「嫁魂~騒がしすぎる青春模様篇~」   作:時代に遅れている

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遅れましたが、明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
この作品が遅れたのは……別の作品を進めたかったからでございます。


第十一講 フラグ回収は意外と早い

お登勢が銀時たちを見回しながら、軽く笑みを浮かべてグラスを磨いていた。

「へぇー、あの子の姉妹の中に女優がいるなんてねぇ~。まったく、子供ってのは何考えてんのか分からないもんだよ。」

 

新八が苦笑いを浮かべながら答える。

「ハハハ……確かに、姉妹の中でも結構反響があったらしいですからね」

 

お登勢は磨いていたグラスを置いて、ふっと軽く煙草をふかした。

「なら……その子となら、あの子も仲良くなれるかもしれないねぇ……。」

 

神楽が目を輝かせて、カウンターに身を乗り出した。

「何アルかババァ!知り合いに女優でもいるっていうアルか!?……まさか」

 

お登勢はニヤリと笑いながら、神楽を真っ直ぐ見つめた。

「そのまさかだよ。」

 

新八が驚きの声を上げる。

「ま、まさかキャサリンさん……?」

 

その言葉に銀時が吹き出す。

「おいおい、新八、それはねぇよ。いくら猫耳ステータスがあるからって、あんなおっさん顔した女のどこが拾うってんだよ。」

 

銀時はグラスを片手に、くるくると回しながら呆れた様子で続ける。

「俺ならオファー出す前に可燃ゴミと一緒にくるんで、GOTO HELLさせるよ~、マジで。」

 

その瞬間、奥の席からガタガタと椅子を蹴り倒す音が響いた。

「おい、テメェ!!」

 

怒りの形相で現れたキャサリンが、銀時を指差して声を荒らげる。

「本人の前でそれ言うか!? アタシだって恋する時には乙女顔になるんだから覚えとけよ、この腐れ天パァァァ!!」

 

タマがスッとキャサリンの隣に立ち、冷静に彼女の肩に手を置いた。

「キャサリン様、落ち着いてください。カタコトキャラ作りが崩れていますよ。」

 

タマは銀時たちに向き直り、表情を変えずに言った。

「皆さんのお友達……いえ、パートナーである中野一花さん。オーディションの合格、おめでとうございます。」

 

その言葉に、銀時と新八は揃ってポカンと口を開けたまま固まる。

「……は?」

 

新八が戸惑いながら口を開く。

「あの、すいません……何でスナックのアルバイト従業員のタマさんが、オーディションの結果を知ってるんですか?」

 

タマは涼しい顔のまま答える。

「なぜって、それは……」

 

すると、お登勢が手を止めてタマの答えを引き継ぐように話し出した。

「この子が女優で、その時の審査員にこの子も入ってたからなんだよ。」

 

その言葉を聞いて、銀時は思わずグラスを取り落としそうになる。

「え、えぇぇぇ!? お前も審査員だったのかよ!?」

 

タマは軽く頷き、まるで当たり前のことだと言わんばかりの態度で続ける。

「はい、私は女優活動もしていますので。先日スケジュールの空きがありまして、審査員を務めました。」

 

銀時が頭を抱える。

「いやいや、そんな簡単に言うなよ……お前、学生とスナックと審査員の掛け持ちとかどうなってんだよ!」

 

タマは無表情で

「凡夫なあなた方とは違うということです」

 

その言葉に全員腹が立ったが中身が機械のためそういう時間管理などでは敵わないと理解し反論するのをやめた

「こ、こいつ!!」

 

新八が目を丸くしながら、タマに確認する。

「ってことは、タマさんが審査員で……一花さんのオーディションを……?」

 

タマは微笑みを浮かべたまま答える。

「そうです。そして、一花さんの才能は素晴らしいものでした。特に感情表現が非常に自然な形でされておりで、審査員一同大変感銘を受けました。」

 

お登勢は苦笑しながら、銀時の反応を楽しむように口を開く。

「世の中ってのは狭いもんさね。どこでどう繋がるか分かったもんじゃない。」

 

銀時は再び頭を掻きながら、ため息をついた。

 

「いくら何でも狭すぎんだろ!」

 

お登勢「それよりアンタたち大丈夫なのかい?」

 

新八「大丈夫って」

 

銀時「何のことだよ」

 

