話は変わりますが、バンド復刻+ナツ追加らしいですね。石が無ェよ。
今回は全力でふざけて作ったので特にキャラ崩壊注意です。いつものことですが。
この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女は泣きそうな顔で身体をさする。彼女がさすっているその箇所には絆創膏が貼られ、それは同時に彼女が傷を負っていることを如実に示していた。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
そこまで言った後、少女は言葉を切る。そして数秒の後、少女──連邦生徒会長は半泣きで目の前に座る人物に対して悔恨の言を漏らした。
「…素直にカンナさんの言うことをちゃんと聞いておけばよかったです…」
「…わかっていただけたなら何よりです」
目の前に座る獣の耳が特徴的な金髪の女性…尾刃カンナは連邦生徒会長のそんな発言に「ようやくわかってくれましたか…」と言わんばかりに深々と頷いた。その隣には直属の部下という訳ではないはずの中務キリノが心底申し訳なさそうに立っている。
なぜこんなことになっているのかと言うと、僅か数十分ほど前に遡る。
『本日はお忙しい中ありがとうございます。本日はよろしくお願いします、連邦生徒会長』
『こちらこそありがとうございます、カンナさん。案内のほど、よろしくお願いしますね』
今回連邦生徒会長はヴァルキューレへの視察へと赴いており、その案内はカンナが行っていた。
立場上お互いが視察に慣れており、実際他の学園に赴いたときよりも極めてスムーズかつフレンドリーに事が進んでいた。捜査の方針についてや犯人確保の演習などのヴァルキューレにおける訓練を一通り見て回り、カンナと二人であれやこれやと話しながら最後に射撃訓練を見ようというところで事は起きた。
カンナが射撃場を見るなり表情を険しくして足を止めたのである。
『…会長。射撃訓練の視察については後にして、少し休憩にしましょう。私も少し喉が渇きました』
『カンナさん、いきなりなにを…?』
そう言いながら連邦生徒会長もまたカンナの視線を追っていくと、彼女が見つめている先には件のキリノが居た。
中務キリノといえば勤務態度は至って真面目であり生活安全局としてはヴァルキューレ当局や市民からはかなりの高評価を得ているが、しかしながら全く以って無視できないとある欠点があった。
彼女が銃を撃つとその弾丸は必ず狙ったところに当たらず、まったくもって違うところに着弾する──あえて言葉を選ばずに言うのであれば、とんでもないクソエイムなのである。それも努力などではギリギリなんとかならなさそうな、呪いとも言えそうなレベルのである。
しかもたちが悪いことに、キリノ自身はそれについて銃が悪いのでは…? と自分の腕以外に要因があるのではないかと疑っている始末。ちなみに銃はきちんと整備されているのでそれはあり得ないことである。
そんな彼女がいる状態で射撃場に連邦生徒会長を行かせられない、というのがカンナの判断であることは明らかだった。
そこまでわかった上で、連邦生徒会長は静かに息を吐いて。
『大丈夫ですよ、カンナさん。いかに射撃に不慣れであれ、相手の真後ろに立てば銃弾が当たることはないでしょう?』
『それは…普通に考えればその通りなのですが。しかしですね…』
『カンナさん。時間もないですし、さっさと済ませてしまいましょう』
表情を曇らせるカンナとは裏腹に、連邦生徒会長は穏やかな顔でゆっくりキリノの後ろへとのんびり歩み寄っていく。そして射撃教官が場の静寂を切り裂くように『…始めッ!』と指示を出すと、キリノを含めた訓練に励むヴァルキューレの生徒達が一斉に銃の引き金を引いた。
瞬間、かん、かんと妙に小気味のいい音が響いたと思ったら。
『痛っ…!』
連邦生徒会長のお腹に軽い衝撃が走った。連邦生徒会長が事態の把握をしようと少し体勢を変えてみれば、からんからんという極めて軽い金属音が響いた。何かと思って確認してみれば、それは銃弾であった。
つまり。連邦生徒会長のお腹に銃弾がぶち当たっていたのである。
『だ、大丈夫ですか!?』
