黒桜は微笑えんだ。
「・・・っ!」
一人の影がその言葉に唇を噛んだ。
第一試合、黒桜夜叉VS椎名京。
決勝舞台は予選と同じように指定された無人島での1対1で決闘が開始された。
無人島には森がいくつか多く茂っており、姿を隠すには最適な場所であった。それは弓矢を得意とする京の領域でもある。
しかし、京は試合開始されても闘う姿勢をとる様子が見られなかった。それどころか京からには闘う『覇気」が感じられない。
「・・・どういうつもりだ京?」
流石にこの局面での不可思議な行動に疑問を抱き、黒桜は京は質問する。
「どーもしないよ。私は黒桜と闘うつもりはないの」
「何?」
ここに来て、試合放棄をする京。
「だって、武神になるつもりには私にはないから、今のままなら黒桜が続けて欲しいの」
「・・・」
「気にしないでいいよ。・・・私はわたし、私の道に進むだけだけだから」
京の道。それは未来についての話だろうか。
考えてみれば、あれだけ長く京と同じ時間を過ごしたのに、彼女の未来を聞いたことがない。
「京の道って、なんだ?」
その質問に京は微笑む。
「勿論、黒桜との幸せな家庭だよ」
その返答に、2日前に百代にいった言葉を思い出す黒桜。
「すまない。それは無理だと思う。、俺は百代を・・・」
「大丈夫だよ」
京は黒桜の言葉を遮った。そして、両手を広げてこう叫んだ。
「この世に不可能なんかないんだよ黒桜。あるのは生命の死を止めることが出来ないだけ」
その発言で、彼女の精神が狂気が混じっていることに気づく。京は何かに狂わされているようだが、原因がわからんない。
「・・・大丈夫ってどういう意味だ京。例えば百代と籍を入れたら、もう・・・」
「何が?」
あっさりとしていた。
「いや、百代と結婚したら京とは結婚なんて出来ないよ」
その言葉に京は微笑みつつ、口を開く。
「それは日本だけのルールだし、別にそれに縛られる必要性もないよ」
依存心か執着心。もしくはそれを融合した心か。
「・・・」
椎名京の心は少し壊れているように見えた。
その引き金を引いたのも自分。あの時、彼女を救ったことで彼女の心の方針が決まってしまった。『彼が私の王子様』という都合の良い理想者に。
「わかった。戦わない以上、ここにいてもしょうがない。さっさと京は負けを認めて、次の俺の試合を見ていててくれ」
「ええ・・・」
京はそう頷くと立ち去ろうとする。
「だが、その前に1つだけ聞きたいことがある」
「何?」
「武神目的ではなく、一体なんの目的で大会に京は参加したんだ?」
武神になるつもりはない。なら、どんな理由でこの大会に参加したのだろうか。
「・・・それはね」
★★★★★★★★★★★
第二試合、沖田三成VS黛由紀恵。
二人は剣豪者だった。
だからこそ、一瞬の隙が命運を分けることを二人は熟知しており、互いに剣を抜かずに構えたままで見つめ合っている状態であった。
「黛由紀恵・・・」
先に口を開いたのは沖田。黛は何も答えない。
「良き気迫だった。だが、この世界でのお前では俺は倒せない」
瞬間、沖田の剣が抜かれる。
「・・・っ!」
黛も剣を抜いて、応戦しようとするが相手の方が早かった。
「天罰!!!」
沖田の叫び声と共に、沖田の剣が空高く舞う。
手応えはあった。
が、地面に落ちていたのは2つに割れた馬の可形をしたストラップのみ。
黛は剣を抜けつつ、半歩下がって回避していた。
「・・・ほぉ」
関心して微笑む沖田。
しかし、一方の黛の精神は少し感情が高ぶっていた。大好きな馬のストラップが半分に斬られたことが許せなかったからだ。
「・・・っ!」
黛のオーラが変わることに気づく沖田。
「・・・なるほど、こいつも――」
そう確信した瞬間、沖田は黛に斬られるだった。
★★★★★★★★★★★★★
第三試合、真田一子VS大友焔。
一子の相手の大友は砲筒を使い敵を掃討する戦術を好む。そのためか、試合開始と同時に大友が所持していた砲筒が火を吹く。
