シリーズ「私のミスでした」   作:竜田揚げ丸

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今回は思いついてからライブ感だけで書きました。
ちょっと酷いことになっているのはご承知ください。

この作品は、Pixiv様にも同様のものを投稿しております。


「私のミスでした…」アコ「その6です。何か?」

「私のミスでした…」

 

少女は何とも言えない面持ちで天井を見上げる。しかし何とも言えないながらもどこかその瞳は優しく、その唇は震えながらも薄い笑みが辛うじて作られている。

 

「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」

 

「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」

 

「図々しいお願いですが、お願いします」

 

そこで一旦言葉を切ると、彼女は真正面を向く。その空のように青い瞳に慈愛を浮かべながらも、眼前でとある行為を行っている『二人』に優しく声をかけた。

 

「…プレイ中なのは理解していますが、この資料だけでいいので目を通していただけないでしょうか」

 

少女──連邦生徒会長の眼前には、リード付きの首輪をつけられて四つん這いになっている天雨アコと、椅子に座りながらもリードの先端を握って主導権を握っている先生の姿があった。他の生徒や他のシャーレ職員の姿は見えない。

二人は連邦生徒会長の姿を認め慈愛の視線を向けられていることに気づいた瞬間、凄まじい勢いで事を否定した。

 

「ちょっ、違っ…君の思ってるようなやつじゃないからね!?」

 

「そうです、誤解です! 本当に待ってください!」

 

しかし連邦生徒会長はそんな二人の否定を生暖かい目で見つめた後に静かに首を振った後、そして今までにないほど優しく告げた。

 

「大丈夫ですよ、私は口が堅いと自負しています。えぇ、二人の関係は墓まで持っていくつもりですから安心してください」

 

「だから違うんです! これは、そのですね…。賭けをしていて、私が負けてですね…」

 

言葉尻がもにょもにょとすぼんでいくアコ。経緯を説明しようとした瞬間、彼女の顔が紅潮していくのを連邦生徒会長は見逃さなかった。そんな彼女の様子から、やはりそういうことなのだろうと連邦生徒会長は判断せざるを得ない。

が、そんな連邦生徒会長の様子を見て何かを察したのか先生は更に焦りを深くした。

 

「…アコ、なんでそこで弁明を止めたの? 違うからね? これは賭けの結果でこうなっただけだからね!? 断じてアコと私はそういう関係じゃないからね!?」

 

「いいんですよ、先生。それよりも水臭いじゃないですか、既にそういう関係の生徒がいることを私に隠すなんて」

 

「だから違うよ!?」

 

焦った先生の支離滅裂な説明を5度ほど受け、連邦生徒会長はようやく彼らはそういう関係ではないと正しく理解することができた。が、それはそれとして。

 

「仕事場で何やってるんですか貴方達は?」

 

と立場上注意をせざるを得ない。当然と言えば当然である。今回目撃したのがある程度寛容な連邦生徒会長だったからよかったものの、もし目撃したのがリンやカンナであった場合、間違いなく先生は罷免会議にかけられていただろう。そうなった場合、連邦生徒会長でもフォローしきれるかわからない…というかむしろ先生をシャーレに招いた連邦生徒会長も何を言われるかわかったものではない。

説教をしながらそこまで考えつつ、連邦生徒会長は説教の締めに入った。

 

「とにかく、ですね。そういうのは誰も来ない郊外とか自宅とかでやってください。いいですね?」

 

「「……はい…」」

 

正座をしながら力なく項垂れる二人を見下ろし、一通りの説教が終わったところで連邦生徒会長は一つ溜息をこぼした。そして、その後。個人的に気になっていたことをやや恥ずかしがりながらも聞いてみることにした。

 

「…それで、その。ど、どうだったんですか?」

 

「「…えっ?」」

 

「ペットプレイ…です。楽しいん…ですか?」

 

連邦生徒会長がそう言った瞬間アコと先生は顔を見合わせ、そして同時に心外であると言わんばかりに声を上げた。

 

「プレイじゃないけど!?」

「罰ゲームですが!?」

 

しかしながら、罰ゲームという名目では到底納得のいかない連邦生徒会長もまた声を張り上げる。その様相は議論や討論といったものではなく、口げんかの様相を示し始めていた。

 

