イベントが始まり、ヤマメがステージに立つと、多くの妖怪たちが彼女のパフォーマンスを楽しむために集まっていた。ユウスケは舞台裏から周囲を警戒していたが、怪しい人物は見当たらず、むしろ集まっている妖怪たちはどれもいかつくて、特に異常は感じなかった。
ヤマメは最初の曲を無事に歌い終え、一度舞台裏に戻ってきた。「お疲れ様。何かあった?」とヤマメはユウスケに尋ねる。
ユウスケは「いや、特には。平和そのものだよ。」と答え、ヤマメは「もしかしたら、ストーカーさんも純粋にイベントを楽しんでいるのかもね」と冗談めかしながら微笑んだ。
その時、パルスィが現れた。「お疲れ様、ヤマメ、ユウスケ。」
ヤマメは嬉しそうに「パルスィじゃん、久しぶり〜」と言い、しっかりと握手を交わした。
「友達だったの?」と驚くユウスケに、パルスィは「まあね、長い付き合いよ。会場でユウスケが見えたから訪ねに来ただけ」と軽く説明する。
でもすぐに、パルスィはからかうように、「それで、なんで一緒にいるの?浮気?私より明るいヤマメがいいのね?」と問いかけてくる。
ユウスケは慌て「誤解だよ。さとりからヤマメの護衛を頼まれたんだ。」と事情を説明する。
パルスィは「アイドルだから、そういうことってあるのね」と納得し、ヤマメも「ストーカーのことは知らなかったけど、そういう話なら誰とも付き合わないよ〜」と手を振って応じた。
ユウスケは「パルスィの嫉妬を操る能力で犯人を探せないの?」と提案するも、パルスィは「アイドルの世界は妬み嫉みが渦巻いているから、簡単じゃないわ。でも、やれるだけはやってみる」と決意を固める。
その時、ヤマメの次の出番が来て、彼女は再びステージへ。そして次の曲を始める。
ステージ裏でユウスケが「どう?」と尋ねると、パルスィが「ヤマメに対する嫉妬はありきたりなものばかりだけど…ちょっと待って、何か変。」と不安を感じ取る。
「どうした?」とユウスケが聞くと、パルスィは「あの人が、ヤマメではなく私たちを見てる。ユウスケに対して異常な嫉妬を感じるわ。」と指摘する。
「俺に?誰なんだ?」とユウスケは驚き、パルスィが指さす方向を見たとき、彼女の表情が急に青ざめた。
その瞬間、パルスィの指した方から猛烈な斬撃がステージに向かって襲い掛かった。会場は一瞬で混乱に包まれ、ヤマメのステージは瓦礫と化した。ユウスケはとっさにパルスィを守るため、巨大な盾を生成し、瓦礫の雨から身を守った。
観客たちは混乱し、その場で何が起こっているのか全く把握できない様子だった。だが、一人の声が会場に響き渡る。
「一体何をしてるでやんすか!野鎌!」と叫んだのは、鬼子だった。
野鎌はただ冷静に、「バレてたか…」と呟いた。
「オラの頭には後ろにも目がついてるんですよ!」と鬼子が続ける。
青坊主は呆然としながら、「なんてことを…」とその場の凄惨さに呆れる。
「お前、なんてことを!」と夜行が怒りに任せて声を上げ、愛馬の首切れ馬を駆けて野鎌に襲いかる。しかし、刃は空を切り裂き、野鎌は速やかに反撃の斬撃を放つ。
しかし、彼は夜行の動きを読んでいて、その反撃はあまりにも的確だった。「何をされた?」と夜行が訝しむと、青坊主は声を詰まらせ、「夜行さん、あなた…腕が…」と衝撃の事実を伝える。
夜行の腕は既に失われていた。信じられない現実に彼は声を失い、混乱の中で激しい痛みに悲鳴を上げる。そして、無情にも首切れ馬も巻き込まれ、その首が飛んでいた。
「首切れ馬、お前は元から首がないから平気だよな?」と鬼子がなんとか場を落ち着かせようとしつも、青坊主は野鎌を見て、「なんてことを」と繰り返した。
野鎌は冷たい瞳で、「黙れ、お前らに俺の気持ちが分かるか?」と言い放つ。「ヤマメとあの男が同じ家で寝てたんだ。あの偽善者アイドルが、ファンに清純派を装っておきながら、男と寝るなんて許せない!せっかく今まで邪魔者を排除してきたのに!」
青坊主が「それは護衛のためです」と訂正するが、野鎌は叫ぶ。「うるさい!事実は変わらない!彼女を汚した奴は許さないし、皆同罪だ!」
彼はそう叫び、自身の主張を無秩序に続けた。
青坊主は「言っても分からないようですね!」と怒りを込めて、大量の水を生成し、野鎌をその中に引き込もうと試みる。野鎌は斬撃を繰り出して水を切ろうとするが、効果はなく、必死に耐える。
鬼子は「青坊主、手伝うでやんす。ハァア!」と叫び、勢いよく野鎌に突撃し、棍棒を振りかざす。
だが、野鎌は冷静に「液体は切れないが、それは切れる。」と言い放ち、鬼子に向かって斬撃を飛ばした。
「なっ、棍棒が真っ二つに…。」と鬼子が武器を失い驚愕している隙を突いて、片手を失った夜行が野鎌をがっしりと掴む。