お登勢「アンタたちの教え子全員赤点候補何だろ?家庭教師の初の腕の見せ所と言ったら………」

 

ーーーーーーーーー

 

銀八は教壇に立ち、片手に持ったチョークをくるくると回しながら、気の抜けた声で告げた。

 

「はぁーい、毎学期恒例の学年末テストを来週から行いまーす。」

 

教室の空気がピリッと張り詰めた。生徒たちはざわめき始め、嫌な予感を感じ取っている。

 

銀八は構わず話を続ける。

「今回は何としても、そこにいるルール違反ロン毛侍の首位奪還を阻止して下さ〜い。」

 

桂はすぐさま立ち上がり、腕を組んで堂々と言い放つ。

「ルール違反ロン毛侍ではない桂だ!」

 

銀八は肩をすくめ、うんざりしたようにため息をついた。

「じゃあヅラで。」

 

「ヅラじゃない桂だ‼︎」

桂は机を叩きながら叫ぶ。

 

銀八は完全にスルーし、面倒くさそうに片手をひらひらと振った。

「はいはい、話終わんねぇから続けるぞー。今回も30点未満は赤点だからなぁ。特にチャイナ娘、いい加減赤点回避しろよー。」

 

神楽は机に頬杖をつきながら、ぷうっと頬を膨らませて反抗的な目をする。

「うるせぇアル。そっちこそ今年も落第教師候補じゃないか?」

 

銀八は軽く笑い、黒板をパシッと指で叩いた。

「以上でお知らせを終わりまーす。」

 

廊下

教室から出た銀時と新八は壁に背を預け、静かに立ち尽くしていた。だが、内心は違う。

 

銀時心の中:

「ヤバイィィィィ!! もうそんな時期なのか!? 俺、メシ食ってジャンプ読んだだけだぞ!?アイツら点数上がるどころか現状維持すら危ういんだけどォォォォ!!」

 

新八心の中:

「絶対にヤバイィィィィ!! このままだと銀さんが家庭教師クビになるどころか、僕まで巻き添えを食う……!」

 

銀時は苦しげに髪を掻きむしり、焦りを必死に隠そうと深呼吸をする。

「おい……新八……落ち着こう……」

 

「お、落ち着くのは銀さんの方ですよ! まだクビになると決まったわけじゃありません! 今回のテストでは、とにかく点数を上げることに集中しましょう!」

 

銀時心の中:

「そ、そうだよな。となると……」

 

図書館の静寂を切り裂くように、銀時の怒号が響き渡った。

 

「おい!テメェらァァァァ!! 今日という今日は銀さんも本物の鬼になって──」

 

「うるさい。」

 

一瞬で飛んできた強烈な蹴りが銀時の側頭部を直撃。ドカァァンと鈍い音を立てながら、彼の体は見事に地面に埋まった。

 

「し、主人公補正付きのこの銀さんを……地面に埋め込むなんて……一体どんなゴリラが……」

銀時は顔を上げる。

「……ってお前かいィィィィ!!」

 

目の前には、無表情で立ち尽くす今井信女。その手には妙な人形が握られていた。

銀時は目を細め、疑念の声を上げた。

「お前……何ですぐそばに男の格好をさせた人形を持ってんの?」

 

信女の人形が突然動き、口が勝手に開く。

 

「お、俺は人形じゃない! 俺は信女の彼氏だ! 俺みたいなモジャモジャに信女は渡さないぞ!」

 

銀時は人形の背後をにらみつけ、声を荒げた。

「誰がモジャモジャ頭だ! このクソ尼ァァァァ!! お前が声帯模写できることは原作から知ってんだよ! それより俺の質問に答えやがれ!!」

 

信女は人形を膝の上に乗せ、淡々と語り出す。

「私には……彼女みたいに甘い青春期を過ごせそうな人が居ないから……人形で少しでも恋愛をしてる気分を味わいたくて……」

 

銀時は額に手を押し当て、重い溜息をついた。

「なんか重いよ。なんちゃってラブコメの主人公扱いされてる俺らが重くなっちまう内容だよ~!!」

 

信女は無表情のまま人形を抱え直し、

「あっ……後ここは図書館だから静かに過ごしてね。」

 

「は、はい!」

新八は勢いよく返事をしながら背筋を伸ばす。

 

四葉が手を振りながら声を上げた。

「あっ、銀さん来ましたよ!」

 

