真剣で世界を変えてみなさい!   作:アイン会長

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真っ白い空。白い地面、そして無数に広がる時計塔。
「・・・ここは?」
鉄心も一瞬だけ、驚いた表情をするがすぐさま鬼相となり。
「そこか!」
右手で何かを吹き飛ばした。
「!!」
鉄心の右手から放たれた平手は風を呼び、周囲全域を突風に巻き起こす。そもそも風も何もなかったのに突風を生み出せる鉄心はやはり人間離れをしていると黒桜は思った。
「なるほど・・・」
そして、鉄心に炙り出されたかのように黒い塊が二人の前に現れた。
「・・・貴方クラスになると『この姿では』きついですか」
黒い塊が話す。
「私はこの世界の管理人をしているもの。そして、貴方方の世界を生み出した張本人だ」
鉄心はその言葉にため息をつく。
「はぁ・・・一体、何度そのようなことをいう輩を聞いたことか」
黒い塊はそんな鉄心の戯言など無視して、ゆっくりと一つの時計塔に近くにいく。二人もその後へついて行った。
時計塔の構造物はレンガで組み立てられており、その頭上には大きな時計が設置されている。その時計も奇妙な仕掛けで、さっきから長針と右針が右へ小刻みで動いていた。
「これはある生命者の人生の時計塔だ・・・」
そう宣告すると、時計塔は姿を変えて人の形になり、それは二人の顔見知りの姿となる。
「百代!?」
黒桜は驚き、鉄心は声は上げずとも厳しい表情で百代に化けた時計塔を見る。
「・・・」
百代は川神学園の制服姿で目を閉ざし、眠っているような姿で宙に浮いていた。
「偽物・・・ではないようじゃなの。モモの気を感じる」
鉄心は黒い塊を見た。
「先程も言ったが、その時計塔は彼女の人生時間を表したものだ。姿が見えるのは二人がわかりやすくするために少し変化させた」
そういうと百代の姿は薄くなっり再び時計塔に戻る。
「百代の人生時間って・・・ここはそしたら人の寿命がわかるっていうのか!?」
怖い話の本に載っていたことを思い出す黒桜。この世には自分の命の寿命がわかるロウソクがあるという言い伝え。それと同じ性質だろうか。
「・・・間違ってはいない。しかし・・・彼女の『人生の寿命時間』が、その時計は逆回転で回っているだろう?」
「え?」
改めて百代の時計塔を見ると、確かに時計は逆回転で動いていた。
「逆回転は人生の巻き戻しを意味する。つまりはモモは何度も同じ時間を繰り返しているわけじゃな」
鉄心は悟り、そして確信へと確認の言葉を言う。
「そうだ。彼女は自分の人生を納得していない。そのために何度も何度も過去に戻って人生をやり直している」
だが、結局は何度やっても満足せずにまた戻る。それでは彼女の心は無限地獄ようだ。
「だから彼女の本能に聞いた。どうしたら満足するのかと・・・・」
鉄心は百代の本能は何かをを思い返すして答えを得た。
「・・・闘争の世界。モモは強い者達と永遠に戦い続けることを望んでいる。川神百代の姿としての・・・」
「え?」
黒桜は耳を疑う。
百代が永遠に戦い続けていることを望んでいるということに。その理論は間違えであるのは誰でもわかっているはずだ。
「どうして、間違えだと思う?」
「・・・っ!」
黒い塊は黒桜の心を読んだのか質問してきた。
「誰だっていつまでも永遠という気持ちはあるさ、でも、自分という姿で永遠にというのは命あるのものの限界だ」
生と死。
それは生きる生命者達の定められた絶対的な運命だ。
「だから彼女は強く願った何度も過去に戻って戦い続けることを・・・」
それが彼女の無限地獄の正体。
死んで生まれ変わればそれは自分ではない。せっかく最強の座を手に入れたのに、手放して死ぬのは嫌。
だから、彼女の魂は思う。
過去に戻って、この姿で永遠に強い奴らと戦い続けたい・・・と。
「・・・」
二人は百代の時計塔を見つめた。
「だが、過去に戻れば今までの出来事は全て消すことは出来ずに『経験』が魂に蓄積されていくだけだ」
魂の蓄積。
仮にその蓄積が百代の願望に繋がるなら『力』の蓄積だろう。他の記憶を維持していれば一度戦い勝利した相手に興味心はなくなってしまう。
だから記憶は消去し、いつも初対面で対峙はしているのだろうが、そんなことをしても強いレベルはずっと維持し続けるのだから百代にとって不服。
それでより強く強い奴らと戦いたいと願い、川神百代の魂は囚われた状態になってしまった。
「どうしたら、百代の時計塔の針は元に戻る?」
黒桜の質問に黒い塊は疑問的な口調で質問してきた。
「その意味を知っているのか? 元に戻せば彼女は完全に死ぬのだぞ?」
「だろうな。でも、人ってさ。いつまでも過去に囚われずに未来へ進む方が大切だと思う。それが例え、死んで全てをリセットした新しい自分でも」
それにすでに百代は何度も無限地獄を体験して苦しんでもいる。それを誰かが幕引きするのなら、理由を知っている自分か鉄心しかいない。
「・・・お主はその言葉を得るためにワシらをここに呼んだのじゃろ?」
今まで無言だった鉄心が口を開く。
「・・・」
ピカッと百代の時計塔が一瞬だけ光がだし、今度は懐中時計へと変わった。
「その懐中時計は川神百代の時計塔から変化したもの。所持していれば川神百代に対してのみ無敵でいられる」
「無敵?」
「力を奪うことも心を奪うことも、人生を奪うこともな」
つまり、これを所持していれば百代の人生は思い通りにすることが出来るということ。
黒桜は鉄心を見た。
「・・・総代」
「・・・」
鉄心は目を閉じて何も言わない。恐らく考えているのだろう。
これからのこと、未来のこと、百代の人生のことを。
血の繋がった親として当然の考えであり、この選択権は鉄心にある。黒桜はこれで百代をお嫁さんに下さいと言っていうようなもの。
そして、ある意味で百代を殺すとも言っている。
「いいじゃろう。やってみなさい、全ての責任は私が負う」
承諾した。
「総代!!」
「ただしじゃ・・・!!」
総代が二つに分裂した。
「お前さんの言葉全てを信じるつもりはないし、奴の言葉を信じきることは出来ない。だからこの世界に『ワシ』の一部を置いて監視させてもらう」
「それは嬉しいことだ。私も話相手が欲しかったからね・・・」
そして、二人は一部の鉄心の分身を残したまま元の世界へと帰還した。


