でも、気持ちを抑えることは不可能だった。
「・・・私は」
彼女は自身の弱さに痛感する。
でも、それも『相手』を見た瞬間、気持ちが大きく変わる。
「ふーん・・・あれが」
彼女は微笑み安堵を寄せた。
『確かに見た目では勝てそうにないけど・・・決して見た目こそが幸せの道にとは限らない』
その眼差しの奥には依存心という狂気があるのだった。
真田一子への襲撃。
それは百代自身の人生に大きく影響することに変化した。
「モモよ。貴様に罰を与える!」
彼女の祖父、川神鉄心が下したのは川神百代の武神の剥奪だった。己の欲望で戦ったこと、それに対して全くの反省がないことが理由である。
「ジジイ・・・出来るのか? 剥奪なんて」
百代がオーラを放つ。そのオーラは黒く『悪』の塊にまみれた気で練られていた。
「ここまで・・・」
鉄心はその姿に後悔する。
どこで、彼女の武道の道を外してしまったのだろうか。もしかしたら、黒桜との出会いが全てを変えてしまったのだろうかなどと過去を悔やんだ。
「言葉での剥奪など無に等しい。本当に剥奪するなら私を『力』で抑えて見ろ! ジジイ!!」
「・・・っ!!」
百代の叫び声と合図に場は戦場化。
鉄心の心は鬼神へと変貌し、その動きは『殺意』に変化する。
「!!」
百代もすぐに鉄心の変貌に気がつく。
「この瞬間変わる!! 時代も人も思想もそして支配さえも・・・っ!」
「ああ・・・変わるのう。ただし、それはお前の時代ではなく群雄割拠の始まりじゃがな・・・」
「な、に・・・?」
目が眩むほどの光が、鉄心から百代に浴びせられた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
・・・時は川神百代が武神剥奪される前日へ戻る。
川神院に鉄心と黒桜の二名が真田一子襲撃事件についての話し合いをしていた。そして、結論は百代に武神剥奪し、力を弱体化させることを決定する。
「待って下さい。いくらなんでも弱体化方針には反対です。もしも百代クラスのような敵が現れたらどうするんですか?」
鉄心は厳しい目先で、黒桜を見た。
「そんな奴らが現れたら現れたで、その時に対処するだけじゃ。だが、今の百代の行動は目に余ることが多すぎる。特に黒桜のことになるとな・・・」
鉄心はどうやら百代の原因は黒桜と考えているらしい。
「俺・・・が?」
「百代に強い嫉妬心があり、それを力で武力による制圧を考えているようじゃ」
百代にとって初恋の相手。そんな彼にお邪魔虫がついたら腹が立つのは人間の証。しかし、百代自身がその行動を移せば黒桜のみならず無関係な人達まで迷惑をかけるのは必然。
「そして、君は椎名京もいじめから助けから、その影響もあって悪化したのも含まれる」
嫉妬がより嫉妬を悪化して、京の黒桜に対する恋する束縛が百代の悪意を誕生させた。
すべては、黒桜夜叉が原因。
「・・・・」
黒桜は考える。
百代とは最初はただの幼馴染だったはず。京もいじめられいるのを我慢出来ないから助けたのに。
どうして、目の前のこうなったのだろう。
・・・瞬間、二人の足場が金色の時計陣で囲まれた。
「何を、したジジイ・・・?」
仰向けに倒れ込みながらも百代は鉄心を睨んだ。
「何、お前の『力』を奪ったのだけじゃ。倒れているのは一時的なだけで、しばらくすれば『普通』の生活くらいの『力』は戻ってくる」
鉄心の意味に百代はすぐに理解した。確かに徐々に力が戻りつつある。
が、自分が知る『力』が全く戻っくる気配はない。
「・・・お前の『力』の源は、友人に渡すので、モモ自身は地道に鍛錬を積んで、また強くなるんじゃな」
奪われたと表現していいだろう。『武神』としての力を鉄心は奪ったのだ。どのような方法かはわからないが。
「ふざ・・・」
ぎりりと鉄心を見つめる百代。
「・・・」
そこに黒桜が現れた。
「・・・黒桜」
百代は一番見られたくない男に見られ、屈辱的な想いに走る。しかし、彼はそんな百代に振り向きもせずに、あることを言ってきた。
「その力を・・・俺に・・・下さい」
「なっ!?」
耳を疑った。あの優しい黒桜が略奪を。しかも自身の『武神』としての源を欲しがるなんて。
「・・・そうじゃな。それが約束じゃったな」
鉄心は少し戸惑いを見せながらも、黒桜に『武神』の力を渡そうとする。
「や、やめろ―――――――――!!!!」
百代が悲痛な想いで大声で叫ぶが、黒桜は何の戸惑いもなく受け入れようとする。
「・・・あ」
百代はその瞬間、意識が保てなくなり気を失った。