この話は『月華夢騒』開催の際にカイをギャグ落ちさせるためだけに書いたものであり、これまたライブ感で仕上げていますので細かいところは気にせずお楽しみいただければ幸いです。
カイは想像以上にヤベー奴かもしれないのでそう言った意味でのキャラ崩壊の可能性もあるので今回は注意が必要かもです。
この作品は、Pixiv様にも同様のものを投稿しております。
「私のミスでした…」
少女は俯いた。その表情は伺いしれないが、唇はぷるぷると震えているように見える。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
「この結果にたどり着いて初めて、私のこの選択が間違っていたことを知るなんて…」
「図々しいお願いですが、お願いします」
そこで一旦言葉を切ると、彼女はずいと身を乗り出した。その輝く瞳を震わせて、他に選択肢は無いとばかりに眼前の『彼ら』に懇願した。
「本当、皆さん私の姿を見て笑うのやめてくれませんか?」
「ふ、ふふふふっ…! いや、ごめ…! むり…っ!」
「〜〜〜! すっごいシュールなのだ…! 無理っ、これダメなやつ…!あっ、あははっ、あっはははっ!」
色鮮やかな1680万色に体を発光させる連邦生徒会長の前に居るのは、腹を抱えて膝から崩れ落ちて大爆笑する先生とばんばんと床をタップして大爆笑する薬子サヤ。
ぴっかー、という擬音が似合うくらい程に光り輝いている彼女がどうしてそうなったか簡潔に言うと、取り違いである。
連邦生徒会長がシャーレに訪れ、ジュースでも飲もうかと適当に常温で置かれていた液体を手に取ったのがどうやら錬丹術研究会の薬子サヤがつくった試作の疲労回復薬だったらしく、口にした瞬間ゲーミングカラーに体が発光してしまったのだった。
最初は二人共、
「体に不調とかない!?」
「熱や脈を測らせてもらうのだ!」
と焦っていたものの、体に不調がないとわかり落ち着いてきたところで改めて見た彼女の異様さがツボにきてしまったらしい。彼らはずっとこうして爆笑している。
そして連邦生徒会長はそんな彼らに軽くむくれながらも、これ幸いとばかりに色んなポージングで彼らを爆笑させているのが現在の様子。なお、薬の副作用は数時間で抜けるとのことだった。
ちなみに、シャーレに用があって来た生徒たちの反応も様々であった。早瀬ユウカはずっと笑いを堪えていたし、聖園ミカには面白がられてイジりにイジられ、不破レンゲには何かの怪異と誤解されて発砲されかけた。事情を説明してなおまともに心配してくれたのは陸八魔アルくらいであり、彼女の温かい反応に連邦生徒会長は危うく涙を流しかけた。
そんな和やかな空気感は、しかし『彼女』の登場で一変する。
「粗末な薬だね、サヤ?」
ぴしりと凍った空気。その発信源はいつの間にか入口に立っていた申谷カイ。
一体何しに来たんだ、と全員が彼女を睨みつけるも彼女はおいおい、とかぶりをふった。
「別にどうこうしにきたわけではないさ。ただ後輩の楽しそうな声を聞いて様子を見に来ただけだよ」
「…貴方がそんな殊勝な考えをもっているとは思いませんでしたよ、申谷カイさん」
突如として始まる腹の探り合いと牽制のしあい。しかし申谷カイは突如として一本の試験管を取り出した。
「私の薬ならば、そもそもしばらくの間疲労を感じさせないのだけれどね?」
見せつけるように試験管の中身を振るカイだったが、しかし連邦生徒会長は明らかに油断しているカイが反応するよりも速く動いて彼女を組み伏せると、その試験管の中身をカイの口の中に容赦なく注ぎ込んだ。
「でしたら、逃走のためにもご自分で試されたらいかがでしょうか?」
光り輝く連邦生徒会長がそういった瞬間、カイの体も見る見る内に輝いていく。その発光度合いは連邦生徒会長よりも色鮮やかで、光量も明らかに強い。
「ちっ…。やはりこの手のものは副作用が出るか…!」
「5040万色…! 明らかにボク様より危険でヤバい薬なのだ…!」
「…いやなんで副作用で光るの…? っていうか何でサヤは色を基準に危険度を測ってるの…?」
先生の思わず出てきたツッコミには反応しないまま、光に一瞬怯んだ連邦生徒会長の隙を見て拘束から抜け出しカイはそのままシャーレから逃げだしていった。
「待ちなさい!」
そして連邦生徒会長もまたそれを追いながら携帯を取り出して懐刀であるSRTに出撃を要請した。特に危険かつシャーレにも好意的でない彼女は何が何でも確保しなければ今後のキヴォトスの治安に関わるのだ。
「SRT、出動お願いします! 標的は申谷カイ、脱獄した七囚人の一人です!」
『承知しました! 対象は今何処に!?』
「現在シャーレよりブラックマーケット方面へと向かっています! ターゲットは全身を光り輝かせていますのでドローンや監視カメラの映像ですぐわかると思います!」
『全身を光…なんて!?』
オペレーターは明らかに困惑した様子で聞き返してくるが、その背後の遠い声からマジで光ってる…という信じられなさそうな声が聞こえた。
『把握しました…が、後方の発光体は一体何ですか!? カイを追跡しているようですが…!?』
「それは私です!」
『嘘でしょ会長ですか!? なんで輝いてるんですか!?』
「うるさいですね、私だって好きで発光してるんじゃないんですよ!?」
驚くオペレーターに思わずキレる連邦生徒会長。その後もカイと連邦生徒会長、二人の発光体によるチェイスは続いたがカイが飲み込んだ薬は申告通り疲労を感じさせない薬であったらしく、やがて連邦生徒会長は振り切られてしまった。
連邦生徒会やSRT、シャーレなどによる考証も済み、結局確保できなかった上動機もわからずじまいだったために改めて警戒心を高めることとなった各学園組織やシャーレであったが、キヴォトスには妙な噂が流れるようになった。
その名を『妖精の追いかけっこ』。曰く夕方の決まった時間にシャーレ付近からブラックマーケットに行くとゲーミング発光する妖精たちの追いかけっこが見られる、という噂だ。
その噂を聞きつけた連邦生徒会長は、静かに頭を抱えたという。