風の支配者 作:ベルト不使用
エルちゃんを国王夫妻に授けた一番星こそが、三百年前のスカイランドのプリンセス──エルレインさんだった。
彼女は亡くなる間際に自らを星へと変え、空からこの国を見守っていたという。
さらに生前に彼女が書き残していた本がマジェスティクルニクルンであり、ギガバハムとクロアナはアルケミスの力を後世に伝えるために書き加えていたのだ。
「私の役目はここで終わり……この世界の明日は、今日を生きる貴方たちの手に委ねます」
「……ありがとう、大きなプリンセス」
「さようなら、小さなプリンセス」
自らの残るすべての力をエルちゃんに
エルさんへと成長した現代のプリンセスが、毅然とした顔を向ける。
「みんな。彼女のためにも、アンダーグ帝国との決着は、なんとしてもつけましょう」
「ああ、出来れば和解って形でな」
敵が攻めてくるまで、しばしの猶予があった。
その間にこの国は、成長したエルさんのお披露目も兼ねてのクリスマス──この世界で言うところの
街はツバサくんの開発したミラーパッド・バリアで守られ、プリキュアにライダーもいるならと、みんな安心してお祭りに興じている。
俺たちもお城で、豪華な料理に舌鼓を打っていた。
「プレゼントの用意をしてなかったから、交換会ができないのが残念だね」
ひとしきり料理を
「平和になったら、また改めてやればいいんだよ、パーティー!」
まだ食事を続けていたあげはちゃんが、そう提案する。
エルさんは柔らかな笑みを浮かべ
「楽しみね。でも」
「?」
「プレゼントが無くても、今こうしてみんなと一緒に居られることが、なによりの最高のプレゼントだわ」
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
彼女の言う通り、大好きな人たちと共に過ごせる時間こそ、一番大切なんだよな。
スリクマスでつかの間の休息を楽しんで、数日後──スカイランドの外れの草原に、再びカイゼリンとスキアヘッドが姿を見せた。
彼女らは背後に、多数のランボーグを従えている。どうやら質より数の、物量作戦で仕掛けてくる様子。
「行きましょう、みなさん! これが最後の戦いです!」
ソラちゃんの勇ましい掛け声が響く。
『ひろがるチェンジ!』
「変身!」
ひろがるスカイ・プリキュアと仮面ライダーウインド、六人のヒーローがスカイランドに降り立った。
さあ、決着をつけるぞ。
ランボーグは群れを成してスカイランド内部へと入り込もうとし、今はバリアで防がれているが、放って置けばそれもいずれ破られる。
ウイングとバタフライが国の守りに回り、スカイ、プリズム、マジェスティはカイゼリンと対峙している。
「アンダーグエナジーの海よ! 私のすべてを捧げる!!」
膨大な闇の力を取り込んだカイゼリンは、モンスターのような姿へと
バトルを始めた四者を横目に、俺はスキアヘッドと向かい合っている。
「貴様との因縁も、ここで終わりにする」
スキアヘッドもまた、大量のアンダーグエナジーを呼び出した。
それをなんと、奴は媒介を使わず、自分自身に注ぎ込んだじゃないか。
カイゼリンと同じくモンスター化したスキアヘッド。
……どことなく、
「今度こそ消えろ」
凄まじいスピードでスキアヘッドが迫ってきた。
俺はケミーの力を借りて、組み合う力が拮抗する。
「スキアヘッド! あんたも過去のアルケミスみたいに、改心する余地はないのか!?」
モンスター化の恐ろしいまでの怪力を全力で押さえながら、俺はそう訴えかけるが……
「アルケミス? 奴は心が弱かった。それゆえに自らの存在に悩み、帝国を裏切ったのだ」
「それは違うぞ! 誰かを守ろうとする意志は、弱さじゃなく強さだ!!」
「私にも、愛するカイゼリン様をお守りする使命がある」
「……本当に?」
「なんだと?」
確たる根拠はないが、どうにもスキアヘッドの言葉に引っ掛かりを覚えた俺は、その疑問をそのままぶつける。
「あんた、本当にカイゼリンを愛してるの? ウソじゃなくて?」
「……なにが言いたい?」
「悪いんだけど、あんたの言う『愛』って言葉……スゲー白々しいんだわ」
ピクリ、と奴の眉が動く。お、図星だったか?