上杉が銀時を睨みつけるようにして言う。

「おい銀時、おせぇぞ。ってどうした急に肩に手を置いたりして……」

 

銀時は静かに肩に手を置き、遠くを見つめながら語りかけた。

「いや……俺たち、恵まれてたなって思って……」

 

上杉はその表情に一抹の不安を抱き、眉をひそめた。

「何があった……?」

 

しかし、銀時はそれ以上語らず、図書館の奥の方を見つめるばかりだった。

 

上杉は銀時の言動を気にしつつも、気を取り直してニヤリと笑う。

「それより見てくれ! 三玖の奴が苦手な英語の勉強をしてたんだ!」

上杉は誇らしげにノートを掲げた。

 

銀時は座って頬杖をつき、適当に手を振りながら三玖のノートを眺めた。

「すげぇよ。こりゃすごいわ〜これで俺たちも安心してジャンプ読めるな。」

 

 

新八の眉が跳ね上がり、机をバンッと叩く音が響いた。

「もう読まんでもいいわ!! 試験対策の準備しろォォォォ!!それより三玖さんなんでまた……」

 

三玖「平気。少し頑張ろうと思って…」

 

四葉は元気よく手を挙げて叫んだ。

「それよりそれより銀さん! 新八さん! 上杉さん! 問題です! 今日の私はいつもとどこが違うでしょうか!?」

 

風太郎は額に手を当て、ため息をつきながら言い捨てる。

「お前ら、後少しで試験だぞ。銀時もその調子でコイツらの点数上げられるのか?」

 

四葉は唇を尖らせて抗議した。

「無視っ!?」

 

銀時は気の抜けた声を出し、肩をすくめる。

「でも〜今考えたら、別にすぐ上げなくても問題ないんじゃね? 卒業させればいいんだからよ〜」

 

新八は勢いよく立ち上がり、両手を振り回しながら怒鳴った。

「何言ってんですか銀さん!! 効果見れないって見放されたら終わりですよ!!」

 

一花は肩をすくめながらのんびりと笑う。

「それより夏休み楽しみだよね〜」

 

三玖も頷きながら、ぽつりとつぶやいた。

「うん、楽しみ……」

 

四葉はさらに声を張り上げた。

「ヒントは首から上でーす!」

 

風太郎は眉をしかめ、三玖と新八そして四葉を見ながら皮肉をこめて言う。

「三玖と新八そして………四葉はともかく、お前らは試験は眼中にないってわけか…。頼もしいな。」

 

銀時は人差し指を上げ、口角を引き上げて言った。

「おーい笑ってんの口だけだぞ〜? 笑顔笑顔。」

 

新八のこめかみがピクリと動く。

「誰のせいでこうなってんでしょうね……」

 

一花は笑いながら手を合わせる。

「あはは…。わかってるよ〜」

 

風太郎は半目でじっと彼女を見つめ、冷静に問い詰める。

「本当かよ……?」

 

四葉は満面の笑みで両手を広げた。

「みなさんには難しかったかなー?」

 

「正解はリボンです!! 今はチェックがトレンドだと教えてもらいました!!」

 

その瞬間、風太郎は無言で四葉のリボンをむんずと掴んだ。

「ほう? 良かったな。お前の答案用紙もチェックが流行中のようだ。」

 

四葉はふてくされた顔で言い返す。

「うわぁ…! 負け惜しみとは醜いですね〜…」

 

銀時がだるそうに腕を組んで、片眉を上げる。

「うるさいよ。大根の出荷作業のようにスッと引っこ抜かれたウサギに言われたくねぇよ。」

 

一花が吹き出して笑う。

「あははは!」

 

風太郎が厳しい声で一喝する。

「こら! お前らも笑ってる場合じゃないぞ! 四葉と三玖がやる気があるだけまだマシだ! とてもじゃないがこのままでは試験は乗り切れない!! その先の夏休みなんて夢のまた夢だ!! 中間試験は国数英理社の五科目!!! これから1週間徹底的に対策していくぞ!!」

 

一花は銀時に助けを求めて手を伸ばす。

「えー? 助けてよ〜銀さん。」

 

銀時は手を振りながらジャンプを持ち上げた。

「悪りぃな、給料のため……俺は弁護しねぇ。」

 

一花は机の下から別冊を取り出して見せる。

「こちらでいいかが?」

 