『キリノさん…私は大丈夫ですよ。皆さんも、気にしないで続けてください』
『会長、しかしですね…』
『カンナさん、この程度でいちいち止めていたら時間が足りません。さぁ、続けてください』
連邦生徒会長が力強く言うと訓練は再開した。しかしながら、この後も訓練している生徒たちが銃を放てば放つほど連邦生徒会長になぜか着弾し彼女は何度も痛みに呻くことになった。流石に訓練を中断・検証することとなったのだが、その結果キリノの銃弾が何度も跳弾した末に連邦生徒会長に着弾したことが発覚し訓練は中止・解散となり冒頭に至る。
「…しかしすごいですね、キリノさんは。まさか真後ろにいる私に銃弾をすべて当てるとは」
「…申し訳ありません…」
いつもの元気はどこへやら、キリノは凄まじく落ち込みながら連邦生徒会長に頭を下げ、そんな彼女と共にカンナもまた頭を下げる。偉い人に事故とはいえケガをさせてしまったのでそれもまた仕方のないことであるが、しかし連邦生徒会長はどうどう、と言わんばかりに落ち着いて顔を上げるように指示した。
「今回は事故ですし、カンナさんもやめておけと言っていたのに突撃した私も…というか、私が悪いですし。誰にも責任がいかないように処理しておきますので大丈夫ですよ」
「うぅ…本当に申し訳ありません…」
連邦生徒会長のそんな宣言に、しかし未だに涙目のキリノと申し訳なさそうなカンナは表情を変えることはしない。
そんな二人の真面目な警官を前に連邦生徒会長はさてどうしたものか、と静かに思考を巡らせる。
視察はここで終わりなので立場的には別に帰っても構わないが、しかしこのまま帰るのは個人的にはなんとなく気持ちがいいものではないわけで。
誰もなにも喋らない暗い空気の中、なにかいい案がないかと考えながら連邦生徒会長は取り敢えず言葉を絞り出す。
「……お二人は」
「「……?」」
考えろ、考えろ、考えろ。連邦生徒会長がそう思いながら、そしてなんとか絞り出した話題はというと。
「……お二人は、全身全霊本気の謝罪をしたことはありますか?」
どう考えても今の流れで出す話題としては完全に間違いである。が、口から重々しく出てしまったこの話題を切ってしまうとまたもあの暗い空気の中に逆戻りなのは明白であるため、連邦生徒会長は会話を切るわけにはいかずに渋々ながら彼女は言葉を紡ぎ続けていく。
「私はあります。リンちゃ…七神首席行政官や先生にしっかり怒られたときとかに、です」
「あ、あの…会長…?」
「勿論お二人に遠回しにやれ、と言っているわけではありません。フリとかでもありせんので、楽にして聞いていてください。これは私からお二人に贈る…そうですね、授業みたいなものですかね」
そんな連邦生徒会長の言葉に、カンナとキリノはちらりと互いの視線を交錯させる。ほぼ直属と言っていい人達のトップがわけの分からないことを言い出しているのだからそれも致し方のないことだし、連邦生徒会長もまたそれを承知の上で不本意ながらべらべらと口を回しているのである。
「これも何かの機会なので、今回は私が身につけた全身全霊本気の謝罪のテクニックを今この場に居るお二人だけに教授したいと思います。重ねて言いますが、今この場で私にやる必要はありません。というか、外聞が悪すぎるので絶対に私にやらないでください。これは私に謝罪してほしいから言っているのではなくもしかするとこの先お二人に必要かもしれないから伝えようと思っただけです」
思いっきり嘘である。別に連邦生徒会長は二人に必要かもしれないからこれを教えようと思って言い出したのではなく、良い話題が思いつかなかったのと空気感が重すぎるのに耐えかねてこの話を切り出しただけである。
しかしながら連邦生徒会長はそれを感じさせずにべらべらと喋り続けている。そんな彼女を見るキリノとカンナの瞳には「なんだこれは…?」「私達はどうするのが正解なんだ…?」という困惑の色だけが浮かんでいた。
「ではキリノさん。まず全身全霊本気の謝罪に必要なものとはなんだと思いますか?」
「えっ!? えーっと、私が悪かったです…っていう誠意でしょうか?」