「俺にはずっと、好きになるような誰かがいなかった。愛的な意味でね。でも……プリキュアのみんなとの出会いで変わったよ。みんなが俺に、人を愛する気持ちを教えてくれたんだ」
だから、ゆえに、目の前の男の言葉には、俺の心は動かなかった。
「お前はカイゼリンを愛していない。自分のために利用しているだけだ。……彼女の記憶を書き換えたのも、お前だろう!?」
スキアヘッドが組み合う手を放して、大きく後退した。
感情を見せない平坦な声で、奴はとんでもない事実を明かす。
「その通り。そして三百年前、カイザー・アンダーグを亡きものにし、その罪をお前たちに被せたのも、この私だ」
「っ、このハゲーっ!!」
スキアヘッドの真意は分からんが、カイゼリンは長い間こいつの手のひらの上で転がされてただけってことかよ……。
俺は柄にもなく怒りを込めて、必殺のキック──ブラックバハムート・ビッグバンノヴァを放った。
竜巻に拘束され動けないスキアヘッドに向けて、俺は特攻する。
が、奴は
「なんだとぉー!?」
俺は全力でブレーキをかけ、カイゼリンを避けて軌道を外れ地面に激突する。
彼女は無事だった。
どうやらスカイらの方での説得が通じ、プリズムの技で元の状態に戻った無防備なところを、運悪くスキアヘッドが身代わりに利用したようだ。
「ぐ……っ」
ダメだ、無理矢理技の発動をキャンセルした影響で、体中に反動のダメージが酷い。起き上がれない。
「スキアヘッド、なにを……」
「……カイゼリン、もはや貴方は用無しだ。アンダーグエナジーを返してもらうぞ」
無慈悲にカイゼリンからエネルギーを奪い取るスキアヘッド。
その体色が闇のように沈んでいく。
「お、お前……何者なんだよ……!?」
「私こそ、アンダーグエナジーそのもの。この力を受けるに足る器を求めていたが……仕方ない、ひとまずお前を利用させてもらおうか」
スキアヘッドの体が闇と化し、闇は俺の体を取り巻く。
「ふうか!」
「お兄ちゃん!」
「ふうかさん!」
マジェスティにプリズム、スカイが駆けてくる。ウイングとバタフライの姿もあった。
彼女らを、俺の意識は肉体から離れたところから見ていた。
俺の体はどうも、スキアヘッドに乗っ取られてしまった様なのだ。
『ふむ……この体も、案外悪くないな』
闇に染まった仮面ライダーがつぶやく。
「ふうかを返してっ」
マジェスティらが闇のライダーに挑むが、敵──ダークウインドは、圧倒的な力でプリキュアを寄せ付けないでいる。
ヤベえよこれ、なんとかしなきゃ……って言っても、意識だけの俺には取れる手立てがない。
なんとか体に戻ろうとしてるんだが、すり抜けるばっかりだ。
四苦八苦しているところに、意識体のギガバハムとクロアナがやってくる。
お前らも、力を貸してくれ!
