彼が存在するところ戦あり。
「勝者、黒桜夜叉!!」
鉄心が高々に黒桜の勝利宣言を言った。
百代の戦いも黒桜の武神としての戦いは終わった。
その後、決勝戦で行われて彼は負けて三代目として松永燕が武神となって大会は閉幕した。
第二次武道大会から数年後。
二人は黒桜の宣言通り結婚して川神院ですごしていた。
すでに一人目の子供も誕生しており、将来はこの子供に4、5代目の武神を継がせたいと願って日々鍛錬をさせている。
祖父の鉄心は一昨年病死した。死因は老衰。ただ、あれだけ元気だった祖父がいきなり老衰してしまったのかは謎だが、黒桜だけは知っているそぶりがあった。
現在は川神院の師範代はリーが努め、総代は黒桜が勤めている。本来は総代など黒桜がなれるわけないのだが、死ぬ前に鉄心が遺言で黒桜を指名しており、それがそのまま認定された。そして、川神学園も総代が亡くなったことによりそのまま黒桜が学院長を務めることになる。
当然、納得いかない弟子達も多く川神院の弟子は全盛期の半分弱しかない。しかし、そのかわり真田家や黛家、またや九鬼家など家と家との繋がりがあって、今でも権力面でも充分に周囲に警戒させている。
川神市も武道の中心地というのは変わっていないが、少し温厚で楽しい街として世界の人々に認められていった。
川神百代の心も変わった。己の武道としてではなく、次に引き継ぐ武道の導き者として。そして百代に教えられた者達は他の指導者達よりも強くなって、新しい時代へと繋いでいった。それはある意味で武神と呼べる存在の形であった。
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『川神百代の闘争の世界』は閉幕した。
闘争そのものは消えはしないだろうが、もはや百代自身で闘ってみたいという願望は薄れていっているはずだ。現に懐中時計には、生まれた子供に早く強くなって欲しいという願望が強く伝わっており、時計の針も過去から未来へと進んでいる。これは早く歳をとりたいうという意味でもあり、証でもある。もちろんそのその先に『死』が待ち受けていようと・・・ね。
彼女の心の中で、武道家としての心がある意味で薄れてしまったのだろう。あの大会を通して。そして、敗者は敗者らしく勝者についていった。彼女の場合は・・・。
だが問題は、結局その結論に至らしてしまったのは、この懐中時計の能力を利用して百代を支配し無理やりそう歩ませてしまったことが問題である。これではあの無数にある時計塔は、今回のような形でないと解決しないということになってしまう。
「・・・」
黒桜は懐中時計を見つめた。
そこへ、とんとんと扉を叩く音が鳴った。
「失礼します・・・」
相手は礼をして扉を開けて入ってくる。声の主の相手は黒桜も知る人間だ。
「・・・っ!」
だが、その相手に首元にぶらさがっている時計に気づく。
「そ、それは・・・!?」
相手は微笑み、そして時計を彼に見せつける。
「覚えている? この世界はモモ先輩の闘争の世界だってこと・・・」
すぐに黒桜は逃げようとするが、体が動かないことに気づく。すでに時計の能力で金色の時計円を描いた陣が黒桜を捉えていた。
「貴方の命を奪うことで、モモ先輩は再び復讐者として武道家に戻る。でも、今度は過去には戻ろうとは考えない。だって、貴方の子供を置いてまで過去を繰り返そうなんて本能は思わないよ。だからここで、モモ先輩の無限地獄は解放される」
迂闊だった。あの世界での体現者が総代と自分だけとなぜ決めつけてしまったていたのか。なぜ、他にもいる可能性を考えなかったのか。
「そして、今後の世界でのモモ先輩はただの脇役。常に選定されない側となる」
「京・・・お前は・・・!!」
椎名京の目が黒く染まっており、とても正常とは思えない。
「安心して。私は貴方には興味ないの。貴方の死んだ後、私はすぐにモモ先輩に殺されるわ」
『貴方には興味ない』とはそれはどう意味だろうか。仮にも彼女はずっと傍にいてくれた大切な友人だと自分は思っていたのに。
「それは違うよ」
京が懐から矢を取り出した。
「貴方が知っている椎名京はすでに自殺しているの。貴方がモモ先輩と結婚した後で、貴方の知らないところでね。きっと心配しないように手紙とか送っているんじゃないの? 外国にいますとか?」
「・・・なん、だと?」
京言葉は当たりだった。確かに百代と結婚した後、式の時に『私、外国で修行してくるね』と言ってそれきっりだった。
「・・・これは、その寄り代。あちら側の私ではいけないからね」
寄り代、あちら側。
確かにあの無数の時計塔の一人ひとりの世界を創世されているなら、この京は並行世界の一人だということも頷ける。
「・・・だったら、まだ可能性はある」
このままじゃ、終われない。こんな結末では・・・。
「・・・それじゃね、私は認めたくないもの。仮に貴方が名前や力を変えたとしてもモモ先輩と幸せになる世界なんて認めたくないもの」
黒桜百代は椎名京を殺した。
現場は川神学園の学園長室にて、夫である黒桜夜叉が矢で首を突き刺されて死亡。犯人は「自分が殺しました」と高々に宣言して出迎えにいった百代に殺される。
理由はどうあれ、彼女はその場で殺人罪で逮捕。
その際に椎名京があるテロの一人でとても武力に強い組織やらで、いずれは黒桜百代も戦場へと出向く運命となり、再び彼女の闘争の世界が始まった。
「お母さん・・・本当に、行ってしまうのですか?」
少女は今でも泣き出しそうな顔で彼女を見た。
「ごめんね。きっと、きっと必ず帰ってくるからね」
「・・・娘をお願いします。師範代」
「わかったネ・・」
師範代は娘の気遣いながらつつ百代の今後を願った。
今度は血と血で染め合う第三次武神大戦へと巻き込まれる百代に。
今度は、たった一人しか生き残れない大きな闘いが始まる・・・。
第一部 『闘争の世界編』 完