「最近、先生がおかしい」 作:Raitoning storm
「…では、今日はこのあたりでいいですかね?」
「うん。今日もありがとね〜、アイ君」
対策委員会の一室、そこではシャーレ所属の藍方アイと委員長である小鳥遊ホシノがアビドス復興の今後の計画について話し合っていた。
対策委員会のあの一件の後、アビドス復興については今後アイが担当することになり、少しずつ店舗の誘致や行く宛のない生徒の転入などを進めている。
「いつもありがとね〜。おかげで復興も上手くいってるし〜。」
「復興が上手くいってるのは、これまでみなさんが頑張ってきたからですよ。僕はその手伝いをしてるだけですし」
「それでもねー、感謝の言葉くらいは素直に受け取って欲しいかな。」
「…じゃあ、素直に受け取っておきますね。」
そう言ってアイは、少し照れたような素ぶりを見せる。
(…ほんとにね、君くらい素直になれたらあのときも…)
「そろそろ僕も、お暇しようかな。」
「あれ、もう行っちゃうの?」
身支度を整えるアイに、ホシノが問いかける。
「シャーレの方が、少し忙しいらしくて。先生から『助けてー!!』ってメールが何個も届いてるし…」
アイはそう言って帰る用意を進めるが、
「…でも、外見てみなよ。」
「…え?」
外は、あいにくの天気だった。
雨は土砂降りで、少し遠くでは雷も鳴っているような様子も見られる。
「…まじか。」
「この天気だと、駅まで行くのは厳しいかもね。」
アイの顔が、絶望と焦りによって少しずつ青くなっていく。
「…どうしましょ。一応替えの服とかは持ってきてるんですけど…」
「校舎で寝泊まりっていうのもねー。」
もはや八方塞がりかと思われたこの状況、
だが、
「じ、じゃあさ。」
「?」
ホシノは何を思ったのか、
「うち、来る?」
最善とも最悪とも言えない、よくわからない選択肢をとってしまった。
ホシノside
小一時間後、ホシノ宅にて、
「…お邪魔します。」
「先シャワー浴びちゃって、その間に部屋片付けておくから…」
ホシノはあまり動揺した様子を見せず、アイは少し緊張しながら、玄関で用意をしていた。
「えっ、あっ、はい。すみません。入れていただいた身なのに…」
「ううん、提案したのはこっちだしさ。風邪ひかないうちに入っちゃって。」
「はい。」
アイは初めて女子の家に入ったことに内心ドキドキしながらも、ホシノはあまり緊張した様子を見せずに、自分たちでも驚きの手際の良さで自分たちの始末をつけていた。
だいたい5分くらいは経っただろうか。ホシノは少しずつ自分のやったことに対して客観的になってきた。
(…やっちゃった。やっちゃったよー!!なんでアイ君をお家に入れちゃったんだよー!!)
そして、ホシノは自身の行動に悶絶していた。
『わたしの家ならここからも近いし、そこまで濡れないと思うんだー。シャワーもあるから大丈夫だと思うんだけど…どうかな?』
『え?いいんですか?』
『うん。全然大丈夫だよ。このまま校舎に残りっぱなしっていうのもあれだし、行くならまだ雨が弱いうちに行っちゃいたいんだけど…』
『…それなら、お願いします。』
今一度自身の行動を振り返ってみても、疑問点しか上がってこない。
(おかしいって、おかしいってどう考えても!別にあのまま校舎で雨が上がるの待っててもよかったじゃん!アイ君もびっくりしてたし、うぅ…そういうことばっかりしてるとか思われてないかな…?)
(…そうだ。きっとわたしも急に降った雨に動揺して、家に帰ることしか頭に無かったんだ!そうだ、そうに違いない!でも、あれ?それってアイ君を家に入れる理由にはならなくない?いやいや!あれはアイ君に風邪をひいてほしくない思いが強くて…)
「ホシノさーん。上がりましたよ。」
「あ、うん!次わたし入るね!」
(うぅ…。とりあえず見られて困るものは無いよね。うん、無いはず。それより早く入らないと怪しまれちゃう!)
