実のところ、最近ネタ切れ気味でございます。
なのでこれから次の話が上がらなかったら「あぁこいつネタ切れ起こして書けなくなったんだな…」とお思い下さい。
この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女は全身から焦りを隠せない様子で市街を駆ける。彼女がそんな様子を見せているのは珍しく、その様子を見た者たちは何事かと怪訝な表情をせざるをえない。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
そこで言葉を一旦切ると、少女──連邦生徒会長は嘆きと悔恨と恐怖が混ざった混沌とした声をあげた。
「まさか名作映画を貸したと思ったら、うっかりアレな映画を貸し出していたなんて…!」
何故こんなことになっているか、それは時間を遡る必要がある。それはある日、連邦生徒会長がシャーレに足を運んだ時のこと。
『失礼しま…どういう状況ですか、これは…?』
連邦生徒会長が目にしたのはデカいスクリーンに映し出された映像と、それを観賞しているツルギとネル、それとシャーレの職員達だった。
『お、連邦生徒会長じゃねぇか。暇なら見てかねぇか?』
『いえ、この後も予定が立て込んでますから。…ところで、珍しい組み合わせですが皆さんは何を?』
『何をって、そりゃ映画みてんだよ』
ったりめーだろ? とネルは心底不思議そうな目で連邦生徒会長に視線を送りながら机の上に置いてあるポップコーンに手を伸ばす。その様子を見て、連邦生徒会長は聞き方を変えてもう一度質問をする。
『まぁそうでしょうが…何故このメンバーで映画を見ることに?』
『あ? あー…なるほど、あたしとそこのやつがなんで仲良く隣に座って映画なんか見てんだっつーことか? だったら答えは簡単だ、意気投合したんだよ』
『…一体いつの間に。そんな素振りは…。あ、もしかして』
連邦生徒会長の脳裏に過るのは、空が紅く染まったあの数日間。プレナパテスとシロコ*テラーこともう一人のシロコ、それからプラナが「こちらのキヴォトス」にやってきた時のこと。
たしかあの時、ネルとツルギは同じ部隊で色彩化したケセドと交戦していた筈だ。
『おう、そうだよ。あんときからなんとなく互いに連絡取るようになってな。へへっ、時々こうして好きなもん持ち寄って「遊んでる」んだよ。なぁ?』
『キヒヒヒ…!』
遊んでる、の部分に随分と含みがある気がしたが連邦生徒会長はそこは流した。2人なら悪いことにはならないという確信はあるからだ。…悪いことにはならない代わりにとんでもないことになりそうな気もするが、それはそれ。どうにでもなれ、の精神である。
『…それにしても、恋愛映画なんですね? ちょっと意外です』
『こいつの趣味でな。次回はあたしの趣味の映画を持ってくることになってる。…んだけど』
『どうしたんです?』
『や、なんつーか結構な頻度でやってっからマンネリ気味でよ。こいつのおすすめ、あたしのおすすめ、こいつのおすすめ、あたしのおすすめでずっとローテをやってんだけど、なんかなぁ…』
『ネタ切れになりかけてるんだって。だから時々いわゆるクソ映画を差し入れしてるんだけど、やっぱり肌に合わないらしくてね』
先生がそう言った途端、ネルは『てんめぇ、先生! やっぱクソ映画なんじゃねぇかアレ!』と飛びかかる。
一方の先生は『でもネルもツルギも楽しんで見てたじゃん!』と反省の色がまったく見えない反論を繰り出した。その表情はめちゃくちゃ楽しそうである。
そんなしょうもないケンカを始める2人を横目に、プラナは連邦生徒会長に問いかけてきた。
『興味。連邦生徒会長はどういう映画がお好きですか?』
『そうですねぇ…』
『ふふん、スーパーアロナちゃんが当ててみせましう! …むむむ、コメディ映画です! どうですか?』
『コメディ映画ですか。ふふ、あぁいうのもいいですけど一番好き、というわけではありませんよ』
『えぇ!? 会長さんは楽しいの大好きじゃないんですか!?』
アロナは心底驚いて大声を出し、プラナはぼそっと『外しましたね、スーパーアロナ先輩』とからかう。勿論それは聞こえていたようで、『むー、プラナちゃん!』とまんま先生とネルのようにしょうもないケンカをし始めが、しかし外の2人と違ってこちらはかわいげたっぷりである。
そんは2人を更に横目に、今度はユメが問い掛けてくる。
『じゃあ、会長ちゃんはどういう映画が好きなの?』
『パニックホラーですね。偉そうな人が痛い目を見るのが愉快で愉快で』
『……苦労してるんだね。困ったことがあったらいつでも言ってね?』
『4分の3くらいは冗談ですよ、そんな顔しないでください。…最終的に追い詰められた人が起死回生の一撃で反撃する、というのが大好きなんです』
そこまで連邦生徒会長の映画事情を説明したところで、どうやら先生への制裁が終わったらしいネルが声をかけてくる。
『おー、じゃあおすすめ教えてくれよ。なんかあんだろ、いい映画』