「自分の理想通りじゃないと我儘言いやがって。俺たちを笑顔にしてくれたのを忘れたのか!おい、青坊主!俺ごとやれ!」と夜行が叫ぶ。
青坊主は「耐えてくださいよ!夜行さん。」と応え、水牢に野鎌と夜行を閉じ込める。
しばらく静寂が続いた後、水牢の色が徐々に赤く染まっていくのを見て、青坊主は事態の深刻さを悟り、水牢を解除した。中には傷だらけで意識のない夜行と傷ついた野鎌が転がっていた。
「流石にあんだけ斬撃を浴びせたら耐えられなかったか、夜行。」と野鎌は呟く。
「くっ、ここまでか…。」と青坊主は悔しそうにうつむくが、その時、
ユウスケが「生成、野鎌斬撃。」と宣言し、野鎌へ斬撃を打ち出した。
野鎌は急に飛んできた斬撃に驚きつも、その攻撃を何とか防ぐ。
「あんた何者だ?これは俺の斬撃だぞ。」と驚きを隠せない野鎌に、ユウスケは「痛みのない斬撃とは、恐ろしい。だが、中々面白い能力を持っているね。」と冷静に言い放つ。
野鎌は舌打ちしながら、「ちっ、コピー能力か。」とユウスケの力を理解する。
戦いが激化する中、ユウスケと野鎌は互いに斬撃を繰り出し合っていた。しかし、ユウスケのコピーした斬撃はオリジナルにはわずかに劣り、分が悪そうだった。
「コピーといえども、本家の能力には少し劣るようだな。そっちは俺の斬撃を防ぐために、多くの斬撃を放ってるようだ」と野鎌が指摘する。
ユウスケは反論できず、さらに斬撃を生成することも考えたが、周囲への被害を恐れ、必要以上には生成しなかった。周囲ではヤマメファンクラブのメンバーたちが投擲攻撃を試みるが、斬撃により切り裂かれ効果を発揮できないでいた。
消耗戦になるかと思われたその時、ヤマメが二人の間に割って入った。「ヤマメさん、狙いは俺とあなただ。近づかないで!」とユウスケが叫ぶが、
「黙って」と言い、ヤマメは高く跳び上がり、野鎌へ向けて蜘蛛の糸を投げつけた。
「こんなの切り裂けば…」と野鎌は蜘蛛の糸を斬撃で切ろうとするが、糸は鉄よりも強く、斬撃でも切れない。
「知ってる?蜘蛛の糸は鉄よりも強いのよ?」とヤマメが告げ、野鎌の手足を縛り拘束した。
野鎌は斬撃を繰り出せない状況に陥り、「殺せ…。」と諦めの声を漏らす。
ヤマメは優しく手を差し出し、「誤解させてしまいごめんなさい。私は地底のアイドルだから、みんなのことを愛してるよ。もちろんあなたも」と語りかけた。
その言葉に、野鎌は戸惑いつつも、ヤマメの優しさに触れ、これまでの自分の行動を思い出し涙を流し始めた。
「だけど…俺は取り返しのつかないことをしてしまった…夜行を…」と悔やむ野鎌に、
ユウスケが「心配ない。夜行は死んでないので、大丈夫。回復させておく」と言う。
ヤマメは「ほら、あなたはまだ誰も殺してない。建物が壊れるのは地底じゃよくあることだから、みんなにごめんなさいしよ?」と優しく促す。
ユウスケが回復させた夜行は意識を取り戻し、野鎌に近づいた。「俺とヤマメがいいって言ったんだから、しっかり反省しろ。」と諭す。
涙をこぼしながら、野鎌は「ごめんなさい」と謝罪し、青坊主も「無事に収まりましたね。」と和解のムードを感じ取る。
「一件落着でやんす」と鬼子が軽く場を締めくり、ヤマメのストーカー事件は無事に終結した。
その後、野鎌はファンクラブに新たな一員として加わり、今日もヤマメのライブを観ている。
ヤマメはユウスケに微笑みかけ、「護衛ありがとうね、ユウスケ。これで安心して眠れるわ。」と感謝を伝える。
「なんとか依頼をこなせてよかったよ。」とユウスケも胸を撫で下ろし、
「またライブに来てね。特等席を用意しておくわ、これはお礼。」と言い、ヤマメはユウスケの手を取り手の甲に軽くキスをする。
その時、ユウスケはヤマメに「最近、外に出られなくて暇だったでしょ。よかったら、旧都の居酒屋にでも行こう!」
「いいわね!今回は奢るわ!」ヤマメも楽しそうに同意し、
二人は楽しいひと時を過ごすため、飲み明かし、護衛の期間は無事に終了した。
ヤマメファンクラブメンバー。
鬼子 生まれた時から角があり頭の後ろにも目がある。お正月にはしめ縄を切り、お供え物を食べる妖怪。
夜行 節分や大晦日に「おかずが少ない」などの文句を言うと怒る妖怪。首切れ馬に乗り人間の集落を徘徊することもある。
青坊主 徳島県の吉野川の辺りに伝わる妖怪、水害や子どもが溺れたりすると青坊主が引き込んでいる。と噂される妖怪。
野鎌 風が吹いた後に痛みがないのに皮膚が切れていることがある。これは、のがま、の仕業とされている。地方によってはカマイタチと呼ばれる妖怪。
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