暗い雲が低く垂れ込め、冷たい風が荒廃した都市を吹き抜ける。かつての繁栄を物語る高層ビル群は、今や半ば崩れ落ち、鉄筋の残骸が剥き出しになっていた。瓦礫の山と化した街並みの中を、一台のトラックが静かに進んでいく。その後ろには、巨大な影がゆっくりと続いていた。
「こちら、タクミ・クスノギ伍長。現在、ポイントエコーに向かっている。異常なし。」
トラックの運転席に座るタクミ・クスノギが無線機に向かって報告する。彼の声には緊張と期待が入り混じっていた。今朝、正式に軍に配属されたばかりの新米伍長である彼にとって、これが初めての実戦任務だった。
「了解。注意を怠るな、クスノギ。状況が変わればすぐに報告するんだ。」
オペレーターのハルカ・フジワラの冷静な声が返ってくる。彼女は、基地でサーベイランス部隊の通信と監視を担当しているベテランオペレーターだ。彼女の指示がタクミにとっての精神的支えとなっていた。
タクミは視線を前方に戻し、目の前の風景に集中する。遠くのビルの間から、薄暗い夕日の光が差し込んでいる。だが、その美しさの裏には、いつ敵が現れるかわからない危険が潜んでいた。彼は無意識にハンドルを握る手に力を込めた。
突然、車両の背後で金属が擦れるような不吉な音が響いた。タクミの心臓が一瞬止まり、彼はすぐにサイドミラーを確認する。そこには、彼のサーベイランス、「ストライク・ハウンド」が立っていた。18メートルもの巨体が、わずかに動いたかのように見えたが、すぐに静止している。
「何かあったのか?」タクミが自問自答する。だが、その疑念はすぐに消し飛んだ。
「クスノギ伍長、レーダーに反応あり! 4時方向、2キロ先に複数の熱源を確認。敵サーベイランスの可能性が高い!」
ハルカの緊迫した声が無線機から響く。タクミの体が硬直するが、すぐに頭の中で次の行動を計算する。まだ見習いだとはいえ、彼の訓練の成果が試される瞬間が訪れたのだ。
「了解、ストライク・ハウンドに搭乗する!」
タクミはトラックを止めると、素早く降りて背後のサーベイランスに向かった。重厚な装甲板に手をかけ、機体内部に乗り込む。目の前の計器類が一斉に点灯し、機体が起動する音が耳に響く。彼は深呼吸をし、シートベルトを締めると、操縦桿を握りしめた。
「これが、俺の初任務…行くぞ、ストライク・ハウンド!」
タクミの声に応えるかのように、機体が力強く立ち上がる。荒廃した街に、再び新たな戦いの火花が散る瞬間が訪れたのだ。