「嫁魂~騒がしすぎる青春模様篇~」   作:時代に遅れている

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新作です

なかなか大変なのですが、出来たらもう一つの作品と同時に投稿したいと思います。

出来るだけ頻度はおとさないよう気をつけます。


第一講 第一印象はインパクト強く!!

侍の国。僕らの国がそう呼ばれたのは、今はもうはるか昔の話…。

、突如宇宙から舞い降りた天人(あまんと)の台頭と廃刀令により、侍は衰退の一途を辿っていった。

そして長い時を経て侍なんてもういなくなったはずの現代に、侍魂をもった男が一人、その名は坂田銀時。

甘党&無鉄砲なこの男が率いる万事部で、ひょんな事から入部する事になった僕、志村新八と神楽ちゃん。

銀さんたちと五つ子の青春を描いた物語の始まりです!

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新学期の始まりを告げる春の朝、澄んだ空気の中で、緊張感に包まれた声が竹林の中に響き渡る。

 

「へっ、もう逃げ場はねぇぜ!」

「観念しな!」

 

不良たちの声が威圧的に周囲にこだまする。

 

それに対し、銀髪の天然パーマの男――坂田銀時は木刀に手を掛け、鋭い眼光を向けながら、鼻で笑った。

 

「フッ、観念だって?……」

 

一瞬、辺りに静寂が広がる。不良たちは思わず息を呑み、その場に緊張が走る。しかし次の瞬間――

 

「冗談じゃねぇ!」

 

そう叫んだ銀時は、まるで弾丸のような速さで逃げ出した。

 

「おいっ、逃げやがった!あの銀髪野郎、振り返りもしねぇ!」

「追え、追うんだ!逃がすな!」

 

騒ぎ立てる不良たちを尻目に、銀時は必死に竹林を駆け抜ける。

 

「このネット社会真っ只中で、チャンバラなんて流行らねーっつーの!」

背後から迫る気配を感じながら、銀時は嘆くようにぼやいた。

 

その横を駆ける長髪の男――桂小太郎は、追いかけてくる不良たちに一瞥をくれ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「フッ……貴様らのような連中に、我々の時間を割く暇などない。アディオス!」

 

彼は懐から煙玉を取り出し、地面に叩きつけた。瞬く間に濃い煙が周囲を覆い尽くし、不良たちの視界を奪う。

 

「うおっ、煙だ!くそっ、見えねぇ!」

「ちっ、どこ行きやがった!」

 

混乱する不良たちを後目に、銀時と桂は竹林を抜け、学校への道を全力で駆け抜けていった。

 

「くっそ、アイツらのせいでジャンプの最新号が買えなかったじゃねぇか!」

不満げに愚痴をこぼしながら走る銀時。

 

「まったく……俺たちはもうあの道から手を洗ったというのに、不良どもめ……」

桂は眉をひそめ、嘆息しつつも走り続ける。

 

朝の空気を切り裂くように、銀髪の男と長髪の男が全力で廊下を駆け抜けている。

 

「ハァ……ハァ……おいヅラ、これヤベぇぞ!絶対間に合わねぇって!俺が今日遅刻したら、あいつがまた俺の反省ノートを壁に飾るって言ってたんだぞ!」

銀時は額の汗をぬぐいながら、少し焦った様子で桂に声を張り上げる。

 

桂は肩で息をしながらも、どこか誇らしげに言い返す。

「ヅラじゃない、桂だ!遅刻など、武士たるもの決して許される行為ではない!武士の誇りにかけて――」

 

「だから武士の話なんかしてる場合じゃねぇっての!お前のその武士道精神が俺の遅刻に拍車かけてんだよ!それに今回は学園もののストーリーなんだから武士道なんてものは捨てちまえよラーメンの汁と共にな!」

銀時は後ろを振り返りながら叫び、焦りで足元を何度もすべらせる。

 

「心配するな。私が策を講じる!」

桂は自信満々にそう言うと、懐から先ほどの煙玉の袋を取り出した。

 

銀時は眉間にしわを寄せ、怒り混じりの声で突っ込む。

「おいおい、またそれかよ!てか、そもそも煙玉でどうやって遅刻防げんだよ!?ただの誤魔化しじゃねーか!」

 

桂は袋をぎゅっと抱え直し、堂々と言い放つ。

「これはただの煙玉ではない!いざという時に備えた、私の戦略の一部だ!“備えあれば憂いなし”という言葉を知らないのか!」

 

「その備えが原因でこんな状況になってんだろうが!余計なもん持って走ってるからスピード落ちてんだよ!お前、武士道も荷物の軽量化って概念くらい勉強しとけよ!」

 

言い争いながらも二人は廊下を駆け抜ける。

教室到着、

教室の扉が視界に飛び込んできた瞬間、銀時は渾身の力を込めて扉を押し開けた。

 

