カルナック城爆発までの制限時間が減っていく中、4人は極度の緊張感の中で走り続けた。
すでに全員の息は切れており、しかもガラフが頻繁に、レナも時々後れを取ってしまったため、時々立ち止まる羽目になった。
レナ「本当にここは迷路みたいな構造をしているわね。」
ファリス「せめて来た時に目印でも落としていくべきだったな。」
ガラフ「とにかく地下を走り回っているだけでは出られんじゃろう。」
バッツ「ということは、どこかでのぼり階段を見つけないといけないな。」
彼らが立ち止まりながら呼吸を整え、何とか落ち着きを取り戻すと、近くに扉があるのが目に入った。
その扉を開けて階段をのぼり、さらに進んでいくと、またのぼりの階段を見つけた。
少しでも上の階に行きたいと思っていた彼らは、しめたとばかりに駆け上がっていった。
その階段は地下1階から地上1階に行くためのものだったが、今のバッツ達はそれすらも把握できていなかった。
すぐ近くには扉があったため、彼らは迷うことなく開けて中に入っていき、さらに階段をのぼっていった。
「もう酸欠になりそうじゃ…。」
「足が痛くなってきたわ…。」
立て続けに階段をのぼってきたガラフとレナは再び休むことを申し出た。
バッツ「じゃあ、みんな。アイテムを置いていくか?」
ファリス「ええっ?何だよそれ!」
「だって、アイテムを持ったままじゃ余計に体力使うだろう?」
「でもよ、俺は海賊だぞ!もらえる物はもらっていくからな!」
彼女はなかなか自身の考えを譲らず、その間も時間を消費してしまった。
しかし、皮肉なことにそれがレナとガラフの体力回復に一役買うことになった。
彼らが再び歩き出し、先に進んでいくと、そこには目の前に宝箱がいくつも置かれていた。
この場所はすでに賞金稼ぎに荒らされた後なのか、大抵の箱はすでに開いていたが、よく見るとまだ開いていないものもあった。
「おおっ!こんな分かりやすいところに!」
思わず目を輝かせるファリスではあったが、他の3人は
「そんなのに気を取られている場合じゃないでしょ!」
「きっと何か仕掛けがあるに違いないぞ!」
「今のわしらには時間が何よりも大事じゃ!」
と言わんばかりの視線を浴びせたため、その雰囲気を感じ取ったファリスは「分かったよ!」とばかりにその宝箱をあきらめることにした。
ちなみにその箱の中身は2000ギルだったが、彼らはそれを知る由もないまま、近くの階段を駆け上がっていった。
3階にやって来ると、今度は屋根の無い場所にやってきたため、上には空が広がっていた。
「しめた!脱出するチャンスだ!」
バッツは城壁をのぼり、そこから脱出を試みようとした。
しかし、壁がかなり高かったため、「何回やっても何回やってもカルナック城から出られないよ」状態だった。
しかも仮に乗り越えてしまうと、今度は3階と壁を合わせた高さ(彼らはそれを把握していませんが)からアイテムを身に付けた状態で飛び降りる形になってしまうため、危険を察知した彼は結局あきらめることにした。
(結局こいつの努力は無駄行動につながっただけか…。)
(努力は大事だけれど、今は結果が全てじゃからな。)
(とにかく今度は下り階段を降りていきましょう。)
ファリス、ガラフ、レナははやる気持ちを抑えながら、バッツと一緒に城の外観を走っていった。
やがて彼らは下り階段を見つけたため、「しめた!」とばかりに2階に降りていった。
その先にはさらに連続で下り階段があり、地下1階の小部屋にやって来ると、そこには運悪くギガースとソーサラーが待ち構えていた。
「君達。ちょうどいいところに来た。さあ、持っているアイテムを渡してもらおうか。」
「さらに所持金も全部渡してくれれば、あんた達を出口に案内してあげますよ。」
2人はこんなどさくさの中でも全く慌てる様子は無く、普通の賞金稼ぎのようにふるまっていた。
一方のバッツ達は来た道を引き返そうとしたが、回り込まれてしまったため、結局戦うしかない状況になった。
不本意ながらも戦闘が始まると、レナはすぐさまソーサラーの持っているメイジマッシャーを叩き落とし、バッツが通常攻撃で彼女にダメージを与えた。
ファリスの攻撃は空振りしてしまったが、続いてガラフはサンダラを唱えてソーサラーを降参させ、さらにギガースにも大ダメージを与えた。
しかし、見るからにマッチョでタフな体つきをしているギガースはそれに耐え抜いた後、すぐさまエアロを繰り出してきたため、バッツ達はダメージを受けてしまった。
「まさか攻撃すると反撃してくるなんて!」
「これは厄介なことになったわね。」
「倒すためには痛い目にあわないとダメか!」
バッツ、レナ、ファリスが動揺している中で、ガラフは落ち着くようにうながした。
一方のギガースはその間にエリクサーを使ったため、せっかく与えたダメージをリセットされてしまった。
「そんな、これじゃどうすればいいんだ…。」
肉体的以上に精神的にダメージを受けたバッツは、思わずパニックになってしまった。
それは他の3人も同じで、すっかり隙を見せてしまったため、ギガースはチャンスとばかりにエアロラを使ってきた。
「これは強力だな。だったら…。」
全員がかなりのダメージを受ける中、ファリスはこの技を自分のものにしてやるという気をみなぎらせていた。
その後、バッツ達はギガースに攻撃を加えたが、なかなかHPを削り切るまでには至らなかった。
しかもその度に反撃でダメージを受けてしまったため、彼らは攻撃を一旦中断して魔法やポーションなどでの回復を余儀なくされた。
しかし、そのせいで攻撃が手薄になってしまい、さらにギガースはHPを削り切られる前に持っていたエリクサーで全回復を繰り返したため、勝負は泥仕合のような展開になってしまった。
「こうなったら、一気に決着をつけるしかないじゃろう。」
「そんなことをしたら反撃でますますダメージが!」
「多少のことは我慢してもらうしか無かろう。」
「分かった。やってみる。」
ガラフからの説得を受けたバッツはとうとう納得し、レナとファリスに防御をするように促した。
「分かったわ。そう言うのなら…。」
「いさぎよく従おうじゃねえか。」
彼女達の同意を得られると、バッツは玉砕覚悟で攻撃をすることにした。
次のターンでバッツは強力な物理攻撃を浴びせた。
するとギガースはそのダメージ量に驚きながらも反撃としてエアロを使ってきた。
(これはじわじわくるな。だが、これと合わせてエアロラの技は見切ったぜ。次の戦闘からは俺が使えるようにしてやる!)
