風の支配者 作:ベルト不使用
「うわぁああああーっ!?」
「ちゅばさー!」
「マジかよ!?」
これまでと桁違いの大きさの風船型ランボーグが、スカイランドの上空に出現した。
敵さんの偵察に向かったツバサくんことキュアウイングが、ランボーグから生えてきた手にはたき落とされ、地上へと落下していくのが城の窓から見える。
事態はさらに悪化する。
ランボーグの迎撃に出たましろとソラちゃん、キュアプリズムとキュアスカイもが敵の妨害を受け、苦戦中だ。
「アップドラフト・シャイニング」という二人の合体技も効かない。
浄化のための力場を、ランボーグが力ずくでバッキバキに破壊してしまったのだ。
二人はランボーグの生やした無数の手に捕まり、彼女らを助けに来たシャララ隊長までも、その手に拘束されてしまう。
「風船がモチーフのくせに、なんで手が生えるんだよ!? 手出しできずにやられろよ!!」
と文句を言っても、相手には届きさえしない。
このままじゃ三人とも握りつぶされるか、そうでなくてもあの風船ランボーグは爆弾でもあり、時間が経てば爆発してスカイランドを闇で飲み込む、とバッタモンダーは宣言していた。
あの野郎、顔はいいのにやることがあくどいじゃねえか……。
「えるぅ……」
エルちゃんが不安げな顔で俺を見る。
わかってるよ、俺もなんとかしたいよ。
さっき夢で見た黒い人も、俺に力を託すとか言って白い指輪をくれたが……
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ……!」
くやしさと共に拳を握り締める。
指輪にはまったオレンジの宝石が、きらりと光を反射して光った。
「える?」
室内に光源はない。外はランボーグで光を
光の源は、エルちゃんだった。
彼女の胸の辺りから、淡い紫色の光が放たれている。
「これは……ましろたちをプリキュアに変えた光……?」
エルちゃんの光と、俺の指輪の光が共鳴するように輝いて、その間の空間が歪む。
歪みの中から、するりと二枚の紙切れが、なにかから剥がれ落ちたように舞い降りた。
「なんだよもう、次から次へと……!?」
紙の一枚には、トゲトゲしい一匹の竜が描かれ、もう一枚には、回転する黒い円盤状のなにかが記されていた。
二枚の紙は俺の周りを漂い、危険を感じた俺はエルちゃんをそっと床に降ろして、彼女から離れる。
「うわわわ」
白い指輪の宝石の輝きが目も
指輪の光が、竜と穴の紙が、俺の体を作り替えていくのが分かる。
「ふーか!」
俺を心配するエルちゃんの叫びが聞こえたが、大丈夫だ。
この光は、とても温かい。
俺は体中に
落ちない。
風が舞って、俺の体を中空で支えてくれている。
俺は風に乗って、敵の元へと猛スピードで飛んでいった。
「でりゃあー!!」
叫びと共に、体ごとぶつかって風船型ランボーグを
おかげでプリズムたちをつかんでいた手が離れ、三人は解放された。
「な、何者ですか!?」
キュアスカイが警戒の声を上げ、俺を見る。
俺は城から出る直前、室内にあった姿見に映った自分の姿を思い出した。
今の俺は全身に黒と金のスーツをまとい、顔もすっぽりと仮面に覆われている。
背中から両肩前面にかけて、スカイとは違う形のマントがなびく。
まるで特撮ヒーローの様な出で立ちのため、彼女らは中身が誰かに気づいていないのだ。
「おれおれ、俺だよ俺!」
「おれおれ詐欺かな?」
「え、その声……もしかして、ふうかさんですか!?」
こんな時でもツッコミをかかさない妹に安心し、すぐに気づいてくれたスカイに肯定の返事を返した。
「驚いたな、君もプリキュアだったのか」
シャララ隊長も無事のようで、俺の変わり果てた姿にそうもらす。
「いや、これ多分だけど、プリキュアじゃないと思いますよ?」
俺はそう言って、改めて自分の姿を認識する。
これは、夢で見た黒い風の中の人物と、まったく同じ姿なのだ。
第一、この全身スーツのスタイルは、プリキュアとデザインが違いすぎるでしょ。
「では、君は一体……」
何者か問うシャララさん。
俺はちょっと考えて、こう名乗った。
「風に乗る仮面を被った戦士……うん、決めた。俺の
「仮面ライダーウインド……かっこいいです!!」
ソラちゃんはこういうのにすぐ食いつくねー。