『そうですね…あ、そういえばいくつか自宅にディスクがありましたね。今度持ってきますよ』
『お、そうか。悪ぃな、頼むぜ』
とこの場は丸く収まり、そして後日ディスクを不良映画を見ていたネル達に渡した後、問題が発覚。
ちゃんとしたパニックホラー映画をネル達に渡したと思ったら、ぱっと見では似たようなアレな映画を渡していたことに気づいてしまったのだった。これは連邦生徒会長がそのチープさやくだらなさを逆に気に入って集めているシリーズだが、人を選ぶのであまりおすすめしていないシリーズでもある。
故に。何か言われる前にディスクの回収・交換・謝罪を済ませるために本来渡す映画のディスクを収めたパッケージを袋に入れ、それを持ってシャーレへと走っているのであった。
その焦りは凄まじく、
「お、連邦生徒会長じゃあぁん! へへ、ここで積年の恨み…」
「どきなさい!」
「ぶふぉう!?」
邪魔をするチンピラを飛び膝蹴りの一撃でダウンさせてそのまま走り去るほどであった。
そんな具合で幾度か絡んできたチンピラに飛び膝蹴りをかまし、なんとかシャーレに辿りつくと、苦労虚しく既に連邦生徒会長が所蔵していたアレな映画が上映されていたのだった。
が、シャーレの部室はお通夜ムードではなく、むしろ和やかな空気である。
「ははは、んだよこれ! そうはならねぇだろ!」
「キヒャヒャヒャ!」
『あははは! なんですか、この音楽!』
と爆笑してるネルとツルギとアロナ、
「えぇ…? 何これ…? なんでサメさんが変形するの…?」
『理解不能。…サメは咬合力が強いのでは…? カジキマグロのように突撃して人を殺傷するのは何か生物的に間違っていると判断します』
と本来想定される模範的な反応をするユメとプラナと、そして。
「へぇ、なかなかすごいサメ映画だね…! キヴォトスにもこういう映画あるんだ…!」
「………あるべきサメ映画。うん、おもしろいね。サメ映画マイスターの血が騒ぐ…!」
何か妙な火のつき方をしている先生とプレナパテスがそこに居た。サメ映画マイスターとはなんだろうか、とは思いつつも連邦生徒会長はとりあえずシャーレに足を踏み入れる。それに気づいた一同がこちらに視線を向けてくるが、その瞳には疑念や呆れなどは特にない。
「おう、借りたやつ見させてもらってるぜー? へへ、中々いい映画持ってんじゃねぇか、こういう色んな意味でぶっとんだ映画は嫌いじゃねぇ。むしろ気に入った!」
「ご覧の通り、ネルもツルギも、勿論私たちも気に入ってね。ありがとうね、面白いサメ映画を持ってきてくれて」
先生のその言葉にユメは「私たちって、私も入ってるのかな…?」と言わんばかりの視線を先生に向けたが、それに対して先生は「どうしたの?」と言わんばかりの優しい微笑を返すと、ユメは「まぁいっか…」と視線を戻す。
そんなみんなの視線に、連邦生徒会長は目を丸くした。連邦生徒会の面々にそれとなく勧めてみたときは事前に情報を仕入れてすぐに突き返してきたモモカ以外からはかなり微妙な反応が帰ってきたために、連邦生徒会長が所蔵するアレな映画を見てこの反応というのはかなり新鮮なものであったからだ。
『あれ。どうしました、会長さん?』
「あぁいえ、こういう…アレな映画でこの反応は初めてでして。ちょっと驚いただけです。…もしかして、皆さんからすればこちらよりもそちらの…アレな映画の方がウケがいいのでしょうか…?」
そう言いながら連邦生徒会長が袋からパッケージを引っ張り出すと、ネルたちは顔を寄せてそのパッケージを吟味しだす。
「へぇ、もしかしてそいつが例の名作映画か? こいつも一応借りとくぜ。いいよな?」
「えぇ、勿論。感想を楽しみにしてますね」
そう言って連邦生徒会長から受け取ったネルだったが、後日返却されたときにもたらされたネルと先生からまた聞きしたツルギからの実際に見てみた感想はというと、
「面白かったは面白かったけど、例のアレな映画が色んな意味で面白くてちょっと霞む」
という名作映画よりもアレな映画のほうが面白いという極めてレアなものであった。その後どうやらそれぞれ自分が所属している組織内でその話をしたらしく、正義実現委員会の生徒たちを主体としたトリニティの生徒たちやミレニアムの生徒たちがこぞってアレな映画目当てでシャーレに訪れるという珍事が発生。
その大半にアレな映画は困惑と笑顔をもたらし、また理解できなかった生徒たちも普段あまり関わることがない先生や他校の生徒たちと関わりが持てて嬉しそうでもあった。
それだけに留まらず、アレな映画が何故か連日放映されてしまっている影響で当番生徒たちを通じて更にキヴォトス中を駆け巡る。
最終的にはアレな映画がじわじわとファン数を増やしていることが制作会社に届き、新作映画が製作発表された際はキヴォトスの稀有なアレな映画ファンが歓喜で揺れた…が、ここまでのことになっても連邦生徒会においてアレな映画の話題を共有できるメンバーはおらず、連邦生徒会長はちょっと淋しく思いながら今日も仕事をするのであった。