…そのときは、多分気が動転してて忘れていたのだろう。あの写真立てを倒しておくことを。
アイside
アイもまた、自らの行動に対して大きな後悔を抱いていた。
(…やってしまったかもしれない。とりあえず、先生にはそれとなく誤魔化しておいたけど…)
『気をつけてね。砂漠は天気の変動が大きいって聞くし、最近は治安もまた悪くなってきたから、何かあったらすぐ連絡して。』
(…まあ、こっちは大丈夫か。それよりもこの状況をどうにかしなければ。)
(…勢いに押し切られてしまった感はあるけど、来るのを決めたのは僕だしなー。初めて女子の家に入った気がする。)
今の状況を意識しないようにか、いつも以上に色んなことを考えてしまうアイ。だが、
(なんだあれ…写真?)
机の上に置いている写真立てに気づいてしまった。
(これは、昔のホシノさん?それに、このとなりの人は…誰?)
「…見ちゃったか」
「!」
後ろからの威圧感と、いきなり声をかけられたことによる驚きで思わず後ろを振り向いてしまう。
「その…ごめんなさい。」
「…謝らないで。怒ってるわけじゃないからさ。」
「…あの」
「とりあえず、話さないとわかんないよね。」
「…いいんですか?」
「…うん。きっと、いつかは話さないといけないことだと思うから…でもね、約束してほしいことがあるんだ。」
「…なんですか?」
「わたしの話を聞いても、わたしのこと、嫌いにならないでほしいんだ。それができないなら、話したくないかな。」
「…約束します。ホシノさんのこと、絶対に嫌いになりません。」
「…じゃあ、話すね。」
…それからホシノさんは、色んなことを話してくれた。
梔子ユメという先輩がいたこと、初めは二人で借金をなんとかしていたこと、辛かったけど二人で楽しくやっていたこと、
このときのホシノさんの顔は、まだ楽しそうだった。でも、その後、同じような顔を見せることはなかった。
ホシノさんは話し始めた。きっかけは些細なことだった。ユメ先輩と口論になってしまって、ポスターを破ってしまって、喧嘩別れをしてしまって、もう会うことはなかった。
「…これが、わたしの罪だよ。消えることのない、わたしの罪。」
「…」
「失望、しちゃったかな。ごめんね。こんな人間だとは思わなかったよね。さっきはあんなこと言ったけど、嫌いになったなら、わたしから離れてくれていいから、ね。」
失望していたわけじゃない。言葉が出てこなかったというのが正しい表現だろう。ホシノさんがこんな過去を抱えていて、苦しんでいたことを知らなかったことが、少しだけ、悔しかった。
「…失望なんて、しません。」
「…どうして?」
「だって、ホシノさんは苦しんでるから、悔やんでるから、自分のしたことに。そんな人を、放ってなんておけない。」
「…でも」
このときは、きっと、後の言葉を続けさせないために、やったのだと思う。
「え…」
気づけば僕は、ホシノさんを正面から抱きしめていた。
「…今なら、泣いても大丈夫ですよ。大切な人をなくすのは、悲しいですよね。」
「…ゔん。」
ホシノさんは、その後しばらく泣いていた。僕は背中をさすることしかできなかったけれど、少しでもホシノさんの苦しみを和らげることができたのならよかったと思う。
「いやー。見苦しいところ見せちゃったね。」
「そんなことないです。僕だって大切な人がいなくなってしまったら悲しくてたまらなくなってしまいますし…」
「…それでもね。少し気持ちの整理がついたかな。」
「…それならよかったです。」
ホシノさんは言ったとおり、少しすっきりしたような顔をしていた。
「…ね。もしよかったらなんだけどさ。」
「?何ですか?」
「今日、一緒に寝てくれない?アイ君と一緒なら、ぐっすり眠れる気がするんだ。」
「…いいですよ。一緒に寝ましょうか。」
もう一人じゃないから、寂しくないかもしれない。ね。
アイ君がいる本編見たい?
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別に…
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書いてくれたら嬉しい。
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そんなことよりハピエンの続きを書けよ。