最強勇者パーティー(9割マザコン)から追放された賢者(みんなのお母さん)ですが、皆が中々、母離れしてくれなくて困ってます 作:塩ようかん
フレアは生まれながらに常人を遥かに超える程の魔力を潜在的に秘めていた。更にその髪の色は両親とは異なり、魔力の扱いに優れると王都では伝えられるルビーのように赤い髪。まさに天に恵まれたのかのように魔法使いとしての素質に恵まれた少女であった
が
『化け物め! こっちに来るんじゃあない!』
『まさかこの村から忌み子が出るとは……なんと恐ろしい事か……!』
『出ていけ! 二度と帰ってくるな! お前なんてウチの子なんかじゃあない!!』
幼子のフレアにとってまず不幸だったのが生まれた村が王都から離れ、独自の文化や考えを発展させていた事だった
結果、王都では希少で尊敬の対象だった赤い髪は『異様』と捉えられ、フレアは生まれてから村人はおろか両親からも蔑まれる事となり、それが原因でフレアは幼さもあって自身の精神をコントールするのが困難となり、ある日、魔力を暴走させてしまった結果、フレアは完全に『忌み子』として村外れの森へと追放される事へとなってしまった
「うぅ……ぐすっ……ひぐっ……!」
自身を捨て去った村人が立ち去った後、フレアは近くの切り株に腰を落とし、さめざめと泣いていた。自分はただ普通に生きようとしただけなのに、村の他の子供街のように自分も愛して欲しかったのに、フレアに待ってたのは自分ではどうにもならない事への拒絶。実の両親でさえ自分を愛してはくれなかった。それがどうしても悲しくて悲しくて、フレアは泣き叫ぶ事しか出来なかったのだ
「どうして……どうして……」
そうして、フレアの幼い心が壊れてしまいそうになったその瞬間
「どうしたのですか? こんな幼い子が森の中一人で泣いて………」
その声はまるで霧を晴らすように響き、泣き崩れていたフレアは思わず泣くのも一瞬、忘れて声をかけられた方向へと視線を向ける
「もし、よろしければ私に理由を話してはくれませんか?」
その瞬間、フレアは昔、本を盗み読みした時に描かれていた女神が自分の前に現れたと確信した
森の中だと言うのに土や草に一切汚れていないゆったりとした法衣。手にしているのは夜空の星を一つ持ってきたように輝く宝石が特徴的な杖。何より特徴的なのは村の中の誰にも見たことが無いような美しい銀髪と雪のように真っ白な肌。彼女が連れている自身と同じくらいの歳であろう身長の割には大きすぎる剣を背負う少年でさえ使いの天使のように見えた
そして生まれ持った魔法の才能により、フレアにはもう一つ外見的特徴だけではなく内部から感じ取れる力があった
「(すごい……あたしより……ずっと……ずっーーと……)」
それはティアーナの持つ圧倒的な魔力。フレアは幼いながらも村の中では圧倒的な魔力を誇り、自分より上の魔力を持つもの等、遠征に来た所を遠目に一度見た王宮直属の魔道士だけだったが、今のティアーナから感じ取れる魔力は表面から感じれるだけでも5倍以上。しかも全く底は見えない。例えるならば果てしなく水平線が広がる大海原を思わせるような広大な物でありフレアは本能的に『奇跡が起ころうとも自分では叶わない』と思わされていた
「(どうしてこんなに強いんだろう? こんな人が……私の側にいてくれたらなぁ……)」
未知への圧倒的な力に対する恐れは幼いフレアの中でやがて強い羨望と変わっていく。思考の中から実の家族から捨てられた悲しみは、消え失せティアーナへの興味だけに満たされていく
だからこそフレアはその日、『行く所が無ければ』と前置きの上で語られた提案を即座に受け入れ、この日からフレアはティアーナの娘を名乗るようになり始めた
◆
「……待ってレイ、タクロウ。この先、魔物が待ち構えているわ」
タクロウが手にした燃え盛る松明と、フレアが浮かべる白色の魔力で構成された魔力球だけが照らす洞窟を進む一同をフレアはそう言って静止した
「武器は……うん、棍棒が3。剣が2……後方からは槍が2に弓が4。実力は大丈夫、大したことは無さそうだね。特に作戦を塗らなくても十分に討伐出来るはずだよ」
意識を集中させ、敵の数と武器を読み取ったフレアは冷静にそれを仲間達へと伝達して行き、それに対して次第にレイを中心として一同はその陣形を挟み撃ちに対応した物へと変えてゆく
「その……フレアちょっといいか?」
と、そんな最中、フレアの隣に立つ形となったタクロウは盾を注意深く構え、松明の代わりに剣を握り直しながらフレアに問いかける
「あら、何かしら? レイじゃなくて私に聞くなんて………別に良いけど手短にお願いね?」