「ハァ……ハァ……セーフ……セーフだよな?これ完全にセーフだろ?秒単位で言ったらギリッギリ大丈夫だよな?」

肩で息をしながら、銀時は教室内を見回す。だが、彼の視線の先にいたのは――

 

「よォ、銀時。それから……桂」

 

腕を組み、冷たく鋭い目線を向ける男――坂田銀八が立っていた。

 

「おいおいおい、担任がそんな顔で迎えるってどうなんですかね?……ほら、俺らだってギリギリ頑張ってきたわけですよ?褒めてもらってもいいんじゃないすか?」

銀時は苦笑いを浮かべ、片手をヒラヒラさせながら弁明を始めた。

 

銀八は無言のまま腕時計を指差し、一喝。

「アウトだァァァ!」

 

その声の鋭さに、銀時は肩を落とし、深いため息をつく。

「いやいやいや、秒単位ならセーフでしょ?俺の体感で確実に間に合ってたぞ?」

 

桂もまた真剣な表情で口を開く。

「ヅラじゃない桂だ。それに、武士として全力を尽くして間に合わなかったのであれば、それは仕方のないことだ!」

 

「仕方ねぇで済むか!お前ら、この遅刻常連コンビが!」

銀八は教壇からズカズカと歩み寄り、二人の頭を同時に叩く。

 

「いてっ!」

銀時が顔をしかめる横で、桂は淡々と語る。

「……頭を叩くというのは教育的指導において非効率的であり――」

 

「黙れ!」

銀八が容赦なくもう一度叩く。

 

「いや、まぁまぁ、先生も大変っすよね。俺らみたいな優秀な生徒相手だと、ストレス溜まりますよね?」

銀時は肩をすくめ、適当に話を合わせようとするが、銀八の厳しい視線を受けて口をつぐむ。

 

「お前ら、後で職員室に来い。反省ノートの再提出だ!」

 

銀時と桂はがっくりとうなだれながら、自分たちの席に向かった。

 

「……まったく、武士道の話をする暇があるなら、時間を守る訓練をしておけっての」

銀八のぼやきが静かな教室に響いた。

 

銀八先生の雷のごとき声に教室が一瞬静まり返る中、坂田銀時はため息をつきながら椅子に座り込んでいた。

桂小太郎も、いつもの落ち着いた表情のまま席に腰を下ろしながら呟いた。

 

「……武士としての遅刻は、もはや戦の敗北に等しい。だが、この敗北も糧となるだろう」

 

「いや、お前のその武士道が俺の敗北を巻き添えにしてんだよ!」

銀時は机に突っ伏しながら、横目で桂を睨む。

 

その時――教室の後ろ扉が勢いよく開け放たれた。

 

「おい、桂!遅刻にロン毛の件につき校則違反で拘束決定だからな!今すぐその髪の毛を切れ!」

土方十四郎が片手にマヨネーズを持ちながら、鋭い声で教室に踏み込んできた。

 

「土方殿……、それはただの嫉妬だろう?私の長髪が貴様の短髪よりも圧倒的に優れているからだな」

桂は淡々と返しつつ、胸を張る。

 

「はァ?お前の髪が良いなら、あのモジャモジャ頭はどうなんだよ!」

土方の指が銀時に向けられる。

 

銀時は机に突っ伏したまま、片手だけをひらひらと振り上げた。

「いやいやいや……俺のは天然記念物だから校則適用外なの。お前も文句つける暇あったら、自分のV字頭どうにかしろよ禿げるよぉ〜」

 

「誰が禿げるだコラァ!」

 

怒りを爆発させる土方だったが、その瞬間、教壇から再び銀八先生の声が響き渡った。

 

「はいそこ、騒ぐな。どうでもいいことで時間を無駄にするな!お前らみたいなのがいると、クラス全体が遅れてまた給料が減額されるじゃねぇか!」

 

その場が静まり返る中、銀八先生は腕を組み直して鋭い目線を生徒全体に投げかけた。

「ほら、もう始業式の時間だ。Z組の生徒は全員体育館に移動!さっさと廊下に整列しろ!」

体育館に到着したZ組は、指定された列に並ぶように指示を受けた。しかし、再び秩序は崩壊しつつあった。

 

「おい、もっと前詰めろよ!」

「そこは俺の場所だって!」

 

銀時は列の後方で一人、ぼんやりと体育館の天井を見上げながら呟いた。

「……体育館って、いつも埃っぽいよなぁ。掃除ぐらいちゃんとしとけっての」

 

桂はそんな銀時の横で腕を組み、真剣な表情で壇上を見つめている。

「いよいよ始業式か……我々も新たな戦いに備えなければならないな」

 

「お前の“戦い”がなんのことか知らねぇけど、とりあえず黙っとけ。校長のつまんねぇ話が始まっちまうぞ」

 

「……校長の話もまた、教訓を得るための大切な時間だ」

 

「いやいや、アレはただの睡眠時間だろ」

 

そんな二人のやり取りを余所に、壇上には司会のじいが立ち、マイクを手にしている。彼の老齢の体には少し大きすぎるスーツが身にまとわれており、ネクタイは若干曲がっていた。