おかげで無人島は山火事状態だ。無論、これは鉄心側も認めている領域なので戦いが終わるまでは何もする気はない。
火はどんどん燃え移り、全てを紅蓮へと変えていく。
「・・・ごほっ! しまったやりすぎたか!?」
つい調子に乗って砲筒を連射したのが仇となり、彼女自身にも影響してきた。しかもこのままだと砲筒の予備にまでにも火が回って大爆発を起こしてしまう。
「・・・くそ、移動しなければ」
一時退散とその場を動こうとする大友だが。
「チャンス!」
それは一子にとっても最大のチャンスだった。
「しまっ――!!!」
一子の槍先が砲筒を突き刺す。
本来の硬さなら砲筒が上で、槍先では壊れてしまうが、槍先に一子の気を練っているのならば話は別。彼女の気が強ければ強いほど、それに分け与えられた物質は予想を超えて、壊せないものが壊せるという可能性がある。
「逃さない!」
そして、追い打ちをかけるかのように一子は砲筒を突き刺したが反対の槍で、地面にさして右足を上げる。
「真田流――」
大友は声の方へと目を向けるが、時すでに遅し。
「火炎堕とし!!」
膝蹴りが決まった。
大友はそのまま吹き飛んで、木の樹木までぶつかった。しかし、同時に炎に飲まれていた樹木だったために、大友の衝突で崩れ落ちてくる。
「・・・・あっ!!!」
一瞬で一子は、気づくと武器も鎧も捨てて身軽理になって大友に走る。
どがしゃーんと鈍い音をたてながら木が崩れ落ちた。
―――無人島は火の島となってしまうだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
第四試合、川神百代VS板垣辰子。
「・・・」
板垣はぼやーとした顔で立っていた。
「・・・(この女)」
しかし、百代はその内なる潜在能力が非常に高いことに気付き、少し微笑んだ。
「さぁ・・・私を楽しませてくれよ?」
百代はこれまでのことを少し思い返す。
剥奪された日々のこと、力を得るために地獄のような苦しみを味わったこと、そして今日にいたるまで、全てがザコであったこと。
百代は本気で闘いたいと願っていた。己が油断すれば死ぬと感じるほどの恐怖心やその中でしか生まれない快楽心を。
『始め!!」
試合開始の合図が鳴る。
「行くぞ!!!!」
どんっと猛スピードで百代は板垣へ近づき。
「川神流・・・無双正拳突き!!」
百代の気が混じった拳が板垣の顔面へと繰り出される。
「!!」
板垣も反応したがすでに遅く、彼女は顔面を殴られてその衝撃で吹き飛ばされる。
『板垣選手、場外! これにより川神選手の勝利です!!」
一瞬で終わってしまった。
「・・・っち」
舌打ちをする百代。
勝つのはわかっていたが、こうも簡単に勝つとは思っていなかった。彼女の潜在能力はかなり高いと感じていた。だからこそ、本気の一撃を最初に繰り出したのに。
それが仇となって一瞬で終わってしまった。
「・・・まぁ、いいさ」
百代は考えるのをやめた。
所詮は敗者。敗者は勝利者の前ではどんな言い分も認められないし、それは負け犬の遠吠えだ。そんな奴に武神になる資格すらない。
「常に最強であり、圧倒する力・・・」
元武神である川神百代は思う。
――力こそが正義であると――
残りの試合も終わり、それぞれの次の組み合わせが発表された。
第一試合 黒桜夜叉VS沖田三成
第二試合 川神百代VS真田一子
第三試合 魔操忠勝VS直江あずみ
第四試合 魔操稟VS松永燕
このような組み合わせになったが、そのうちの諸事情で棄権者が続出して結果的にはこのような形になった。
第一試合 黒桜夜叉VS沖田三成(棄権)
第二試合 川神百代VS真田一子(棄権)
第三試合 魔操忠勝(棄権)VS直江あずみ(棄権)
第四試合 なしVS松永燕
これにより、決勝進出の一人は松永燕と確定。もうひとりの決勝進出は黒桜夜叉と川神百代のどちらかという形での準決勝が行われることとなった。