シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。デカグラマトン編更新とともにイベントが終わるので投稿します。
ところでなんでミサキは今回のガチャ更新でハブられたのでしょう…?

この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。


「私のミスでした…」アオバ「その39です…。…はぁ…」

「私の…っ…。ミス、でした…っ」

 

少女はなんとも言い難い感情のまま何かを抑えたように言葉を出し、目の前のそれに対してこれまた何とも言い難い複雑な感情が込められた視線を向けた。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

そしてそこまで言葉を上げた少女──連邦生徒会長は変わらず机上にあるそれに視線を寄越しながら、不可解さなどを始めとした複雑な感情を宿したなんとも言えない声をあげた。

 

「まさかあのパズルはすべてのピースを使う必要が別にないとは…」

 

「…そうだね、うん。まぁ気持ちはすごくわかるよ」

 

「…な、なんか…ごめんなさい…」

 

連邦生徒会長のそんな声に応答したのは同じくなんとも言えない表情を浮かべた先生と、たまたまシャーレに用があった内海アオバである。なお、プレナパテスとユメは所用でシャーレにいない。

そして三人の視線の先にあったのは、橘姉妹が押し付けてきた──もとい橘姉妹の好意のもとシャーレに贈与された始発から終点までの線路を、三パターンのピースをそれぞれ限られた数だけを用いて作るハイランダーが手がけた特製の鉄道パズルである…のだが、これが意外と曲者であった。

というのもこのパズルはあくまでも始発から終点を考えるというだけのものであり、すべてのピースを使えとは別に言われていないのである。

しかしながら一応はパズルという名前である以上、全てのピースを使わなければならないという先入観がなんとなく先に生まれてしまうもので。

連邦生徒会長はまんまとその先入観に引っかかり、一つ完成させるのにかなりの時間をかけてしまったのである。

 

『えっ…これ全部使って終点まで行くのは流石に無茶じゃない…?』

 

『ですがこれはパズルな訳ですし…。ピースがある以上は全部使わなくてはいけないのでは…?』

 

『そうなのかなぁ…?』

 

そう言いながら二人ががちゃがちゃとパズルをいじくりまわしながらもあぁでもないこうでもないと頭を悩ませながら鉄道パズルに興じていると、そこに今日のシャーレの当番・内海アオバが若干の焦りを見せながらどたどたとやってきて。

 

『ご、ごめんなさい…! 鉄道関係のごたごたで遅れちゃって…あれ、二人は何を…?』

 

『いらっしゃい、アオバ。実はヒカリとノゾミから鉄道のパズルをもらってね。物は試しにやってみてるんだけど、これがなかなか難しくて』

 

『あぁ、それですか…。…毎回思うけどあんまり売れ行きがよくないものを作るくらいだったら制度見直しとかに予算を回せばいいのに…』

 

アオバの毒に苦笑しつつ、二人はアオバに状況を伝え続けると。

 

『あ、あの…それは先生の言う通り、全部使う必要はありませんけど…。あくまでも…始点と終点を繋げればいいだけのものです…』

 

アオバのその発言に先生はやっぱりそうかと言いたげな納得の表情を見せ、一方の連邦生徒会長は『であれば最短経路のピースだけを使わせればいいのでは…?』『この余剰で使う必要のないピースはなんのために…?』という疑念やらなんやらを含めた複雑怪奇な感情が胸中に渦を巻き、そして出てきたのが冒頭の言葉なのであった。

 

「まぁ…仕方ないところもあるよね。これ取扱説明書の類の書類もなかったし…」

 

「えっ…? これ、説明書もないんですか…? …客に対する周知義務すら怠ったらハイランダーなんかいよいよいいところなんてなくなるんですけど…」

 

先生の発言に対して割ととんでもない暴言を口に出すアオバ。とはいえ、アオバのこんな発言はよくあることなので連邦生徒会長も先生もそれは流し、二人はそのままアオバを誘ってこのパズルで遊んでみることにした。

こうじゃない、あぁじゃないと三人はわいわいと進めていくと同時に場にはだんだんと和やかな空気が徐々に流れていく…のだが、しかし。それも進めていくにつれて徐々に鎮静化していきどこか重い空気が流れた。というのも。

 

「これ…本っ当に、無駄に数が多いんですけど…!」

 

イラついた様子のアオバの言葉通り、このパズルは一つのパッケージに対して盤がやたらと多いのである。連邦生徒会長の記憶が正しければ、現在六枚目の盤である。

にもかかわらず、ちらっと見たところ残りの盤はまだまだ残っている。…少なくとも十枚以上は。

 

「ほんっと…! 無駄に数ばっかり多いくせにやることは単調なんだから…! …貴重な資源と資金を無駄遣いして、作ったのがこれ…!?」

 

「個人的にはやりごたえ自体はあると思うんですけどね…。ただなんというか、如何せん数が多くて飽きるといいますか…」

 

「そもそもパズルって一日でたくさんやるようなものでもないしね。続きはまた今度っていうのも手の一つだと思うよ」

 

なんの気なしでやりはじめたものであるにも関わらず、あまりにも数が多かったために鉄道パズルを解くのを中断してすでに感想戦に入っている三人。その様子から察するにどうやら今この場でパズルを再開する気はなさそうである。

