ギガースから出口に通じる通路を教えてもらったバッツ達は、2000ギルが入っていた宝箱の近くにある階段を急ぎ足でおりていった。
1階にやって来た彼らはすでに1度開けている扉を開け、先程通過していった大広間にやってきた。
バッツ「えっと、どの方角に進めばいいんだ?」
レナ「大広間ののぼり階段かしらね?」
ガラフ「あっちは女王の間に通じていると思うが。」
ファリス「なら、反対側に行けばいいわけか。」
恐ろしいまでのプレッシャーの中で4人は呼吸を整えた後、出口の方に向かって駆け出した。
するとそこに現れたのは軍曹とカルナック3匹だった。
「お前達、こんな時にここで何をしているんだ!?」
バッツ「いや、ここで何をって言われても…。」
「まさか、この先の両サイドにある宝箱を開けて、エスナとらいじんの術を学ぶためにここに来たのか!?」
「何ですか?それは。」
「何だ、知らんのか。では、説明しよう!まず、エスナっていうのは白魔法の一つでな…。」
軍曹はこんな状況にも関わらず、名前の由来が「永久、ステータスを、治す」の頭文字であることを伝え、さらに色々なステータス異常を治す効果があることを伝えた。
「長くなったが、エスナの説明は以上だ。では、次にらいじんの術について説明しよう!」
彼の説明は今のバッツ達にとっては明らかに遅延行為だったため、その時点で話を食い止めた。
「何だ、おい!せっかく役立つ情報を教えているんだぞ!いいか!人の話はちゃんと最後まで…。」
相変わらず話をやめようとしない軍曹に対して4人はとうとうしびれを切らし、不意打ちという形で攻撃をヒットさせた。
「そんな、ひどい…。人がせっかく話をしているのに…。」
彼は傷口をおさえながらその場にひざをついてしまった。
すると、それを見たカルナックが軍曹に早く外に出るように促した。
そして3匹がかりで彼を背中に乗せると、よろめくような足取りで出口に向かって歩き出した。
それを見ながらバッツ達も走り出したが、同時に城内にはさらに爆発音が響き、地面が激しく揺れたため、彼らは思わず足を止め、盾で身を守る動作に入った。
(もうイヤ!こんな緊張感!)
(俺はもう精神的に限界だぜ!)
(とても魔法どころじゃないのう。)
レナ、ファリス、ガラフは恐怖のあまりにガタガタと震えていた。
(出口はもう目の前だ!絶対に生還してやる!)
バッツは自身も自暴自棄になりそうな精神状態だったが、懸命に冷静を保ちながら揺れが収まるのを待った。
一方、軍曹を乗せたカルナック達は、激しい揺れの中でもよろめきながら出口に向かって歩みを進めていた。
すると近くの壁が大きな音を立てて崩れ出し、彼らはそれに巻き込まれる形で下敷きになってしまった。
(そんな!敵とはいえ、こんなことになるなんて!)
バッツはまだ揺れが収まっていないにもかかわらず、助けに行きたくなった。
それは他の3人も同じ気持ちだったが、今そんなことをしたら自分達も巻き込まれてしまう可能性があるだけに、結局その場で自分の身を守ることしか出来なかった。
(もう、エスナとらいじんの術はあきらめよう。どんなに強力な魔法があったとしても、命の方がずっと大事だ。)
この時点でバッツの心はすでに決まっていた。
それから20秒程度が経過し、揺れが収まってくると彼は立ち上がり、軍曹とカルナックを置いて逃げることを3人に告げた。
「こういう時は敵も味方も無いはずじゃが、仕方がない。」
「ああ。俺達も被害者になりたくねえしな。行くぜ!」
ガラフとファリスも立ち上がると、バッツに続くように走り出そうとした。
しかしその時、かたわらで「待って!」という声がしたため、彼らは思わず足を止めた。
「レナ!どうしたんじゃ!?」
「早く立てよ!おら!」
「急いで脱出するぞ!」
ガラフ、ファリス、バッツに大声でせかされても、レナは腰が抜けてしまったのか、体をブルブル震わせるばかりだった。
「ごめんなさい…。私だって立ち上がりたい…。早くここを出たい…。でも…。」
彼女は何度立ち上がろうとしてもそれが出来ず、顔をくしゃくしゃにしながら申し訳なさそうに謝るばかりだった。
「こうなったら仕方ねえ!俺が何とかしてやるぜ!」
ファリスはすっかり頭に血がのぼっている状態だったが、それでもなぜか彼女を放っておけなかったため、おんぶしていくことにした。
「ごめんなさい…。ごめんなさい…。」
レナは足を引っ張ってしまったことへの自責の念に襲われていることもあり、泣きながら謝り続けた。
一方のファリスは何も言わず、バッツとガラフとともに歩き始めた。
そして出口の扉を開け、彼らは城壁の外に出た。
