無下限アーカイブ   作:サリム

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第34話 私の生徒

「とにかくまずは、市民の皆さんを避難させましょう!」

 

アヤネがそう言った時、廊下の方から足音が聞こえてくる

 

「対策委員会を発見!こっちだ!」

 

ダダダッ

 

「斥候が、もうこんなところにまで・・・」

 

シロコが廊下に居たオートマタを倒した

 

「アビドス高校周辺に、カイザーPMCの兵を多数確認!すでに校内にもかなり侵入されています!」

 

「・・・みんな、まずは学校に侵入してるやつからやっつけよっか〜?」

 

「そうですね、はい!先生の安全を確保しつつ、学校に侵入した敵を撃退します!」

 

「校内の安全を確保した後は、市民の皆さんの避難を!」

 

 

 

 

 

 

学校にいるカイザーPMCを全て倒した対策委員会は安全を確保しにアビドス自治区に向かった

 

「思ったより多いわねっ!」

 

「・・・そうですね」

 

「何者かの接近を確認・・・カイザー理事です!」

 

アヤネが報告すると、前方から見覚えのある大柄のロボットが近寄ってくる

 

「ふむ、学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ」

 

「これはなんの真似ですか?企業が街を攻撃するなんて・・・いくらあなたたちが土地の所有者だったとしても、そんな権利は無いはずです!」

 

「それに、学校はまだアビドスのものですし、サトルさんとの契約で私たちには手を出せないはずです!」

 

「侵攻は明白な不法行為!連邦生徒会に通報しますよ!」

 

「スカウトなんて、最初から嘘だったってこと?いや、それよりもサトル先輩はどこ?PMCに入ったならここに居てもおかしくないはず」

 

「この悪党め・・・サトルを返して!」

 

「・・・くくくっ、何を言ってるのやら」

 

「連邦生徒会に通報だと?面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ?」

 

「君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に嘆願してきたんだろう?それで、一度でも動いてくれたことがあったか?」

 

「無かったはずだ、何せ連邦生徒会は今、動けないからな」

 

「連邦生徒会でなくても良い、今までどこか他の学園が、君たちのことを助けてくれたことはあったか?・・・そろそろわかっただろう?」

 

「・・・そして、契約と言ったな?契約者は私では無いのだよ・・・つまり、あいつとの契約をしたところで、私には一切関係ない」

 

「そんなの屁理屈だよね?」

 

「・・・アビドスにはまだ君がいたな、小鳥遊ホシノそうだな・・・以前言った言葉は撤回しよう数百の両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち、数百トンもの火薬に弾薬・・・」

 

「君たちに使ってあげようじゃないか、どうせ連邦生徒会は機能してないんだ、今さら力づくで退去させても後でどうにかできる、それに・・・今はあいつも居ないからな・・・せいぜいこちらの損失なんて程度がしれている」

 

「それにしても何がしたかったんだろうな?借金が無くなるからなんだ?もう全て手遅れだろう?なんのために自分の身を投げてまで・・・」

 

「あんた、それ以上言ったら・・・」

 

「撃つよ」

 

「・・・」

 

「まあまあ、みんな冷静に・・・こいつがムカつくのはわかるけどさ、今はサトルを助ける方法を考えないとでしょ?」

 

「それもそうね、ホシノ先輩・・・ありがとう」

 

「みなさん、凄い数の兵力がこちらに向かって来ています!」

 

「このままここで戦ってる暇は無い・・・」

 

ドカアアァァァン

 

四方から来ていたPMCの軍団が爆弾で吹き飛ばされる

 

「な、なに!?」

 

「話は聞かせてもらったわ・・・」

 

「この声は、便利屋の・・・」

 

「ここは私たちに任せてちょうだい!」

 

瓦礫の上でポーズを取っている便利屋のアルがそう言った

 

「飼い犬の分際で・・・」

 

パシュッ

 

カイザー理事の言葉を遮ってアルがスナイパーで理事の足元を撃ち抜く

 

「私たちは誰の下にもつかないわ」

 

「アルちゃんかっこい〜」

 

「アル様!これからもずっとついて行きます!」

 

「先生!合わせられるわよね!?」

 

"もちろん!"

