クリスがこっちの学園に来たため、こちらからもドイツのリューベックへ生徒を送らねばならない話があった。
だが、相手側から『弓の腕が皆に教えられるほどの生徒が欲しいという』という条件があったために弓道部のメンバーと限定されていた。候補として二、三名ほどあげられていたが今回の件を利用して椎名が留学することに。
もちろんその際のいざこざは多少あったが、何より椎名吹雪は弓道としての成績も実力も優秀に収められていたので、最終的には問題なく3月の卒業式終了と同時にクリスと一緒にドイツへと留学する形となった。
秘密基地。
次の日の夜、改めて二人を含めた風間ファミリー集会が開催された。ちなみに、マルギッテはドイツに帰国して椎名の交換留学の手続きを準備をしている。
「吹雪、お前に見せたいものがある」
源は昨日において、他のメンバーに見せた写真を椎名に見せた。
「・・・!」
写真を見た途端、椎名の顔が変わった。
「何かこの女性について、知っているだな」
「・・・多分、京姉さんだ」
クリスを除く全員が、不安予測から確信予測へと変わる。
「え? え?」
話を知らないクリスは、当然『?』を頭にいくつも浮かべているが・・・。
「吹雪。知っている限りでいい。お前の姉についてのことを教えて欲しい」
「・・・」
椎名は一瞬、黙ってしまうが。
「・・・わかった」
承諾して、自分の知る限りの姉の情報をみんなに話した。
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椎名京は事故死した。ただし、それは公式な話であって実際は違う。
姉の遺体は死亡確認後に消えてしまった。一応、警察も手を尽くしたが手がかりはなく、結局は事故死扱いで戸籍も経歴もそう記録された。
当時の吹雪も姉の遺体を見たあとに起きた事件だったためか、父親がそれを隠蔽したと思われる。それにこの事件により医者から『お見舞い金』という形や葬式代を代わりにしてくれたおかげで、当時借金に困っていた父親にすればこのままでいいと考えて放置していた。何よりも父親も姉を好いていなかったために。
そして弟の吹雪には事故死だけを伝えた。
実際に、吹雪もそんな事件があったことなど知らなかった。この前の父親の自殺によって自宅整理した時に、気づいた話である。
そうなると吹雪にある情報が確信へと変わる。それは吹雪が学園に入学した頃から、何度か自分に似た女性が街にいるとの情報があった。つまりはそれが姉という可能性があるというわけだ。
この街にいるという以上、吹雪も探してが一切そういう女性とは出会うことはなかった。
だが、あの友人に誘われて野球を観戦に行った際に、見知らぬ男がこう言っていた。
「そして、姉のこと・・・」
自分しか姉のことしか知らぬはずの情報を口にした男。彼は微笑み、そして5つの懐中時計を椎名に見せた。
「選べ。その懐中時計がお前の未来を決めてくれる椎名吹雪。お前は求めてる『鎖』を」
束縛に対する『鎖』。永遠に消えることのない自分の『所有物』。
椎名はその懐中時計を一つ選ぶ。
選んだ銀色の懐中時計で、願ったのは『姉との繋がり鎖と自分の永遠の所有物』という己の欲に絡めた願望を。
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「・・・なるほど。吹雪の話を聞いて、ますます姉が生きている可能性があると考えさせられるな」
源は写真を懐に戻した。
「気に入らないな。その姉にも関しても父親にしても、だ」
クリスは一部始終の話を聞いてそう呟く。
「・・・どうして、そう思うクリス?」
椎名はクリスに問いかける。
「この際、起きてしまったことに関しては何も言う気はない。でも、あえて言うならその事件を吹雪のお父さんは隠していたことが許せない」
「幼かったからじゃダメか?」
「子供だから知る必要はないは勝手な大人の言い訳だ。ましてや肉親を・・・」
「ストップだよクリス」
榊原がクリスの話を止めさせた。
「それは吹雪もわかっていることだよ。だからこれ以上、クリスが代わりに怒って上げる必要はないよ」
「でも・・・」
クリスはとても不満満ちた顔で榊原を見つめる。
「クリス、ちょっと屋上に来て」
それを吹雪はクリスを屋上に連れていかれ、後に残されるみんな。
「・・・で、この事実を知ってどうする風間?」
源は風間に問う。
これまでのように、面白いからとか楽しいからではなく一歩間違えれば危険や吹雪にとって絶望がある可能性がある出来事。首を突っ込むなら覚悟が必要となる。
「はっ! 決まっているだろゲンさん!!」
だが、風間の叫び宣言した。
「当然、この件について調べてみようぜ! もしかするとお姉さんとも再開できるかもしれないし、何よりこのまま無視なんて俺には出来ないぜ!」
風間の心の叫びは、その場にいたファミリー全員の気持ちが一致する。
屋上。
椎名はクリスに話した。これまでの過去の出来事、今の出来事、そして今までクリス達に対しての愛情面にことを全て打ち明けた。今ここで、打ち明けることによってちゃんとクリスと真正面から向き合えると思えたからだ。
「そうか・・・そんなことが」
クリスは話を聞き、そして微笑んだ。
「感謝するぞ吹雪。こうして打ち明けてくれたことでますますお前が好きになった」
「・・・!」
「束縛? 服従? 今更何を言っているんだ? 私はお前を信じて全ての忠誠をかけた。だからその程度の鎖など重りの鎖などではない。それは繋がりの鎖だ」
椎名の心が何かぷつんと切れた。悪い意味ではなく良き意味で。
「そしてその繋がりの鎖は、私だけじゃない。マルさんもファミリーのみんなもそしてきっとお姉さんにも!」
「・・・そうか」
椎名はこの瞬間、彼女を愛して本当に良かったと心から感謝した。そして、絶対に彼女を幸せにしようとも決意するのだった。