真剣で世界を変えてみなさい!   作:アイン会長

29 / 39
2回戦、2年S組対1年F組。
観客は満席だが、ほぼ全員が2年S組の応援及び研究に集まっていた。
「マルさーん! 頑張って!!」
先日、留学生として転校してきたクリスティアーネ・フリードリヒは、同じように転校してきたマルギッテ・エーベルバッハの応援をする。
「トーマ君ー!!」
葵冬馬のファンなど、何かと注目を集めているS組。
特に同じようにS組を敵視している同学年のF組も来ていたが同じF組なのに、完全に1年F組など眼中に収めておらず、それどころかS組の知り合いがいることもあってS組に応援が集中する始末だった。
「ちっ、奴らの生贄かよウチらは」
板垣は面白くなさそうな顔で、応援席を見つめる。他のクラスメイトも同じような考えのようで、試合を開始する前から覇気があまりなかった。
「・・・」
予想はしていたことだが、これが現実。
弱者が強者に挑む時の外野は常に強者側の応援が多い。そして、弱者はその番狂わせを願うための余興か生贄に過ぎない。
この場において『応援』も『支援』も何もない。
だけど、神羅はそんなものは気にしていなかったが、あるものは求めていた。
自分が愛する大好きな板垣の笑顔とそしてこんな圧倒的な戦力を倒した時、他のクラスとも打ち解けていく笑い合う彼女の未来を。

『板垣天使(いたがきえんじぇる)』

彼女は『天使』を嫌っていた。普通に考えても『天使』というのはゲーム系に使用するもので人の一生に刻み込む名前ではない。でも、そんな彼女でも確かに『天使』を誇りにしていた。
そうでなければ、名前を偽名をしてでも変えているはずだ。変えないということは『誇り』そして『好き』という意味。
神羅はそんな誇りを持つ彼女を周囲から認めて欲しいと心から願っていた。悪戯心ではなく、信頼心として『天使(えんじぇる』と呼んで欲しいと。
「天使(えんじぇる)」
「あ”? 試合前に殺すぞ神羅?」
周囲の影響もあり、かなり苛立っている板垣は名を呼ばれることに余計に腹が立っていた。
「ちょっと、こっちに来て」
「あ”!?」
無理やり板垣を連れ出して、人気のない場所に移動する。そして、周囲の確認をしてから怒る板垣を一度落ち着かせる行動を神羅はした。
「・・・テメェ。今ここですることかよ!?」
本人は赤面しつつも、神羅を睨んだ。
「少しは落ち着いたか? そんなに怒っていたら勝てる試合も勝てなくなる」
「・・・!」
板垣は確かに周囲に当てられていたなと自覚し、気持ちを落ち着かせてもう一度神羅を見る。
今度はちゃんと『真正面』から見つめる板垣天使だった。
「この闘い、どうあがいても勝利の鍵は俺達しかいない。だから二人で協力して闘う。そうすることで、他のみんなも一気にかわる。いや、変わらざるおえなくなる」
「どうやってだ? 相手はマルギッテや井上、それにアイツもいるクラスに」
新羅は腕時計を板垣に見せた。
「・・・っ! それは」
「ああ。ここで『契約』した能力を発動させる」


第五話 『強者と弱者』

先攻は2年S組で1番はマルギッテ。

後攻のF組は投手は板垣天使。捕手は神羅とし、他はC組と戦ったメンバー及びポジションで出場する。ただし、一人だけメンバーを変えていた。

「一塁にあなた方の担任を守備に置きましたか・・・」

バッターとして立ったマルギッテは一塁を見る。

確かに先生も参加可能なのは知っているし、この布陣はS組に対してF組としては最善の策だろう。

仮に川神式ルールが発動した際に、先生が相手では対戦が出来るとはいえ、先生に格闘行為をするのは色々と面倒になるのは自明の理だ。

「しかし、いくら担任が使えるとはいえ一種の反則行為ですね」

マルギッテは新羅を見た。

「・・・そちらも色々と反則的な部分はあるでしょ? これくらいはしないとね」

新羅は上目を見つつもマルギッテの目を見て、はっきりと答えた。

「良い判断だと讃賞しましょう。勝利の執念、確かに見せてもらいました」

そして、板垣がボールを投げる。

「だが、それだけでは私達には勝てないと思い知りなさい!!」

バットが振られて、ボールはホームランに・・・。

「アウト! 1アウトじゃな」

審判をしていた鉄心がマルギッテのアウトを宣言をした。

「な、何!?」

当然ながらマルギッテは理解出来なかった。

「・・・ふむ」

ただし、審判をしていた鉄心はすぐに見破っていたがあえて何も言わずに次のバッターを呼んだ。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

「幻術だな」

「はい」

川神百代は周囲に聞こえないような小さい声で黛と会話する。名のなる武道家達はすぐにマルギッテがなぜ三振したのか理解した。しかし、あえて小さい声で話すのはただでさえ、F組がS組に勝つために反則ギリギリを犯してまで勝負しているのに、それに対して水を差すような行為はフェアじゃない。それに、この程度でS組が負けるようならそれだけのクラスというだけの話だ。

「神羅だっけ? アイツが必ずバッターに自分と目を向けるように仕向けて幻術をかけているんだ」

「・・・でも、それも2回表からは通用しません」

「ああ。確かに先攻は幻術で三振させて、後攻は1番の神羅がピッチャーに幻術をかけてホームランできるように仕向けることで、1点は先制は出来る」

「そして、1点をS組から先制することによりF組に希望感も与えられますね」

「・・・だが、次はそうは行かない。S組も既に見破って対策を講じている」

二人の予想は的中し、1回裏まではシナリオ通りだった。

F組が1点先制したことで、クラスメイト達に活気が蘇りようやく闘える段階までは戻った。

しかし、板垣も神羅も理解はしていた。

この戦術は1回表裏のみ。2回表からは別の策を講じなければいけないことを。




2回表4番目は九鬼英雄。
「・・・っ」
会話はしたが、九鬼はこちらとは目線を全く目を合わさなかった。
ちらりと葵を見る。
「・・・」
彼はこちらに気づき手を振ってきた。
しかし。
「アウト! 1アウトじゃ!」
九鬼は三振した。
「ふむ。三振か・・・」
ちらりと神羅を見て、今度は板垣を見る。
「神羅とか言ったな。なかなか面白い奴だ」
「それは嬉しいですね」
どうやら、これも見破られたらしい。こうなると幻術作戦はここで終わりだ。
次の手を考えなければいけない。
5番目は直江あずみ。
「言っておくが、アタイに幻術は無駄だぞ? 不意をつかれた猟犬の時の状態ならいざ知らず、タネをわかっていたなら簡単なことだ」
「・・・でしょうね。ましてや九鬼の従者ともなるとこの程度の幻術は通用しない」
「ま、そういうことだ」
あずみはニヤリと微笑みながらバッターに立とうとした。
「タイム! 守備変更で!!」
新羅もまた動き出す。勝つために・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。