 

 

 

 

 

 

先生が指揮に入った便利屋は押し寄せて来るカイザーPMCを難なく倒していく

 

「くっ、一度退却だ!兵力の再整備に入れ!」

 

「は、はい!」

 

「覚えておけ、この代償は高くつくぞ・・・!」

 

対策委員会と便利屋にそう言い残してカイザー理事はPMC達と一緒に退却していった

 

「一度、学校に戻って作戦を考えましょう」

 

「・・・ん」

 

 

 

 

 

 

<先生視点>

 

カイザー理事はサトルと契約していないと言っていた・・・ということは恐らく、他に関わっているのはホシノの言っていた黒服という名前の大人だ

 

黒服の居場所はアロナ・・・シッテムの箱のメインOSに頼んで特定して貰った

 

"ここか・・・"

 

目の前にあるのはそこら辺にありそうな普通の事務所だった、この建物の中に黒服は居る

 

扉を開ける・・・デスクに座っている黒いスーツを着ている・・・体が影のようなになっていて目の部分が発光している、これまで会ったことのない不気味な人物だった

 

「・・・あなたのことは知っています、連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在」

 

「あのオーパーツ「シッテムの箱」の主であり、連邦捜査部シヤーレの先生」

 

既に私のことは調べられていたようだ・・・シッテムの箱のことも知っている・・・。情報収集能力が高い黒服に私は警戒を強めた

 

「あなたを過小評価する者もいるようですが、私たちは違います」

 

"・・・私たち?"

 

「おっと、そういえば自己紹介をしていませんでしたか?」

 

「私たちのことはゲマトリア・・・そして私のことは黒服とでも、この名前が気に入ってましてね」

 

「私たちは観察者であり、探求者であり、研究者です」

 

「一応お聞きしますが、私たちゲマトリアと協力するつもりはありませんか?」

 

"微塵も無い"

 

「真理と秘儀を手に入れられるこの提案を断ってまで、あなたはキヴォトスで何を追求するつもりなのですか?」

 

"少なくとも、そんな提案に興味は無い、私はただサトルを返してもらいに来ただけ"

 

私がそう言うと黒服は笑った

 

「あなたの行動に正当性が無いことにお気づきですか、先生?今のあなたに一体何の権利があって、そんな要求をされているのでしょう?」

 

「サトルさんはもう何処にも所属していません、届け出を確認されていないのですか?」

 

"・・・まだだよ"

 

「・・・ほう?」

 

"シャーレの顧問である私が、まだサインをしていない"

 

"だからサトルはまだシャーレ所属だし、今でも私の生徒だから"

 

「・・・なるほど」

 

「あなたが先生である以上、担当生徒の去就にはあなたのサインが必要・・・そういうことですか」

 

「・・・ですが、サトルさんはこの世界の人間ではありません、そしてあなたと同じ外から来た人間でもない」

 

「戸籍もサトルさんとの契約に則り私が用意しました、その契約は破棄されてしまいましたがね・・・そんな偽りの生徒をあなたは本当の生徒と言えるのでしょうか?」

 

"サトルは私の生徒だ、これからもそれは変わらない"

 

「なるほどなるほど・・・」

 

「学校の生徒、そして先生・・・ふむ、中々に厄介な概念ですね」

 

「そしてこれはサトルさんが望んだこと、生徒の望みを叶えるのが先生というものではありませんか」

 

"サトルはこんなことを望んではいない、お前たちがサトルの心を踏みにじり、利用した"

 

「ええ、確かに仰る通りです、他人の不幸よりも私たちは自分の利益を優先しました」

 