 

「これより、銀舞学園高等部の始業式を始めます」

じいがマイクを通して声を響かせると、会場のざわめきが少しだけ収まる。

 

「まずは校長のお言葉です。ハタ校長、どうぞ」

 

じいが手で壇上の脇を示すと、そこから悠然と現れたのは、特徴的なタヌキ顔をしたハタ校長だった。青いスーツに身を包み、どこか偉そうな態度で壇上の中央へ進む。

 

「フフン……皆よ元気にしておったか?余はハタ校長じゃ」

 

開口一番から、彼の言葉が体育館内に響く。その瞬間、会場中の生徒たちが一斉に顔をしかめた。

 

「出た……バカ校長」

銀時は列の端でぼそりと呟き、桂も軽く肩をすくめる。

 

「彼の発言には学びの要素が皆無だからな。まあ、何を言われても驚きはしないが……」

桂の冷静なコメントに、銀時は苦笑いを浮かべながら小声で返す。

「いやいや、問題は内容じゃねーだろ。あの声だよ。朝っぱらから聞くには不快指数高すぎんだろ」

 

壇上のハタ校長は、生徒たちのささやきなど気にも留めず、堂々と話し続けていた。

「新学期を迎えたお前たちには、全力で学問に励んでもらいたい」

 

一見まともなことを言っているように思えるが、妙に尊大な態度が鼻につくのか、会場内の反応は冷ややかだった。

 

「まず、この学園の規律を守ることが大事じゃ。特に髪型だ!」

ハタ校長は声を張り上げ、生徒たちを睨みつけるように見回した。

 

「おいおい……髪型規律って、お前が言うかよ」

銀時は自分の頭を指さしながら呆れた声を漏らす。

 

桂も眉をひそめて小声で応じた。

「彼の髪型こそ規律違反だろう……玉のない棒なんかを頭につけおって」

 

「これでバカ校長のお言葉は終了します!」

じいが強引にマイクを奪い、会場に響く笑い声を遮った。

 

「あー、もう、長いだけで中身がない……」

銀時は頭を抱えながらぼやき、桂も無言で首を振った。

 

転校生の紹介

じいが次の段取りを進めるためにマイクを握ると、生徒たちのざわつきが再び戻ってきた。

 

「次は、転校生の紹介です。では、前にどうぞ」

 

その声とともに、壇上に現れたのは五人の女子生徒だった。彼女たちは一列に並び、観客の前で整然と立つ。体育館内の男子生徒たちは、その瞬間に一斉に色めき立った。

 

「おおっ……!」

「まじかよ、全員かわいいじゃねーか!」

 

生徒たちの興奮をよそに、転校生たちは順番に自己紹介を始めた。

 

「長女の一花です。よろしくね~」

一花は柔らかい笑顔で手を振り、男子生徒たちを虜にした。

 

「次は二女の二乃さん」

「二乃です。よろしく」

一花とは対照的に冷たい口調だが、その態度がまた男子生徒たちには刺激的だったらしい。

 

「三女の三玖さん」

「よ、よろしくお願いします……」

弱々しい声で俯きがちな三玖。しかし、その控えめな仕草がさらに男子生徒たちの心を掴んでいく。

 

「四女の四葉さん」

「はーい!皆さん、よろしくお願いします!」

四葉は元気いっぱいに挨拶をし、体育館の雰囲気を一瞬で明るくした。

 

「最後は五女の五月さん」

「五月です。よろしくお願いします!」

五人の中で最も真面目そうな声色で挨拶をする五月。その凛とした姿に、会場の視線が釘付けになった。

 

五人の挨拶が終わると、体育館内はしばしの沈黙に包まれた。そして次の瞬間――

 

『ほんとに五つ子か?』

 

その疑問が、生徒たち全員の脳内で同時に浮かんだ。顔立ちは似ているが、それぞれの個性が強すぎたのだ。

 

壇上ではじいが再びマイクを握り、まとめの言葉を述べた。

「以上で転校生の紹介を終わります。それぞれ別々のクラスに割り振られていますが、仲良くしてやってください」

 

五人の転校生が壇上を降りると、会場内は再びざわつきを取り戻した。

 

銀時たちのリアクション

「おいおい……五つ子ってマジかよ。なんか性格も声もバラバラじゃねーか」

銀時は後ろの列から首を伸ばし、転校生たちの後ろ姿を見送った。

 

「彼女たちのように多様性に富んだ家族は稀だな……だが、それぞれの個性が際立っている点は素晴らしい」

桂は腕を組み、どこか感心した様子で呟く。

 

「で、どの子が好みだ?」

銀時が悪戯っぽく笑いながら桂に尋ねると、桂は即座に眉をひそめた。

 

「そういう低俗な発言は控えろ、銀時。彼女たちを尊重しろ」

 

