この素晴らしい剣士に祝福を!〜可惜夜に希った後に〜 作:はらみ
翌日になり、各々集合した冒険者ギルドで、カズマの新調した装備を4人で眺めていた。
「カズマが、ちゃんとした冒険者に見えるのです」
「ジャージのままじゃ、ファンタジー感ブチ壊しだものね」
「ファンタジー感?」
……俺の服装もふぁんたじー感とやらを壊しているだろうか…?
「確かに、軽装で動き良さそうな、いい装備だ」
「ふふっ…だろ?初級とはいえ魔法スキルを習得したからな!」
「盾は持たずに、魔法剣士みたいなスタイルで行こうと思う!」
「言う事だけは、いっちょまえよね…それに伊織と被ってないかしら?魔法剣士感」
「俺の本分は、剣士のつもりだ、それに俺は火のみだからな」
「そうだそうだ!キャラ被りなんてしてません!!」
「別に誰も、キャラ被りなんて気にしてませんよ…」
「それより!さっそく討伐に行きましょう!それも沢山の、雑魚モンスターがいる奴です!フフッ新調した杖の威力を試すのです…!」
「いや!一撃が重くて、気持ちいい!凄く!強いモンスターを!」
「いいえ!お金になるクエストをやりましょう!ツケを払ったから今日のご飯代も無いの!」
「(纏まりがねー……!)伊織は、なんか要望無いのか?」
「俺か?そうだな…剣を振るえれば、それで良い」
まあ…できれば強力な魔物と戦いたいが、まだパーティでの連携を試していないからな。
「それだけでいいのか?じゃあジャイアントトードが、繁殖期に入っていて街の近場に出没してるらしいから「「カエルはやめましょう!」」
「ん?何故だ?」
「2人はジャイアントトードに、捕食されたことがあってな…」
「トラウマになってるんだ…頭からパックリ行かれて、粘液まみれにされたからなあ」
「は!…粘液まみれ!?」
「お前…いま興奮したろ」
「しっしてない…」
「それは兎も角、まずは掲示板にどの様なクエストがあるか見てみよう」
「それもそうだなあ、俺達に出来るクエストあればいいけど」
そうして皆で、掲示板に行ったのは良いのだが…これは一体…?
「あれ?何だこれ!依頼がほとんど無いじゃないか!」
「カズマ!これだ!これにしよう!ブラックファングと、呼ばれる巨大熊の討伐を!」
「却下だ!却下!おい何だよこれ、高難易度のクエストしか残ってないぞ…?」
「申し訳ありません…実は最近、魔王の幹部らしき者が街の近くに住み着きまして…」
「えっ!?」
魔王の幹部…?その様な大物が、なぜ魔王城から1番遠いこのアクセルの地に一体何用で…。
「その影響か、この近辺の弱いモンスターは隠れてしまい…仕事が激減してまして…」
「えー………」
そうして、カズマの新調した装備での活躍の場は先になった。
翌日
今日もクエストを受けれない、との事なのでめぐみんと爆裂魔法の1日1回の基準を守る為に、街の外に向かっていた。なんでもとっておきの穴場を見つけたらしい。だが……
「少し、不安だな」
「何がです?」
「弱い魔物が減ったと言う事は、強力な魔物の行動範囲も広がる可能性がある」
「まあ、そうですね…え?今日は辞めとこうと言う話ですか?」
「そうではない、もし強い魔物と遭遇した時に逃げる為の足止めが必要だろう」
「そうですね脚の速いモンスターに出会うかもしれません、つまり?」
「つまり、カズマを誘おうと言う話だ」
「わかりました!カズマを囮にして逃げようって事ですね!」
全然違う。
「カズマに背負って貰って、俺が周囲の警戒をすると言う事だ」
「理解はしました、ですが何故、カズマなのです?」
「アクアは面倒臭がってやらないだろうし、ダクネスは…逆に、魔物に突撃しそうだからだ」
「なるほど、道理です」
「それに、カズマなら断らないだろう」
「そうですか?カズマも『嫌だ、面倒くさい』とか言いそうなものですが」
…確かに言いそうではあるが、カズマは根本的に善良だ……人の下着を取り値段を付けさせる、などしているが。とても仲間想いで善であると俺は理解した、そうでは無かったらこの様なパーティは出来上がっていない。
「そうでもない、カズマは優しいからな。最終的には引き受けてくれるさ」
「まあ、パーティに入れてくれた恩はありますが、イオリの方が優しいと思いますよ?」
「───そんな事はない、俺は剣を振るうしか脳がない人間だ」
「そんな事は…」
「…………」
と、少し気まずい空気を作ってしまったが、カズマが泊まっている馬小屋に着いた。カズマの部屋を軽く叩く、コンコン、と音を鳴らして出てくるのを待つ、すると。
「はいはい、何ですか…って伊織とめぐみんじゃねーか」
「カズマ!一緒に爆裂魔法を撃ちに行きましょう!」
