最強勇者パーティー(9割マザコン)から追放された賢者(みんなのお母さん)ですが、皆が中々、母離れしてくれなくて困ってます   作:塩ようかん

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レンジャー スワロウ

 森に古来より暮らすエルフの精霊使いと、神域とまで言われた人間の猟師に生まれた子供。それこそがスワロウと言う少女だった

 

 エルフの里と人間の里、両方から結婚を反対されたスワロウの両親はスワロウの祖母夫妻の手引きの元、半ば駆け落ちのような形で里を抜け出しすと両方の里から離れた山に小さな小屋を作った

 

 スワロウが生まれたのはその1年後の事で、その才能を見抜いた両親からスワロウは母の母乳を吸っている時から父からは弓の扱いとサバイバルの技術の基礎を、母からは自然の精霊達や木々や動物達の会話方法を教わり。飲み込みが早かったスワロウはすぐにそれを飲み込み、両親は『流石は私たちの子供だ』とそれを大変喜んでいた

 

 山奥の狭い家ながらも親子3人だけの生活。それは幼いスワロウにとってはとても暖かな日々であり、今でも決して忘れる事が無いかけがえの無い記憶だった

 

 が、その日々は突然として終わりを告げる

 

 スワロウ達一家が暮らしていた山で突如、発症すると一ヶ月以内で死に至ってしまう程に毒性が強い未知の病が流行り始めたのだ。それらは先ずは鼠や小鳥のような小動物から始まり、それを捕食していた動物や小動物達と同じエサを食べていた動物、果てには熊や狼、鷲までもが倒れ、病は容赦なく人間やエルフ達にも襲いかかってきたのだ

 

 流れ者の立場でこそあったが、それでも山を愛していたスワロウの両親はこれを何とかしようと立ち向かい、父の猟師としての知識と見聞、母親のエルフ秘伝の薬作りの知識を生かして真っ向から病魔へと立ち向かい奮闘した

 

 そう彼等は立派に戦った。そのおかげで医療機関で確立された治療法が生み出され、病魔は都市部に到達する前に鎮火されたのだ

 

 感染の恐怖にも耐えたスワロウの両親、彼等自身の命を代償にして

 

 

 そう、見事、病魔の最適な治療法へと至る鍵を見つけ出したスワロウの両親ではあったが感染の恐怖を押し留めて戦った彼等自身はその治療法を試すには既に手遅れの状態だった。だからこそ彼等は残された最後の時間を娘のスワロウに教えれるに自分達の技術と知識を教える事に専念し、最後には娘に自分達の死体を見せまいとエルフの里へ頼る事を伝えるとスワロウに別れを告げ、2人で何度も振り返りなかまら家を離れていってしまった

 

「…………っ」

 

 スワロウはその瞬間でも歯を食いしばり、目を限界まで潤ませながらも落涙する事だけ精一杯堪えていた

 

 『涙を流すのは弱い者のする事、これから自分は一人で生きようて常に強くあろう。そして両親の正しさと素晴らしさを伝えていこう』

 

 両親が居なくなった寂しさと悲しみを堪えるようにスワロウは両親の最後の言いつけを破り、半ば自棄のような感覚で自分にそう言い聞かせ、3歳の身で懸命に自分が生まれた森で一人で生きて行く事を決めたのであった

 

 しかし現実は決して甘くは無い

 

 確かにスワロウの両親によって森が死ぬような自体は回避する事が出来たものの森が受けたダメージは深刻そのもので、スワロウが一日中弓を背負って山中を歩き回り、罠をあちこちに仕掛けていても取れる獲物は痩せた動物や枯れかけた山草どうにか飢えない程度に取れるばかり。それでも精一杯生活を続けていたスワロウだったがそれが1週間、そして一ヶ月と続く度に綿で真綿め付けられるような空腹の感覚と孤独がスワロウの心を蝕んでいった

 