「いやいやいや、お前だってどっかでそう思ってんだろ?赤い色長髪の美人とか好きなんじゃねぇの?だってあいつあの時出会った人妻にそっくりな感じだったし……」

 

「フン、貴様こそ、真面目そうな子をからかって楽しむだろう」

 

そんな二人のやり取りを背に、土方と沖田は

 

「へぇ〜転校生とはまた面白そうな奴がやってきましたね」

 

沖田の声はどこか含みを持って響き渡る。彼の視線が止まったのは、

 

「土方さんは誰が良さそうでしたぁ?俺ぁ次女とか堕としがいがあって……」

 

悪びれた様子もなく笑う沖田の隣で、土方十四郎は黙り込んでいた。机に肘をつき、顎を手で支えながら、彼の目は虚空を見つめている。

 

だが、その顔はわずかに引きつり、口元には小さな笑みが浮かんでいる。それは普段の土方からは考えられないほどの表情だった。

 

(あの転校生たち………いやいや、五つ子全員……)

 

土方の心の中には、複雑な感情が渦巻いていた。そして、頭の中で声にならない叫びが響き渡る。

 

『俺の好きなマガジンとクロスオーバーしてるゥゥゥゥゥゥ!!』

 

彼の心の奥底には、幼い時から読み続けてきた「週刊少年マガジン」の影響がまだ残ってあり。美少女ヒロインたちが登場する恋愛漫画に、土方は密かに憧れを抱いていたのだ。

 

『確かに上杉の野郎が俺たちと入学してきた時から可能性に期待していたが……まさかこんな形で来るとは思わなかった……マジか!!』

 

その考えに没頭していた土方の顔は、自然と微妙なニヤつきを見せ始めていた。

 

「……土方さぁぁん?」

 

沖田の声が突然耳に飛び込んできた。土方はハッと我に返り、慌てて姿勢を正す。

 

「な、なんだ?」

 

だが、沖田はそんな土方の様子をじっと見つめていた。その目は疑いの色を含んでいる。

 

「なんか顔がムカつくんで吹き飛ばして良いですかい?」

 

「なんでだよ!!」

 

土方は思わず声を荒げたが、沖田はまるで気にする様子もなく、にやりと笑っている。

 

「いやいや、土方さん……今ちょっとニヤついてたじゃないですかぁ。俺が見逃すと思ったんですか?」

 

沖田の挑発に、土方は思わず額に手を当ててため息をついた。

 

「お前、俺が何考えてたかなんてどうでもいいだろ。」

 

「ん〜、でも俺には分かるんですよねぇ、どうせマガジンのラブコメとコラボしたことが嬉しすぎていやらしい想像でもしてたんじゃねぇですかい?」

 

「やめろ、適当に話を盛るな!」

 

体育館ではじいの締めの言葉が響き渡っていた。

 

「これにて始業式を終了します。各クラスごとに移動を開始してください!」

 

体育館からの移動が始まると、生徒たちは再び慌ただしくなった。銀時と桂も、ぞろぞろと廊下へ向かう人の流れに巻き込まれる。

 

「ふぅ……始業式って毎回思うけど、ホント時間の無駄だよな」

銀時が大きなあくびをしながら言うと、桂は冷静に返した。

 

「無駄ではない。新たな環境での第一歩としての意義がある」

 

「お前の第一歩がどんだけ硬いんだよ。そりゃ靴の底抜けるわ」

 

そんな軽口を叩き合いながら、二人はクラスの列に戻っていった。

 

昼休み。銀魂学園の食堂は、毎日のように大勢の生徒たちで溢れかえっている。あちこちから聞こえる笑い声やざわめきが、昼時特有の活気を感じさせた。その中を、一人の男子生徒が無造作な足取りで注文カウンターへ向かう。

 

彼の名は上杉風太郎。この物語のもう一人の主人公だ。食堂に足を踏み入れた彼の表情は相変わらず硬く、いつものように注文はすでに心の中で決まっていた。

 

「焼肉定食、焼肉抜きで!」

 

静まり返る一瞬。彼の声が響き渡ると同時に、近くで注文を待っていた生徒たちは思わず顔を見合わせた。

 

「焼肉定食……焼肉抜き?」

「それって、ただの白飯じゃねぇか!」

「何だよそれ、節約術か?」

 

カウンターの職員も一瞬動きを止めたが、何度もこの注文を聞いているのか慣れた手つきでレジを打つ。そして、上杉にいつも通りの白飯を差し出した。

 

上杉はお礼も言わずにお盆を受け取ると、あたりを見渡しながら席を探す。彼にとって、この「焼肉抜き定食」は単なる白飯ではない。ご飯一杯を単品で頼むよりも、焼肉抜きの定食を頼む方が安いと知っているからだ。彼はその合理性に従っただけだった。

 

「さてと……」

無表情のまま、空いている席を目指して歩き出す。その時だった。

 

銀時と土方の言い争い

「おい!何だそのイヌの餌は! 家で食う分には構わねぇけど、そんなモンを公共の場で見せるなよ!」

 