第五話 『二代目の武神誕生』

2009年の4月。

黒楼は川神学園2年生になった。

通学はマンションを借りて通学をしている。もちろん川神院から登校することも可能だったが、あの事件の出来事から距離を置く感じで、両親に相談して借りて住むことにした。

これまで何もしていなかった罪滅ぼしなのか、親は生活するには十分過ぎるほどの支援や資金を渡してくれた。おかげで卒業までは安心して何不自由なく暮らせれる環境を手に入れていた。

ただし、『あくまでも』環境のみだけの話であり、借りた場所は誰も住んでいない廃ビルアパートの1部屋。中はカビやひび割れた壁、崩れ落ちそうな窓など建物としての機能が崩壊寸前。しかも屋上からの眺めは無骨な工場地帯となっていて、川神の街の光などは一切見えない所で凡庸な場所だった。

だが、黒桜はこの物件を大いに喜び3年間をここで過ごすことを決心していた。

それはあの事件が起きたこその決心でもあった。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

2008年の4月。川神百代は川神学園を中退した。

理由や書類には、一身上の都合により中退と記入されて認可されている。

周囲の反応は、中退の原因は武神の剥奪が原因でやめたとか、剥奪以降に人殺しをして表に出られなくなったなどの憶測が飛び交った。

しかし、その噂も2代目の武神誕生により、人々の思考は百代から黒桜へと移り変わって、一部の武道家を除いて川神百代の存在を忘れるようになっていた。

「・・・まぁ、確かにこんな姿になるんじゃ仕方がないか」

二つの影が横たわる女性を見つめる。

一人は釈迦堂というかつては川神院で修行していた人間であり、百代の師範の一人でもあった。現在は破門されており、己の磨いた川神流を非道に使用しながら傭兵として暮らしている。

「ふん・・・今では誰かれ構わず闘いを求めて襲う落ちぶれた『ただの女』だ」

その隣の影は鼻で彼女を笑う。

「・・・あー・・・まーな。まだ襲われていないだけでもマシかもな」

釈迦堂は頭をかきながらも彼女の姿を見めつつ、懐から宝石を取り出した。

宝石の色は黒く、正に悪が満ちたような物。

「念のため言っておくぞ、釈迦堂。『それ』を使えば彼女は間違いなく『武神』の力は戻りはする。しかし『武神』には決して戻れないものだ」

「・・・で、しょうね」

釈迦堂はまじまじと宝石を見つめ、そして彼女を見た。

「でも、まぁ・・・仕方がないですわ」

ゆっくりと釈迦堂は彼女に近づく。

「・・・っ?」

彼女は気がつくが、相手が知り合いの釈迦堂だったために、これから何をするつもりかまではわからずにいた。

「百代は俺にとって、結構大切な弟子なんですよ」

「!!!!」

そして、釈迦堂は百代の口に宝石を飲み込ませるのだった。




世界は群雄割拠時代へと突入した。
春の終わりに起きた川神百代への武神剥奪宣言が引き金となり、世界各地で武道家達の武神宣言争いが勃発する。己こそが武神であって他は弱者であり、逆らう者は全て力で粉砕してすると・・・。
やがて力と力の衝突は多くの無関係な一般市民を巻き込むほどの規模となって、人びとを脳裏に刻みつけた。
しかし、その時代は鉄心を始めとした同等の実力者の猛者達が力を合わして収束し、再び以前の世界へと戻った。


『武神 黒桜夜叉』
―――新しい武神が誕生すると共に。
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