一花は笑顔を浮かべながら、そっとジャンプのページの間に何かを忍ばせた。銀時の目がキラリと光る。

 

「……うんうん、面白そうなジャンプがあるなぁ!」

銀時は嬉々としてジャンプを受け取り、パラパラとめくる。すると、ページの間からひらひらと一枚の紙幣が顔をのぞかせた。

 

新八がその様子を目ざとく見つけ、血管が切れそうな勢いで叫ぶ。

「おいィィィィ!! 何現金仕込んでんだァァァ!? それ賄賂じゃねぇか!!」

 

一花は悪びれもせずに肩をすくめ、涼しい顔で言う。

「え〜? ちょっとした感謝の気持ちだよ。ほら、銀さんだって大変なんだし、ね?」

 

銀時はすでにジャンプを抱きしめ、満足げに頷いている。

「おお……これだから人生は捨てたもんじゃねぇなぁ……心に染み入る贈り物だ。」

 

風太郎がこめかみを押さえ、険しい表情で銀時を睨みつける。

「銀時……今すぐその紙幣をよこせ。」

 

「やだね〜。日本中のジャンプマンガは全部俺のだから」

銀時は一歩後ろに下がり、ジャンプを抱えて全力で抵抗する。

 

新八がさらに声を荒げた。

「ちょっと待てェェェ!銀さんだけずるいですよ!!賄賂もらうなら僕も‼︎、」

 

銀時はジャンプを盾のように構えながら口をとがらせる。

「お前らなぁ、たかがジャンプ一冊と五千円ぽっちで——」

 

「五千円も入ってたのかァァァ!!」

風太郎と新八の怒声が図書館中に響き渡った。

 

銀時はジャンプを抱えたまま、じりじりと後退しながら眉をひそめる。

「おいおい、声がでけぇぞ。図書館だぞ、ここは。静かにしろ。俺たちは知的探求の場にいるんだからよ。」

 

風太郎は顔を引きつらせながら銀時を指差した。

「知的探求ってお前のその行為のどこに知性があるんだよ!? いい加減にしろ!!」

 

銀時は不敵に笑い、ジャンプをさっと開く。

「これが知性じゃなくて何なんだ? このページを見てみろよ、時事ネタ満載だぜ。ほら、世界の真実がこのジャンプに詰まってるってことだよ。」

 

新八は呆れて頭を抱えた。

「それただのアンケート結果ページじゃないですか! しかも裏に広告がぎっしり詰まってるだけ!!」

 

風太郎が銀時に一歩詰め寄る。

「銀時……お前に最後のチャンスをやる。それをこちらに。」

 

しかし、銀時は得意げに鼻を鳴らす。

「あげるも何も、俺は受け取るとは言ってねぇ。ただ、ジャンプを借りただけだからよぉ……中身はおまけってわけだ。」

 

新八は目を見開いたまま震えていた。

「そ、その言い訳でどこまで通ると思ってんだこのバカ教師が……」

 

銀時はジャンプを閉じてポケットに手を入れると、目を細めて言った。

「お前らみんな、こういう人生の小さな楽しみを知らねぇからストレスが溜まるんだよ。」

 

「ストレスが溜まるのはテメェのせいだよ!!!」

風太郎と新八が声を合わせて銀時に突っ込むと、信女が静かに近寄ってきた。

 

「……図書館では静かにお願い。」

冷たい声とともに、銀時の肩に静かな手が置かれる。その手は、さっきまで信女が握っていた人形のものだった。

 

銀時の顔が青ざめた。

「お、おい信女、お前まだその彼氏連れて……」

 

信女は静かに微笑んだ。

「黙っててって言ったのに……、やっぱりあんたは処分されるべきだったかもね。」

 

銀時は汗をかきながら必死に笑う。

「ちょ、ちょっと待て! 話せばわかるって! 俺は——」

 

「静かにね。」

次の瞬間、信女の人形が銀時の顔面にめり込んだ音が響き渡り、ジャンプと共に吹き飛んだ銀時の悲鳴が、試験勉強を控える仲間たちの背中を震わせた。

その後は順調に勉強会が進んだ。五月と二乃そして神楽がいなかったが…。

 

 

 一花は軽く息を上杉の耳に吐いて微笑んだ。

「ふぅ〜…」

 

