火のクリスタルの間から離れた後、バッツ達は背後で大きな音を聞き、同時に地震が起きたかのように城が揺れた。
「これは、もしかして爆発が起きたの?」
「そうらしいな。大変なことになったな。」
「いつまでこの城が持つのだろうか…。」
「すまぬ。助けてあげられなかった…。どうか許してほしい…。」
レナ、ファリス、バッツが恐怖と戦っている中で、ガラフはクリスタルの間に残してきたウェアウルフに対する自責の念に襲われていた。
しかし、このような状況になった以上、もはや戻ることは不可能な状態だった。
今まで経験したことのない状況に巻き込まれた4人は、思わず精神的にパニックになりそうな恐怖を感じながらも、一目散に走っていた。
幸い少し進むと、そこには回復のツボが置かれていた。
バッツ「しめた!これでこれまでに受けたダメージを回復出来るぞ!」
レナ「でも代わりに時間を消費してしまうけれど、大丈夫なのかしら。」
「わしはまず回復を選ぶぞ。このままでは体が持たんからな。」
「俺も回復を選ぶぜ。これから先、何が起きるか分からんしな。」
ガラフとファリスの行動に影響されて、最初は迷っていたレナも、いさぎよくツボのお世話になるいことにした。
そしてガラフが真っ先に回復の処置を行った。
しかし、それから10秒後。天井からチリや細かい石のような物が落ちてくるようになった。
「もしかして、ここ、崩れるの?」
「だろうな。長くは持たねえな。」
レナとファリスは自分達も回復をしようとしていたが、再び気が動転してしまい、すっかり手がつかなくなってしまった。
(まずいな。全員を回復していたらかなりのタイムロスになってしまう。どうすればいいんだ!)
バッツは自分も回復をしたいのが本音だった。
しかし、あたふたしている2人を見ているうちに焦りが募ってきたため、結局自分はポーションを使うことにした。
そしてレナとファリスがある程度HPが回復するのを見届けた後、呼吸を整えて一斉に駆け出していった。
回復のツボの右側にある部屋の扉を開けると、そこには鉄格子で閉じられた小部屋があり、そこには宝箱が置かれていた。
しかも鉄格子には鍵がかかっておらず、簡単に開いてしまった。
「おっ!これはちょうどいいぜ。あの箱の中身を頂いてやる!」
ファリスは元々海賊ということもあってか、一瞬の迷いも見せずに一目散に向かっていき、即座に宝箱を開けた。
すると中には2000ギル金が入っていた。
「よし!これはありがたくもらっていくぜ!」
この緊急事態にもかかわらず、お金を袋に入れるファリスの姿を他の3人は少しイライラしながら見つめていた。
「さあ、行くぞ!!」
バッツは部屋から出てきたファリスに向かって怒るような口調で言い放った。
4人は少しでも早く出口にたどり着きたい心境ではあったが、城の内部に詳しい人がいない上に誰もテレポが使えないため、走り続けるしか選択肢は無かった。
しかしガラフは一番年上ということもあってか足が遅く、すぐにみんなから後れを取ってしまった。
さらにレナも息が切れたせいで徐々に後れを取るようになったため、バッツとファリスは度々立ち止まってはまた駆け出すという行為を繰り返すことになった。
そうしているうちに、彼らは別の牢屋のようなところを通りかかり、その中にまだ開いていない宝箱があるのに気が付いた。
「よし、あの中身もいただいていくぜ。」
「ちょっと!大丈夫なんですか?」
「どうせお金だろ。すぐに済ませるぜ。」
ファリスはレナがが止めようとするのも聞かず、中に入っていって箱を開けた。
すると内部から誰かが飛び出してきたため、4人は思わずビックリだった。
「ありがとうございます。まさかここから出られるなんて思いませんでした。まさに夢を見ているようです。」
その人はソーサラーと名乗る女性で、訳あって箱に閉じ込められていたため、解放されたことを喜んでいた。
バッツ「あの、それはいいんですが、今はこんな状態なんです。道案内をお願いしてもいいですか?」
「えっと…。実は私も道を知らないんです。どうか私と一緒に逃げてくれませんか?」
「分かった。では、一緒に行こう。」
「ありがとうございます!」
ソーサラーはお礼を言った後、バッツ達と一緒に行動する素振りを見せた。
しかし次の瞬間、彼女は持っていたメイジマッシャーでレナを攻撃してきた。
「きゃあっ!」
後ろから不意打ちを受けた彼女はダメージを受けた上にサイレスの効果で魔法を封じられてしまった。
「大丈夫か?」
ガラフはとっさにレナのそばにやってきて、ケアルをかけた。
「おのれ!だましたな!」
「よくも俺達の仲間を!