突然のタクロウからの問いかけではあったがフレアは全く気にした様子も無く、軽くタクロウに向けてウィンクをするまでの余裕すら見せながらそう答えた
「うっ……ごほんっ!……た、大した話じゃないんだけどさ」
そのあまりにも手慣れた色気のある仕草にタクロウは自然に自分の胸が一瞬、高なるのを感じたがそれを誤魔化し咳払いしながら質問を続ける
と、その時だ、フレアが浮かべる魔力球の光のギリギリの範囲内。洞窟の億を照らす暗がりが一瞬、蠢いた
「フレアの索敵はいつも凄いけど一体どうやってるんだ? 俺は魔法とかには詳しく無くて……」
タクロウがフレアに言葉をかける僅かな時間、暗がりは更に蠢くと、手製らしき棍棒を手にし、暗褐色の肌とギラギラと光る目、そして名の通り蜥蜴のような爬虫類そのものの顔をしたリザードマンが2体、音も無く姿を現した
「キシャアアアッッッ!!」
「勿論、フレアがよければなんだけど………」
未だに会話を続けるタクロウを尻目にリザードマン達は共鳴するように2匹揃って不気味にうなり声をあげると、一気に踏み込んで距離を詰め、棍棒を持った手を頭上より高く持ち上げながら凄まじい速さでタクロウに向かって構えた盾ごとぶっ飛ばそうとせんばかりに突っ込んで来た
その瞬間
「あら、別に構わないわよ? こんなの隠すような事程のじゃあないし………私達、仲間でしょう?」
どさっ
そんな鈍い音と共に、突っ込んで来た二匹の首は一瞬のうちに胴体から切り落とされ地面へと転がり落ち、主を失った身体は糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ち、棍棒は暗闇の億へと転がって行った
「あらタクロウ、やるじゃない。中々、鋭い斬撃よ」
「………俺はフレアの攻撃が見えなかったんだけどね。今のもしかして空気の刃か何か?」
勿論、その攻撃を行ったのはタクロウとフレアだ
タクロウはリザードマンが突っ込んでくる勢いを利用したカウンターの突きでその首を跳ね飛ばした剣に付着したリザードマンのどす黒い血液を、洞窟の壁に当たらないように注意しながら剣を振ることで吹き飛ばしつつ、隣に立つフレアに問いかけていた
「うん、それの答えはさっきの私がどうやって周囲を探ってるのかの答えにもなるわね」
フレアはそう言うと掌を虚空に掲げる。と、その瞬間、周囲から砂粒のように小さな光が意思を持つよう結集してゆき何かの形を作り始める
「これはね、砂みたいに小さいけど私の魔力を物質化させた粒子。これを洞窟に入った時からずっと放出してたのよ。この小さな粒子を周囲にぶつけて返ってきた時間とかを見て、私達周囲20m程の距離を索敵をしていたの。うん……こうすれば暗闇の中でも道や隠れている敵が分かるってママから教わったのよ」
「…………!」
それを聞いて表情にこそ出さなかったがタクロウは内心で大きく動揺し、思わず息を飲み込んだ
「(待って待って待って……俺も詳しい仕組みとかは分からないけど……それって簡易的だけど『魚群探知機』とかと同じ仕組みだよな? まだ禄に機械も発展しないっぽいのにそれを使い熟せるって凄すぎないか!?)」
「そしてその魔力粒子を集結させて凝固させれば………こうする事も………!」
と、そんな風にタクロウがフレアが『自分が知っている技術』を自然と使う様に驚いてる最中、既にフレアは先程まで掌に結集させていた魔力粒子が既に一つの形を作っていた
それは拳2つ程もある弓矢と言うより、攻城用のバリスタの物に似た巨大な鏃だった。フレアの魔力で構成された鏃は手の中で鈍く、唸りを上げており、それはまるで弓を引き絞っているかのようだ。と、タクロウが思った瞬間
「はっ!」
フレアの掛け声と共に、巨大な鏃は轟音と共に発射され、暗闇を魔力の光で照らしながら奥へ、奥へと飛んでいく。そして
『『『ギャアアアーーっっ!!』』』
魔力光に照らされた鏃が悲鳴と共に奥に潜んでいた剣と棍棒を手にしたリザードマン3匹を貫き、その息の根を止めた所で粉々に砕け散った
「と、まぁ、これが私の基本魔法と考えてくれればいいわ。炎とか雷はこの魔力を変換して放つのが私がママから教わったやり方。………なんか世間一般に伝わる普通の魔法とは違うみたいだけどね」
リザードマンの撃破を確認するとフレアは肩の力を抜き、ふうっと息を吐きながら苦笑いをするように笑いかける
「そ、そうか…………」
「(いやいや……これが基本って………敵を3匹纏めて軽々と貫いていたぞ!? や、やっぱりフレアも絶対、敵対したくないレベルに強いなぁ………)」
一方のタクロウはさり気なく行われたフレアの攻撃に若干、引きつったような笑みを浮かべ、残る敵を撃破したレイとスワロウが話しかけるまでその場から動くことが出来なくなるのであった