式が終わってしまえば、秘密基地でお別れ会をした後に、クリスと一緒に椎名はドイツへ行かなければいけない。
行けば半年間は日本には帰って来られない。
「諦めるしかないのかな・・・」
卒業式の最中、椎名は呟く。
「・・・吹雪」
傍にいたクリスは、彼の想いに答えられないことに悲しみを思いつつ、百代を含めた3年生の卒業式を眺めるのだった。
武道を得ている者や勘の鋭い人達は一瞬で感じる。
そして、事態の把握を知るために口を開く瞬間、今度は何かとてつもない違和感が体に包み込まれたことを感じた。
「なんだ? これは・・・?」
椎名はその違和感に覚えがあった。でも、それが何で何時だったのかは思い出さない。そんな違和感をよそに卒業式は続くが、明らかに周囲はざわめているのがわかる。
そして。
「学園の生徒達及び保護者達よ。申し訳ないがこれよりしばらく学園は、占拠させてもらった」
館内放送が突如流れ、学園占拠宣言が言い渡された。
「この声は・・・!?」
源が声の主に覚えがあるのか、少し他の生徒と違った驚いた表情をする。
しかし、周囲は館内放送の学園占拠宣言に動揺して一斉に騒ぎ出した。卒業式は大パニックとなった。
その騒ぎに動じて、外を出ようと体育館の扉を開こうとする者達がいたがこう叫ぶ。
「開かない! 扉が開かないぞ!!」
扉を防がれたらしく、よりパニックが大きくなる。
「あ!?」
弱い者は踏み倒されり押されたり、または窓から出ようと試みたりと事態は騒然に。
「静まらんかい!!!!! 馬鹿どもが!!!!」
が、鉄心の一括の叫びが全てを収めた。
シーンと静けさが戻って、周りは静まり返った。
「・・・ゲンさん」
その隙に、椎名はクリスと一緒に源の元へ近づく。
「吹雪とクリスか。今の騒動での体とか大丈夫か?」
「ああ。それよりも聞きたことが・・・」
「流石だな、川神鉄心殿。貧弱な彼らを一括で収めましたか・・・」
椎名の質問は館内放送から流れる声でかき消された。
「ふん。こんなことは朝メシ前じゃ。それより、本当に学園を占拠したようじゃが目的はなんだ?」
鉄心の口から意外な言葉が聞く。まさかこの学園を本当に占拠されてしまったというか。
「占拠というよりは、体育館全体に結界を貼らせてもらった。ある特殊な方法以外でしか抜け出すことは出来ないぞ」
あのとてつもない違和感が体に包み込まれたことを感じたのは結界の感触。だが、脱出方法はあるらしいが方法がわからないと抜け出せられない。
「ほう? そんな方法があるならさっさと教えて欲しいのぉ?」
老人口調で鉄心は館内放送をジャックした相手と対話しているが、明らかに怒りが混じっていることが肌で感じとれる。
「その必要はない。この結界は何もしなければ3時間で消滅する。抵抗しないほうが身が安全だ」
時間制限つきの結界で、3時間くらいで騒動は終わる。あくまでも相手の話を信用すればの話・・・だが。
「そんな話をワシが信用するとでも?」
「私は嘘は嫌いだ。ちゃんと目的も言う。目的はある廃ビルマンションの破壊だ」
その瞬間、百代は拳で黛が剣で体育館の窓を壊そうと攻撃した。
「っ!??」
バチンと窓は破壊されずに跳ね返され、同時に電撃らしきものが二人を襲う。
「・・・そう。二人の勘は正解だ。破壊する場所はその二人が大切に使用しているあの場所だ」
「!!!?」
秘密基地の破壊が目的。
たったそれだけのために、これだけの騒動を起こしたという。
「・・・」
椎名は憎悪の嫌悪を抱く。
自分の大切な場所を壊そうとする敵に対しての憎悪を深く深く思い込み・・・敵をころ。
「吹雪!!」
「っ!?」
一瞬だけ何かしらの扉を開こうとした。しかし、クリスの叫びで我が戻った椎名。
「俺は一体・・・」
自分の感情に一体何が起きたのか謎が深まる中で、ポケットの隙間から黒い光が現れる。
「・・・?」
椎名はその光を取り出してみると、その正体は以前にもらった懐中時計から発する光。
「これは・・・?」