声の主は坂田銀時だった。彼はあんこを山盛りにした器を手に、対面に座る土方十四郎のトレイを指さしている。

 

「黙れ!てめぇのそのネコの餌みたいなあんこよりは、俺のマヨライスの方がよっぽどマシだろうが!」

 

「マヨライス?バカかお前、それを言うならマヨネーズそのものが食い物じゃねぇ!ただの調味料だろ!」

 

「はぁ!?じゃあお前のあんこはなんなんだよ!砂糖の塊が『和の心』とか抜かしてんじゃねぇぞ!」

 

食堂の片隅で繰り広げられる二人の罵倒合戦。周囲の生徒たちは慣れた様子でその様子を見ていたが、席を探していた上杉は眉間にしわを寄せ、ぼそりと呟いた。

 

「……相変わらずヤバいもん食ってんな。どっちも病院送りだろ」

 

軽くため息をつき、彼は無言で空いているテーブルにお盆を置こうとする。だが、その瞬間――。

 

カツン、と別のお盆が同時に置かれる音。上杉が顔を上げると、そこには転校生の一人、中野五月が立っていた。

 

「……あの!」

 

五月は真剣な表情で上杉を見つめ、少し声を張る。

 

「私の方が先でした。隣の席に移ってください」

 

上杉は彼女を一瞥すると、呆れたように片眉を上げた。

「は?ここは空いてたんだ。早い者勝ちだろ?」

 

しかし、五月も引き下がらない。負けじとまっすぐ彼を見つめ、言い返した。

「早い者勝ちなら、私の方が早かったです!」

 

お互いに一歩も譲らない中、上杉はため息をつき、仕方なくトレイをずらした。

 

「……分かったよ。どうぞお好きに」

 

「ありがとうございます」

五月は丁寧にお礼を述べると、すぐにトレイを整えて食べ始めた。

 

だが、上杉はそのトレイの中身に思わず目を見張った。ご飯、麺類、揚げ物、デザートと、一人分とは思えないほどの量が所狭しと並んでいる。

 

「……お前、それ全部一人で食うのか?」

 

五月は顔を上げることなく、きっぱりと答えた。

「ええ、そうですけど?」

 

上杉は肩をすくめ、小さく鼻で笑う。

「……すげぇな」

 

彼はもう何も言わず、トレイの白飯に目を戻した。

 

勉強への問いかけ

しばらく無言が続く中、五月がふと上杉のトレイに目をやると、彼が取り出したテスト用紙に気づく。食事中にもかかわらず、彼は鉛筆を走らせている。

 

「行儀が悪いですよ、食事中に」

 

彼女の指摘に、上杉は顔を上げることなくつぶやく。

「テストの復習してんだ。ほっといてくれ」

 

五月は興味を引かれたのか、さらに追及する。

「テストって……何点だったんですか?」

 

その言葉を無視して勉強を続ける上杉。だが、次の瞬間、五月が素早く紙を引ったくった。

 

「あっ、おい!勝手に見るな!」

 

慌てて紙を取り戻そうとする上杉。しかし、五月はその隙に目を走らせ、声を漏らした。

 

「……ひゃ、100点……?」

 

五月は一瞬目を丸くし、続けて少し赤くなった顔で彼を見上げる。

 

「わ、わざと見せましたね!」

 

「何のことだか」

上杉は肩をすくめ、テスト用紙を奪い返すと再び集中を戻す。

 

五月はその様子をじっと見つめ、小さくため息をついた。

「……羨ましいです。私、勉強はあまり得意じゃないので」

 

そう呟いた後、彼女は少し明るい声で言葉を続けた。

「あ、良いこと思いつきました!折角こうして相席になったんですし、私に勉強を教えてくださいよ!」

 

「断る」

 

即答する上杉。彼は立ち上がり、冷たく言い放った。

「ごちそうさまでした」

 

「ええっ!?」

 

彼女の驚く声を背に、上杉はその場を離れる。だが、その足を一瞬止めたのは、五月の声だった。

 

「ご飯、それだけでいいんですか?私の分を少し分けましょうか?」

 

上杉は振り返ることなく言い返す。

「むしろあんたが食べ過ぎなんだよ。太るぞ」

 

その無神経な一言に、五月は頬を膨らませた。

 

「な、何なんですかあの人は!」

 

怒りを込めた彼女の声は、すでに遠くなった上杉には届かなかった。

 

食堂から離れた人気のない廊下で、上杉はポケットからスマートフォンを取り出す。

「もしもし……」

 

電話の向こうから返ってきたのは、低く落ち着いた男性の声だった。

 

『はじめまして。君が上杉風太郎だね?』

 

『私は君の父親と少し付き合いがあってね。彼から君を紹介されたんだ。どうやら君は学年一位を取り続けているらしいじゃないか』

 

「ええ、まあ」

風太郎は相手に対し、少し緊張しながらも素っ気ない返事をする。

 

