シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

56 / 63
どうも。マジでネタ切れでようやく絞り出したのがこのザマだったので投稿します。

この作品は、
・ハーメルン様(ココ)
・Pixiv様
の二つのサイトで投稿させていただいています。


「私のミスでした…」ミカ「その52だよっ☆」

(私のミスでした…)

 

少女は部屋に入った瞬間に踵を返して連邦生徒会本部に戻りたくなったが、しかしながら頼まれてしまった上で足を踏み入れてしまったが故に仕方がなくその場に立ち尽くして天井を見上げて静かに深呼吸した。

 

(私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…)

 

(この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…)

 

いつもは聡明さが宿るその清流が如きその瞳には現在呆れや困惑や若干の怒り、哀しみなどが絶妙な塩梅に渦巻いた複雑な感情が宿っており、それは少女…連邦生徒会長が今まさに対峙しているその案件が彼女を以てして解決するのが困難、あるいは面倒であることを如実に示していた。

 

(『緊急事態』と聞いて来てみれば、友情崩壊ゲームでものの見事に友情が崩壊しかけているだけとは…)

 

いやまぁだけというには些か重大ではあるかと内心訂正しつつも連邦生徒会長が改めてシャーレ休憩室内に視線をやると、やたらとギスギスした空気を垂れ流しているティーパーティーの面々とようやく助けが来たと言いたげな顔色が悪い先生の姿がある。ちなみに、後で話を聞いてみればユメとプレナパテスはこの時、この空気感に耐え切れず上手い事言って逃げたらしい。あまりにも無情である。

彼らの手元にはゲームで使うコントローラーが握られており、そして肝心のモニターにはとあるゲーム…友情破壊ゲームと名高いサイコロで出た目の数だけ電車を操作し目的地を目指しながら総資産でトップを目指すかのゲーム画面が映っていたために、連邦生徒会長は何が起きたかをおおよそ悟ることができた。

だがしかし仮定で事を進めてはいずれ致命的な失敗を犯す可能性があると知っている連邦生徒会長はというと、ほぼ真実であろう仮説を持ちながらもその場にいる全員に声をかけた。

 

「あの…なんだか剣呑な雰囲気ですが、なにがあったのですか…?」

 

「……簡単な話ですよ。セイアさんの妨害が原因で私がゲーム内で築き上げてきた資産が吹き飛んでしまったのです」

 

「おや、なにかと疎外されがちなナギサが我々の中で一人ぼっちになるのは可哀そうだと思ってお揃いにしてあげただけなんだが…。しかし、不満があるならば先の順番の際に私の資産を丸ごと消し飛ばしてくれたミカに言うべきでないかと私は思うよ」

 

「えー…それについてはセイアちゃんが煽ってきたのが悪いし、っていうか私の物件と手持ち金はナギちゃんが消し飛ばしてくれたじゃん? 因果応報ってヤツじゃないの?」

 

「そういえば五十歩百歩とはいえ私たちの中で現在資産を持っているのはミカさんでしたね。…ここから数回の順番、覚悟しておいてくださいね?」

 

連邦生徒会長を無視したナギサの凄まじいプレッシャーを感じさせる笑みに対し、ミカもかのアリウススクワッド追撃の時のような笑みで「…上等じゃん? 先生はともかく、ナギちゃんにもさっきから黙ってるセイアちゃんにも負けるつもりないからね」と返し、空気に重力を纏わせ連邦生徒会長を以てして足を竦ませるほどの空気感を作り出していた。

同時に人数合わせ兼ゲームの説明役の先生の顔色は胃痛のせいなのかさらに悪くなっており、連邦生徒会長は同情の念を内心で送ると、彼女は再びティーパーティーの面々に視線を戻し──静かに説得は密かに断念した。あまりにも雰囲気が悪すぎて下手に動けば矛先がすべてこちらに向きかねないと判断したのである。

せめて少しだけでもここにいてあげようと連邦生徒会長がゲーム画面に向き直ってみれば、現在の一位はなんと先生。というか他のプレイヤーがとんでもない赤字を叩き出しているのに先生だけが黒字であった。恐らくティーパーティーの皆が派手に蹴落としまくったのだろうなぁと連邦生徒会長はぼんやりと思う。

 

「…あ、えー…っと…。わ、私の番、だね! このままっ、目的地にっ…着いちゃおっか…なぁ!?」

 

「あははっ、私達のことは気にしないで先生は進んで進んで!」

 

「あぁ、先生は先へ進むといい。こちらの用がひと段落したら私も追いつくつもりさ」

 

「…ふふ、えぇ。ですが先生、ミカさんとセイアさんを片付けたら…次はわかっていますね?」

 

((怖っ…))

 

ミカとセイアを下したらという前提ではあるものの、桐藤ナギサの「次はお前だ」と言外に告げる犯行予告に先生も、そして実際にゲームをプレイしていないはずの連邦生徒会長も背筋に冷や汗を一筋流すほどに恐怖した。なにせ表情が獲物を狙う猛禽類そのものだったのだ、それも致し方のないことである。

が、いつまでもそうしている訳にもいかないので先生は震える手でコントローラーを操作し列車を動かしていく…のだが、ティーパーティーの全員が『まぁ先生のことよりも…』とでも言いたげな昏い熱のこもった視線をゲーム画面に向け、もはやシャーレ休憩室の空気は『圧』と『恐怖』に満ち満ちており、特に用がない人は近づくことさえ憚れる空間と化していた。

 

「次はミカさんの番で…。…わっ、これは酷い手持ち金…あ、カードもないんですね…」

 

「…あっは、会長ちゃん。言わなくてもいいことってあるよね?」

 

「…すいませんでした」

 