「それを否定はしません、私たちの行動は善か悪かと問われればきっと悪でしょう」

 

「しかし、ルールの範疇です」

 

「そこは誤解しないでいただきましょうか」

 

「そういうことですから・・・サトルさんから手を引いていただけないでしょうか、先生」

 

「あの子さえ諦めていただければ、アビドス学校については守ってさしあげましょう」

 

「カイザーPMCのことについても、私たちの方で解決いたします」

 

「あの子たちもこれからは何事もなくアビドス高等学校に通い続けることができるでしょう」

 

「そしてこれはサトルさんが望んでいること、いかがですか?」

 

"断る"

 

「・・・どうして?」

 

「どうあっても、私たちと敵対するおつもりですか?」

 

「あなたは無力です、戦う手段など無いでしょうに!」

 

大人のカードを出す

 

「・・・先生」

 

「確かに、それはあなただけの武器です、しかし私はそのリスクもうっすらとですが知っています」

 

「使えば使うほど削られていくはずです、あなたの生が、時間が」

 

「そうでしょう?」

 

「ですからそのカードはしまっておいてください、先生、あなたにも生活があるはずです」

 

「食事をし、電車に乗り、家賃を払う、そういった無意味でくだらないことを、きちんと解決しなくてはいけないでしょう?」

 

「ぜひそうしてください、先生、あの子たちよりももっと大事なことに使ってください」

 

「放っておいても良いではありませんか」

 

「元々、あなたの与り知るところではないのですから」

 

"断る"

 

「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?」

 

「理解できません、なぜ?なぜ断るのですか」

 

「どうして?先生、それは一体何のためなのですか?」

 

"あの子たちの苦しみに対して責任を取る大人が誰もいなかった"

 

「何が言いたいのですか?」

 

「それは、サトルさんが責任を取ってくれたではありませんか」

 

「あなたは偶然アビドスに呼ばれ、偶然あの子たちと会っただけの他人です」

 

「あなたが代わりに責任を取ると?」

 

「一体どうして、そんなことをするのですか?なぜ、取る必要のない責任を取ろうとするのですか」

 

"それが、大人のやるべきことだから"

 

「・・・」

 

「・・・ああ、そうですか」

 

「大人とは「責任を負う者」、そう言いたいのですか?」

 

「先生、その考えは間違っています」

 

「大人とは、望む通りに社会を改造し、法則を決めて、規則を決め、常識と非常識とを決め、平凡と非凡とを決める者です」

 

「権力によって権力の無い者を、知識によって知識の無い者を、力によって力の無い者を支配する、それが大人です」

 

「自分とは関係の無い話、なんてことは言わせません」

 

「・・・あなたは、このキヴォトスの支配者にもなり得ました」

 

「この学園都市における莫大な権力と権限、そしてこの学園に存在する神秘、その全てが一時的にとはいえあなたの手の上にありました」

 

「しかし、あなたはそれを迷わず手放した」

 

「理解できません」

 

「一体その選択に、何の意味があるのですか?真理と秘儀、権力、お金、力・・・その全てを捨てるなんて無意味な選択をどうして!」

 

"・・・言ってもきっと、理解できないと思うよ"

 

「良いでしょう・・・交渉は決裂です、先生」

 

「私はあなたのことを気に入っていたのですが・・・仕方ありせんね」

 

「先生、彼を助けたいですか?」

 

「サトルさんは、アビドス砂漠のPMC基地の中央にある、実験室にいます」

 

「神秘を持っていない生徒、それに神秘を適用することができるか、そんな実験を始めるつもりです」

 

「そう、サトルさんを実験体として」

 

「そういうことですので、精々頑張って生徒を助けるといいでしょう」

 

「微力ながら、幸運を祈ります」

 

新しく投稿するならこの小説は残しておきます、タイトルは変えますが・・・上書きだと残念ながら元の話を読み返すことは出来なくなります

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