風の支配者 作:ベルト不使用
スカイランドから帰った俺たちは、自宅のリビングでのんびりとテレビ鑑賞中。
今は結婚式の特集番組が流れていて、俺とツバサくんを
「人の結婚式で、よくそんなに盛り上がれるねぇ」
「綺麗なウエディングドレスを着るのは、女の人の憧れなんでしょうね」
あまりの盛り上がりっぷりに、俺はちょっとしらけ気味でテレビを流し見ていた。
ましろが同席するソラちゃんにたずねる。
「スカイランドでは、どんなふうに結婚式を挙げるの?」
「まず結婚する二人が、村中に聞こえるくらいの大声で宣言するんです。そのあとみんなで、一晩中踊り明かすんですよ」
「なにそれ、罰ゲーム?」
あまりにも独特というか、羞恥プレイとしか思えない式の上げ方に俺はツッコミを入れた。
いつも通り俺の膝の上に座るエルちゃんが、あげはちゃんに問いかける。
「けこんしきってなぁに?」
「大好きな人同士が、これからもずっと仲良くしようね、って約束すること……かなぁ?」
「おぉー」
それを聞いたエルちゃんは、俺とツバサくんを交互に見て、ちょっとビックリする発言をかました。
「える、けっこんしゅる!」
「誰と?」
「ふーかと、ちゅばしゃと」
「ふーん……え?」
「える、ふーかとちゅばしゃと、けっこんしゅるの!」
『えぇーっ!?』
俺と発言者のエルちゃん以外のメンバーが、驚きの声を上げる。
いや俺も叫びこそしなかったけど、驚いたよ。
「ぼぼぼ、僕とふうかさんが……プリンセスとけ、結婚!?」
ツバサくんもめちゃくちゃビビってる。
まあそりゃ、忠誠を誓った皇女様から婚約を申し込まれりゃねぇ?
「でもエルちゃん、結婚できる相手は一人だけなんだよ?」
「なんで?」
「重婚罪になるからね」
俺の現実を見据えた冷静な言葉に、横からソラちゃんが疑問をはさむ。
「ジューコンってなんですか?」
「世間に認められた不倫かな」
「えぇ!? 不倫はダメですよ!!」
そもそもスカイランドの法律を知らんのだけど、彼女の反応だと向こうでも一夫多妻とか多夫一妻は認められていないっぽい。
まあ皇女のエルちゃん──というかエルさんが、法律を改正するって抜け道もあるんだろうけど。
「やー! けっこんしゅるの!」
「ふうかさん、どうしましょう……?」
「どうせ今一時の思いつきじゃないのぉ?」
別に赤ちゃんだからって軽んじてるわけでもないが、子供の時点の感情で将来の相手を決めるってのも早計過ぎるし。
「だったら、エルちゃんのお願い、叶えてあげよっか!」
というあげはちゃんの発案で、俺とツバサくん、エルちゃんの三人は急遽、結婚式のごっこ遊びを行うことになった。
現在家の中庭で、俺たち三人はましろらに見守られ、司祭役のおばあちゃんの前に立っている。
「ツバサさんとエルちゃん、ふうかさんは、これからも大好きな気持ちを忘れず、仲よくすることを誓いますか?」
「もちろんです!」
「ずっとなかよちー!」
「あ、はーい」
おばあちゃんが聖書の代わりに持っているマジェスティクルニクルンから、ギガバハムとクロアナの紙片が飛び出てきて、俺たちを祝福するように舞う。
俺をライダーに変えたこの二枚の紙は、どうやらクルニクルンに描かれていたページの一部のようなのだ。
二体はケミーという人造の生命体みたいなもんで、クルニクルンともども誰がつくったのかは謎である。
みんなからの拍手を受けて、記念写真を撮り、ましろが焼いてくれたケーキを食べて、式の真似事は終わった。
じゃあ、あとは面倒なかたづけ作業に移りますかね。
「? プリンセス?」
ツバサくんがエルちゃんに疑問の声を上げる。
エルちゃんは式が終わっても、彼と俺の手を握って放そうとしない。
「けっこんちたの! けっこんちたから、ずっといっちょなの!」
俺とツバサくんは顔を見合わせて、確信する。
あ……この子、本気なんだ……と。
結婚式ごっこが終わってもエルちゃんは俺たちの手をずっと握ったままで、そのため俺たち三人は、食事の時も着替えの時も、お風呂に入る時なんかも行動を共にするハメに。
すでに数日が経過しているが、エルちゃんは一向に飽きる気配を見せない。
自由がないよ~。
