父親が自殺したという警察からの電話。
遺書や現場検証、目撃証言により死因は飛び降り自殺と判断された。
お葬式は川神院やクリスの父親であるフランクが中心として行ってくれたため、椎名自身は葬儀で困ることもなくお葬式を済ませることが出来た。
そして、葬儀の後に川神院にて鉄心、フランク、クリス、マルギッテと椎名を含めた五名で今後の話し合いが始まった。
「まずは、こんなことになってしまって本当に残念だ。お悔やみ申し上げるよ椎名君」
「いえ、此方こそ父のためにお葬式をして頂けるなんてとても感謝しています」
頭を下げる椎名。
「・・・」
クリス達も今の椎名の心を考えると何も言えず、ただ二人の会話に耳を傾ける。
「して、今後はどうするつもりかね? 既にアテはいくつかあると聞いてはいるが・・・」
「はい」
椎名吹雪の今後進路。
まず、将来のこともあり学園は卒業したいと考えていた。
幸いなことに鉄心はそれを承諾してくれたおかげで、卒業するだけのお金や寮で再び暮らすなどの金銭などの手続きなどは既に済ますことが出来た。今後も来年の3月末までは川神学園の学生として島津寮で生活することが出来る。
ただし、それは裏の話であって書類上ではまだ学園及び寮に暮らすための承諾する保護者署名が記入されていないため、保護者探しはしなければいけない。
何だかんだで椎名吹雪はまだ未成年である以上、大人の力を借りなければ何事にも無断ですることは許されていない。ましてや父親を失い一人孤立となってしまった少年では。
「保護者の件は、前もって話していたが私でいいのだね?」
ここ件のみは実は前もってクリスとマルギッテからの提案により、話は通っていた。略式とはいえ椎名は二人の恋人であり、フランクも認めた男。そのため、彼の保護者程度などフランクにとって問題ではなかった。
「では、保護者になる以上は卒業後の進路を現時点ではどう考えているのか聞かせてもらおうか?」
卒業後の進路。
これはいくつもの選択がある。恐らくどれを選んでも保護者となるフランクはクリスを大切する選択しないと、今までの話が、全てがなかったことになる。
「クリスとマルさ・・マルギッテともお話したんですが、ドイツに行こうと思います」
「ほう? して、ドイツで何をするつもりかね?」
「それは・・・」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
話し合いが終わった。
川神院から外に出ると椎名とクリスは秘密基地に行く方向へ。
「椎名君」
フランクが椎名を呼び止めた。
「先ほどの話。あれで本当に君はいいのだね?」
「はい。それが俺の決めたことです」
「・・・」
フランクは椎名の目を見る。
「・・・」
目は真剣そのもの。決意は固いようだ。
「わかった。では、詳しい内容とかは後でマルギッテに届けさせよう。今はしっかりと心を落ち着かせて、明日から前に進んでいくことを考えるんだよ」
「はい」
その時、クリスが椎名の右腕の間に自分の右腕を通す。
「大丈夫ですお父様。吹雪は私が絶対に守ります。騎士の誇りにかけて!」
そして、隣にマルギッテも横に立ち。
「同じく、彼は守ります。猟犬と言われる名を誇りして」
クリスとマルギッテを見る。
「そうか・・・」
二人の目もやはり真剣そのもので、決意も固いようだ。
「では、私は一足先にドイツに帰るとしよう。色々と準備があるわけだし」
その途端、マルギッテはフランクを護衛するために近づこうとすると彼は片手を少し上げて、静止の合図を見せた。
「今日いい。せっかく彼に会えたのだ。三人で色々と今後について話し合いなさい」
そういうとフランクはマルギッテ以外の部下達を連れて川神院を後にする。
「・・・」
残された三人。
「最初は秘密基地で話し合いしようと思っていたけど、寮で話し合いをしないか?」
椎名は携帯で仲間にメールを送る。すると、しばらくして風間から『OK』の送信文が届いた。
