死ぬほどどうでもいいですが、書いてる途中で塁審セイアですまないなんて小ボケが出てきました。挟めませんでした。
話は変わりますが、次回は便利屋イベントですね。この前書いてネタがもうないです。危機です。
この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女はそんな言葉と共にちらりと両隣を見やってから溜息を吐き、そんな言葉を口にした。そんな彼女の表情はというと、『どう考えても人選ミスだろ…』というような呆れの感情が微妙に透けて見えるものであった。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」
その清流を思わせる水色の美しく長い髪を珍しくポニーテールにまとめ、その上で帽子を被った少女──連邦生徒会長はそこまで言うと、またもちらっと隣を見やってから溜息を吐いた後に誰に聞かせるわけでもなく微妙に戦慄の彩が含まれた声で置かれた状況を口にした。
「まさか最初にこちらが用意してきた道具の大半が廃品と化すか紛失するとは…」
膝に手を置いた綺麗な姿勢で座ったまま戦慄の表情を見せる連邦生徒会長に、隣で検品していた今回のチームメイトであるレイが多数あるへし折れたバットの内一本を両手にとって「うわぁ…」と明らかにドン引きした様子の声を上げたのだった。
ことの発端は僅か数日ほど前に遡る。連邦生徒会長がいつも通りシャーレに立ち寄ったところ、先生達とレイが『色んな学校の子を誘って草野球とかしてみる?』といった会話をしていたのが始まりだった。
そんな会話の真っ最中にシャーレへと足を踏み入れてしまったばっかりに案の定草野球に巻き込まれてしまうことになってしまい、しかしながらも『しょうがないですねぇ〜』と連邦生徒会長はそれを楽しみにして野球道具を数セットほど用意していたのだが、当日先生が連れてきた生徒達はというと。
栗浜アケミや天童アリスを始めとした腕力的にやたらと自信のある生徒達や、砂狼シロコや蒼森ミネを始めとした身体能力が凄まじい生徒達、おまけに剣先ツルギや霞沢ミユなどの特殊能力持ちの生徒であり、しかもその手の生徒がたくさんいた。
その結果。
『光、よッ!』
ピッチャー・アリスによるレーザービームと言って差し支えのない凄まじい投球を、
『良い球を投げます…が、まだまだですわねッ!』
アケミが上品ながらも豪快にスイングを行ってバットを殉職に追い込みながらも場外ホームランを叩き出し、ボールを空に打ち上がっていく流星へと瞬く間に様変わりさせて敵味方問わず皆でそれを見送る羽目になったり。
『…ん、あのコースならホームランになる。これで、少しはこっちに余裕ができた』
速い球を打った衝撃でバットをお釈迦にしながら球を打ち返しふんすと満足げな様子を見せた後に悠々自適に走るシロコの言葉通り、あれは間違いなくホームランコースだなと誰もが思ったかなり高く勢いのある打球を、
『まだです…! 皆さん、諦めてはなりませんっ! …はぁっ!』
と驚異的な跳躍力でミネがキャッチしてアウトにして場内をどよめかせたり。ほかにも気が付いたら盗塁に成功していて盗塁する度にビデオ判定を食らっているミユや、走り出したが最後そのタフさも相まってほぼ確実に止められないツルギなど、連邦生徒会長やレイの目の前ではキヴォトス超次元草野球が繰り広げられていたのである。
そしてその代償に連邦生徒会や先生たちが用意してきた野球用具が次々と破壊され、現在もうすぐ中盤に差し掛かろうかというところである4回裏にも関わらず既にグローブ6つが犠牲になった上でバット16本が名誉の戦死、おまけにボール22個が
「やるって聞いた時は貴重な経験になるかも、って思ってたんですけどね…。サインとか使わない上、ここまでホームラン乱打とかされると本当に野球かなぁこれって思っちゃいます…」
「レイさん、それを言っては先程から何度も何度もスポーツセンターへと自転車を走らせてバットとボール、それから場合によってはグローブまで購入して戻ってきてはすぐ壊されて半泣きになっているそこのユメ先生…あぁ、今は梔子監督でしたね…。