怒ったバッツはとっさにソーサラーを攻撃し、さらにファリスもそれに続いたため、1ターンで決着をつけてしまった。
「私達をだました罰として、これはいただいていくわ!」
レナは怒りをあらわにしながらメイジマッシャーを取り上げた。
「それは私の大事な武器なんです!返していただけませんか?」
「イヤよ!誰が返すもんですか!」
「そんな、ひどい…。お願いです。返していただけませんか?」
「いーーえっ!」
「そんな、ひどい…。お願いです。返していただけませんか?」
「フンッ!」
「そんな、ひどい…。」
2人がどこかで聞いたようなやり取りをしているかたわらで、バッツは箱の中に入っていたエリクサーを拾い上げた。
そして「さあ、行くぞ!」と声をかけると不毛なやり取りを強制的に終了させ、一斉に駆け出していった。
一方のソーサラーは、傷口をおさえながら別ルートでその場を後にしていった。
しばらくすると、バッツ達はカルナック1匹に遭遇した。
「何じゃ?わしらを襲う気か?」
「そうなってほしくはないな。」
ガラフとバッツは思わず身構えた。
一方のカルナックは徐々に接近しながら、犬の言葉で『俺は逃げ道を知っている。何しろ名前がカルナックだからな。あんた達を安全に脱出させてやるぜ。』と語りかけた。
しかし、いくらしゃべってもバッツ達には言葉が通じず、しかも彼らは戦闘態勢に入ったと見なして攻撃をしてきた。
『わああっ!俺は戦うつもりじゃないんだ!』
攻撃を紙一重でかわしたカルナックは、このままではやられてしまうと判断したため、一目散に退散していった。
「ちっ!仕留めそこなったか!」
「でも、時間を無駄にせずに済んだわね。」
顔をしかめるファリスに対し、レナは思わずほっとしていた。
それから少し進むと、今度はカルナック2匹に遭遇した。
バッツ「こっちはクソ忙しい時なのに!」
ファリス「よりによってまた戦うのかよ!」
ガラフ「逃げ遅れたらお前さん達も危ないぞ。」
レナ「それを分かっているのかしらね。」
彼らがイライラしている一方、カルナックの方は戦うか逃げるかでお互い話し合いをしていた。
しかし、やはり人間には理解出来ない言葉で話していたため、その光景はまるで遅延行為に見えてしまった。
「ちょっと!早くしなさいよ!」
「俺達、急いでいるんだからな!」
レナとファリスがますますイライラしていると、カルナックはようやく意見がまとまったのか、こちらを見た。
そして『というわけで、ここは逃げます!逃げます!(←飛びます!飛びます!口調で)』、『みなさん、どうも、すいませんっしたーーーっ!』と声をかけた後、とんずらを選択して逃げていった。
「ふう…。何とか戦わなくて済んだか。」
「でも、じわじわと時間を使わせるのう。」
バッツとガラフはほっとしながらも、結果的に遅延行為になってしまったことを気にしていた。
階段をのぼり、地下3階にやってきた彼らは図書室のようなところにやってきた。
するとそこにはソーサラーが2人待ち構えていた。
「あんた達、あたい達と勝負していきなさい!」
「さもなくば、その装備品を頂いていくわ!」
彼女達は明らかに敵意を見せており、間髪入れずに先制攻撃をしてきた。
ターゲットになったのはバッツだったが、事前に装備を整えていたこともあり、彼の受けたダメージは少なかった。
しかし、その際にサイレスの効果を受けてしまったため、彼は魔法が封じられてしまった。
(あれは面倒ね。何とかしなければ!)
次のターンに入ると、レナは素早い動きでメイジマッシャーを一つ奪い取った。
それを見たファリスも後に続き、もう一人から同じアイテムを手に入れた。
そしてバッツは通常攻撃を浴びせ、ガラフがサンダラで一人のHPを削り切った。
残った一人はこのままではなす術なくやられてしまうことを察知したため、自ら降参を宣言した。
「すみません。あなた達は強いですね。そのメイジマッシャーに加えてこれも差し上げますので、どうかお許しください。」
彼女は持っていたリボンを差し出してきた。
「何だか女が身に付けるようだな。それにこんな布切れにしか見えないものが役に立つのか?」
ファリスは自身が女性であるにもかかわらず、受け取ることに難色を示していた。
「確かにこんな見た目ですが、防御力が12アップする上に、石化や猛毒、沈黙などに耐性があります。きっとこれからの旅に役に立つはずですよ。」
「おおっ、そうか。ではありがたくいただいていくぜ。」
ファリスはぶんどるようにそのアイテムを手に入れた。
レナ「ついでに、その身に付けている防具もいただけませんか?」
「えっ!?こっ、これは大地の衣と言って、この世界では入手が難しい、大事な装備品なんです。どうか見逃してくれませんか?」
ガラフ「わしらは色々なアイテムを集めているんじゃ!渡してもらおう。」
「そんな、ひどい…。お願いです。見逃してくれませんか?」
「では、メイジマッシャーを一つお返しします。それと引き換えでもいいですか?」
レナは言葉通り、先程奪い取ったアイテムを返却した。
しかし、ソーサラーはそれでも大地の衣を渡してくれなかったため、結果的にレナは損をしてしまった。
それを見たバッツとファリスはとうとうキレたため、攻撃態勢に入ろうとしたが、ガラフがとっさに「やめい!このままでは時間を浪費してしまうだけじゃぞ!」と忠告してきたことを受けて、2人は寸止めで踏みとどまった。
「すみません。では、いさぎよく大地の衣はあきらめます。」
「悔しいが仕方ねえ。そこの女!見逃してやるから感謝しろ!」
「とにかく私達は急いでいるので、失礼します!」
反省をするバッツのかたわらでファリスとレナは吐き捨てるように言い放つと、4人で一緒に駆け出していった。
彼らが出口を探して走り回る間も、城内ではごう音が響き渡り、再び地震のような揺れに襲われていた。
果たしてバッツ達の運命は…。