余談ですが、ぶっちゃけゴズはどうやって戦うのが正解なのか未だによくわかっていません。なんじゃアイツは。
この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。
「私のミスでした…」
少女は心底悔しそうに俯き、若干悲し気に呟く。その表情は途方に暮れているようにも見えるが、しかしその空の如く蒼く澄んだその瞳は、未だに闘志を失っているようには見えなかった。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のあの選択が間違っていたことを知るなんて…」
「図々しいお願いですが、お願いします」
そうして蒼い瞳の彼女──連邦生徒会長は顔を上げると、すぐにまた思いっきり頭を下げる。その勢いが強すぎたのか、頭を下げた勢いでカードが並んでいる机に思いっきり額をぶつけてゴンっと鈍い音を立てた。その姿に対面に座る相手ではなく周囲の人々がちょっと驚いていたが、しかしながらそんなことは構わず彼女は唸る。
「…もう一回…いえ、そちらの都合が悪ければもうこれが最後でもいいので相手をしてください…」
「あはは、もう何回もやってるんだから今更そんなことしなくていいのに! ね、早く次のゲームしよ! みんなもいいよね?」
朗らかにそう言って対戦相手──一之瀬アスナは周囲の面々に確認を取る。そんな彼女の確認に対して、諸般の事情によってこの場にいないリーダー・美甘ネル以外のC&Cの面々は各々笑みや頷きでそれを了承。
連邦生徒会長は、回収されるカードを横目に見ながらにこにこしているアスナに静かに感謝を述べて今度こそ勝利を掴むべく勝負に挑んでいくのであった。
場所はC&C部室。仕事のためにミレニアムへと訪れた連邦生徒会長がC&Cの部室に顔を出したところ熱烈な歓迎を受け、連邦生徒会長側も時間が余っていたので雑談に入っていたのだがその際に、
『アスナさんって髪長いですよねぇ』
という話からちょっとばかし雑談を挟んだ後にヘアアレンジの話になり、そしてアスナと話しながら連邦生徒会長はふととある話に思い至った。
それは、一之瀬アスナは勘がいいというレベルではなく未来を感覚的に予見しているのではないかといったレベルで行動することが多い、といったものである。
故にそれが実際のところどんなものなのだろうかと不意に気になってしまった連邦生徒会長はというと、こんなことを吹っ掛けてみたのである。
『ポーカーでもしませんか? 流石にお金を賭けるわけにはいかないので…そうですね、勝った方は負けた方のヘアスタイルをそれなりに好きに弄れる、とかで』
『いいよ! やろやろー!』
とあっという間に快諾されてある程度の独自ルールでゲームを開始したはいいものの、連邦生徒会長がスリーカードを揃えたらストレートで、ストレートを揃えればストレートフラッシュでといった具合に、連邦生徒会長が必死こいて役を揃えたらあっさりその上を超える役を叩き込まれてあっさり敗北。
そして5連敗ほどしたところで連邦生徒会長は検証どころか普通に悔しくなって冒頭に至るのである。
「ディーラーは変わらず私が。二人とも、構わないだろうか」
「はい…。よろしくお願いします、カリンさん…」
「うんうん、よろしくね、カリンちゃん!」
ディーラー役を買って出た角楯カリンの確認に、連邦生徒会長もアスナも了承。ちなみにアカネとトキは別にポーカーに参加している訳ではなく、二人揃って5回のポーカー勝負には参加しておらず観客に回っていた。正確に言えばトキは参加しようとしていたが、連邦生徒会長の意図を読み取っていたアカネがそれを制止したのである。そんな事情を口には出されずとも察しはしたものの、しかしながら仲間外れにされたことは紛れもない事実であるためいつもよりほんのちょっとだけトキは機嫌が悪い。本人は絶対にそれを認めようとはしないが。
「次のゲームを始めようか。カードを配るよ」
「次も勝っちゃうよー!」
「今度こそっ、勝ちます…ッ!」
「えぇ、アスナ先輩も連邦生徒会長も頑張ってください。そして次のゲームこそ私も仲間に入れてください」
「まぁ…そろそろ潮時でしょうしね。検証もいいですが、そろそろ私達も仲間に入れてもらってもいいのかもしれません」
どうどうとでも形容できるジェスチャーでトキを宥めるアカネを横目に、連邦生徒会長とアスナの第6ゲームが始まった。
連邦生徒会長の手札はこの時点でワンペア。三枚目のカードが出てくれば少なくとも勝ち目が出てくるというこの手札、しかしながら連邦生徒会長の表情は些か硬い。なにせそんな状況からちゃんと敗北、というのは全くもって珍しいことではなく、なんなら5連敗の内にはフラッシュでドヤ顔をしていたところストレートフラッシュで捻りつぶされたことがあるのだから妥当なところである。
