「・・・そう、片腕しか取れなかったか」
そう言い残したと彼女は三人の目の前で自害した。
そもそも彼女が戻ってきたのは、戦いに敗れたのが原因だ。川神一子には勝利したが応援にきた川神百代や竜兵を倒した神羅結城などにボロボロにされてしまい、逃げ帰るように戻って来たが、既に自身の城は失って行き先のない彼女にとって自決以外に逃げる道はなかったからだ。
犯人の自殺及び誘拐された人達の解放により事件は解決。騒動に巻き込まれた九鬼財閥も様々な事件や実験などと関わっていくが直江夫婦を中心として活躍し今後も九鬼の名を世界に示していく。
板垣天使も一時だけ時計を所持させられて暴走したが、結城の活躍により正気に戻ってまた元の生活に戻った。相変わず口は悪いが彼女の笑顔は結城にとっても板垣家や関係者には満足であり、幸せの人生を送っていった。
「失敗したなこれは・・・」
黒桜夜叉は今回の結末を失敗と判断した。
確かに板垣天使は救われた。
もともとは板垣天使の心の奥底にある『自分の名前』と向き合っていなかったが事の始まりである。
そのために、彼女は死んでからも自分を否定してしまい、それが原因で死んでも転生出来ず、無限地獄へと迷い込んでしまった。名前を愛したいと願いながらも否定する自分の無限ループ世界に。
それを救うために選ばれたのが神羅結城。
彼は彼女を愛し、彼女も彼を愛することで、名前も彼の行動によって好意と誇りをもって真正面から受け止めるようになっていく。そうして目的として達成し、後は天使が幸せに残りの人生を楽しんで死を迎えれば彼女の問題は解決。
二人の物語はハッピーエンドとして終わりを迎えた。
ただし、あくまでもそれは『中心核の板垣天使』だけの話である。それ以外の人達の問題は何も解決されることはない。
例を上げれば・・・。
今回の騒動によって、川神一子の武道に対する心が折れてしまい、仲間に永遠の心の傷を残すほどの事件を後に起こし、それを源が肩入れしたりするなどで風間ファミリーが内部崩壊することになるのだが・・・。
板垣天使と幸せに暮らす神羅結城には関係のない話。
彼にとって風間ファミリーは蚊帳の外で、他人がどうなろうと関係ない話である。
確かに人によって天使はいるが、堕天使もいる。自分だけの満足のために天使は微笑み、外部には悪の微笑みしか笑わない天使。
この世界は正に堕天使の微笑みの世界だ。
「それじゃ、意味がないんだよ」
人生の時計塔は新たな試練を与えてきた。
これまで、解決してきたヒロイン達の時計塔がまた復活したのだ。
理由は『破壊と再生』。
これまでも原因となった要因を破壊して、新たな道を見つけるように仕向けてつもりが、その世界が原因でまた別の無限地獄が発生してしまいイタチごっこ現象になっていた。
これでは今回消滅した板垣天使も新しい世界の誕生と共に別の要因で無限地獄に陥って、また時計塔を出現させてしまうかもしれない。いや、するだろう。
つまり、今の方法では時計塔全てを消滅させることは絶対に出来ないという結論だ。
そうなると別の方法での解決方法を導くしかない。
「・・・」
黒桜は自身の持つ懐中時計を握る。
時計は光り出して数多くの懐中時計を出現させる。そして、その時計類及び数十の時計塔を融合させて『世界』を誕生させた。
「最後の手段に移る前に、どうしても確認したいことがいくつかある」
彼はそう言って、その世界に足を踏み入れた。
――新しく生み出した世界は、これまでのオリジナル主人公と時計所持者達が集結した世界。
黒桜は今回のことであることを知り、確認含めての救世世界を誕生させた。
様々な因子が混じりあった世界であるがその中心核は『九鬼紋白』。彼女の心の中に闇を解決させると同時に、複数のヒロインの救済も視野にいれていた。もう一つの因子として取り入れた『時計能力者』達もここに必ず勢ぞろいするように仕向けた。
時計塔世界の謎、無限地獄発生の謎、知らぬ時計所有者達の謎、魔繰家の謎などを含めて・・・。
ここで謎を解決させ、次の世界で終わらすための布石として。
謎を解決させる=つまり。
「・・・」
『本物』の目覚め否応なく目覚めることとなる。
本物。
それは―――。