そして、懐中時計はより輝きを増して体育館全ての生徒を包み込むのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
秘密基地は崩壊した。今はただの瓦礫の山積みに過ぎない。
それでも、マルギッテは闘っていた。
例え、秘密基地を失ったとしてもそれらを壊した本人達に報いを受けさせるために。
だが、状況は絶望的だった。相手側の黒い懐中時計から発する黒い光に飲まれた後に起こったのは、基地の崩壊と三人目と四人目の登場だった。その二人は人の形をしているが明らかにロボット。このロボット達が二人が光に包まれている間の隙をついて基地を破壊させた張本人達。
「任務完了だ、京」
「ん。これで、後は彼が来るのを待つだけだねクッキー」
クッキーと呼ばれた人型ロボット。しかし、その人型はガチャリガチャリと形を変えて、今度はタマゴ系の形に変形する。
「形態を変えれるのかそれは・・・?」
初めて見るマルギッテの顔に相手の彼女は少し驚いた表情をする。
「ふーん・・・この世界では九鬼とかはほとんど干渉していないだね」
「一体なんの話だ・・・?」
彼女の言葉の意味に理解出来ないマルギッテを他所にもう一体のクッキーがマルギッテを襲う。
当然、応戦するマルギッテだが、先ほどの光の影響なのか眼帯を外そうにも外せず、力も通常の半分くらいしか発揮出来ない状態。そのためにクッキーが持ち出す黒く光る剣ビームサーベルの斬撃を防ぐしか手段がなかった。
「・・・くっ!」
苦戦を強いられるマルギッテ。
一方の相手側はもう一体のクッキーと共に廃墟化した秘密基地の瓦礫の山積みを眺めていた。
「これで本当に良かったの京?」
「うん、どうせ大和がいない世界の風間ファミリーなんて仲間じゃないよ」
彼女のぶら下げている懐中時計が光る。
すると、彼女の後ろから無数の黒色の矢が空間を開けて、彼女の周りを取り囲みながら現れた。その数は十、二十はあり、形状としては『気』で構築されている矢だった。
「弓の構えをせずに、あれだけの矢を!?」
マルギッテは彼女の能力を見て、動揺してしまった。
「余所見はいけないぞ猟犬殿」
それが命取りだった。
「しまっ!!!」
ザシュとクッキーのビームサーベルの斬撃を右肩に直撃した。
ビームサーベルは本物の光の熱で構築された剣。それが右肩に直撃するということは・・・。
「あぁぁぁ―――――!!!!!!!」
マルギッテの右肩は地面に落ちるということになる。
「まずは、一人死亡か・・・」
苦痛な叫び声を上げるマルギッテを他所に彼女はつまらなそうに顔で空を眺めた。
「・・・・!」
彼女は微笑んだ。
「どうしたの京?」
微笑む彼女に気づいたクッキーは上を見ると、上空に大きい金色の丸い時計の絵があった。
「これって・・・」
クッキーは形状を人型に変形し、ビームサーベルを構える。対して彼女も黒い矢を全てその円状の時計へと向ける。
眩い光が収まり、気が付けば宙に浮いていることに気づく椎名。いや、宙に浮くというよりも落下しているという感じだ。
「吹雪!」
傍にいたクリスが椎名に話かける。
よく見ると彼女の腕に鎖が巻きつけられていた。彼女だけじゃない自分もこの空間にいるみんな全員にも。その中心としての鎖が自分だ。
「これは・・・?」
椎名の考えるの間もなく、出口の光らしきものが見えてくる。
「吹雪」
クリスがズイと吹雪の顔に近づける。
「いいか、例えどんなことがあってもお前は私が守る。それは覚えておけよ!」
「・・・いやだ」
「なっ?」
「守るのは俺だよ。クリス、もう誰にも俺の大切な人達を傷つけさせない」
「吹雪・・・おまえ」
クリスは吹雪の目を見て悟る。こいつは真剣だ・・・と。
「出口だ・・・」
椎名の言葉を筆頭にそれぞれが出口を抜ける。
上空から見たのは秘密基地だった跡地と傍に倒れているマルギッテに、見たことない人型のロボット2体。
そして。
「京―――姉さ――ん――!!!」
悪意に満ちた姉、椎名京との対面であった。