『実を言うと、君に家庭教師の依頼をしたいと思っている。私の娘たちを教えてほしい』

 

「家庭教師……ですか?」

 

彼の眉間にしわが寄る。相手の提案は突拍子もないものではなかったが、予想外だったことに変わりはない。

 

『ああ。君の実力を信じてのことだ。報酬は通常の五倍を用意する。それに、アットホームで楽しい職場環境だと思ってくれ』

 

最後の条件に、風太郎の目が僅かに見開かれた。学業を続けながらアルバイトをするという選択肢には常に興味があったが、そんな高額な条件を提示されるとは思ってもいなかった。

 

「……分かりました。その依頼、引き受けます」

 

即答した風太郎の声には、少しだけ自信の色が混じっていた。

 

『よし、話が早い。さっそく娘たちを紹介したいところだが……少しだけ注意しておきたいことがある」

 

「注意?」

 

男性は頷き、慎重な口調で続けた。

「うちの娘たちは、少しばかり手がかかる。特に学業に関しては、全員が学年最下位レベルの成績なんだ」

 

「……全員?」

 

「そう。彼女たちは五つ子でね、それぞれ個性が強い。だから学ぶペースも全く異なるんだ」

 

「五つ子……」

 

風太郎は言葉を失った。昨日の食堂で怒らせた女子がいたことに気がついたからだ。風太郎は昨日の五月の顔を思い出していた。彼女の真剣な表情、そして大食いの姿――。

 

「五人……。一人だけでも面倒そうだったのに、五人を相手にするなんて……」

 

小さく呟いた言葉を男性が聞き取ることはなかったが、風太郎の頭には早くも不安が過ぎっていた。

ーーーーーーーーーーー

 

通話が終わった後。教室の隅にある窓際の席。放課後の柔らかな日差しが差し込む中、桂小太郎は腕を組み、険しい表情を浮かべながら、目の前の上杉風太郎を見下ろしていた。

 

「……承諾したのはいいものの」

 

桂は一呼吸置いて、ゆっくりとため息をついた。

 

「相手が、昨日から嫌われている女の子だったと」

 

「す、すまん……」

 

上杉は申し訳なさそうに目をそらし、眉間にしわを寄せる。その表情には、ほんの少しだけ困惑と焦りが滲んでいた。

 

「こういうこと相談できる相手が、お前くらいしかいなくてな……」

 

桂は眉をひそめ、しばらくの間じっと考え込む。やがて、隣に立つ無言の相棒――エリザベスに視線を向けると、鋭い口調で尋ねた。

 

「エリザベス、お前はどう思う?」

 

エリザベスは一瞬黙った後、無言でバッグの中からスケッチブックとペンを取り出した。カリカリと勢いよくペンを走らせる音が響く。

 

しばらくして、エリザベスは大きな文字が書かれたボードを掲げた。そこには力強い太字でこう書かれていた。

 

『お前が女を悲しませたなら責任ぐらい自分で取れ!!』

 

そのメッセージを見た桂は、しばらくの間無言でボードを凝視していたが、やがて深く頷いた。

 

「……だ。そうだ」

 

短く言い放つと、桂は再び上杉に視線を戻す。その目にはどこか使命感のような光が宿っていた。

 

「だが、どうするつもりだ?」

 

「俺が悪いのは分かってる……でも、何か方法はないか?」

 

上杉は肩を落とし、弱々しい声で助けを求める。桂の冷静な態度とは対照的に、その姿には焦燥感が滲んでいた。

 

桂のひらめき

桂はしばらくの間腕を組み、考え込むように視線を床に落とす。そして、突然その顔が輝いた。

 

「うーむ……確かに私は放課後、学級委員としてやるべき仕事がある。だが……ハッ!」

 

桂は何かを思いついたように拳を強く打ち付け、勢いよく顔を上げた。その表情には確信めいた自信が浮かんでいる。

 

「いるぞ!お前の悩みを解決できる奴が!」

 

「本当か!」

 

上杉の顔に希望の色が差し込む。その声には、助けを得られるかもしれないという期待が滲んでいた。

 

「ああ、確かにいる!この学園に悩みを解決するスペシャリストが!」

 

桂は力強く言い切ると、誇らしげに胸を張り、意気揚々と歩き出した。

 

「桂、そいつは一体誰なんだ?」

 

上杉は急いでその背中を追いかけながら尋ねるが、桂は笑みを浮かべたまま、振り返ることなく答える。

 

「案ずるな、上杉よ!その答えは、私が連れていった先で明らかになる!ついてこい!」

 

桂の言葉に少し不安を覚えながらも、上杉はその背中を追わざるを得なかった。

 

「……頼むから、まともな人間であってくれよ」

 

小さく呟きながら、上杉は歩みを進めた。果たして、桂が導く先にいる「解決できる奴」とは一体何者なのか――

坂田銀時は学校の片隅に設置された古びた自動販売機の前で頭を抱えていた。手に握るのは、罰ゲームの末に購入する羽目になった「抹茶ソーダ」。その奇妙な飲み物を前に、銀時は自分の運のなさを嘆いていた。

