魔繰家にある地下の部屋。
そこで紅茶を飲んでいた女は、両方の腰に刀を収めている男から数枚の紙を受け取った。
「ごくろうさま沖田。悪いわね、いつも貴方に嫌な役回りをさせて」
沖田と呼ばれた男は顔を横に振る。
「いえ、滅相もないです。貴方が私を信用して下さるからこそ、私はそれに答えようと努力しているだけです」
「ふふ・・・ありがとう沖田」
女は彼に笑顔を見せつつ、受け取った紙に書かれている文面を読んだ。
「ふーん・・・。話しか聞いていなかったけど、ここの世界では彼女は駄目なんだ」
「どうやら、研究者共の話ではせいぜい20歳くらいが限界だと・・・」
彼女は紅茶を置いて、引き出しから2つの懐中時計を机の上に置いた。
「とりあえず、試してみて頂戴。もしかすると彼女を助けてあげられるかもしれないし・・・」
「御意。それと・・・」
女はぶら下げている懐中時計に触れる。
「わかっているわ沖田。彼女に手を出した以上、ここに『あれら』が来るのも時間の問題。急いで他のメンバーも集めて頂戴」
「はっ!」
沖田は机の上に置いてある2つの懐中時計を懐にしまい、頭を少し下げて退出した。
「時の神よ。我らは貴方の下僕です。安心してください。貴方の望みのままに世界を安定させましょう」
魔繰家当主、魔繰稟は懐中時計を左側胸近くに懐中時計を寄せて誓うように祈った。
2年S組、2回表1アウトで5番バッターは直江あずみ。
後攻の1年F組は捕手と1塁を交代した。つまりは先生と神羅がポジションを変えた。
ちなみにちゃんと先生には捕手が出来るかどうかは前もって調べている。少なくとも『全く』できないわけではない。
「・・・さて、今度はどんな策で来るやら」
あずみの不気味な笑みの中で、鉄心の再開の宣言によりゲームが再開。
板垣は第一球を投げた。
「・・・遅いな」
ガキンと打ち転がして1塁ベース近くに。当然、それを捕るのは神羅だ。
「っ! なるほど、そういうことか」
直江あずみVS神羅結城。
神羅は今度はワザと打たせて川神ルールの武道システムで挑んで来た。
「無駄だ。直江流七分身!!」
あずみの叫びと共に彼女の体が七人になる。
神羅の幻術を防ぐための対策として講じてきた技。一方の新羅は左手をあずみに向けた。
「神羅風弱(しんらふうじゃく)!!」
「何!?」
強い風圧が巻き起こりあずみの分身達が吹き飛ばされてしまった。残ったあずみ自体は何とか踏ん張っていたが、いきなり風圧かつ、分身が消滅してしまったことにより彼女の動きが脆くなっていた。
「・・・今だ!!」
そして神羅はそれを逃さすに、ボールをあずみの体に触れさせてアウトをとった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
神羅結城の腕時計は『契約』の能力を所持している。
契約の数は全部で12個。
1は幻術。発動中は彼の瞳は時計のような目をしており、それを見たものは幻覚を見せられてしまう。
2は風力。自身の手の平から放たれる範囲内であらゆるものを跳ね返したり、近づけさせることができる。
3は共鳴。これは板垣天使のみの話。彼女に腕時計の『契約』の能力を一つだけ渡した。これにより彼女はどんなことも『契約』できる能力を得ている。ただし、どんな契約をしたのかは本人しかわからない。
4は召喚。人間や武器を強制的に自分の場に呼び出すことができる能力。しかし、これは契約した側にも都合があるためあまり使用はされない。
5は不死。自身の肉体を不死化することができる。ただし、発動中のみ話であり肉体面の強さもそのままのため、何かしらの自己犠牲時に盾として役立たせている。実はこれのおかげで、彼女が逆上した際に怒りの鉄槌を受けても無事でいられる理由である。
6は再生。簡単に略すと回復でしかも限度がない。だが、物凄い『痛み』も伴うため本人自身もしたくはない。
7は自分。本物の自分を何人でも増やすことができて共鳴もでき、腕時計の能力も使用可能。ただし、命を奪われると自分が殺されたこととなり、『本物』も死ぬ。この能力で板垣の時間と委員長の時間と仕事の時間などに使用している。
8は思考。触れた相手の思考を読み取ることができる能力。あくまで触れていないと意味がないため、現在は天使のメンタルケア時などに使用している。
9は呪怨。相手に呪いをかける。これは一度呪いを受けると絶対に解除されない。だって呪いだから。もちろん自身にもリスクがあり、場合によっては自分も死ぬ。
10は吸収。あらゆるものを吸収することできる。
11は瞬間。どんな場所でも瞬時に移動できる。ただし、条件付き。
12は統合。1~11まで能力すべて使用可能とする能力。
以上が彼の能力である。
そして、あずみに使ったのは2の能力。
ただし、こうなる前に守備変更の際に板垣にこちら側からボールを来るように指示していた。
結果は、15対1のコールド負けをしてしまった。
勝敗の差は戦力の問題。
確かに神羅も板垣も頑張った。しかし、他のクラスメイトと彼らとの身体能力に差がありすぎたために、ちょっとしたミスで一気に逆転されて敗北してしまったのだ。
でも、収穫はあった。自分たちの頑張りのおかげでクラスメイトとの距離は縮まり、少しだけ板垣に微笑みが見られたことが大収穫であった。
最終的には決勝戦でS組も負けて、2年F組が勝利を収めるのだが、敗北した神羅にはどうでもいい話だった。