京は懐中時計の力を借りてそこにたどり着いた。
闘いは京の敗北で決着がついた。吹雪の所持する懐中時計の能力の前に、京の能力では勝てなかった。
それに元々、あんな目の前に偽物とはいえ風間ファミリーが集結していては、元ファミリー仲間の京としても自身が勝利するというイメージは思い浮かばなかったのも敗因の一つ。
だが、あの世界にはいくつかの傷跡を残してきたので、決してハッピーエンドを迎えることはない。
「おかえり京・・・」
「え?」
声がした。それもとても懐かしく求めていた声。
「・・・あ」
振り返れば、そこに彼は立っていた。
自分が理想としてずっと追い求めていた彼が。
「大和!!!!!」
京は何の疑いもなく、出迎えた彼に抱きつく。
「ああ。この匂い、この感触、大和だ!!!」
全てはこのため。全ては彼に会うためにしてきた出来事。
彼に対する執着心が束縛となり、幾度となく苦難を与えた。でも、それを乗り越え今こうして直江大和がここにいる。
「ごめんな。今まで辛い思いをさせて」
「ううん! いいの!!」
大和の声が全てを京の心を全てを癒してくれる。
「・・・ずっと、ずっと、私の傍にいて。もうどこにも行かないで!!」
そして、全てを吐き出した。
「ごめん。それは出来ないお友達で。これからもずっと・・・」
「え?」
彼はその想いをバッサリと斬って、京の懐中時計を破壊した。
「・・・・な、なんで・・・?」
衝撃的な結末に、涙を流す京。大和は悲しげな表情で京を見つめる。
「ごめんな京。確かに俺はおまえの知っている『大和』の一人だ。でも、君を愛することはできないだよ」
「・・・え?」
彼は自身の懐中時計と一つの赤いバラを京に見せた。
「俺はこの赤いバラを愛する人を守りたいと願った大和。だから、君の求める大和じゃない」
京の体は消滅して、再び時計塔が現れる。
どうやら懐中時計を破壊されれば、再び時計塔に封印されてしまう仕組みのようだ。
「でも、この懐中時計を通して京の苦しみを感じた。だから、終わらせに来たんだよ」
大和は懐中時計を握って消え、それを影で見ていた黒桜夜叉は呟く。
「なぜ、この世界に大和が存在しているんだ?」
疑問の謎が残るこの世界。
・・・果たして、彼は一体何者だろうか。
京襲撃から数十年がたった。
今日はある墓参りをしにドイツから彼はやってきた。
「みんな、久しぶり・・・」
墓には4つの墓があり、そこに4人が眠っている。
「娘や息子は元気にしているよクリス。やっぱり、クリスの活躍を聞いて『将来は正義のヒーロー』になりたいとかいって騎士道精神で頑張っているよ。まぁーさすがに軍人になるかどうかはわからないけどね」
クリスティアーネ・フリードリヒ。
京襲撃から数年後に、吹雪と結婚して双子の子供を儲ける。しかし、軍人との仕事を就いていため若くして戦死する。
マルギッテ・エーベルバッハ。
「マルさん、ごめんなさい。俺はクリスを守ることは出来なかった。だから、きっとマルさんは一生許してくれないだろうね」
京襲撃によって、受けた傷が深くそのまま死亡。クリスの要望により、この川神地で眠ることとなった。
「ユキ、もう大丈夫だよ。もう痛みも苦しみなくそっちでみんなと楽しく過ごしているかな?」
榊原小雪。
京襲撃によって受けた傷により、不治の病に侵されて死亡した。だけど、彼女はとても安からに安心した表情をしていた。まるでようやく苦しみから解放されるかのように。
「京姉さん。なんでだろうね? せっかく、生きてこれたのになんで自分に殺されるだろうね?」
最後の4つめの墓は椎名京、彼の姉の墓である。
姉はあの事故で確かに死んでいた。しかし、別の世界の椎名京が魂を肉体へ憑依されて今まで生きていた。
そして先の襲撃の際に、その京を撃退したが姉自身は助けることは出来なかった。その影響なのかそれ以降、彼に近づく女性はみんな死んでしまっていった。
実はこの四人だけではなく他にも弓道部の部長や武蔵達も若くして亡くなっている。別に吹雪が原因というわけではないが、彼に近づきすぎると死期が早くかったというオチである。
当然、そんな証拠もないが彼はそれもあって川神市からドイツへ生活を変えたのだが、あまりクリスが亡くなってしまう所を見ると効果はなかったらしい。
椎名吹雪よって愛された女性は全員死ぬ。それ以降、彼は再婚はぜずにクリスの子供と一緒にドイツで暮らしている。たまに日本に来ては他の仲間達やこうして墓参りをした日々を繰り返していたが、やはり川神市にくるとあの日の記憶が蘇って、悔しさを思い出させる。
「ははは。ホント、椎名って名前は不吉だねみんな」
それでもそんな自分を愛してくれてありがとうと呟き、彼は去っていった。
・・・その後の彼は、子供には必ず『椎名』という性は受け継ぐなと言い残して、子供の成人を見届けた後に行方不明となった。
イギリスのローグライン。ここは外国でありながら、日本人が多く住んでいる街。
そこにある夫婦がやって来た。
「数十年前のあの卒業式襲撃は貴様の仕業か。沖田?」
男は沖田に質問する。
「そうだ。今は亡き主の命により私が川神学園を襲撃した犯人であり、あの女にも協力をした張本人だ」
「つまりは、あの写真は捏造で接触も作り話だな?」
「一つ勘違いをしているようだが、椎名の父が自殺したのは真実だ。そこは間違わないでもらいたいな源殿」
男の正体は源忠勝だった。彼は、その襲撃以来ずっと気にしていたことを知るために時間をかけてまでここに辿りついたのだ。妻の一子と一緒に。
「それに知った所で今更どうする? すでに時は経ちすぎている。今更何も返ってはこないぞ?」
「・・・ああ、そうだな」
源は全てが遅すぎたと自覚していた。それでも、ちゃんと決着をつけなければ意味がないことも知っていた。
「だが、俺たち風間ファミリーをここまで落としめいたツケは払ってもらう」
沖田は鞘を握って源に向ける。
「どうやってだ? 貴様ら夫婦程度の実力でここが落ちると思っているのか?」
源は微笑む。
「俺たちはただの先攻部隊であり、事実確認をしにきただけだ」
彼はスマホを取り出してボタンを押した。
「そして、それが事実だと証明された以上、何の迷いもなく闘える」
彼がボタンを押した瞬間、激しい爆発音が響いた。
「これは・・・」
「仇をとらせてもらうぜ、沖田三成。さぁ・・・復讐の始まりだ!!」
ローグラインは一気に戦場化し、完全に戦争へと発展するのであった。
その結末は・・・。
第三部 『束縛の忠誠の世界編』 完