シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。ヒカリ・ノゾミが実装されましたが天井までにどっちか出るだろうと思っていましたが、どちらもお迎えできずすり抜けまくってはや天井です。現実はそう甘くはありませんでした。

この作品は、
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の二つのサイトで投稿させていただいています。


「私のミスでした…」ツバキ「その37…ふあぁ…」

「私のミスでした…」

 

少女は緊迫感を漂わせる表情でそう言いながら、自分を抑え込もうとする周りの面々を振りほどこうとしている。その瞳には、明らかに焦りが浮かんでいた。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

「図々しいお願いですが、お願いします」

 

そこまで言った少女──連邦生徒会長はというと、もう一度振りほどこうと力を腕に込めた。しかしながら腕に力をぐっと込めてなお自分を抑え込もうとする力はまったくもって緩まなかったために、連邦生徒会長は観念したかのように抵抗する力を緩めて溜息をつき、改めて周囲にお願いをする。

 

「…私は別に夢遊病とかではないはずなので、病院に担ぎ込もうとするのはやめていただけませんか…?」

 

連邦生徒会長が控えめな抗議を行うと、彼女を抑え込もうとする者達の司令塔たる大人──シャーレの先生が眉間に皺を寄せた厳しい面持ちのまま連邦生徒会長に対して冷厳に告げる。

 

「別に私も梔子先生もプレナ先生もリンちゃん達も意地悪で病院に行こうって言ってるんじゃないんだ。夢遊病って自覚がないことの方が多い上に色々と危ないし、皆君を心配してるから病院に行こうって言ってるんだよ」

 

ユメに抑え込まれながらそんな先生の言葉を受けた連邦生徒会長は、どうしてこうなったんだと言わんばかりに大きな溜息とともに後悔の感情を思いっきり吐き出すのであった。

 

事の発端は数カ月ほど前、連邦生徒会長が百鬼夜行へと向かった時のことである。彼女はそこでとあるものを目にした。

 

『くぅ…すぅ…』

 

百鬼夜行連合学院において百花繚乱の構成員たちに勝るとも劣らない実力者にして、『眠り姫』の異名を持つ生徒・春日ツバキがいつもの如く立ったまま眠っているのである。

連邦生徒会長としてもよく見るものではあるが、しかしながらその日はそんな彼女も驚くようなことを彼女は行っていた。

 

『『眠り姫』…! 積年の恨み、晴らさせてもらう…!』

 

そんな言葉と共に魑魅一座の生徒たちが眠っているツバキに襲い掛かったのだが、しかしながらツバキは眠ったまま襲い掛かってきた魑魅一座を極めて合理的に撃退。事が終わった後何もなかったかのように一度をあくびをして、そのまままたも夢の世界へと旅立っていった。

介入する間もなく終わってしまった一連の流れをぼんやりと見ていた連邦生徒会長の脳に、ふと電流が奔る。

 

──眠っている間にあれだけ合理的な動きができるのであれば、休みながら様々な問題に対応できるのでは?

 

連邦生徒会の長という立場に座す彼女はただでさえ多忙で、眠る時間は基本的にあまり多くはない。そのくせ連邦生徒会長ともなれば対応をしくじればあっという間に大惨事になりかねない仕事が多数舞い込んでくるわけだが、寝不足のようなつまらない理由で判断を誤って立場を悪くすることなどあってはならないことだ。

だがしかし、眠りながらある程度の行動ができるとすればどうだろうか。眠ったままできる仕事が少ないことは百も承知だが、食事や移動などの時間にそれらを行いつつ睡眠時間が確保できれば睡眠不足問題もある程度は軽減できるかもしれない。

そこまで考えた連邦生徒会長は、未だ立ったまま眠るツバキにおっかなびっくりながらも声をかけた。

 

『ツバキさーん…? 眠っているところ申し訳ないのですが、ちょっとお話よろしいですかー…?』

 

『んん、ふあぁ…。…あ、連邦生徒会長だ~…。私になにか用かな…?』

 

眠そうに目をこするツバキに連邦生徒会長はこれまでの経緯を包み隠さず明かした。多忙で睡眠時間がどうしても短くなりがちなこと、そして睡眠不足解消のためにツバキの『眠りながら動く』という技術をものにしたいことを。

連邦生徒会長の話を一通り聞いたツバキは、いつものぽやぽやとした表情のまま。

 

『…一緒に修行するのは別にいいけど…。偉い人に今すぐ必要な睡眠はこういうのじゃなくて、お布団に入ってのしっかりとした睡眠だと思うよ』

 

と、ド正論をド直球に投げつけてきた。それを受けた連邦生徒会長はというと『そうしたいのは山々なんですが…!』と言わんばかりのとても苦い表情を浮かべることしかできなかったのだった。