「でも誰がどう見てもそういうプレイだったじゃないですか! アコさんだってなんだかいい具合に息抜きできているみたいでしたし!」

 

「はぁーっ!? 違いますが!? 屈辱と恥辱に塗れてましたが!? なんなら連邦生徒会長も試してみますか、この首輪!」

 

「いりません! 貴女のような趣味を私は持ち合わせていませんので!」

 

「私だってそういう趣味は持っていません! 言いがかりはやめてくれませんか!?」

 

「二人とも、あんまり大声でそういうことを言うのは…」

 

「「先生は黙っていてくれませんか!?」」

 

「ひどい!?」

 

ぎゃあぎゃあと喧嘩をし続ける連邦生徒会長とアコ。そしてその喧嘩は長時間続くと同時に時間に比例してヒートアップしていき、そして最終的には瞳に怒りの炎を宿しながらアコは一枚のコインを取り出して言うのであった。

 

「そこまでいうのなら仕方ありませんね! じゃあ賭けましょうか!? 私が勝ったら先ほどのまんざらでもないという言葉を取り消すと同時にこの首輪をつけてもらいますよ!?」

 

一方、アコに相対する連邦生徒会長もまた瞳に怒りの炎を灯しながら力強く交換条件を繰り出した。

 

「構いませんよ! でも私が勝ったら貴女は私の言葉を認めると同時にその首輪をつけてくださいね! ルールは!?」

 

「コインの裏表を当てるだけです! 表はこちら、裏はこちらの文様です! 良いですね!?」

 

凄まじい勢いでルールの取り決めをした後、アコの怒りが籠った「行きますよ!?」という掛け声とともにコインは高く宙を舞い、連邦生徒会長はそのコインの動向を見守る。そしてコインがアコの手の上に落ちた瞬間、コインの向きはアコの手によって隠された。

が、しかし。連邦生徒会長は迷わずにコインの向きを宣言した。

 

「裏です!」

 

「はぁ!? いいんですか、もっと考えなくて! 間違えたらあなたは首輪をつけて散歩ですよ!?」

 

「問題ありませんよ、計算しましたからね! …待ってください散歩は当初の契約に入っていなかったですよね!?」

 

「今追加しましたからね!」

 

「汚っ!? アコはそれでいいの!?」

 

「うるさいですね、黙っていてと言いましたよね先生!」

 

そう言いながらアコはコインを隠していた片手を動かし、正解の向きを見せた。

コインの向きは──裏。賭けは連邦生徒会長の勝利であることが確定した。

アコの表情は一気に曇り、一方の連邦生徒会長の表情は勝ち誇った表情を浮かべていた。

 

「くっ、そんな…!?」

 

「賭けは私の勝ちのようですねぇ!? さぁ、認めると同時に首輪をつけてください!」

 

そしてアコに再び装着される首輪。すこぶる楽しそうにリードの端を手に持ちながら四つん這いになっているアコを見て首輪をつけて散歩という屈辱から逃れた上勝利に浮かれる連邦生徒会長だったが、しかし。

 

「…何をやっているのですか、会長」

 

「…アコ。これは一体どういう状況?」

 

「「「あっ…」」」

 

入り口から絶対零度を放ちながら冷たい視線を送ってくるリンとヒナに、三人ともが委縮する。

そして三人は5時間にも渡る事情聴取と猛烈なお説教を受け、そしてその後「私たちはシャーレでペットプレイをしました」という看板を首に下げながら仕事をする三人の姿が目撃されたという。

事情を聞こうとした稀有な連邦生徒会の生徒が会長に説明を求めたところ彼女は遠い目で、

 

「私のミスでした…」

 

と一言呟き、そしてその後かなり低いテンションで懇切丁寧に説明をしたあとに「賭けをしてはいけません」「リンちゃんを怒らせてはいけません」とその身を張った教訓を後輩たちに伝えた。それを伝えられた後輩たちもそれをしっかりと胸に刻みつけ、更に真面目に業務をこなし邁進していくのであった。

ちなみにアコは懲りずに連邦生徒会長や先生に賭けを迫り、そして敗北してはヒナに怒られるという流れを繰り返し続け、そして最終的にしばらくの間シャーレや連邦生徒会出禁を言い渡されたのであったという。

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