「だめだ、人に頼っちゃだめだ……おとうさんとおかあさんを捨てたところに何か行けるか……!」

 

 が、それでも尚、スワロウはエルフの里へと向かうと言う選択を選ぼうとはしなかった。その理由の大部分は両親を助けなかった里への不信感だったが、続く孤独が『自分がこんなに辛くて寂しいのは里のせいだ』と八つ当たりの感情を向けさせていたのだ

 

 その想い自体は幼い子供故に仕方の無い事だったとも言えるのかもしれなかった。だがしかし、そんな想いとは無遠慮に成長段階の身体は否応なしに多くの栄養を求めスワロウに休む事も無く空腹を与えていく。やがて積もりに積もった空腹が『飢餓感』へと変わりだした時だった

 

 ある朝、スワロウは偶々、自分の寝床近くを母と子の三人親子で旅をしてると思われる冒険者を目撃する

 

「相手は女と子供だけ……武器を持って仕掛ければ驚いて逃げていく筈。もしも見られても子供のあたしを攻撃しようなんて気はならな

筈だ……」

 

 それを見た瞬間、スワロウは無意識に獣が取れずに錆び付き初めてた己のナイフを手にし『強盗』と言う選択を選ぼうとしてた

 

 

 当然、普段のスワロウならば誇り高さ故に決して選ぶ筈も無い選択ではあったが続く飢餓と孤独が彼女の精神を蝕んでいた。例え盗みに失敗して殺されたとしたも『この地獄から解放されるならば』と、さえ想い始めていたのだ

 

「肉と野菜を茹でる匂い……これスープの匂いだ……」

 

 後ろ手にナイフを隠しながら足音を立てぬようスワロウが近づくと丁度、食事の支度を始めていたのか辺りには野菜と肉、そしてスパイスのかぐわしい香りがスワロウの鼻腔に入り込み、それだけでスワロウの口からは涎が溢れ出てきていた

 

「食べる……絶対にお腹一杯食べるんだ……」

 

 背の高い草むらに小さな自分の姿を隠し、足音を立てぬように進みながらスワロウが近付いていくと、やがてスワロウの方に背中を向け、石で作り上げられ、炎が燃え盛るかまどの上に吊るされた鍋の前でお玉を手に、一生懸命調理をしている白髪の女性の後ろ姿が見えてきていた

 

「(まだあたしに気付いていない……これなら………!)」

 

 そうやってスワロウがナイフの束を握り、草むらから一歩飛び出そうとしたその瞬間だった

 

「………丁度、完成しました。良かったらあなたも私や私の子供と食べませんか? 大丈夫、あらかじめ多めに作ってあるんですよ」

 

「………!?」

 

 その瞬間、スワロウの目が驚愕に見開かれる。タイミングから言って間違いなく偶然でも何も無い、完全に背後に忍び寄る自分の事に気が付いているとしか思えなかった

 

「(無理して突撃する!? いや、ここまで完全に気付かれているなら無理だ……撤退……は……)」

 

 と、そこまで考えた所だった

 

 グウゥゥ〜

 

 

 空腹に限界が来たのか周囲に響き渡るような音でスワロウの腹が勢いよく鳴り響いたのだ

 

「…………っっっ!!」

 

 仮にもナイフで脅して食料を強奪しようとした相手にそれを聞かれた事で一瞬のうちにスワロウは羞恥で耳の先まで真っ赤に染まる。恥ずかしさのあまりに涙まで滲みそうなのはスワロウが必死で堪えていた

 

「あらあら……すぐにスープをよそってあげますね? お話はご飯の後で構いませんよ?」

 

 一方で当の女性はそれを誂ったりも嘲ったりもせず、優しく微笑みながら湯気の立つスープを鍋から器に注ぎ込むとそれを木製のスプーンと共にスワロウに差し出した

 

「(……ま、先ずはお腹を満たさないと……! 何にするにせよ、こんなにお腹ペコペコじゃ何も出来ないもん……!)」

 