彼女がいよいよもって可哀そうなことになってきますから、それ以上はダメですよ」
「そう…ですね、すいません。…ところで審判をやってる先生はともかく、相手の監督役のプレナ先生はなにをしてるんでしょうねあれ…?」
「あれは…恐らくは監督の枠は必要だよね、と勇んで入ったはいいですがプレーが規格外すぎて言えることがなくなっているのかと…」
ベンチでそんな会話をしている二人の視線の先には、どこで購入したのかさっぱりわからないどこぞの野球チームのユニフォームに身を包みグラサンをかけた上で珍しく腕を組んで、さながらベテラン監督の風格を醸し出すプレナパテスの姿があった。先述の通りベテラン監督の風格だけは(ムダに)出ているが、しかしその実態は連邦生徒会長の推測通りあまりにもデタラメがすぎるプレーに恐怖を覚えてまともに指示ができていなかった。なんなら足はがたがたと震えているが、しかしそこは風格だけでなんとか誤魔化しているのが今のプレナ監督なのである。
ちなみに連邦生徒会長やレイが今回所属しているチームの名目上の監督であるユメは今のところ球場に居ないことの方が多いし、球場に居たら居たで常に半泣きの様子だ。プレナパテス同様に、しかしプレナパテスとはまた違う理由でとても作戦立案など出来た様子ではなさそうだ。
「…監督二人がこんな感じって…。なんというか…すごいですね。プロだったらまず見ない光景ですよ…」
「なんなら今のところずっと選手達が好き勝手やってますからねこの試合…。それでも辛うじて試合のていが保てているのは主審を務める先生の手腕ですね」
そう言いながら、今度は二人揃って判定のポーズをやたらキレよくこなしている先生へと目を向けた。先生はキャッチャーの生徒が死ぬ程頑張ってくれているのとシッテムの箱…アロナによる保護の二重体制のお陰で無傷である。もし二人が守ってくれていなかったら流れ玉でのデッドボールでちゃんとデッドしていただろう。
「この場をこの程度に収めたり、そもそもこれだけの生徒を集めたり…本当に先生って凄いですよね。わかってはいましたけど、今は改めてそう思います」
「ですね。…ふふっ、先生を連れてきたのは我ながらかなりのファインプレーですね、これは」
「それ、自分で言うんですか…?」
連邦生徒会長の冗談交じりの自画自賛にレイは訝しげな表情で問いかけてくる。それに対して万が一でも驕っていると思われないように「流石に冗談です。そこまで自惚れるつもりはありませんよ」と返してから改めて試合の趨勢を見守っていると。
「ストライィィクッ! バッタァチェェンジッ!」
というやたら気合の入った先生の声が響いた。そんな言葉を聞くと同時にレイは先程までの様子とは打って変わって、堂々とした様子でゆっくりと立ち上がる。
「自分を信じて、いつも通りやってきます。私の次、よろしくお願いします」
「えぇ、後のことは任せて思いっきりやってきてください。ここから応援してますよ」
連邦生徒会長のその言葉にレイはバットを握りしめてバッターボックスへと向かい、そしてボックスに入ると構えた。
──一球目。レイは様子見を選択、これはボールの判定となった。
──二球目。レイが思いっきりバットを振ると、ぶんと空気を裂いた音が聞こえた。無論、ストライクである。
──三球目。レイは再びボールを見る。これでツーストライクである。
そして、四球目。もらったとばかりにレイの目の端が輝いて、彼女はバットを再び思いっきり振った。
かきんと小気味のいい音が鳴り、球は高く高く飛んでいく──ということは別になく、レイがバットを振った後にばすんという鈍い音が響いてボールはキャッチャーミットに収まっていた。
ストライク、バッターチェンジである。
それなりにかっこいいことを言ってあえなくバッターチェンジとなったレイはとぼとぼとした足取りでベンチに戻ってきて、視線は意地でも連邦生徒会長に合わせることはせず。
「…あの、次…お願いできますか…?」
と連邦生徒会長にお願いだけはしっかりしてくるのだった。連邦生徒会長もまたその微妙な空気の下、レイのお願いを断ることもできず「…頑張ってはみます」と答えるだけ答えてバッターボックスへと向かっていく。