 

「……めんどくせぇ、何で俺は賭けにこんな弱いんだ?」

 

独り言のようにぼやきながら、小銭を自販機に投入し、「抹茶ソーダ」のボタンを押す。だが、次の瞬間――

 

「売り切れ」の文字が無情にも点滅した。

 

銀時は肩を落とし、目の前の自販機を見上げるようにして大げさに叫ぶ。

「それに何だよ抹茶ソーダって?抹茶をソーダで割ったってか!?割り切れねぇよ!そんなんじゃ抹茶も俺の気持ちも割り切れねぇよ!」

 

自販機に向かって愚痴を垂れ流し、誰もいないのを良いことに大声で文句を言いながら絶望する銀時。肩を落とし、ついに地面を見つめ始めたその時だった。

 

「……ねぇ」

 

控えめながらもしっかりとした声が、銀時の背後から響いた。

 

銀時は思わず飛び上がるほど驚き、勢いよく振り返る。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛………………はい?」

 

突然の声に大げさに反応した銀時の目の前には、ヘッドホンをした少女が立っていた。彼女は一歩も引くことなく、まっすぐに銀時を見て言う。

 

「……どいてほしい」

 

彼女の言葉は控えめだが、その意思ははっきりしていた。自販機を塞いでいる銀時に、場所を譲るよう促しているのだ。

 

「あ…………はい、すんません」

 

彼女の声に押され、銀時は慌てて自販機の前から退いた。彼はその声と雰囲気に、どこかで見たような気がする感覚を覚えていた。

 

「………あれ?こいつ?………始業式で紹介されてた、五つ子の転校生か……」

 

心の中でぼんやりと思い出しながら、彼女の動きを観察する。少女は自販機のボタンを押そうとしたが、手がピタリと止まる。その理由を銀時はすぐに察した。

 

「………ん、売切?」

 

銀時は少女の指先の先に目をやる。そこには「抹茶ソーダ」の文字と「売り切れ」の表示が光っていた。

 

「…………ありゃりゃ……」

 

銀時は、その「抹茶ソーダ」を買ったのが自分だという事実に気づき、心の中で少し戸惑う。

 

少女はじっと自販機のボタンを見つめていたが、次第にその顔が哀しげな表情に変わっていく。

 

「………………」

 

銀時は彼女の表情を見て、しばしの間悩むような沈黙を挟む。だが、すぐに手に持っている抹茶ソーダを見つめ、軽く息をつく。

 

「…………ほら」

 

彼は無言のまま、少女に抹茶ソーダを差し出した。

 

少女はその行動に驚き、目を丸くする。

 

「え?」

 

突然差し出された抹茶ソーダを見て、戸惑った様子で銀時に問いかける。

 

「最後の一本。こいつが欲しいんだろ?やるよ」

 

銀時はぶっきらぼうに言いながらも、抹茶ソーダを少女に差し出す手を引っ込めようとはしない。

 

「…………でも」

 

少女は遠慮がちに、控えめな声で答える。その小さな声に、銀時は少しだけ笑みを浮かべた。

 

「俺ぁ、同じクラスのドS野郎との賭けに負けて買っただけで飲むつもりなんてサラサラねぇんだよ。とはいえ捨てるの勿体無ねぇし、どうしようか考えてたら、ちょうどテメェが欲しがってたからな」

 

銀時は軽い口調で事情を説明しながら、少女を促す。

 

「…………いいの?」

 

少女はまだ少し躊躇しながらも、確認するように銀時を見上げる。

 

「さっきから良いって言ってんだろうが!!イヤホンの聞きすぎで耳もおばあちゃんになってるんですか?コノヤロー」

 

銀時は少し怒ったような調子で答える。その言葉を聞いて、少女ははっとして小さく頷くと、そっと銀時の手から抹茶ソーダを受け取った。

 

「……あ」

 

彼女はしばらく抹茶ソーダを見つめた後、お礼としてお金を渡そうとする。

 

「だ、だったらせめて、お金……」

 

少女は財布を取り出し、抹茶ソーダ分の料金を渡そうとするが、銀時はそれを手で制した。

 

「いらんねぇよ。俺も罰ゲームを回避できたんでそいつでチャラだ。」

 

銀時のあっさりとした断りに、少女は少しだけ戸惑いながらも、静かに引き下がる。

 

「………う、うん」

 

彼女は抹茶ソーダを抱えたまま、素直にお礼を言った。

 

「じゃあ、せめてなにかお礼」

 

まだ何か礼をしたいと思ったのか、少女は再び申し出る。銀時はその言葉に対し、自分のポケットから名刺を取り出して差し出した。

 

「じゃあ困った時はここに来い。」

 

「万事屋部?」

 

名刺を見て、少女は首をかしげる。その様子を見た銀時は、軽い調子で答えた。

 

