風の支配者 作:ベルト不使用
エルちゃんの両親である国王夫妻の怪我が完治した、という知らせを受けた俺たちは、再びスカイランドへと向かった。
今回は、あげはちゃんも一緒である。
今度こそ感動の親子の再会。
しかし夫妻は予想外にも、エルちゃんを再び俺たちに預ける、と言い出したのだ。
「この子は一番星が私たちに授けた、スカイランドの救世主。滅びに瀕したこの国を救うため、私たちの元に託された運命の子……」
そして今、彼女の旅立ちの時が来た、と夫妻は告げる。
「プリキュアとライダーよ、そなたらにプリンセスを任せたい」
「そしてこの国とその子の未来を、守って欲しいのです」
ようやく一緒にいられると思った矢先、自分の意思でそれを手放さなければならないなんて、国王夫妻の心中はいかほどだろう。
俺の戸惑いを消し去るように、ソラちゃんやツバサくんはしっかりとした覚悟を持って、エルちゃんと彼女の未来を預かるのだった。
王様たちから直々にプリンセスを託された俺たちは、ソラシド市に帰る前に今、スカイランドの湖に来ていた。
ここの湖底からある日突然、遺跡と思われる建造物が出現したため、調査に来たというわけ。
「この遺跡、中に入るには運命の子であるプリンセスの力が必要なんですが……」
「一緒につれていって大丈夫かなぁ……?」
遺跡の入り口に記された古いスカイランド文字を解読したツバサくんがそう言い、ましろは不安げに俺が抱くエルちゃんを見つめる。
「今回はあげはちゃんもいるし、エルちゃん自身もプリキュアの力を持ってることが分かったんだから、そんなに心配することないだろ」
妹を安心させるように、あえて気楽をよそおう俺だが……まあ不安になる気持ちはわかるよ。
けれど今回、この遺跡の調査をスルー出来ない理由もあるわけで。
「ここにあるっていう『究極の力』とやらを手に入れられたら、アンダーグ帝国の奴らがいくら攻めてきても対処できる。そうなりゃ、エルちゃんも安心して暮らせるんだから」
「それはそうかもだけど……」
簡単に納得できない感じのましろだけど、パワーなんてなんぼあってもいいですからね。
俺たちの説得で、しぶしぶといった様子で妹は、エルちゃんもつれての遺跡調査に同意するのだった。
「で、入ってはみたものの」
「とくになにも起きず、最深部までたどり着けましたね」
俺とツバサくんは、拍子抜けした様につぶやいた。
俺たちは今、遺跡の最奥にある部屋にたどりついたんだけど、ここまで妨害とか侵入者避けの罠とか、なにもなかったのである。
「案外、エルちゃんがいたから罠の類も、作動しなかったのかもしれませんよ」
「そっか、そう考えるとエルちゃんに感謝だね」
「えるっ」
ソラちゃんの推測も、案外間違ってないかもしれん。
ましろの言葉でエルちゃんも、ふんすっと胸をはってドヤっていた。
そんなエルちゃんは俺の腕から降りて、トコトコと部屋の中心部へと歩いて行き、どこからか一冊の本を持って俺たちに見せてくる。
「これ、まじぇすてぃくるにくるん!」
「これが……究極の力?」
「える!」
どんな超絶スゴイ武器なのかと思えば、本て……。
敵が来たら読み聞かせて喜んでもらおうって接待道具かぁ?
「なるほど、それがお前たちの目的の物か」
『ッ!?』
出し抜けに、聞き覚えのない男の声が聞こえてきた。
部屋への入り口に立ち、こちらを値踏みするように見つめている男は、バッタモンダーに代わる新しいアンダーグ帝国の使いだった。
名を、スキアヘッド。
こいつからはカバトンやバッタモンダーにあった、ある種の可愛げというか、おふざけ感がまったく感じられない。
つまり、めっちゃ強そうでヤバそう。
「みなさん!」
「うん!」
「はい!」
「オッケー!」
ソラちゃんの号令で、ましろ、ツバサくん、あげはちゃんが変身アイテムを取り出す。
俺もエルちゃんに声をかける。
「エルちゃん、俺らも!」
「えるっ!」
指輪とギガバハム、クロアナの紙片の力で、俺は仮面ライダーウインドへの変身を果たす。
「降り立つ気高き神秘! キュアマジェスティ!!」
エルちゃんは当然と言うべきか、赤ん坊のままでは戦えないので、アイテムの力を介して少女の姿へと急成長。
エルさんと化した彼女は紫色のドレスをまとったプリキュア、マジェスティの姿へと変わった。
「アンダーグエナジー、召喚」
敵も配下の怪物を呼び出す。
ランボーグ程度、俺ら六人がいればチョロいもんすよ。
と思ってたら、遺跡を材料に生み出された怪物は、これまでとは一味違っていた。
『キョーボーグ!!』
一戦交えてみてわかったけど、この敵、ランボーグより強ぇ……。
おまけに遺跡そのものが敵みたいなもんだから、下手に壊せば俺たちは生き埋めになってしまう。
「みんな! 俺が食い止めるから、その本の力でとどめを頼む!」
「わかったわ!」
マジェスティは素直に俺の言うことを聞いてくれ、この場を任せてくれた。
「今の貴様の力、見せてもらおうか」
スキアヘッドがそう言う。
今の俺の力? 今の俺……って、どういう意味?