「え、嫌だ、めんどくさい」
「ほら見ましたかイオリ!言った通りになりました!」
「カズマ頼む、お前の力が必要なんだ」
「…………しょーがねえなあ!外行くんだろ?ちょっと待ってろ、装備持ってくる」
とカズマは、部屋に戻っていった。
「ほら、言った通りになっただろう、めぐみん」
「むむむっ…!」
と、少し悔しそうに唸っていた。
「なあ、魔法の訓練なら伊織がいるだろ?」
「脚の速い魔物に出会った場合、背負った俺では逃げれない可能性がある、だから…」
「……つまり、俺に囮になれってことか!?」
何故そうなる。
「違う、爆裂魔法を撃っためぐみんをカズマが背負い、俺が周囲の警戒をする」
「敵が現れた際には俺が殿となりカズマたちがその隙に逃げる」
「ひょっとして何だが…俺は毎日これに付き合わされるのか?」
「そのとーり!爆裂魔法を1日1回は撃たないと…死にます」
「えー…この辺じゃ駄目なのか?適当に魔法撃って帰ろうぜ!」
「いやそれは駄目だ街から近すぎると、守衛に叱られる」
「そうです!また、あんなに叱られるのは御免です!」
「今お前、またって言ったな…?音が煩いとか、迷惑とか、怒られたのか?」
「イオリとパーティを、組んでからは遠くで撃っているので怒られてません!」
「すまないな、酒場でシュワシュワを奢るから我慢してくれ」
「仕方ねえなあ……」
はぁ…、とカズマの溜め息が聞こえた。と、その時
「あれです!あの廃城です!」
「あれは…」
「薄気味悪いな…」
「あれなら盛大に破壊しても、誰も文句は言わないでしょう!」
「……まあ住んでいるとしたら、魔物だけだろうからな」
「アンデッドとか出そう…」
それでは、と一つ咳払いをしてめぐみんが詠唱を始めた。
「紅き黒煙、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理、崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!」
「エクスプロージョンッ!!」
ドゴォッ!!!と爆炎に包まれる廃城、しかし廃城はまだ形を保っていた。高い耐久力だと感心して、今に倒れそうなめぐみんを支える。
「燃え尽きろ、紅蓮の中でぇ…はー!最高でーす……」
「カズマ、めぐみんを背負ってもらえるか?」
「あ、ああ分かった」
「今日も満足したか?」
「ええ…それはもう…大満足です…」
「これを、毎日かー…まあ、やること無いし良いけど…」
「……カズマ、少し揺れ過ぎじゃ無いですか?イオリは、もっとこう…安定していましたよ」
「じゃあ、伊織に背負ってもらえ!」
「それは出来ない、さっき説明しただろう」
そう言いながら、俺達3人の新しい日課が始まった。街に帰ると、所持金の無いアクアが店の仕事をしていたり、特にする事が無いと言う事で実家に一時的に帰るとダクネスは言っていた。
それからと言うものの、雨が降る日も。
「…ロージョンッ!!」グヘッ
穏やかな昼下がりに握り飯を食べながら。
「…ジョンッ!!」ハヘッ
早朝の散歩がてらに。
「「「爆っ裂!爆っ裂!爆っ裂!」」」
「ふんっ!!」アウッ
「60点か…?音圧が物足りない」
「爆裂の範囲は素晴らしかったが…70点」
「あうっ」
そして毎日の様に見ていたからか、カズマも爆裂魔法の出来が解るようになっていった…。
そしてある日の事…。
「「………」」
「エクスプロージョンッ!!」アフッ
「おお!」「これはっ…!」
2人で目を合わせ、めぐみんの爆裂魔法について語り合った。
「今のは、良い感じだな!爆裂の衝撃波がズンッと骨身に浸透するかの如く響き、それでいて肌を撫でるかのように空気の振動が遅れてくる…!」
「それに、爆炎の広がり方も美しかった…!これだけの爆裂魔法を扱えるなんて、同じパーティの仲間として鼻高々だ…!」
「「ないす、爆裂!」」
「…ないす、爆裂…!」
「カズマも、爆裂道が解って来ましたね…どうです?いっそ本当に爆裂魔法を覚えてみてわ?」
「うーん…でも将来、余裕があったら習得してみるのも、面白そうだな!」
「その時は、俺にも見せてくれよ」
「そんなの、当たり前だろ?」
「「「あはははっ!」」」
終わり。
全然進まない!ちょっとシリアス風味を入れてみたけど…!
伊織くんに背負われたら体幹しっかりしすぎて全然揺れなさそうだなあと思いました。個人的には伊織くんは優しいと思います。
後、誤字報告いつもありがとうございます!喜びと誤字を生み出した悲しさで涙を流しながら、直せています。
感想や誤字など気になったことを教えてくれると嬉しいです!