連邦生徒会長はバッターボックスに入り、投手と睨みあう。投手の生徒もまた、連邦生徒会長の姿を見て構えた。
投手と打者の間に流れる、独特の空気。
普段はあまり感じ取ることのないそれを感じとり、連邦生徒会長は僅かに身を震わせながらもにやりと不敵な笑みを浮かべた。独特の空気のまま睨みあい、互いに数秒が経つ。
そんな空気感も投手が動いたことにより二人の間の空気感が更に緊迫、そしてそのまま投手の手から球が繰り出された。
連邦生徒会長は球をよく見て。
「ここです──!」
バットを振り、まるでスポーツ漫画が如くボールの中心にぶつける…というわけにはいかず、ボールの中心からかなり外れたところにバットがぶつかった。
「…あっ、これはやっちゃったかも…」
めきっ、と若干不穏な音がバットから響くとともにそれなりに低い軌道で内野に向かって転がっていく打球。いわゆる内野ゴロというやつであるが、やるしかないので連邦生徒会長は全力でダッシュを開始。だがしかし普段から銃撃戦を行っているためある程度の運動神経が担保されている生徒たちにそんなへなちょこ打球が獲れない訳もなく、かなり素早くあっさりと拾われて一塁側にボールが投げられた。
ちなみに、最初に打球を拾ったのはというと。
「一塁、準備しててくれぇっ! …おっ、らああああぁっ!」
レンゲであった。案の定内野から一塁に向けて一直線の投球が飛んでいき、一塁守備のポジションについていたサキが球の勢いに若干驚きながらも辛うじてそれをキャッチ。そこそこの脚の速さを誇る連邦生徒会長といえども間に合わなかったため下される判定は、当然ながら。
「アウトッ!」
無情な宣告により、連邦生徒会長は進塁に失敗。それに加え、チームは攻め手を失い攻守交代を余儀なくされる。連邦生徒会長がため息を吐きながら脳内で反省していると、一塁からベンチに戻って道具を取りに行くと、なんだかチーム内から生暖かい視線が向けられていた。
「これからですよ、ここは失点を抑えましょう!」
「まだまだ巻き返しは狙えるからねぇ。そんな気負わずいこう?」
「先にやらかした私が言うのもなんですけど…野球といえば、逆転勝利もよくあるスポーツです。ですから、ここから頑張りましょう!」
チームスポーツであるにもかかわらず失敗を一人で抱え込んで勝手に反省する連邦生徒会長に投げかけた暖かい言葉の数々。連邦生徒会長はそれらに一瞬反応できなかったが、しかし言葉の意味を理解してそれらを吞み込むと、どうやら自分はこんなところまでひとりで抱え込むきらいがあるようだと苦笑したのちに目を伏せる。
そしてゆっくりと目を開くと、その瞳には熱が籠っていた。
「…そうですね、どうやら少しナーバスになっていたようです。まだまだ4回裏で勝ちの目はまだまだたくさんあるのにこんなところで落ち込んでいられませんね。…まずはここで無失点、そこからどんどん点を取っていきましょう!」
連邦生徒会長がそう高らかに宣言すると同時に、試合は再開。ここから連邦生徒会長達は快進撃を見せて、最終的に試合に勝利──という展開には、別にならなかった。
というのも道具の破損がその後も続き、そしてやっているうちに補充ができなくなったために試合続行不可能と化したためにその時点で点数が負けていた連邦生徒会長達は試合に敗北という形となったのである。
この結果に連邦生徒会長達は一瞬唖然としていたが、しかしその結果を吞み込んで…その上で。
「こういう負け方ってなんだか釈然としませんよね、本当に…」
チームを代表して連邦生徒会長はそう呟き、そのままチームはこの場では渋々解散する羽目へとなるのだった。余談ではあるが、この結果がよほど悔しかったのかこのチームの生徒達はその後も何度か自発的に集まっては有名・マイナー問わず集まっては何かしらのスポーツで遊んでいき、最終的には野球はもちろん謎スポーツの強豪集団としても界隈では有名になってしまうのだった。
…レイはかなり複雑そうな表情を浮かべていたのだが、それは別の話である。