『キョーボーグッ!』
「ほげぇっ!?」
ハゲの意味深なセリフに気を取られてるスキに、思いっきり怪物にぶん殴られてしまう。
このハゲーっ! 気を散らさせるんじゃないよ!
「こんな狭い場所じゃブラックホール使えんし、空も飛べん……ギガバハム、力を借してくれ!」
胸の中で竜の咆哮が聞こえた、気がした。
ドラゴンの怪力が俺の両腕に宿り、キョーボーグの豪腕との殴り合いが始まった。
そのあいだにも後方では、マジェスティたちが本の力をどうやって使おうと四苦八苦している様が感じられる。
が、どうやら上手くいってないようで……
「ダメ……クルニクルンのページが開かない!」
マジェスティの悲壮な声が響く。
俺の方も、一対一の殴り合いは次第に押されはじめてきた……早くなんとかしてぇ!?
プリキュアの心が一つになった時、マジェスティクルニクルンは力を開放する、らしいけど……どうもましろの気持ちが揺れている。
エルちゃんを心配するあまり、彼女を戦わせたくないましろが不協和音となっているようだ。
『キョーボーッ!!』
「ぐへぇ!!」
いよいよ競り負けて、俺は石でできた敵の豪腕をもろに食らって、反対側の壁まで吹っ飛ばされてしまった。
「ウインド! 大丈夫!?」
「ぅ~ん……」
マジェスティが駆け寄って来たが、俺は頭をぶつけた衝撃で意識が
それでもソラちゃんたちの声は聞こえていた。
「プリズム、悩むことはありません! なぜならエルちゃんも、かつての貴女と同じ気持ちでいるのですから!!」
「私と、同じ……?」
「ましろさんは、独りで戦う私を心配してくれた。エルちゃんも同じで、私たちが心配なんです。だから……プリズムもマジェスティを信じてあげてください!!」
『あなたが心配だよ。助けたいよ。気持ちは同じ。それって……一緒に戦う理由にならないかな?』
自分の言葉を思い出し、エルちゃんの想いを
解放されたマジェスティクルニクルンの力はすさまじく、ランボーグより強化された遺跡キョーボーグを、瞬時に浄化してしまったのだった。
「痛てて……今回は俺、いいとこなしだったな……」
「そんなことないわ。ウインドがキョーボーグの相手をしていてくれたおかげよ」
マジェスティに助け起こされた俺は、そんな風にフォローを入れられ自信を回復した。
我ながらチョロい。
「マジェスティクルニクルンか。その力、知識の宮殿に記録しておこう」
スキアヘッドの姿が陰に沈む。やるだけやって、さっさととんずらかい……。
と、完全に影の中に消える直前、奴の視線が俺に投げかけられる。
「しかし今の貴様は、記録に残すに値しない。ずいぶんと
まーた意味深な言葉だけ残しやがって……。
俺はお前と過去の因縁なんてないぞ。ないはず……。
と、完全に消え去った
「いや、もしかして……ライダーのことを言ってるのか、奴は?」
俺の変身した姿──仮面ライダーウインドは、以前見た夢の中の人物と同じ格好をしている。
それに対しての言葉だとしたら、俺自身に覚えが無いのも納得だ。
「大好きよ、プリズム」
「私もだよ、マジェスティ」
そんな思案にふけっている俺の後ろでは、より絆を深めた二人のプリキュアの姿があった。
気になることはあるけれど、わだかまりが解けたのならよしっ!
展開の都合でミノトンさんはカットです(無慈悲)