真剣で世界を変えてみなさい!   作:アイン会長

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俺は、仲間達と一緒に毎日馬鹿みたいなことをやっていた。
もしかしたら女の子の誰かと恋仲になるかもしれない。どんな未来、どんな可能性を歩んでいくかは俺次第。
その中で選んだ選択はどれもが現実であり、起こりえる話なんだ。


――それが、直江大和の生前最後の決断の答えだった。


世界誕生編
前編 『全ての始まり』


川神学園2年、直江大和の学生生活は健全だった。

友と遊び。学び。競う。恋こそしていないが、それこそ充実した学生ライフを送っていた。フリーな状態の大和は、いつか恋人もできるものさと、気楽なものだった。

しかし、のん気にしている彼に、あまりに巨大な運命が直撃した。

 

『死』

 

直江大和が死んだ。

原因は、居眠り運転による交通事故である。

周囲の悲しみ、友たちの別れや仲間の京が後を追って自殺未遂など様々な出来事がその『世界』で起こっていく中で、当の大和の肉体は火葬され、お墓の中へと埋葬された。

一方の魂だけとなった大和は次の転生、いわゆる生まれ変わりになる前に、ある場所へと辿りつく。

「・・・ここは?」

真っ白な世界。

建物も、人も、風も音も無音の真っ白な世界。そこに大和はいた。

「あら? こんな世界に人がいるなんて珍しいわね」

声のする方へ振り向くと大和と同じくらいの年代の女性が、にこやかな笑みで出迎える。

「・・・君は?」

「私は魔繰巫女って名前で、魔法使いよ!」

「魔法使い・・・?」

「貴方は?」

「直江大和・・・だ」

巫女は大和があまり驚く表情を見せないことに、逆に驚いてしまった。

「あら? 意外ね。普通の人なら『嘘だ!とかここはどこだ!?』とか言うと思っていたんだけど?」

「別に驚いていないわけではないよ。多分本物なんだなと信じて思っているよ」

大和にとって魔法使い程度のことで驚くことはなかった。生前、そんな人間や仲間達と一緒に暮らして楽しんでいたし、なんとなく今の大和が置かれている状況を考えれば少し理解が出来る。

「ふーん・・・それじゃ、思い残すことはないだね?」

「それは沢山ある!!」

その言葉に大和は感情が爆発する。

やってみたかったこと、してみかたかったことが山ほどあった。とても数分で終わるような話ではないし永遠に満足も納得も出来ないだろう。

「なんなら、その夢の一つに君を加えてもいい」

「へー。魔女さえも虜にしちゃんだ?」

「夢は永遠。未来はいくつもある・・・でも」

大和の言葉の途切れに巫女は残酷突き刺した。

「貴方は死んだ。君という人生は終わったの」

「・・・」

大和は無言になった。

知っていた、今こうしていても感覚が全然感じないような状態の肉体。それはまるで自身が魂という無の存在のような人間だった。

「でも、もし、もう一度人生をやり直せるならどうする?」

「!!」

それはまさにフラグ。大和にチャンスが巡ってきた瞬間。

「もちろん、やり直すさ。何度でも何度も自分が納得するまで」

その大和の言葉に巫女は笑みを浮かべ。

「あははは、それは無理だよ。君はもう死んじゃっているんだから!」

突如、巫女は大きな鎌で彼を斬った。

「あ・・・」

小さいつぶやきと共に狩られる大和。

狩られた肉体の部分の傷からは血はでてこないが、その部分にこの世界と同じような無の世界が見えた。

「だからさ、君の魂の中の世界で永遠に続けて。仲間も友達も見知らぬ人間も全部入れてあげるから」

「あ、あ、ああ・・・」

傷はどんどん大きくなりやがて大和を飲み込み、この無の世界も飲み込みこまれ、狩った巫女も飲み込まれる。

そして、その中でまた無の世界が誕生する。

ただし先ほどのように見知らぬ『無の世界』ではなく『大和の内部で生み出された無の世界』として。

「ん――! 気持ちが良いわね。貴方の世界は」

巫女はパチンと指を鳴らす。すると無数の青炎の玉が現れ、巫女の周りを取り囲こんだ。

「さあ・・・あなたの望みを叶えてあげましょう」

巫女は懐から金色の懐中時計を取り出し、地面に置いた。

「人は死ねば魂となる。あなたには魂達の預け場所の器になってもらうわ。そこで魂となった者たちの欲望を叶え転生させて次の未来へと運ぶ方舟になって頂戴」

無数の青炎の玉が次々と金色の懐中時計の光を浴びて、大きい時計塔の姿に変わっていく。巫女は青炎の玉を次々と増やしていき、その度に時計塔に変わっていった。

やがて巫女は辺りを見渡して無の世界が時計塔だらけになるのを確認すると手を止めた。

「こんなものかな?」

巫女が行ったことは、死んだ人間達の魂をこの世界で何度も人生をやり直している夢を見続けさせ、いつか転生を自身から望むように仕向けさせる転生装置を生み出した。

大和はその魂を場所として使用され、巫女が持っていた懐中時計は魂を封印するための一時的な金庫の役割として。

「・・・さて、これで私の理想とする実験場は完成ね」

それが巫女の理由。

自身が魔法の研究としての役目を果たすために、大和の魂を利用した。

しかし、巫女はあることを忘れていた。

これは言わば呪いの一種。例えこのような方法で他の者たちが救われるとしても大和自身はどうなるか。この創世された世界は言わば大和の世界であり、ここは大和が正真正銘の『神』の領域だ。

「・・・!」

人を呪えば自身も必ず呪われる。

「言っただろ? 夢の一つに君を加えてもいいってね」

どこから聞こえる大和の声に反応した巫女はすぐに逃げ出そうとしたが、地面に置いておいた金色の懐中時計が自身の目の前に現れた。

「・・・こいつ!?」

懐中時計は金色の輝きと同時に彼女を中へと封印してしまう。

そして、辺りには無限のような時計塔と懐中時計が一つだけが残るのだった。




――これが時計塔と懐中時計が誕生した真実と直江大和が現世に存在しない理由でもある。
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