ファリスは確かな手ごたえを感じ取っていた。
するとここで防御していたはずのレナがギガース目掛けて突っ込んでいき、彼が使おうとしていたエリクサーを叩き落とした。
「これで回復は封じたわ!ガラフ!早く!」
「分かったぞい。」
レナからの掛け声に続いてガラフは素早くサンダラを唱え、大ダメージを与えた。
すると回復が出来ないままHPを削り切られたギガースはとうとう降参を宣言したため、ようやく戦闘が終了した。
「まいりました。メイジマッシャーとエリクサーはあなた達に差し上げることにしましょう。」
「さらに私からはエルフのマントを渡すことにする。これからの旅できっと役に立つだろう。」
ソーサラーとギガースは何事も起きていないかのように、至って冷静だった。
「ありがとうございます。でも、俺達はそれどころじゃないので、先を急ぎます!失礼します!」
アイテムを手に入れたバッツは早口でお礼を言うと、急いで振り返り、他の3人とともに部屋を駆け出していった。
その後、ソーサラーとギガースは階段をのぼるとすぐさまカルナックを呼び出し、その犬の案内で城から脱出していった。
一方、アイテムを手に入れたといはいえ、来た道をそのまま引き返すことになったバッツ達は、再び城壁沿いを走り続けることになった。
そして先程開けることもせずに通過していった(2000ギルが入っている)宝箱が見えるところにやってきた。
「ここに戻ってきたか。じゃあ次はこっちに行くことにしよう。」
真っ先にその場所に来ていたバッツは、後からやって来たレナとファリスに声をかけた。
「分かったわ。ガラフが来たら行きましょう。」
レナがそう言った後、階段の方を向いた。
一方、ファリスはその宝箱につまずいて転んでしまった。
そのはずみで宝箱が開き、中からはお金が姿を現した。
「いててて…。って、おおっ!」
彼女は立ち上がると宝箱に手を伸ばし、お金をあさり始めた。
それを見たバッツはとっさに止めに入ろうとしたが、まだガラフが階段を降りてくるところだったため、我慢して黙っていることにした。
そしてガラフが呼吸を整え、レナが次に行くところを指示した後、バッツは真っ先に駆け出していった。
「おい!ちょっと待てよ!まだ全部取ってねえんだぞ!」
「そんなことやっている場合じゃないわ!さあ、早く!」
ファリスはまだ1500ギルを袋に入れたところだったが、レナに説得されてガラフとともに駆け出していくことにした。
するとすでに隣の部屋に来ていたバッツは、そこでギガースに出くわしていた。
(まずい相手に出会ってしまったな。仮に戦ってまた泥仕合になったら嫌だし。かといって、逃げ出したら後で嫌なことが起きそうな気がする…。)
彼がどうすればいいのか迷っていると、そこにレナ、ファリス、ガラフがやってきて、ギガースに気づいた。
「どうしましょう…。」
「どうするって…。」
女性2人が小声で話し合っていると、ガラフが逃げるように促してきた。
(そうだ。アイテムや能力よりも命の方がずっと大事なんだ。とにかく脱出しなければ!)
バッツは迷いを吹っ切ると、戦闘を回避することにした。
すると、突然ギガースが「待て!」と声をかけてきた。
バッツ「何だよ!こっちは忙しいんだぞ!」
「お前達はその先の扉から先に進むつもりだろう?」
「そうだよ!それがどうしたって言うんだ!」
「そちらは城の外観に出るだけだ。出口に行くためには今来た道を戻る必要があるぞ!」
「こんな時に何を言っているんだ!俺達を惑わす気か!?」
「いや、嘘ではない。来た道を戻れば下り階段がある。それを降りて1階に行き、南の方角に進めば出口だ。」
「本当なんだよな!?」
「本当だ。私だって爆発に巻き込まれたくないからな。もし私を疑うのであれば、このまま城の中で迷い続けるがよい。私はこのまま最短距離で脱出をする!では、さらばだ。生きていたらまた会おう。」
ギガースは自身も焦っているのか、早口でバッツに言い放つと、足早に駆け出していった。
レナ「こうなったら、彼の後をつけていきましょう。」
ファリス「ああ。あいつが道しるべになってくれそうだしな。」
ガラフ「では、バッツ。急いでわしらも行くぞい。」
「分かった。行こう!」
バッツはコクっとうなずくと、ギガースを追うような形で3人と一緒に駆け出していった。
なお、この時点で彼らはまだマインゴーシュを手に入れていなかった。
しかし、残り時間の関係上、もしそのアイテムのある宝箱のところに行ってしまうと生還が絶望的になってしまう状況になっていた。
さらにこれ以上戦闘をしたらますます時間を減らすことになるため、彼らは出来ることなら全逃げをしたい心境だった。
だが、この後待ち構えている相手は…。