた格好ではなく所謂ヴィクトリアンメイドのような、どこから持ってきたのかさっぱりわからないがやたらと本格的な制服であった。

 

『これらの衣装は一体どこから持ってきたのですか…?』

 

『購入したわ。連邦生徒会として妥協をするわけにはいかないもの』

 

その美しく長い黒髪を一つに纏めあげたリンが誰に問いかけるでもなく疑問を呈すと、彼女の隣に立っていたアオイが理由も込みで簡潔に返答した。

 

『服装に留まらず、なんかロケーションまで凝ってると思ったら…そういえばアオイ先輩主導だったねこの件…』

 

そりゃそうなるか、とでも言いたげなモモカ。何せアオイはやると決めるまでは腰が重いものの、やると決めたが最後予算と期限の許す範囲内でとことんまで拘る事が多いのである。

である、のだが。

 

『…メイド喫茶ってもうちょっとこう、萌えとか可愛らしさとかそういうのを重視するものでは?』

 

『普通ならそうね。けれど私達は連邦生徒会よ、品位は保たなくてはならないわ。可愛らしさや親しみやすさを重視したそれらのものを否定する訳ではないけれど、連邦生徒会にはそぐわない。そう判断したわ』

 

連邦生徒会内部から湯水の如く出てくる疑問に対してつらつらとあっさり返答し続けるアオイ。

極めて冷静に、そして特に表情を変えることもなく返答を続ける彼女の顔を数秒見続けた連邦生徒会長は。

 

『……あの、アオイ室長?』

 

『何かしら?』

 

『別に責める訳ではなく、興味本位で聞きたいのですが…。これってミニスカートを履くとか萌え萌えキュンとか、アオイ室長自身がそういうことをするのがイヤだったからこういう形にしましたよね…?』

 

『…………』

 

連邦生徒会長のその問いかけに、無表情ながらゆっくりと視線を逸らすアオイ。どこからどう見ても図星であった。

そもそもの話であるが連邦生徒会室長各位は勿論、提案した連邦生徒会長自身すらも別に本気でメイド喫茶をやりたかった訳ではない。

提案した本人的にはただふざけて提案しただけであり、実際のところはエイプリルフールにはテキトーなウェブサイトでも作って終わらせる気満々だったのだが、しかしここで想定外が起きた。どうせ自分たちは矢面に立たないからとばかりに室長やその補佐官以外のほぼ全員がメイド喫茶案にまさかの賛成、これによって連邦生徒会長がふざけて提案しただけに終わる筈だったメイド喫茶はあれよあれよという間に可決されてしまったのである。

この状況をこのまま放っておけば会長や連邦生徒会室長の面々が精神的大怪我を負うことになることを察知したアオイが企画を早々に引き取り、その結果としてやたらと本格的になったことが連邦生徒会長の質問により先程発覚した次第であった。

 

『ファインプレーですよ、アオイ室長』

 

『あ、ありがとうございます、アオイ室長!』

 

連邦生徒会長に内心を見透かされて気まずそうに視線を逸らすアオイに対し、労いの言葉を投げかけるリンやアユム。どうやら彼女達もまたそういう事をするのはイヤだったらしい。

彼女達にお礼を言われたアオイはというと、先程までと変わらず無表情ながらも頬を少しだけ赤くしていたのだった。

 

『まぁ…これなら大やけどをせずに済むでしょう。それっぽく振る舞いながら給仕をすればいいだけですからね』

 

『うーん…でも僕、あんまりこういうヒラヒラしたやつ着ないんだよね。裾踏みつけないかがちょっと不安かも…』

 

『ふぁぁあ…。眠…』

 

『……前言撤回します。不安になってきました』

 

最初こそ自信満々だったカヤだったが、ハイネとスモモの発言にかなり嫌そうな顔をして彼女は即座に前言を撤回。そんな彼女に対し、先ほどまでちょっとだけ顔を赤くしていたアオイが彼女に対して鋭い視線を浮かべながら呆れたような声をかけた。

 

『……カヤ防衛室長。それっぽく、ではダメよ。私達はこれから商売をするのよ?』

 

『…えっ、アオイ財務室長? 視線が怖いんですけど…』

 

『相手からお金をもらうからには完璧を目指すべきだとは思わない?』

 

冷静ながらもその瞳に熱を宿しながらカヤをじりじりと壁際に追い詰めていくアオイ。言ってることは至極ご尤もだが、しかしながら普段の彼女から考えれば様子はおかしいのは確かな訳で。

気負っているのだろうかと連邦生徒会長とリンは視線を合わせ、そしてその後とりあえずアオイをカヤから引き剥がそうかと足を上げたその刹那。

 

『仕方ないわね。開店前の短い時間だけれど、三人にメイドの何たるかを教えてあげるわ。ついてきてちょうだい』

 