「ああ、俺は部活で何でも屋をやってんだよ。金稼ぎもかねてな、依頼は何でも受け付ける。その代わり次回来る時は値段を倍にして請求するからな」

 

銀時の説明に、少女はどこか納得したように小さく頷き、もう一度お礼を述べる。

 

「そう………ありがとう」

 

銀時から名刺を受け取った少女は、それをじっと見つめたまま、静かに歩き出そうとした。その瞬間――イヤホンから微かな音漏れが聞こえてくる。

 

「おいおい何やってんだよお前、歴史番組の音漏れ出てるよ〜」

 

銀時が軽い口調で指摘すると、少女の動きがピタリと止まった。そして、驚くほどの速さでイヤホンを外し、スマホをポケットにしまう。

 

「速っ!?」

 

その俊敏な動きに思わず声を漏らす銀時。

 

スマホを握りしめた少女は、今度は銀時を鋭い目つきで睨みつけた。その目にはどこか緊張感が漂っている。

 

「……………聞こえた?」

 

少女の冷たい声が静かに響く。

 

「…………あぁ聞こえた」

 

銀時は正直に答えるが、特に動じた様子はない。

 

少女は顔を真っ赤にしながらスマホをしまい込み、両手で顔を覆った。そして、小声で懇願するように言った。

 

「…………だ…誰にも言わないで……」

 

銀時は彼女の様子を見つめ、少しだけ興味を引かれたような表情を浮かべた。

 

「お前………戦国武将、好きなのか………?」

 

その質問に、少女は一瞬戸惑ったように目を伏せたが、意を決したように静かに答えた。

 

「…………そう、『武田菱』と『風林火山』」

 

彼女の声は小さいが、どこか確信めいている。

 

銀時はその答えに頷き、特に笑うでも驚くでもなく、柔らかい声で続けた。

 

「………なるほどな。いいじゃんね。どんなこときっかけで好きになったんだよ」

 

その問いに、少女は少しだけ恥ずかしそうに言葉を繋げる。

 

「きっかけは四葉から……妹から借りたゲーム……野心溢れる武将達に惹かれて………たくさん本も読んだ………でも、クラスのみんなが好きな人はイケメン俳優や美人のモデル………それに比べて私は髭のおじさん………………変だよ」

 

最後の言葉に力なく笑った彼女の目には、少しだけ自分を卑下するような影が見えた。

 

銀時は少しだけ眉を上げて、あっけらかんとした調子で返す。

 

「そうか?」

 

その言葉に、少女は驚いたように顔を上げた。

 

「…………え?」

 

予想外の返答に戸惑う少女を気にせず、銀時は続ける。

 

「……別にいいだろ?人とちょっと変わったもん好きになったってさぁ。誰かに迷惑かけてんのか?かけてねーなら胸張っときゃいいんだよ。

 自分の好きなもんを好きだって言うのに、なんでそんなにビビってんだよ?笑われるのが怖い?からかわれるのが嫌?変わってるって思われんのが恥ずかしい?……くだらねーな。そんなもん気にするくらいなら、鼻でもほじって寝てた方がマシだろ。

 

 笑ってくる奴なんざ、ただの雑魚だろ?逆にそいつらのセンスのなさに大笑いしてやりゃいいんだよ。それでもしよ、お前の好きなもんに興味持ってくれる奴がいたら、その時は思いっきり教えてやりゃいい。むしろそいつの好きなもんにも興味持ってやるくらいの器を見せとけよ。それが"大人"ってやつだ。……俺は全然大人じゃねーけどな。

 

 どんな趣味だろうが、何が好きだろうが、そんなん人それぞれ違うに決まってんだろうが。誰が何言おうが、お前が好きだって気持ちは、そいつらの意見よりよっぽど価値あるだろ。自信なんて後から勝手についてくるんだよ。好きなもんを好きでい続けりゃ、それだけで十分だろ。

 

 結局な、今のお前を信じられるのは、友達でも家族でもねぇ……お前自身だけだ。」

 

心に残った言葉

少女は銀時の話を黙って聞いていた。その瞳には、どこか迷いと驚き、そしてわずかな希望が映り込んでいる。

 

その時、学校中に響き渡るチャイムが鳴り、銀時は思わずハッとした。

 

「あっヤベ!次の授業だ。またな」

 

そう言い残し、銀時は慌ただしくその場を立ち去った。

 

少女はその背中を見送りながら、手の中の抹茶ソーダを見つめる。そして、ぽつりと呟いた。

 

「………二度目だ。……初対面で………私の事を……否定しなかった人」

 

彼女の目に、ほんの少しだけ強さが宿る。そして銀時からもらった名刺を取り出し、じっと見つめた。

 

「放課後行ってみようかな?」

 

何かを決意したような表情を浮かべると、彼女はゆっくりと歩き出した――。

 

 




次回 家庭教師は信頼関係を大事にしろ!!
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