 差し出されて数秒程はハーフとは言えエルフである意地の為か、堪えていたのかだが飢餓に変わる寸前の空腹を前にそれ以上の我慢が出来るはずも無く、直ぐに適当に理由を付けるとスプーンを手に取ると、スープを掬って口に運び

 

「!!??? お、お、お、おおいしいっっっ!!」

 

 瞬間、それしか言えなくなる程の歓喜に包まれた

 

 

「それを再現したのがこのスープ。………でも、アタシの腕じゃその半分程しかマムの味を再現できてない」

 

 旅の最中のとある夜、野営の中で食事当番になったスワロウが作ったスープで食事になった最中、スワロウは自身の過去を語りながらスープを手に感慨深くそう言うと、ちらりとタクロウへと視線を向ける

 

「……それは何でだ? スワロウ」

 

 一瞬、スルーする事も考えたタクロウではあったがスワロウが無言でチラチラと何度も視線を向けるうえに、レイやフレアは既に事情を知っているのか納得したようにスワロウの話を腕組みしつつ時折頷きつつ聞いてるだけで自ら聞こうとはせず、結局タクロウは自分から聞き出すことになった

 

「……! 良く聞いてくれたねタクロウ」

 

 タクロウから話を振られると余程嬉しかったのかスワロウは途端に目を輝けせ、タクロウの方に向かってずいっと身を乗り出してきた

 

「それはシンプル。ずばり『愛情』……! マムが料理に込める愛情はそれこそ無限大……! まさにマムだからこそ出来ること………!」

 

「「………………!」」

 

「お、おう…………」

 

 タクロウの知る限り常日頃から物静かで落ち着いてるスワロウが力強く言い放つ姿にタクロウは若干、引き気味ではあったがスワロウの背後でレイとフレアは再び同意するように力強く頷いていた

 

「………あたし達と同じく、マムの作った料理を食べた事があるタクロウならそれが分かるでしょう?」

 

 と、そんな押しが強い態度を自分でも自覚していたのかスワロウはそこで声量を落とし、確認するように尋ねてきた

 

「それは……分かる……。分かるけどさ………」

 

 その言葉をタクロウは決して否定しない。事実、ティアーナの作る料理は単純に調理技術や材料が優れているだけでは説明がつかない旨さがあるのをタクロウは自らの舌を味わっていたからだ。そして何より、ティアーナの料理によって心を救われたのはタクロウもまた同じだったからだ

 

「皆がティアーナさんを凄く尊敬してるのは分かるし、俺もまだ会って1年も経ってないけど凄い人だとは思うぜ? でもさ………そうやってグイグイ来られると……困る」

 

 だからこそタクロウは仲間達やティアーナを傷付ける言葉を出来るだけ控え、困ったような笑顔を見せた

 

「…………ご、ごめん……マムの事になるとつい………」

 

「俺もすまない……そう言えば以前からタクロウは注意してくれていたな……」

 

「……分かってはいるんだけどね」

 

 タクロウの言葉を受けるとスワロウは頭に手をあてて申し訳なさそうに呟き、それに続くようにレイとフレアもそう言った

 

「ま、まぁ……今はその話はおいといてさ! 早く魔王の所までたどり着こうぜ! そうすりゃあティアーナさんも帰ってこれて全部が丸く収まるんだろ!? 万々歳じゃあないかよ! ……うん! スープもうめぇ!」

 

 そんな空気が耐えきれず思わずタクロウは声を張り上げ、わざと明るい口調でそう言い、少しばかり熱いのを堪えつつスープを一気にかっ込む

 

 まだ空に昇った月は空高く、それはまだまだ夜が続く事、そして就寝にはしばし時間が示しており、何時も明日の為の武器の手入れや下準備等で時間に追われる事が多いタクロウには矢鱈に夜が長く感じられるのであった

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