『ちょっ、離し…力強っ…! たっ、助けてください! お願いしま──!』

 

連邦生徒会長とリンが止める間もなく、哀れにもカヤはアオイに引きずられてバックヤードへと消えて行ってしまった。ハイネと、彼女に手を引かれるスモモもまたバックヤードへと歩を進めていきホールには連邦生徒会長とリン、アユムとモモカが残された。彼女たちはどうしようかと視線を合わせるが、とりあえずひどい目に遭うであろうカヤは見捨てる方向で一致。

残った面々で互いに身だしなみを整えたり手筈の確認をしたりで時間を潰しつつアオイたちが戻ってくるのを待っていると、突然バックヤードへの扉が開かれ件の人物たちが戻ってくる。…カヤだけ顔色が異様に悪くなっていたものの、触れると碌でもなさそうだと感じたホールにいたメンバーは誰もそのことには触れなかったが。

 

『やることは終わったわ。さぁ、開店準備をしましょう』

 

『その前に、です。アオイ室長、嫌な役回りを押し付けてしまったのは重々承知の上ですが、それでも言わせてください』

 

『……? 何を…』

 

連邦生徒会長がアオイに声をかけて彼女の注意を惹き、話の続きをリンが引き取った。

 

『私も会長もこの状況に思うことはありますが、しかしやるからには楽しもうとも考えています。成功させるのも勿論大事ですが、まずは楽しみましょう』

 

『………そう、ね……。ごめんなさい、企画を受け持ったからにはなんとしても成功させなければと少し焦っていたみたい。…私もまだまだね…』

 

リンの言葉にようやく冷静さを取り戻したアオイ。その後ろではカヤが『もっと早くにそれを言えよ…』と言いたげな表情で連邦生徒会長とリンを睨んでいたが、連邦生徒会長がにっこりと愛想笑いをしてそれをあっさりかつテキトーに受け流す。勿論カヤはその対応に不服そうな表情を浮かべていたが、別にそれは連邦生徒会長達の知ったことではない。

 

『さて、そろそろ開店時間な訳ですが…。メイド長、号令をお願いしますね』

 

『メイド長…?』

 

連邦生徒会長のそんな発言を受けて、アオイは目を丸くする。当然連邦生徒会長がそういった役割を持つものとばかり思っていたために、それも仕方のないことだ。

 

『アオイ室長が主体となって企画を進めてくれたのですから。メイド長はアオイ室長以外ありえませんよ』

 

連邦生徒会長のそんな発言に、他の室長たち(未だに半ギレ気味なカヤを除く)もまた各々同意の意思を見せる。最初は固辞しようとしていたアオイだったが、しかし周りの反応を見て納得の意を見せたアオイはふっと息を一つ吐いて微笑むと。

 

『えぇ、承知したわ。それでは…』

 

彼女は息を吸い込んで、号令をかけた。

 

『これから来店するお嬢様たちの為に全力を尽くしましょう。…けれど、気負いすぎないように今日この日を楽しむことを忘れずに。それじゃあ──始めるわよ』

 

アオイのそんな号令とともに、連邦生徒会が運営する一日限りの本格的メイド喫茶が開店した──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───みたいな感じの事をやってみればいいんじゃないかな? きっといい思い出になると思うよ?」

 

と、ここまで長々とやたらディティールが凝った提案をしてきた先生に対してエイプリルフールに関する相談をしてみた連邦生徒会長は静かに息を吐くと。

 

「…あの、思い出がどうこうと言うより先生が私たちのメイド姿を見たいだけなのではありませんか…?」

 

苦い顔で苦言を呈し、そしてそれが恐らく図星であったであろうために今度は先生のなっがい弁明を聞く羽目となったのだった。

ちなみに連邦生徒会の会議で連邦生徒会長が一応メイド喫茶を提案してみたところその提案は大議論を巻き起こしギリギリのところで否決され、危うく嘘から出た実という言葉を体現することになりかけたのだが、それは別のお話。




エイプリルフールのおまけ(という名のふざけた余談なので別に読まなくてもいいです)




実は私は今後のメインストーリーの展開を知っています。
デカグラマトンの預言者をなんとか全員撃破してこれで終わりと安堵したところで、最後にして究極の預言者がこんな言葉と共に現れるのです。

「十の光からなるデカグラマトンの預言者の先に、選ばれた聖者にのみ扱うことができる隠された預言者がある…」
「無は無限となり、無限の光から生まれる究極の預言者…」

「究極預言者ダアト!」




…はい、お察しの方もいるでしょうが勿論ウソです。メインストーリーがどう動くかなんぞ関係者ではない私には知る由もないので更新まで気長に待ちます。

エイプリルフールなのでふざけてみたかったのです。不快に思われたのであれば申し訳ありませんでした。
元ネタは遊戯王5D'sより、『究極時械神セフィロン』の召喚口上でした。
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