「実直で誠実なキリノさんらしいいい答えです。その心はこれからも大事にしてくださいね。…しかし。全身全霊本気の謝罪に必要なのはそれだけではありません」
突如として話を振られたにも関わらず律儀にもそれに答えてくれたキリノだったが、連邦生徒会長のその発言を聞いてきょとんとした表情を見せていた。真面目な彼女は連邦生徒会長による実は話のネタに困って渋々出しているトークも真面目に聞いてくれているらしい。
「全身全霊本気の謝罪に必要なもの…それはですね、勢いです」
「勢い、ですか? 」
「えぇ。相手に付け入らせる隙を生まない、流星が如き勢い…それが全身全霊本気の謝罪に必要なものです」
「流星が如き勢い、ですか…。なるほど、勉強になります」
「……キリノ?」
連邦生徒会長自身すらも予想外なほどに「全身全霊本気の謝罪」トークに食いついているキリノに恐らくは話半分程度に聞いていたカンナは彼女に声をかける。しかしそんな彼女の言葉はなぜか黙殺され、そのまま連邦生徒会長の「全身全霊本気の謝罪」に関するレクチャーはまだまだ続いていく。
「何故謝罪に勢いが? と思うかもしれませんが、しかし考えてもみてください。…普通の謝罪をしたところで、相手に伝わっているかはわかりませんよね?」
「それは…そうかもしれません」
「本当にそうか? キリノ自身が言うように誠心誠意頭を下げて、場合によっては始末書を書くだけでいいんだぞ?」
「そんな時に全身全霊本気の謝罪の出番です。相手に謝罪の意を絶対に伝えたいときにこれを使いましょう」
「私の発言を無視しないでほしいのですが?」
カンナの冷静かつ切実な問いかけはしかしまたも無視され連邦生徒会長とキリノの全身全霊本気の謝罪に関する授業は更に続き、そしてカンナはやがてげんなりとした表情を見せ始めた。
そんな彼女の様子に気づいていながら、しかし連邦生徒会長とキリノはそれを一旦脇に置いて全身全霊本気の謝罪の実践に入り始めていた。
「いいですか、キリノさん。まずは正座から始めましょう」
「正座ですか…本官、正座はあまり得意ではないのですが…」
「…もう既にここからどうするか読めたのですが。これはいわゆる土下座なのでは?」
「ただの土下座とたかをくくっていると痛い目を見ますよ、カンナさん」
「そうですか…」
もはや諦めてやけくそになり始めたのか、全身全霊本気の謝罪の講習に対して微妙に前向きになり始めるカンナ。そんな彼女もまた既に正座の態勢に入っているキリノや連邦生徒会長と同じく正座の態勢をとった。
全員が正座の態勢を取ったのを確認すると、連邦生徒会長は本格的に実践に入った。
「まずは私が手本を見せます。よく見ていてくださいね」
「はい! よろしくお願いします!」
「…よろしくお願いします、会長」
「こちらこそよろしくお願いします。それでは…」
そう言って連邦生徒会長一旦目を伏せ──そして突如としてかっと目を見開くと。
「……すみませんでしたっっっっっっ!」
芸術品とすら言える凄まじく美しい土下座を、床で頭蓋をたたき割らんとばかりのとんでもない勢いと腹の底から出てくる謝罪の言葉とともに行った。連邦生徒会長の突然の行動にキリノもカンナも流石に驚いて体を少し跳ねさせる。
しかし、連邦生徒会長の全身全霊本気の謝罪はこれだけでは終わらない。キリノとカンナが驚いた隙に全力を以って謝罪の言葉を流麗に吐き出しまくった。
「この度は私の不手際によって皆さんにお手数をかけさせてしまい誠に申し訳ございません
一息でこう言い切った連邦生徒会長はゆっくりと顔をあげながらうっすらドヤ顔を浮かべて「これです」と全身全霊本気の謝罪を締めくくった。一方のキリノとカンナは未だ衝撃から抜け出せていないのか、目を見開いたまま硬直している。そんな彼女達の様子を見ながら、連邦生徒会長は「コツはプライドを捨ててできるだけみっともなく、です」と更に付け加える。
「……すごい、ですね。会長は特に何も悪いことはしていないのに何故だか見逃したくなってしまいました…」
「とんでもないですね、これは。取り調べ対象にこれを使われると厄介極まりなさそうだな…」