それはさておき、連邦生徒会長はそこから数か月にわたって時間を捻出してはツバキの修行に付き合わせてもらい、その結果として連邦生徒会長はツバキほどではないにしろ眠りながらある程度のことはできるようになり食事の時間などに活用していた…のだが、これがまずかった。連邦生徒会長のそんな様子を目撃した部下たちが『いくらなんでもアレは色んな意味で危ないのではないか』『もしかしたら夢遊病じゃないか』と騒ぎ始めたのである。

しかもそれを補強するように、夢遊病の原因に挙げられるものの一つにストレスがある。そんでもって、連邦生徒会長という立場は傍から見れば当然ストレスが大きそうな役職である。

 

──つまり、何が言いたいのかであるが。

他者から見て想像される連邦生徒会長の業務でのストレスとツバキ直伝の睡眠技術が夢遊病の原因と症状に見事に一致してしまった結果、連邦生徒会長はかなりのストレスによって夢遊病を患い大変なことになっているのではないかという疑惑が先生たちや連邦生徒会の生徒達の中でどんどん補強されてしまっているのである。

無論、連邦生徒会長は別に夢遊病を患っているわけではない。定期的にストレスチェックなどを行い、念のために定期的に検査なども行っているが診断結果に病気の兆候は見られていないのだ。故に、連邦生徒会長からすれば先生達による彼女の捕縛は筋違いもいいところであるという主張をしていたのだった。

だがしかし、先生達からすれば事実として眠りながら行動していた以上そんな話を信用できるはずがないわけで。

連邦生徒会の生徒達に依頼も受けてなんとかして病院に連れていきたいシャーレの先生たちと、別に身体に不調がない連邦生徒会長は冒頭での小競り合いを始めてしまったのだった。

 

「不調は本当にないんですよ。この前の検査でも体に異常はないと出ていましたし」

 

「その時は大丈夫だったとしても今は状況が変わってるかもしれないんだよ? だから病院行こうって」

 

「最後に検査したのは数日前なんですけど…」

 

「だとしてもだよ。調べておくに越したことはないんだからね」

 

連邦生徒会長の色んな意味で弱い抗議に先生とユメは全く怯むことなく反論し、プレナパテスは後ろでぶんぶんと強く頷いている。先生たちの言っていることは非の打ちどころのないくらいの正論であり、なんなら先生達が夢遊病の疑惑が上がっているのなら連邦生徒会長自身もこういうことを言うだろうことは想像に難くないために彼女も強く言い返せない。

けれど、そんな連邦生徒会長にも先生達に伝えておくべきことはある。

 

「本当になんともないんですよ…。実はですね…」

 

と連邦生徒会長がこうなった経緯を先生たちに話すと、彼らは疑いの眼差しを連邦生徒会長に向けたままツバキに電話をかけて彼女を召喚。数時間の後、春日ツバキはシャーレにひょっこりと現れたのだった。

そして、事情を聞いた彼女は「確かに連邦生徒会長と数か月ほど一緒に修行したのは事実だよ」としっかり証言。それにより連邦生徒会長の話は少しだけ信憑性を増した…のだが。

 

「だから偉い人はしっかりお布団で寝た方がいいって言ったんだよ~…?」

 

とツバキは彼女にしてはかなり珍しく、連邦生徒会長を呆れたように見ながら言葉で一刺しした。どうやら彼女は薄っすらこうなるんじゃないかと思っていたらしい。連邦生徒会長はそんな彼女の視線に肩身を狭くしながら、しかし『これで味方が増えた、理論的に綻びはあるけれどもしかしたらこのまま勢いで押し切れるかもしれない』と内心期待していたのだが。

 

「それとなんだけど…。別に私の修行を受けたからって夢遊病じゃないとは言い切れないと思うよ」

 

「えっ、今それを言います…?」

 

瞬間、先生たちの疑いの眼差しは再び連邦生徒会長に深く深く突き刺さり、同時に連邦生徒会長が『これはもう何を言っても聞いてくれないな…』と即座に察せるほどに問答無用の雰囲気が全身から醸し出されている。

どう手を打ったところで病院送りにされると察した連邦生徒会長はハンズアップで降参を表現し、先生とともに病院へと向かうことになった。

問診と様々な検査の末医者の診断結果はギリギリ夢遊病じゃないとされたが、しかしそういうことを意図的に行うのは危ないからやめろと連邦生徒会長は医者から猛烈なお叱りを受ける羽目になり、そして医者がそれよりも問題視していたのは夢遊病どうこうではなく案の定過労の方であった。

連邦生徒会長が普段の業務量を話したところ医者はドン引き、「常人なら二回は確実に死んでる」との発言が飛び出てきたのである。この結果を受けた連邦生徒会長は先生やリン達の判断によって強制的に休養させられる羽目になったのだった。

ちなみにこれを機に連邦生徒会長はツバキからもアドバイスをもらって寝具を変えてみた結果、彼女は快適過ぎて休養明けにまともに動けるかという謎の恐怖をずっと覚えていたのだった。

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