(よし!これでもう大丈夫だ!思えば途中で道に迷ってしまったし、宝物に手を出してしまい、敵と戦うことになってしまったのは余計だったけれど、何とか助かった…。)
(今回、わしらの行動には反省するべき点がいくつもあったな。いくら役に立つアイテムがここにあると知っていても、いざとなったら命を第一に考えなければならんな…。)
バッツとガラフはこれまでの自分達の判断を悔やみながらも、内心ではすでにほっとしていた。
しかしその時、脱出を目の前にした状態で彼らの前には軍曹とカルナック3匹が再び立ちはだかってきた。
「お前達!待てい!俺様達に装備と所持金を渡せ!」
軍曹は賞金稼ぎとしての意気込み満々の状態だった。
ガラフ「ちょっと待ってくれ!今は緊急事態なんじゃ。話は外ですることにしてくれんか?」
「フンッ!そう言ってとんずらをする気か!それは許さん!さあ、さっさと置いていけ!さもなければ、あのウェアウルフの二の舞にしてくれるぞ!」
バッツ「何い?じゃあ、あのレバーを動かし、彼を討ち取ったのは!?」
「それはお前達の想像に任せる!とにかく、命が惜しくなければかかってくるがよい!すぐに彼に会わせてやるからな!ドゥハハハハ…!」
「お の れ 軍曹ーーーっ!!」
バッツは今まで見せたことも無いような怒りの表情をしながら叫んだ。
「良かろう。望み通り返り討ちにしてくれるわ。者ども、かかれ!」
軍曹の命令を受けて、カルナック3匹は『承知した!』と言わんばかりにうなずくと、先制攻撃をしてきて、バッツ、ガラフ、ファリスにダメージを与えた。
その反動でレナは腕を離してしまい、彼女は尻もちをつくように床に倒れ込んでしまった。
ファリス「大丈夫か!?」
「私より、相手を!」
「でもよ!」
「お願い…!」
レナは申し訳なさを感じながらも、ファリス達に戦うように促した。
それを受けて、3人は戦いに挑んでいった。
その間に軍曹はカルナック3匹にノーダメージ魔法をかけ、魔法攻撃への対策をしていた。
次のターンになるとバッツとファリスはカルナックに通常攻撃をヒットさせ、一撃で退治させた。
すると彼らは軍曹を置いて出口に向かい、まるで自分だけでも助かろうと言わんばかりに走り去ってしまった。
一方、残ったカルナック1匹は戦闘に参加出来ずにいるレナに攻撃を加え、ダメージを与えた。
そしてガラフはそのカルナックを攻撃し、一撃で退治した。
彼もまた一目散に出口から走り去っていったため、その場に残ったのは軍曹だけになった。
「さあ、お前さんも今この城がどんな状態なのか分かっているじゃろう!頼むからここを通してくれないか!?」
ガラフが詰め寄っていこうとすると、レナはとっさに「待って!」と言って、彼を呼び止めた。
「どうしたんじゃ?」
「今接近したら、大変なことになるわ。」
「何じゃと!?」
バッツ「ああ。確かにそうだな。こいつ…。」
「ええ。ただの軍曹じゃないわ。」
ファリス「俺もそう思っていたんだ。さあ、正体を見せろーっ!」
彼らの発言を受けて、もはや隠すのは不可能と思った軍曹は、突如不気味な笑みを見せた。
「ドゥハハハハ…。よくぞ俺の正体を見破ったな!いいか!俺様はなあ、賞金稼ぎの、アイアンクロー様よ!アイアンクローって言ってもなあ、何かの格闘技の技というわけではねえぞ!これから変身して、お前達に本物の恐怖を見せてやるぜ!」
バッツ「いいから早くしろ!」
「まあ、そうせかすなって。それじゃ、今から変身をするぞ。変身っ!」
もはや余裕をかましているとしか思えない軍曹は、武器をその場に置いて身構えた。
すると彼は即座に変身するのかと思いきや、何と「か~いわれ、巻き巻き」のジェスチャーを始めたため、それがさらなる遅延行為につながってしまった。
それを見てとうとう待ちきれなくなったバッツとファリスは通常攻撃を仕掛け、ダメージを与えた。
「ちょっと待て!変身中に攻撃するのは卑怯だぞ!せめてアイアンクローの姿になってから戦うってのがスジってもんだろ!」
軍曹は緊急事態ということが分かっていないのか、まるで何事も無いようにふるまっていた。
ファリス「メタいこと言ってんじゃねえ!さっさとやれ!」
「言われんでもやってやるぞ!」
彼が再びジェスチャーを始めると、ようやくジャンプをして変身に入り、アイアンクローの姿になって降り立った。
その間は普段であれば大した時間ではなかったが、今のバッツ達には1秒1秒が勝負だけに、とてつもなく長く感じられた。
この時、すでに城では爆発がこれまで以上に頻発するようになり、煙があちこちで上がっていた。
そして地面の揺れももはや収まる様子を見せなくなり、地震が起きる中で戦うことになってしまった。
こんな一刻の猶予もない中で、バッツ達は果たして生還を果たせるのだろうか!?