「承諾もらったから大丈夫だ。行こうか」
するとクリスは二人の手を握って叫んだ。
「行こう! 吹雪、マルさん!」
瞬間、椎名はクリスの笑顔がとても綺麗で美しく、そしてこんな可愛い美少女を得られている自分がとても嬉しくそして『もっと、もっと』拘束したいと思ってしまった。
当然、その隣にいるマルギッテも。
「・・・」
吹雪は寮には三人しかいないことで、思考が『束縛』から『服従』へと変化した。
秘密基地。
椎名からメールを受け取り、他のメンバーは少し残念と思いつつも賛成して、風間が代表として了解メールを送った。
「・・・ていうか、絶対あいつクリス達に慰めてもらうつもりだろ」
島津は師岡に他のメンバーに聞こえないように小さい声で話しかける。
「はは・・・まぁ、あんなことがあったんだからそういう思考に走っても仕方ないじゃない?」
「くっそー・・・椎名の奴ー」
理屈ではわかっているし、椎名の気持ちも理解出来る島津だが、それでも恋人としての特権が行使できる椎名を妬んだ。ちなみにそんなヒソヒソ声しても風間と真田以外は、椎名のメール内容で理解しているのでヒソヒソ声はあまり意味はないが女性に対する配慮である。
「・・・それにしても父親が自殺か。遺書にはなんて書いてあったんだ?」
源が目を閉じつつ、なぜ彼の父親が自殺したのかを疑問視する。
「あ、うん。確か椎名の話では『早く妻の元に早く行きたいから死にます。後のことは友人の力を借りて整理してください』って内容だったらしいよ」
師岡が椎名から聞いた遺言の一部を話すと全員が激怒する。
「それって、吹雪の育児放棄したってことだよ、現実から逃げたんだ!」
特に椎名に関して敏感な榊原の感情はトゲトゲしいほどに憎悪に満ちていた。勿論、あくまでそれは師岡が椎名から聞いた遺言内容のため、信憑性は薄いしあくまでも一部の内容だけの話だ。
「ユキ、落ち着けって。そういう怒りの感情を一番にぶつけたいのは吹雪だぞ」
「あ・・・うん」
川神に指摘されて、ようやく我に返った榊原は黙った。
「それでも、やはりユキさんのお気持ちは分かります。私も父上がもし・・・」
黛が暗い表情でを閉じる。
「・・・」
全員が沈黙する中、源はある発言をした。
「だからこそ、理解出来ない部分があるだ」
「・・・?」
源を除く全員が混乱が走る。
「え? ど、どういうこと。それって・・・?」
動揺する真田を他所に源は懐に手をいれる。
「椎名の父親が自殺した前日に手に入れた写真だ」
机の上に置かれる一枚の写真。
写っていたのは、椎名の父親が街で買い物を終えて帰ろうとしているような場面。
「これは?」
「俺の友人に趣味で自分の住む街の様子を毎日撮っている奴がいるんだ。当然、人を撮るときは許可をもらったり遠くから撮ったりしてな」
この場面からすると許可をもらって撮った写真となる。
「問題はそこじゃない。椎名の父親の後ろに隠れている女性だ」
源が指をさす部分にみんなの視線が一点する。
「・・・え?」
誰もが目を疑った。
そこに写っているのは自分達は知っている人物がいるからだ。
「吹雪・・・?」
「いや、胸があるから吹雪じゃない。でも吹雪に少し似ている女性だ」
この際、島津の変態発言はスルーする全員。
問題はこの写真が何なのかだ。
「この女。椎名の父親が自殺した際に、目撃者として事情聴取されている」
それはつまり、自殺ではなく他殺の可能性があると源は言いたいのか。
「そこまではわからない。ただ、そいつは数年前から街の様子を撮っていたから何となくわかったらしい。そいつは椎名の関係者だと」
榊原は気づく。
たった一度だけ椎名が家族写真として奇跡的に集合写真をとった写真の中にいた人物。母親に似ていているが、時期と年齢と考えて後者側の判断。
「椎名・・・京。吹雪のお姉さん?」
だが、彼女は事故死した。彼女が生きているわけはない。
「・・・これって、事件だよね」
師岡の呟きが全員の思考に自殺ではなく、他殺という思考が走るのだった。