学校は連休に入っているため、そっちはいいんだけど、拘束されてるとどうしても一人だけの時間が無くなり、息抜きができずちょっとツラい。
「ふうかさん」
「ん?」
突然まじめな顔で、ツバサくんが俺に話しかける。
「しばらく一緒に過ごしてきて思ったんですが……ふうかさんは、プリンセスのことをどう思ってるんですか?」
「どうって……マスコット枠?」
「ぇ、ペット感覚でプリンセスの相手をしていたんですか!?」
「いやいや、そんな失礼なもんじゃないよ。ただ、まあ……この状態では恋愛対象にならんでしょ」
だって赤ちゃんだし。
「逆にツバサくんは、どう思ってんの?」
「僕は、プリンセスを生涯お守りするナイトとして生きる決意をしていますよ!」
「そういうことじゃなくってぇ……」
結局どっちも、守護りたいって気持ちが強いんじゃん。
俺たちの間に位置するエルちゃんは、急に不安げな顔をこちらに向けた。
「えるのこときらい?」
「いえいえいえ、そんなことはないですよ!? 大好きです!!」
「そうそう、好きは好きだよ」
涙目の彼女を大慌てでフォローするツバサくん。
俺も乗っかるけど、好きの意味は三人の間で微妙に違ってるのがスレ違いだねぇ。
しかし、重要な点が一個ある。
この子、プリキュアになれる影響で、俺らに近しい年齢にまで成長は出来るんだよな。
「エルさん状態なら……アリやな」
皇女なだけあって可愛いし、権力もあるし、養ってもらえそう……。
というゲスな考えを差し引いても、エルちゃんがこのまま成長すれば、きっと国を治めるに相応しい人柄に育つだろう。
そんな素敵な女性にきっとなるだろう子から慕われて、考えると俺たちって、すごく恵まれてるな。
改めて自分のラッキーな境遇に感謝していると、外を飛ぶ鳥たちがツバサくんの元へ、緊急事態を知らせるためにやってきた。
ソラシド市の結婚式場でキョーボーグが暴れている、という鳥たちの連絡を受けて、俺たちは急ぎ現場へ向かった。
式場の前には、ウエディングベルとリースが二重錬成されて生み出された怪物が陣取っている。
スキアヘッドの生み出すキョーボーグという種は、俺が変身するライダーと同じ、二種の力を混合させることで成り立っているため、ちょいと手強い。
今回も二つの特性を生かして、ベルの不協和音で俺たちの動きを止め、その隙にリースの触手でシバキ倒されている。
マジェスティ以外の面子が俺もろともに吹っ飛ばされ、残った彼女はスキアヘッドの操る「闇の檻」というべきものに囚われてしまった。
「油断大敵」
冷静に告げるスキアヘッド。
確かに、これだけ味方の数がいるならと、注意を
そのためエルさんが捕まったんだ、俺のバカ!
「プリンセス! 今助けます!」
マジェスティを捕らえた檻を壊そうとするキュアウイングだが、スキアヘッドにキョーボーグが邪魔に入って上手くいかない。
「くっ……どうすれば」
「ウイング、一緒に
「アレ……? あ、アレですね!」
キョーボーグの相手をスカイ、プリズム、バタフライに任せ、俺とウイングは再びの協力技で、マジェスティの救出に挑む。
「ひろがる!」
「ウイング!」
「「トルネードアタック!!」」
俺が起こした竜巻に乗ったウイングの特攻が、スキアヘッドの妨害を弾いて檻を破壊。
マジェスティはウイングに抱きかかえられたまま空を飛び、その横に俺も風に乗って並んだ。
「ありがとう、ツバサ、ふうか」
「当然です、
「俺も? まあ……それでいっか!」
俺とマジェスティ、ウイングは互いに手を繋いで、キョーボーグに急降下トリプルキックを見舞った。
怪物は転倒しもがいている。今がチャンスだ!
『プリキュア・マジェスティック・ハレーション!!』
マジェスティクルニクルンの力が解き放たれ、あれだけ手こずったキョーボーグは、呆気なく浄化されるのだった。
夕暮れの教会の前で、キュアマジェスティが俺とウイングの前にたたずんでいる。
彼女は、不安げに揺れる瞳を俺たちに向けた。
「二人とも、これからも私の側にいてくれる?」
「もちろんです。生涯お仕えしますとも」
「そう真剣に頼まれちゃ断れないね。俺でよければ、喜んでお供しましょう」
「ツバサ……ふうか……大好きよっ」
これ、将来決まっちゃった感じかな?