取り敢えず今日はこのパズル大会はお開きでいいかな、みたいな雰囲気のもと感想戦を続けていた三人だったが、しかし。

 

「パヒャヒャッ! 業務が終わったから、遊びに来たよーっ!」

 

「パズルの新作もいっしょー。ぼーがいパネルを使った対戦もできるから、戦略的要素もぱわーあっぷー」

 

一つのパッケージに対してやたらと盤が多い鉄道パズルを持ち込んだ張本人たる鉄道双子姉妹こと橘姉妹が、まだ前作すら制覇しきっていない三人に向けて新作の鉄道パズルを持ち込んでシャーレに現れたのである。

突如として現れて予算の無駄遣いの結晶第二号(後のアオバ談)を持ち込んできた橘姉妹をアオバは一瞬だけきっと睨みつけ、そしてボソリと先生達にだけ聞こえるように呟いた。

 

「……会長さん。別に期待はしてませんけど、あえてダメ元で一つ聞かせてもらってもいいですか?」

 

「なんでしょう…?」

 

「今から連邦生徒会への転入ってできますか?」

 

「アオバぁ!?」

 

「連邦生徒会の方が絶対福利厚生はしっかりしてるし、もうハイランダーでなんかやってられないんですけど!」

 

ハイランダーの余りにも悪い福利厚生と明らかにかける方向を間違えている予算の投じ方にアオバはそんな発言とともにとうとう癇癪を起こし、先生はたじろぎ始め、そして橘姉妹は我関せずで極めて自由に動くために混沌と化すシャーレ。

しかしながらそんなカオス状態と化したシャーレの中でただ一人、連邦生徒会長はまるで動揺すら見せずにアオバを諭すように優しく語りかけた。

 

「アオバさん」

 

その表情はまるで聖女の如く優しく、そして菩薩が如く穏やかなもので。

そんな穏やかな表情のまま、連邦生徒会長は。

 

「話を聞く限り連邦生徒会は福利厚生は確かにハイランダーよりは良い自信はありますが、割とブラック寄りですよ」

 

とんでもないことを極めてあっさりと言い放った。

これには先程まで癇癪を起こして騒いでいたアオバも「え…?」と目を見開いて固まり、とりあえず橘姉妹を相手にすることにした先生も「えっ」と連邦生徒会長に思わず視線を向けた。

 

「あぁ、組織がどうとかハラスメントとかどう、とかいう話ではありませんよ? その辺りは意識してますから。

なのにどうして、と思うかもしれませんが、前提として連邦生徒会はこのキヴォトス全体にある程度目を光らせる必要があるのです。問題が起きたりしたら対処できるように、ですね」

 

しかし、と連邦生徒会長はそこで一旦区切ると、穏やかな笑みのまま瞳にうっすらと陰を宿して更にアオバに対して言葉を続ける。本人は絶対に意識していないが、彼女の身体からは「まさか連邦生徒会が苦労をしていないとでも思っているのか…?」とばかりの凄まじい圧が生み出され、彼女の身体の周りは闇でも滲み出ているのか薄っすらとした暗くなっているように見える。

 

「しかしながら、このキヴォトスには困った方が多いでしょう? スケバンだのヘルメット団だの暴走族だの…。まぁこれは可愛いほうで、ひどい時にはデカグラマトンやらペロロジラだの、とんでもない物を相手にする必要が出てくるわけですよ。これらを相手にした時にはアオバさんは何が重要だと思いますか?」

 

「え、えっと…。どれだけ早く撃退できるか…?」

 

「そうですね、それも大事です。しかしながらですね、我々が最も動かなくてはならないのはですね…実は後処理のほうなのです」

 

そこまで口にする連邦生徒会長だが、しかしここまで彼女は実は「話を聞く限り」からずっと瞬きを一切しておらず、彼女は穏やかな笑みを浮かべたまま逃さないとばかりに顔を少し近づけてひたすらアオバの目だけを見て言葉を紡いでいた。その絵面はもはや新手のホラーである。

 

「被害を纏め、復興にかかる予算を計上し、関係各所に連絡を回し、時にはクレーム対応をしなければならない。えぇ、これがもう大変な訳です。しかもこれが月一、あるいは月二のペースです。しかも合間には不良の皆さんが暴れ回っていると来ていて、そちらも対応せねばなりません。おまけに立場上政治的な話もする必要がありますし、勿論困っている生徒達のお話も聞かなくてはなりませんし…これ、控えめに言っても休む暇がないと思いませんか?」

 

「は、はいぃ…」

 

「なので、ですね。連邦生徒会は休日返上さえするときもあってブラックよりの勤務となっているのです。アオバさんがまだ転入したいというのであれば…そうですね、トリニティやミレニアム辺りをお勧めしますよ」

 

「そ、そうですか…」

 

アルカイックスマイルを浮かべる連邦生徒会長による熱く昏いプレゼンを受け、アオバはこくこくと頷く。というか、怒涛の攻めと圧によってそれしかできなかった。

そんな二人の会話を、橘姉妹の相手をしながら聞いていることしかできなかった先生は──二度と連邦生徒会長を相手に忙しいなどといったことを宣うのはやめようと、そしてユメやプレナパテスにも協力してもらって絶対に是正させようと固く心に誓ったのだった。

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