っと思ったが……違うな、この場合は逆だ。
『二人とも、俺の体から離れろ! 俺は……ライダーの力を捨てる!!』
スキアヘッドが俺の体を使っているのは、俺にアルケミスの力が宿っているから。
ならそれを放棄すれば、ただの人間に戻った俺は用無しで、スキアヘッドも力を失うはずだ。
本当にいいのか? というようなケミーの声が聞こえた気がする。
迷ってる暇はないよ。仲間がピンチなんだ。今も俺の体でみんなが痛めつけられている。
俺は強くうなずいた。もう二度と変身出来なくても、後悔はない。
『ぬっ……急に力が……』
ダークウインドの体からケミーの二枚の紙片が剥がれ、俺の意識が体に戻った。
同時にスキアヘッドの闇もまた、俺の体から取り除かれる。
「おのれ……ただの弱い人間のくせに」
悔しそうなスキアヘッド。
どんなもんじゃい、人間のあがきを舐めるなってんだ。
俺は怪我の痛みを押して、みんなにスキアヘッドの浄化を頼む。
『プリキュア・マジェスティック・ハレーション!!』
「すでに何度も見た技、私には通じない」
なんてぇこったい……スキアヘッドは過去に現れた風船爆弾ランボーグより、さらにさらに超巨大なヘビの姿へと変わり、ハレーションをはじき返してしまった。
スカイランド全土をおおい尽くすほどの敵──ダイジャーグが、世界を闇に飲み込もうと動き始める。
「そんな……こんなの、どうすれば」
「諦めないでよ、エルさん」
俺はボロボロの体を無理やり起こして、マジェスティに二枚の紙片を預けた。
それはギガバハムとクロアナの断片であり、マジェスティクルニクルンのページの一部。
「これで本当にお別れだ」
今までありがとう。
俺の言葉で、二体のケミーは自分たちが本来居るべき場所である、クルニクルンの中へと還っていった。
エルレインさんが託してくれた本が──今、本来の力を取り戻し、黄金に輝く。
「みんな、最後の決めは頼んだ」
俺はゆっくりと地面に腰を下ろし、空高く舞い上がる五人のプリキュアを見上げた。
黄金のページが開かれて、太陽のごとき
『プリキュア・アーク・ハレーション!!』
真のマジェスティクルニクルンの力によって、全てを閉ざそうとする悪のパワーは晴らされ、明日を照らす光へと錬成されるのだった。
その後。
本来の記憶を取り戻したカイゼリンは、エルさんと再び和解の道をとった。
スカイランドとアンダーグ帝国は敵対者ではなく協力者として、共に歩んでいくことに。
ソラちゃんはこれまでの頑張りを認められ、元々志望していた青の護衛隊に正式に入隊。
ツバサくんは、ヨヨおばあちゃんと同じ科学者の道を目指すという。
俺とましろ、あげはちゃんは、そろそろ休みが明けるためソラシド市に戻らなければならない。
みんな別れを惜しんだけど、移動用のゲートはいつでも開けるため、今生の別れってことにならないのが救いだ。
「ふうか、一日一度は会いに来てね」
プリンセスとしての職務に
俺も優しく握り返す。
「学校があるけど、なんとかしよう」
「夜は泊っていってね」
「パジャマはどうする?」
「おそろいのを用意しておくわ」
「わかった、楽しみにしとくよ」
「……なんかお兄ちゃん、エルちゃんに前以上に甘くなってない?」
俺の態度の軟化具合に、ましろが疑問の声を上げた。
「そりゃ、将来の奥さんになる相手にはね」
「ね~♪」
頬を寄せ合い、声を合わせる俺とエルさん。
ましろはちょっと複雑そうな顔を浮かべる。
「ツバサくんと三人で結婚するんだよね……本当に大丈夫なのかなぁ」
「大丈夫、大丈夫。俺たちなら、きっとなにもかも、全部うまくいくさ」
一陣の風が舞い、草原から乗ってきた花弁が、ヒラヒラとダンスするように踊った。
俺たちの門出を祝福するように、輝く青空へと、どこまでも、どこまでも──。
とりあえず最後まで書ききりましたが…急に気づきました。この作品は失敗だったと。
ちょっとダイジェスト展開が強すぎて、こりゃ物語じゃなかったですね。
また勉強し直して、リベンジ作品を書いて再挑戦したいと思います。
その時はまたお願いしますね。