風太郎がいきなり背後から息を吐かれたことに、驚きの声を上げた。

「ぶわっ!?な、なにをする!?」

 

一花はそんな彼に優しく手を差し出しながら、少しだけ体を寄せた。

「そんなに根詰めなくてもいいんじゃない?別に中間試験で退学になるわけじゃないんだし…。私たちも頑張るからさ!じっくり付き合ってよ。」

 

上杉が困惑している隣で、銀時は腕を組み、どこか達観した様子で頷いた。

「ほらな、コイツらこう言ってんだ。俺らが身を粉にして家庭教師する必要なんてねぇんだよ。」

 

新八が即座にツッコミを入れる。

「いやアンタは少し身を粉にした方がいいですよ!」

 

上杉は深くため息をつきながらも、眉を寄せて彼女たちを見た。

「……。」

 

一花はそんな彼の様子を気にすることなく、言葉を続ける。

「まあ、ご褒美があればもっと頑張れるんだけどね…。」

 

四葉がぱっと顔を上げ、目を輝かせた。

「あー!私は駅前のフルーツパフェがいいです!」

 

三玖も静かに手を上げた。

「私は……抹茶パフェ。」

 

銀時はその流れに自然と乗り、目を細めて遠くを見るように語った。

「俺はイチゴパフェで。糖尿病寸前で週一にしか甘いもの食えない俺にとってはこれが効くんだよ。」

 

一花は首をかしげ、疑問を口にする。

「ねぇ……それって週一でパフェはストレスにも効くかもだけど、糖尿病にも効かない?」

 

銀時はあっさりと答えた。

「そこは主人公補正でなんとか。」

 

その言葉に、全員の声が揃った。

「便利な能力だね!!」

 

上杉が一瞬で表情を曇らせる。

「お前ら、一刻も早く帰りたいんじゃなかったのか……。」

 

新八は銀時の隣で手を組み、神妙な顔でつぶやいた。

「……僕も食べたくなってきたかも……。」

 

一花がニヤリと微笑んだ。

「おっ?じゃあ行く?」

 

四葉はその場で飛び跳ね、両手を高く掲げた。

「みなさん!私たちにご褒美くださいよー!」

 

新八は戸惑いながら、後ずさりする。

「えっ、えー?」

 

銀時は目を細めて口角を上げ、背を向けながら静かに言った。

「よし!逃げるぞ新八。」

 

新八は即座に反応する。

「そうですね、ここにいても……。」

 

二人は同時に声を張り上げた。

「お金吹き飛ぶだけぇぇぇ!!」

 

三玖はあっけに取られた顔でその姿を見送る。

「……逃げた。」

 

一花が足を踏み出し、指を指しながら叫んだ。

「追いかけよう!って足速っ!!」

 

四葉はすぐさま駆け出しながら、自信満々に言う。

「私にお任せを!!」

しかし、次の瞬間、目の前の二人の背中は遠ざかる一方だった。

 

銀時は駆け抜ける風のごとく走り抜けながら、余裕の笑みを浮かべていた。

「へっへっへっ!こんな鬼ごっこ、俺たちは毎日ババアから逃げてんだよ!」

後ろを振り返り、肩越しに挑発的な視線を送る。

 

新八は必死で息を切らしながら、銀時に追いつこうとする。

「説明になってないですよ!それただの家賃滞納した時の話!」

 

四葉は猛ダッシュしながら、両手を振り回して叫んだ。

「銀さーん!待ってくださいー!……って、全然追いつけない!」

 

銀時は振り返ると得意げに笑い、「へん!俺たちに追いつけると思うなよ!」とさらに速度を上げた。

 

曲がり角に差しかかる。

そこに待ち構えていたのは——。

 

五月の腕がビシッと銀時の肩を掴み、神楽が新八の襟元をぐっと引き寄せる。

「確保です。」

「全く、これだから男どもは……。」

 

銀時と新八は同時に声を上げた。

「え?」

「なんで五月さんと神楽ちゃんがここに……?」

 

神楽は鼻をほじりながら、口元にニヤリと笑みを浮かべた。

「何言ってるアルか。アンタらがこうなることなんて百も承知アルよ。」

 

五月「嘘はいけませんよ神楽ちゃん。私たちは補修を受けて来たんです。赤点防止のために」

 

五月「そして……三玖と一花から連絡を受けて!!」

 

銀時・新八『な、なんてコンビネーション!!』

 