そんな緊張感の漂う連邦生徒会長とびっくりするほど自然体のアスナによるポーカー勝負はその後も続き、最終的に二人とも勝負から降りることはなく。
「では…ショーダウン。二人とも、カードを見せてくれ」
「スリーカードです」
「フルハウスだから…あっ、私の勝ちだね!」
「まぁ」「おや」
アカネとトキの絶対にそこまで驚いてはいないであろう驚きの声に、連邦生徒会長はふぅーっと溜息を零して空を仰ぐ。連邦生徒会長、本日6度目の敗北の瞬間であった。
彼女は数秒天井を眺めると、これまでの勝負の結果とアスナの様子を噛みしめて心底苦しそうに苦い声を絞り出し。
「…参り、ました…ッ! 私のッ…髪を…好きに、してください…!」
立場上滅多なことでは言わないし言えない敗北宣言を、連邦生徒会長は行った。そんな彼女の様子を見たアスナはにっこりと一層の笑みを浮かべ、カリンは目を丸くし、アカネとトキに関しては既にブラシやらなんやらといった様々なヘアコーディネート用品をどこからか持ってきていた。
そんな周囲の様子をちらっと確認したアスナは、にっといつもの太陽の如き笑みを浮かべると。
「ふふふふふ…思いっきりコーディネートしちゃおっか! 総員、かかれーっ!」
アスナのどこか気の抜けた突撃宣言とともに、連邦生徒会長はC&Cの面々にあっという間に取り囲まれてしまいされるがままにヘアアレンジをされてしまうことになってしまった。
やれポニーテールだの、ハーフサイドアップだの、いわゆるお嬢様結びだのととにかくヘアアレンジをされては写真を撮られたり。それなりの罰ゲームではあるが、しかし回数を重ねていくとなんとなくやられている側も楽しくなってくるわけで。
「…もしかしたら私って自分で思っているより色んな髪型が似合うのでは?」
「あははっ、当たり前だよー!」
「あら、もしかして今まで気づいていなかったのですか? なんということでしょう、キヴォトスにおいてかなりの損失です…」
「それはちょっと言い過ぎだとは思うけど…どんな髪型でも似合っている、と思う。ファッションには明るくはないからこういう言い方しかできないけど…」
「私と同じくどんな髪型でも似合いますね。こうなれば清楚系から綺麗系まで、なんでもござれでしょう」
連邦生徒会長やC&Cはそんな会話を皮切りに、もはや罰ゲームや賭けの対象といった今回のポーカー勝負に関する事柄を全て投げ捨ててその場の全員のヘアスタイルを弄り始めて盛り上がっていく。そんな彼女たちの姿はエージェントや政治に絡む女子たちでなく、ただの一般的な女子生徒そのものであった。
そうしてそんな具合に彼女たちが盛り上がっている中でC&Cの部室の扉ががらりと開き、小柄な女子生徒──若干ガラは悪いものの、しかしながらありとあらゆる意味で頼りになる『ミレニアム最強』ことC&Cリーダーの美甘ネルが部室にやってきた。
「なんかいつも以上に騒がしいと思ったら…来てたのか、会長さんよ? つか、こいつはどういう騒ぎだ…?」
部屋を一瞥してなお状況がわからなかったらしく湧いて出た疑問に目を細めるネルだったが、しかしながらそんな彼女の視線を受けた一同はいったん視線を合わせ…そして『せっかくだからネルの髪も色々アレンジしてみよう』という共通認識の下ぎらりとした視線をネルに向けてじりじりと歩を進める。
「…オメーら、なんか企んでんな? ちょ、オイコラ、じりじり距離詰めてくんじゃねー!」
ほんのちょっぴりだけ怯えを交えながらも強気の態度を崩さず一同を追い払おうとするネルだったが、しかしながら一同はそんな強気の態度を意に介さずじりじりと近づいていき。
そしてネルと一同の距離の差が5歩ほど離れたところで。
「みんな、いっくよー!」
「うおっ!? おいこらオメーら、やんのか!? …っしゃ上等だコラ、オメーらがその気ならこっちもやってやろうじゃねぇか!」
アスナの号令と共にC&C、そして連邦生徒会長がヘアアレンジを目的に即興にしては素晴らしいコンビネーションでネルに襲いかかっていき──そして勃発した小さな諍いの後返り討ちにされ、一同はネルにしっかり怒られてしまったのだった…が、なんだかんだで面倒見のいいネルはほんのちょっとの時間だけならヘアアレンジを許可。
彼女は珍しく暫しの間大人しく一同のおもちゃにされた…のだが、一同がエキサイトしてふざけ始めた結果堪忍袋の緒が切れたネルによって再び一同は制圧され、今度こそみっちりネルに説教を受けてしまい──さらにその後、部室で暴れまわったことを嗅ぎつけてきたユウカによってネルを含め一同はすさまじい勢いで怒られてしまったのだった。
……なお、そのお説教が効いたのはカリンと連邦生徒会長だけであったという。