でも君のおかげで、勢いで名乗りを上げた恥ずかしさは消えたよ。
『ランボーグ!!』
緊迫した展開からのんびりムードが漂い始めたのを元に戻すように、敵の雄たけびが響いた。
風船ランボーグの体は限界まで膨張し、バッタモンダーが予告した爆発の時間がもう間近に迫っていることがわかる。
「あとは俺に任せてくれ」
そう言って三人を地上に残し、俺は再び風に乗って、敵の元まで飛び上がる。
あの大きさじゃ、何度ぶつかっても遠くへはね飛ばすことはできないだろう。
けど
「さっきの黒い穴の紙片……力を貸してくれよ」
俺は両手を広げて、黒い穴──ブラックホールを敵の正面に展開した。
全力を込めて広げた穴は数十メートルに達し、巨大な風船ランボーグも容易に飲み込む。
『ラン……ッ!?』
すぽんっ、と軽い音と共に穴の向こうに消えた敵さん。
直後、さらにさらに高い空の上で、小さな爆発が見えた。
「フン、きたねえ花火だぜ」
爆発は止められなかったが、周囲に被害が及ばない場所なら問題ないよね。
ひとまず王国の危機は去った。
俺は地上へ降りることなく、即座に
保護者としての直観か、ライダーになったことで感が冴えたのか、エルちゃんが危ないと察した俺は妹らを残して、速攻で城へ戻った。
いつの間に侵入していたのか、バッタモンダーは王様と王妃様に怪我を負わせ、その隙にエルちゃんをさらおうとしていたのだ。
俺の姿を見た奴は、行動を終える前に逃げ出したことで、どうにかエルちゃんだけは無事だったけど……。
「王様たちは、しばらく安静が必要だ。お二人の傷が回復するまで、一時的に私がこの国の運営を司る」
シャララ隊長にスカイランドを任せ、俺たちは四人はエルちゃんを連れて、再びソラシド市に戻った。
この状況で彼女を国に置いておくより、俺たちが一つになって守りを固める方が安全だろうという判断による。
俺はというと、家に戻って速攻、ヨヨおばあちゃんの元へ走った。
「おばあちゃん! なんか夢で見た指輪が本当にあってピカーッてなったら二枚の紙がズワーッて出てきて俺もガッチャーンと変身しちゃったんだけど、なんか知ってる!?」
「あら、そうなのね」
おばあちゃんは、俺がライダーになることを予見していたかのように、冷静な態度だ。
「出会いに偶然はない。全ては必然の運命なの。ふうかさんの物語のはじまりよ」
「おばあちゃん、意味深なこと言ってごまかそうとしてない?」
「うふふ」
なんかはぐらかされた。
思えばソラちゃんたちが来ることも事前に知ってたみたいだし、底知れねぇなこの人……。
「プリンセス、どうか元気を出してください」
「えるぅ……」
一方のエルちゃんはすっかり落ち込んでしまい、ツバサくんたちの励ましの言葉も素通りだ。
せっかく両親と再会できたのに、すぐに別れることになったんだから当然だな……。
そんな彼女の元に、俺のポケットに収まっていた、俺を変えた二枚の紙片がひとりでに舞いゆく。
紙なので言葉は発せないが、懸命にエルちゃんを慰めようとしてくれているのが、俺以外の面々にも伝わった。
「この紙、いったいなんなんだろう?」
「文字が書いてありますが……スカイランドの言葉でしょうか、古すぎて読めませんけれど」
紙片を見てつぶやくましろとソラちゃん。
俺はなんでもない事のように、二人に答えを示す。
「こっちの竜が『ギガバハム』で、もう一枚が『クロアナ』って名前みたい」
「ふうくん、読めるの!?」
あげはちゃんが驚くのも無理はない。
俺も自分に驚いてるが、一体化したことで意味が通じるんだよね。
「その指輪といい、この紙片といい、ふうかさんの変身した姿もですが、謎が多すぎます!」
「エルちゃんも知らないみたいだし、やっぱりプリキュアじゃないだろうからね」
疑問を抱くのはソラちゃんとましろだけじゃない。
俺も不思議でいっぱいだが、とりあえず今は、黙ってこの力を受け入れようと思う。
「とにかくこれで、俺もみんなと一緒に戦えるよ。エルちゃんのことも、絶対に守ってみせるからな!」
彼女を抱き上げて、そう強く誓うのだった。
ひろプリ世界との整合性をとるため、この作品ではケミーはカードではなく、本のページという形をとっています。
あと、ライダーへの変身にもドライバーは使いません。