新八が青ざめながら五月を見ると、彼女は無言のまま厳しい表情でじっと見下ろしていた。

「さあ、坂田さん、新八さん……。」

「ど、どうするんですか……?」

 

五月は静かに、しかし重々しく言葉をつむいだ。

「もう一度、パフェの話をしましょうか?」

 

銀時と新八の顔は青ざめ、心の中で大音量の警報が鳴り響いた——。

『逃げ場は……ないィィィィ!!』

 

四葉「すみませーん!フルーツパフェをお願いしまーす!」

 

一花「いやぁ助かったよー二人とも」

 

神楽「へっ、ちょろいもんよ」

 

五月「当然です。」

 

一花「そっかそっか〜」

 

銀時「……………」

 

新八「……………」

 

銀時『どうすんのコレ!!?』

 

銀時『マジでヤバイ、マジで終わってるってコレェェェ!大食いキャラが二人とかもう耐えられねぇよ』

 

銀時『俺の財布がスティッキーフィンガーしちゃうよ』

 

新八『銀さんスタンドなんか使えないでしょ!?』

 

四葉「そういうば上杉さんは?」

 

「「「あー!!」」」

 

銀時・新八『よし!来た。』

 

銀時「じゃあ俺が連れ戻しに行ってくるよ〜それじゃあ新八、後はよろしーー」

 

銀時「ぐへぇ」

 

新八「自分だけ逃げようとはズルいですよ銀さん!!今まで自分たちに給料渡してなかった分今回は銀さんが!!」

 

銀時「うるせぇ!!今回の犠牲者はお前だけで十分何だよ!!お前は金がねぇなら◯タマでもメガネでも売って金にすればいいだろうが!!」

 

神楽「それはいけないよ銀ちゃん!」

 

新八「良かった。神楽ちゃんが味方につけばーー」

 

神楽「新八にとってメガネが命アル!とるなら身ぐるみまでネ」

 

新八「おいィィィィどっちしろ終わってんじゃねぇかァァァァ!!」

 

五月「もういいです!」

 

五月「このままだと埒があきませんし、逃げられるだけなので私が上杉くんを捕まえて来ます。」

 

新八と銀時が電話を受け取る様子を目の端で見つめながら、一花がそっと息をつく。

「お父さんから電話だよ。」

 

「お父さん!?」

銀時と新八は同時に反応し、視線を交差させた。

 

一花が微笑みながら銀時にスマホを差し出す。

「銀さん、代わってほしいって。」

 

銀時は軽く手を振り、いつもの調子で応じた。

「はーい、お父たま〜今回はどのようなご用件で?」

 

電話越しに聞こえた声は静かだが、どこか冷たさを含んでいる。

『………君にお父さんと言われる筋合いはないよ。それに、なんだねお父たまとは?』

 

銀時は鼻をこすりながら口角を上げ、調子よく返す。

「すいませんね〜俺の故郷じゃ『お父たま』をつけると最上級の尊敬の意を——」

 

バシッ!

突然、新八が銀時の後頭部を力強く叩きつけた。

 

「ヘボっ!」

銀時が前のめりになり、驚きの声を上げる。

 

新八は深々と頭を下げ、冷や汗を浮かべながら叫んだ。

「すいません!私の上司が大変なご無礼をお掛けしましたァァァ!!」

 

『いやいや、なかなか面白い人物だと聞いているよ。』

お父さんの声には、わずかな笑みの響きがあった。

 

銀時がすかさず胸を張って言い放つ。

「5教科に限らず、道徳から恋愛指南までバッチリ教え込んでおりますよ。お父たま!」

 

新八が慌てて銀時の背中を叩きながら、声を上げた。

「銀さん、黙っててください!!」

 

電話越しのお父さんの声は穏やかだが、どこか圧を感じさせるものがあった。

『ふむ……なかなか豪胆な人物のようだね。』

 

銀時が肩をすくめながら、平然と続ける。

「まぁ、俺たちの教え方は一味違いますからね〜。結果で驚かせますんで。」

 

 

お父さん『そうかい………そうだ近々中間試験があると聞いてね。少々酷だが、君達の成果をここで見せてもらいたい…』

 

新八「えっと?それはつまり……」

 

 

『1週間後の中間試験、5人のうち1人でも赤点を取ったら、君……いや、君達には家庭教師をやめてもらう…』

 