キリノとカンナの感嘆した様子を見て、連邦生徒会長は「私にかかればこんなもんです」とばかりにふっと笑う。その実に堂々とした様子は先ほどみっともない土下座を見せた人物とはとても見えない。
「体感してくれたみたいですね、これが私の編み出した全身全霊本気の謝罪です。これをマスターすればこちらに非がある場合の追及については割と高確率で避けられ、以後気を付けてくださいで済んだりします」
「それは…そうでしょうね。会長の様な人物からこれが出されるとなると、こちらの言い方が悪いのかもしれない気もしてきますし」
「ですが…会長はどうして本官たちにこれを見せてくれたのですか?」
キリノの純朴な疑問に対し実際のところ話題が無かっただけの連邦生徒会長は一瞬答えに窮したが、しかしその超人とも称されるその頭脳は即座にそれっぽい答えを導き出した。先ほどは重い空気によって碌な話題を出すことができなかったが、これでも連邦生徒会長という重い責任のその名は伊達ではないのだ。
「…お二人が自分の正義を持っていると思ったからです。決して褒められたものではないので絶対に使えとはいいませんが、貴方達の正義を貫くのに武器は一つでも多い方がいいと判断し、私はこの技術を見せることにしました」
言うまでもないが半分くらいは嘘である。確かにカンナやキリノのような実直な人間が自分の正義を貫くには時として組織に逆らう必要だってあるだろうし、そのための武器だって必要になるだろう。しかしながら、その時に使うのがこんなものであってほしくないなぁ…と連邦生徒会長は思っている。このように、政治家には思っていることと全く違うことを真顔で言う必要が時にはあるのだ。
「会長…! 本官、必ずやこれをものにし会長の思いに応えてみせます! なので…ご指導のほどお願いします!」
「正気かキリノ!? お前はそれでいいのか!?」
「キリノさん…わかりました。私の持つすべてを以って、貴方の全力の謝罪を必殺技にまで仕上げます。厳しい訓練になりますが、覚悟はいいですね?」
「会長まで!? …おい待てキリノ、袖を引っ張るな! 私は絶対にやらないぞ!? 離せ、私にはまだ仕事があるんだ!」
じたばたと抵抗し続けるカンナだったが、しかしキリノの懸命な説得…というか拘束によって逃げられずに連邦生徒会長による全身全霊本気の謝罪訓練に付き合わされることになり、そしてその後訓練場からは連邦生徒会長の熱心な指導の声が響いてきたのだった。
以下はその一部である。
「土下座の形が甘いですよ! そんなので相手の許しを獲れると思っているのですか!」
「勢いが弱いです! 頭を床で叩き割るような勢いで! …待った、勢いが良すぎます。怪我をするから床に頭を押し付ける前に少し勢いを弱めなさい!」
「なんでもするなんて言わない! 悪質な契約を結ばされますよ!」
「噛まない! 相手に悪印象を与えます!」
「声量が足りませんよ! 威圧するつもりでいきなさい!」
「プライドなんて後で拾えばいいんです、謝るときは一回それを捨てなさい!」
そして、キリノとカンナの全身全霊本気の謝罪が形になり連邦生徒会長目線で使い物になったところで彼女は弟子たちに一つ教えを与えた。
「お疲れさまでした。最後に、ですけど。これはいわゆる最終兵器…つまり普段使いするものではありません。いざというときにだけ使うんですよ、いいですね?」
「はい、会長…いえ、師匠! 本官はまた一つ大事なものを得られた気がします! ありがとうございました!」
「…はぁ、はぁ…。少なくとも精神鍛錬にはなったが…これは本当に警官にとって必要なものなのだろうか…?」
弟子たちのそんな発言を聞いて、当初の目的すらも忘れて一仕事を終えた連邦生徒会長はキリノとふらふらになったカンナの敬礼を背にヴァルキューレを去っていく。
そして、連邦生徒会へと戻った彼女を待っていたのは。
「随分と長い視察でしたね、会長。それに風の噂で聞いたのですが、ヴァルキューレの生徒に妙なことを吹き込んでいたとか…?」
青筋を浮かべたリンの姿である。本能的にまずいと悟った連邦生徒会長は、本日の総仕上げとして。
「…………すいませんでしたっっっっ!」
今日一番の機敏な土下座を決めたのだった。