思わず口に出てしまった感想に手痛いカウンターを受け、連邦生徒会長は静かに部屋の隅っこに縮こまってこれ以上の追撃が来ないように口を噤んだ。ミカからの圧が半端ではないのである。

そんな一連の流れを見ていたセイアは「ただの事実確認だろうに…」と憐れむような視線で連邦生徒会長を見ていたが、しかしながら現在お邪魔キャラがついているセイアの番になったら彼女は「どうしたんだい連邦生徒会長、何か言いたいことでもあるのかい?」と強めに圧をかけてきた。別にセイアも連邦生徒会長の味方というわけではないのである。

そして、来るナギサの番。

 

「…ふふ、このような失態を他人に…とりわけ連邦生徒会の長に見られるのは屈辱ですね。…俄然燃えてきました」

 

彼女は相も変わらず獰猛な笑みを浮かべ、しかしながら迷うことなく電車を動かしカードを取得。自由時間の少なさゆえにあまりこのゲームを触れていない連邦生徒会長だったが、しかしながらそんな彼女でもあっと声を上げた。

ナギサが先ほど取得したそのカードは、ゲーマーたちの間でも「調整ミスってない?」と噂される凄まじく殺意の高いカードだったのである。そんなものが今の憎しみにとらわれているナギサの手に渡ってしまえばどうなるかなど、火を見るより明らかだ。

その証拠にナギサの表情はかつてないほどに悪い笑みであり、セイアやミカも先ほどの挑戦的な表情を曇らせ警戒の表情となっている。なお先生だけはもはや死にそうな顔だったが、しかし他の三人の視界にはどうやら入ってはいないのか、すっかり放置されていた。

あのカードによって何度も地獄を見てきたんだろうなぁと連邦生徒会長が突っ立ったままぼんやりと思っていたところ、件の先生は手番をさっさと終わらせていがみ合いを続けている三人をよそにこっそり手招きをしてきた。

嫌な予感に身を苛まれながら連邦生徒会長が近づいて先生の耳打ちに耳を貸すと、案の定というか先生は。

 

「…操作、代わってくれない?」

 

ゲームの操作の交代を連邦生徒会長に要求してきたのであった。そして、それに対しての連邦生徒会長の答えはというと。

 

「あの、ちょっと…えぇ、まぁ気持ちはわかるんですが…本当に申し訳ないのですが、心の底からお断りさせていただきます…」

 

「そこをなんとか…! 私もそろそろ胃がもげそうだよ…!」

 

「そう言われると代わってあげたいのですが…。おそらく辛うじて先生がプレイヤーとして参加してくれているからリアルファイトには発展していないだけで、私が入って先生が退室したらそれこそリアルファイトに発展しそうですよ…?」

 

「わかった、じゃあせめて部屋にはいてくれないかなぁ…!?」

 

「いやぁ…実は私、緊急事態らしいので話を聞いてくるってリンちゃんに言って飛び出してきちゃいましたから。あんまり長いこといるとリンちゃんにまたどやされそうなんですよねぇ…」

 

「そうだったね、そう言って呼びだしたんだった…! これは私のミスだっ…!」

 

相も変わらずティーパーティーの面々は互いに互いの動向に気を配っているために連邦生徒会長と先生の小声でのやり取りに気づいていない…と思いきやいつの間にかティーパーティーの面々の操作は終わっており、ゲーム画面では先生の番になっていたため二人に視線が集中。

あっと気の抜けた声を出す二人に対し、三人の殺意すら感じさせる鋭い視線が突き刺さり。

 

「…ねぇ先生。まさかとは思うけど抜ける、なんて言わないよね…? それにさ、なんか近くない…?」

 

「これは私たち三人の勝負ではあるが、当然先生との勝負でもあるんだ。…どうあれ、勝負の卓にはついていてもらおうか」

 

「…ふふ、先生? 私達が勝負をしたいのは先生とであって、今は連邦生徒会長としたい訳ではないのです。…この意味がお分かりですよね?」

 

三人分の視線と圧と若干の殺意。それと同時に真横から送られる先生の恐怖と頼むからここに居てくれという嘆願の視線を受けた連邦生徒会長はというと、いくつかのシミュレーションを脳内で走らせ自分がどういう行動をとるのが一番いいのかを思考を走らせた。そして、その明晰な頭脳によって導き出された答えはというと。

 

「……とりあえず、お茶でも淹れてきますね。どうぞ、ごゆっくり」

 

戦略的撤退であった。先生の助けを求める声を一旦無視しながら連邦生徒会長は努めて冷静に休憩室から去って給湯室に赴きながら連邦生徒会長はどうしようかなぁと考えていたところ、給湯室には。

 

「あっ、会長ちゃん。どうしたの…って、もしかして休憩室から逃げてきたのかな?」

 

『……シミュレーション完了。なんだかこの先の展開が読めた気がしました』

 

どうやら先んじて逃走して安堵していたらしい残り二人のシャーレ職員が実に和やかな様子でお茶をしていたため、連邦生徒会長は彼らを見てふっと微笑み。

 

そして数十分後。シャーレの休憩室のギスついた雰囲気で青い顔をしている大人の頭数が二人増えた。

その後、なんだかんだの努力の果てにリアルファイトどころか楽し気に帰っていったティーパーティーの生徒たちとは打って変わってシャーレの面々の精神的ダメージは凄まじいことになっており半ば使い物にならなくなったため、連邦生徒会が大半を引き受ける羽目になった…ものの、その結果またも先生達の過労が発覚。

連邦生徒会長は各学園の代表者や治安維持組織を交えて先生達の負担軽減を図ることになったのだった。

 

────ちなみに、効果はほぼなかったらしい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。