 

その一言が、場の空気を一瞬で凍りつかせた。

 

新八の額から冷や汗が流れ落ち、手に握ったスマホがずるりと滑りそうになる。

「えっと、それはつまり……」

 

『1週間後の中間試験で、5人のうち1人でも赤点を取ったら……』

言葉を一つひとつ区切りながら、お父さんの声は厳然と響き渡る。

『君……いや、君達には家庭教師をやめてもらう。』

 

新八の瞳が驚きに見開かれた瞬間、銀時は目を大きく見開き、まるでその場に雷が落ちたかのような衝撃を受けた顔をする。

 

お父さんの声が電話の向こうから冷ややかに響いた。

 

『期待しているよ。では、頑張ってくれたまえ……』

 

ピッ、プツン――。

 

銀時と新八は、切れた電話の音を耳にしながら同時に固まった。

空気が止まる。時間が止まる。二人の表情は見事なまでに青ざめていた。

 

「……今の、何て言った?」

銀時が震える声で言う。

 

「……やめる……やめさせるって……」

新八は言葉を詰まらせながら答える。

 

その瞬間、二人の頭の中で警報が鳴り響いた。

 

「ヤバい!!」

 

銀時の背筋に冷たい汗が走り、顔は白昼夢でも見たかのように蒼白。

「これは、これはマズいってレベルじゃねぇ……! 一人でも赤点取ったらお払い箱ってか!?」

 

新八は額を手で押さえてうなだれる。

「うわぁぁぁ、やっぱりクビの話が本当に来るなんて……!」

 

二人はお互いの顔を見合わせて、しばらく無言。

同時に大きく深呼吸して――

 

「どどど、どうすんだァァァァァ!!!」

 

部屋中に二人の叫びがこだまする。

銀時は髪をぐしゃぐしゃにかき乱しながら叫び、新八は椅子をガタガタ揺らし、まるで沈没船の乗客のように慌てふためいていた。

 

新八は慌てて部屋の中を行ったり来たり、口を半開きにしながら何かをぶつぶつと呟いている。

 

「クビ…! クビ…! 銀さん、これ完全に詰んでますよ! 一人でも赤点取ったらアウトって! どうするんですか!? 対策、今から考えましょう! いや、今すぐ勉強会です! いや、もう間に合わない!? いやいやいや――」

 

「うるせぇよ、メガネが曇ってんぞ! メガネ拭け、落ち着け!」

 

銀時はそう言いながら、自分も明らかに落ち着いていない。額には汗が滲み、心拍数は上がりっぱなしだ。

 

「落ち着いていられるか! アンタのせいであの娘たちの学力がどん底なんですよ! 何ですか、授業の最中にお菓子食べて、ジャンプ読んで、昼寝まで挟むって!」

 

「そんなもん決まってんだろ、俺の集中力の使いどころを間違えただけだ! あと昼寝はエネルギー補給だ!」

 

「屁理屈こねてる場合じゃないですよォォォ!」

 

その時、背後から一花の軽い声が聞こえてきた。

 

「ねぇねぇ、何の話してるの?」

 

二人は弾かれたように振り返り、顔を引きつらせたまま笑みを作る。

 

「な、なんでもない! なーんでもないぞ!」

銀時の声はうわずり、新八は首を縦に振り続ける。

 

「……怪しい。」

三玖が首をかしげると、四葉がにこにこしながら横から割って入る。

 

「銀さん、なんでそんなに汗だくなんですか? まさかまたかき氷食べ過ぎました?」

 

「そ、そう! かき氷だ! 頭がキーンとして大変だったんだよ!」

 

「えー、なんだか怪しいなぁ。」

 

「さあさあ家に帰って勉強だ勉強!」

銀時は強引に話題を逸らし、一花たちを急かす。

 

その背中に新八がそっと囁いた。

 

「この状況で無理やり押し切れるわけないでしょ……」

 

「押し切るんだよ! 今はそれしかねぇんだから!」

 

「全員赤点回避できなかったら――打ちクビ獄門」

 

二人は再び青ざめながら心の中で叫び、決死の覚悟を胸に秘めて、地獄の特訓を始めるのだった。

ちょうどその頃、

 

同様の電話を受けた上杉と五月は喧嘩……はてさてどうなることやら……

 

 




次回 男女のお泊まりは大人から
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